都道府県別実質公債費比率ランキング(2021年度)
概要
実質公債費比率は、地方公共団体の一般会計等が負担する元利償還金及び準元利償還金の標準財政規模に対する比重を示す指標です。この比率は地方財政の健全性を測る重要な指標の一つとして位置づけられており、18%以上になると地方債の発行に際して許可が必要となる基準として設定されています。
2021年度のデータを見ると、全国平均は11.1%で、最高値の北海道19.1%と最低値の東京都1.5%の間には17.6ポイントという大きな格差が存在しています。特に北海道は許可基準である18%を上回る唯一の都道府県となっており、地方財政における地域間格差の深刻さを物語っています。この指標は各都道府県の財政運営の持続可能性を判断する上で極めて重要な意味を持っています。
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上位5県の詳細分析
上位5県はいずれも実質公債費比率が高く、財政運営において注意が必要な状況にあります。
北海道が19.1%(偏差値77.1)で最も高い比率を示しており、地方債発行に許可が必要となる18%の基準を上回っています。広大な面積を持つ北海道では、インフラ整備や維持管理に多額の費用が必要であり、過去の投資に対する償還負担が現在の財政を圧迫している状況が伺えます。
新潟県は17.5%(偏差値71.9)で2位となっており、許可基準に近い水準にあります。豪雪地帯特有のインフラ維持費用や、過去の大型公共事業による債務負担が影響していると考えられます。
京都府は15.9%(偏差値66.7)で3位に位置しています。府域の都市部と山間部の格差対応や、文化財保護関連の投資などが財政負担となっている可能性があります。
兵庫県は15.2%(偏差値64.5)で4位、秋田県は14.9%(偏差値63.5)で5位となっています。兵庫県では阪神・淡路大震災復興関連の債務や県域の多様性に対応する投資負担、秋田県では人口減少に伴う一人当たりの債務負担増加などが要因として考えられます。
下位5県の詳細分析
下位5県は比較的良好な財政状況を示していますが、それぞれ異なる背景があります。
東京都が1.5%(偏差値20.2)で最も低い比率となっており、他県とは圧倒的な差を見せています。豊富な税収基盤と効率的な財政運営により、債務償還負担が標準財政規模に対して極めて小さく抑えられています。
島根県は5.3%(偏差値32.5)で46位、岐阜県は6.1%(偏差値35.1)で45位となっています。これらの県では堅実な財政運営が行われているものの、一方で必要なインフラ投資が十分に行われているかという観点での検証も必要です。
沖縄県と福島県はともに7.1%(偏差値38.3)で43位タイとなっています。沖縄県では国の特別な支援制度により債務負担が軽減されている面があり、福島県では東日本大震災復興関連の国庫支出金等により財政負担が軽減されている影響が考えられます。
地域別の特徴分析
北海道・東北地域では、北海道が突出して高い一方で、秋田県、山形県も上位に位置しており、寒冷地特有のインフラ維持費用や人口減少による一人当たり負担増が共通の課題となっています。一方、福島県は震災復興支援により比較的低い水準を保っています。
関東地域では東京都が突出して低く、埼玉県、千葉県、神奈川県も比較的低い水準にあります。首都圏の経済力と税収基盤の充実が反映された結果となっています。
中部地域では新潟県が全国2位と高い水準にある一方で、岐阜県は全国下位に位置するなど、地域内での格差が大きくなっています。豪雪対応や地理的条件の違いが影響していると考えられます。
近畿地域では京都府、兵庫県が上位に位置する一方で、奈良県、滋賀県は中位から下位に分布しており、都市部の投資負担と郊外部の安定的な財政運営の対比が見られます。
中国・四国地域では全体的に中位から下位に分布しており、比較的安定した財政運営が行われていますが、島根県のように極めて低い県も存在します。
九州・沖縄地域では沖縄県が国の特別支援により低い水準にある一方で、他県は中位程度に分布しており、地域全体として標準的な水準を保っています。
格差や課題の考察
最上位の北海道19.1%と最下位の東京都1.5%の間には17.6ポイントという極めて大きな格差が存在しています。この格差は単純に12.7倍の開きとなっており、地方財政における深刻な地域間格差を示しています。
この格差の背景には、税収基盤の違い、地理的条件による行政コストの差、過去の投資判断の影響、国の支援制度の活用状況など、複合的な要因が存在します。特に、人口密度の低い地域や寒冷地域では、一人当たりのインフラ維持費用が高くなりがちで、それが債務負担の増加につながっています。
改善に向けては、地域の実情に応じた財政支援制度の充実、効率的な行政運営の推進、広域連携による行政コストの削減などが重要な課題となります。また、18%という許可基準を超える北海道については、早急な財政健全化策の実施が求められます。
統計データの基本情報と分析
統計的な観点から見ると、平均値**11.1%**に対して中央値はより低い水準にあると推測され、これは北海道をはじめとする上位県の値が全体の平均を押し上げていることを示しています。
分布の特徴として、東京都が極端に低い外れ値となっており、一般的な地方財政の実態からは大きく乖離しています。この外れ値の存在により、東京都を除いた場合とそうでない場合で、全体の統計的特徴が大きく変わることが予想されます。
標準偏差から算出される偏差値の分布を見ると、北海道が77.1と極めて高い値を示す一方で、東京都は20.2と異常に低い値となっており、この両極端な値が全体の分布の特徴を決定づけています。
四分位範囲での分析では、上位25%と下位25%の間に相当な格差が存在すると考えられ、これは地方財政の健全性において都道府県間の二極化が進んでいることを示唆しています。
まとめ
- 北海道が唯一、地方債発行許可基準の18%を超える19.1%を記録し、財政健全化が急務
- 東京都は1.5%と突出して低く、豊富な税収基盤による財政余力の大きさを示している
- 最大格差は17.6ポイント(12.7倍)に達し、地方財政における深刻な地域間格差が顕在化
- 北海道・東北地域で高い傾向、関東地域で低い傾向が明確に現れている
- 地理的条件、税収基盤、過去の投資判断などが複合的に影響している
今後は特に高い比率を示す都道府県での財政健全化の取り組みと、地域間格差の是正に向けた国レベルでの支援制度の検討が重要な課題となります。また、この指標の継続的なモニタリングを通じて、各都道府県の財政運営の持続可能性を注視していく必要があります。