都道府県別母子世帯数ランキング（2020年度）

概要

母子世帯とは、母親と20歳未満の子どものみで構成される世帯のことを指します。この記事では、2020年度の都道府県別母子世帯数のランキングを紹介します。

母子世帯数は、地域の家族構成や社会経済状況を反映しており、子育て支援政策や福祉政策などの基礎データとして重要な指標です。2020年度は、東京都や大阪府、神奈川県などの大都市圏で母子世帯数が多く、鳥取県や島根県などの地方県で母子世帯数が少なくなっています。

上位県と下位県の比較

母子世帯数が多い上位5県

2020年度の母子世帯数ランキングでは、東京都が53,043世帯（偏差値81.7）で全国1位となりました。東京都は人口が最も多い都道府県であり、それが母子世帯数の多さにも反映されています。また、都市部では離婚率が高い傾向があることも影響しています。

2位は大阪府で48,627世帯（偏差値78.2）、3位は神奈川県で38,079世帯（偏差値69.6）、4位は北海道で37,287世帯（偏差値69.0）、5位は福岡県で35,804世帯（偏差値67.8）となっています。上位県には三大都市圏の都府県が多く、人口集中地域の特徴を示しています。

母子世帯数が少ない下位5県

最も母子世帯数が少なかったのは鳥取県で3,304世帯（偏差値41.6）でした。鳥取県は人口が最も少ない県であり、それが母子世帯数の少なさにも反映されています。

46位は島根県で3,330世帯（偏差値41.6）、45位は福井県で3,392世帯（偏差値41.6）、44位は富山県で3,856世帯（偏差値42.0）、43位は徳島県で3,896世帯（偏差値42.0）となっています。下位県には中国・四国地方や北陸地方の県が多く、人口規模の小さい地方県の特徴を示しています。

地域別の特徴分析

東北地方の母子世帯の状況

東北地方では、宮城県（16位、11,702世帯）が比較的多い母子世帯数を示す一方、山形県（40位、4,450世帯）、秋田県（42位、4,117世帯）、岩手県（34位、6,461世帯）、青森県（30位、8,097世帯）、福島県（21位、9,372世帯）は中位から下位に位置しています。

宮城県が東北地方で最も母子世帯数が多い理由としては、仙台市という東北地方最大の都市を有していることが挙げられます。仙台市は東北地方の経済・文化・教育の中心地として、人口集中が進んでおり、それが母子世帯数にも反映されています。また、都市部では離婚率が高い傾向があることも影響しています。

一方、山形県や秋田県で母子世帯数が少ない理由としては、人口規模の小ささに加え、三世代同居の文化が根強く残っていることが挙げられます。特に山形県は全国で最も三世代同居率が高く、離婚後も親世代と同居するケースが多いため、統計上の母子世帯として計上されないケースが多いと考えられます。

関東・甲信越地方の都市化と母子世帯

関東・甲信越地方では、東京都（1位、53,043世帯）、神奈川県（3位、38,079世帯）、埼玉県（7位、32,130世帯）、千葉県（9位、26,632世帯）が上位に位置する一方、茨城県（12位、14,377世帯）、群馬県（18位、10,577世帯）、栃木県（22位、9,177世帯）、新潟県（23位、9,016世帯）、長野県（20位、9,652世帯）、山梨県（41位、4,339世帯）は中位から下位に位置しています。

東京都が突出して多い母子世帯数を示している理由としては、人口規模の大きさに加え、都市部特有の家族形態の変化が挙げられます。東京都では、離婚率が高く、また離婚後も都内に住み続けるケースが多いことが特徴です。特に、就業機会の多さや保育施設の充実など、母子世帯が生活しやすい環境が整っていることも影響しています。

神奈川県、埼玉県、千葉県も母子世帯数が多いですが、これらの県は東京都のベッドタウンとしての性格も強く、東京都と同様の傾向を示しています。特に、横浜市、川崎市、さいたま市、千葉市などの大都市では、母子世帯が集中する傾向があります。

一方、山梨県で母子世帯数が比較的少ないのは、人口規模の小ささに加え、農山村地域が多く、伝統的な家族観が根強く残っていることが影響しています。また、離婚後も親世代と同居するケースが多いため、統計上の母子世帯として計上されないケースも多いと考えられます。

中部・北陸地方の産業構造と母子世帯

中部・北陸地方では、愛知県（6位、34,570世帯）が比較的多い母子世帯数を示す一方、静岡県（10位、18,652世帯）、岐阜県（24位、8,827世帯）、三重県（27位、8,510世帯）、富山県（44位、3,856世帯）、石川県（39位、4,914世帯）、福井県（45位、3,392世帯）は中位から下位に位置しています。

愛知県が比較的多い母子世帯数を示している理由としては、名古屋市を中心とした都市圏の形成と、自動車産業を中心とした製造業の集積が挙げられます。名古屋市には、就業機会が多く、母子世帯でも生活しやすい環境が整っていることが特徴です。また、製造業の集積地では、女性の就業機会も比較的多く、これが母子世帯の生活基盤の確保に寄与しています。

一方、福井県や富山県で母子世帯数が少ないのは、人口規模の小ささに加え、三世代同居の文化が根強く残っていることが影響しています。特に、これらの県では持ち家率が高く、離婚後も親世代の家に戻るケースが多いため、統計上の母子世帯として計上されないケースが多いと考えられます。また、製造業を中心とした安定した雇用環境により、家族の経済的安定が確保されやすく、これが離婚率の低さにも寄与していると考えられます。

近畿地方の都市部と郊外の差

近畿地方では、大阪府（2位、48,627世帯）が上位に位置する一方、兵庫県（8位、27,682世帯）、京都府（15位、12,563世帯）、三重県（27位、8,510世帯）、奈良県（32位、7,118世帯）、和歌山県（33位、6,485世帯）、滋賀県（35位、6,099世帯）は中位から下位に位置しています。

大阪府が高い母子世帯数を示している理由としては、人口規模の大きさに加え、都市部特有の家族形態の変化が挙げられます。大阪府、特に大阪市では、離婚率が高く、また離婚後も府内に住み続けるケースが多いことが特徴です。特に、就業機会の多さや保育施設の充実など、母子世帯が生活しやすい環境が整っていることも影響しています。

兵庫県も比較的多い母子世帯数を示していますが、これは神戸市や阪神間の都市部に母子世帯が集中していることが影響しています。特に、阪神・淡路大震災後の復興過程で、母子世帯向けの住宅支援が行われたことも、母子世帯の集中に寄与しています。

一方、滋賀県や奈良県で母子世帯数が比較的少ないのは、これらの県が大阪都市圏のベッドタウンとしての性格が強く、核家族世帯の割合が高いことが影響しています。特に、教育環境の充実から子育て世帯の移住先として選ばれる傾向があり、これが家族の安定性に寄与していると考えられます。

中国・四国地方の地域性

中国・四国地方では、広島県（11位、16,225世帯）が上位に位置する一方、岡山県（19位、9,742世帯）、山口県（28位、8,468世帯）、鳥取県（47位、3,304世帯）、島根県（46位、3,330世帯）、徳島県（43位、3,896世帯）、香川県（36位、5,519世帯）、愛媛県（29位、8,105世帯）、高知県（37位、5,194世帯）は中位から下位に位置しています。

広島県が比較的多い母子世帯数を示している理由としては、広島市という中国地方最大の都市を有していることが挙げられます。広島市は中国地方の経済・文化・教育の中心地として、人口集中が進んでおり、それが母子世帯数にも反映されています。また、都市部では離婚率が高い傾向があることも影響しています。

一方、鳥取県や島根県で母子世帯数が少ないのは、人口規模の小ささに加え、三世代同居の文化が根強く残っていることが影響しています。特に、これらの県では過疎化が進み、若年層の流出が著しいため、母子世帯の形成自体が少ないことも特徴です。また、離婚後も親世代と同居するケースが多いため、統計上の母子世帯として計上されないケースも多いと考えられます。

九州・沖縄地方の地域差

九州・沖縄地方では、福岡県（5位、35,804世帯）が上位に位置する一方、沖縄県（13位、13,575世帯）、鹿児島県（14位、12,749世帯）、熊本県（17位、11,403世帯）、宮崎県（25位、8,683世帯）、長崎県（26位、8,678世帯）、大分県（31位、7,297世帯）、佐賀県（38位、5,034世帯）は中位から下位に位置しています。

福岡県が高い母子世帯数を示している理由としては、福岡市を中心とした都市圏の形成と、九州地方の経済・文化・教育の中心地としての役割が挙げられます。福岡市には、就業機会が多く、母子世帯でも生活しやすい環境が整っていることが特徴です。また、都市部では離婚率が高い傾向があることも影響しています。

沖縄県も比較的多い母子世帯数を示していますが、これは沖縄県特有の家族観や結婚観が影響しています。沖縄県では、未婚の母親や離婚後の母親に対する社会的なスティグマが比較的少なく、母子世帯として生活しやすい社会環境があることが特徴です。また、米軍基地周辺では国際結婚も多く、これが離婚率の高さにも影響していると考えられます。

一方、佐賀県で母子世帯数が比較的少ないのは、人口規模の小ささに加え、農業を中心とした産業構造と三世代同居の文化が残っていることが影響しています。また、福岡県に隣接しており、福岡市への通勤・通学が可能なため、家族の安定性が確保されやすいことも特徴です。

母子世帯数の格差がもたらす影響と課題

子育て支援への影響

母子世帯数の格差は、子育て支援政策にも大きな影響を与えます。母子世帯数が多い地域では、保育施設や放課後児童クラブなどの子育て支援施設の需要が高く、これらの施設の整備が進む傾向があります。一方、母子世帯数が少ない地域では、これらの施設の需要が比較的低く、施設の整備が遅れる傾向があります。

例えば、東京都（1位、53,043世帯）では、保育施設や放課後児童クラブの整備が進んでおり、特に都心部では24時間保育や病児保育などの特別なニーズに対応した施設も増えています。これにより、母子世帯の就業支援や子育て支援が充実する一方、待機児童問題や保育の質の確保などの課題も生じています。

一方、鳥取県（47位、3,304世帯）では、保育施設や放課後児童クラブの需要が比較的低く、これらの施設の整備が遅れる傾向があります。これにより、母子世帯の就業支援や子育て支援が不足する一方、地域コミュニティによる子育て支援や三世代同居による家族内の支援が機能しているケースも多いと考えられます。

経済的自立への影響

母子世帯数の格差は、母子世帯の経済的自立にも大きな影響を与えます。母子世帯数が多い地域では、母子世帯向けの就業支援や経済的支援の制度が充実する傾向があります。一方、母子世帯数が少ない地域では、これらの支援制度が不足する傾向があります。

例えば、大阪府（2位、48,627世帯）では、母子世帯向けの就業支援や経済的支援の制度が充実しており、特に大阪市では独自の支援制度も設けられています。これにより、母子世帯の経済的自立が促進される一方、支援への依存や貧困の固定化などの課題も生じています。

一方、島根県（46位、3,330世帯）では、母子世帯向けの就業支援や経済的支援の制度が不足する傾向があります。これにより、母子世帯の経済的自立が困難になる一方、地域コミュニティによる支援や三世代同居による家族内の支援が機能しているケースも多いと考えられます。

住宅確保への影響

母子世帯数の格差は、母子世帯の住宅確保にも大きな影響を与えます。母子世帯数が多い地域では、母子世帯向けの公営住宅や民間賃貸住宅の供給が増加する傾向があります。一方、母子世帯数が少ない地域では、これらの住宅の供給が不足する傾向があります。

例えば、神奈川県（3位、38,079世帯）では、母子世帯向けの公営住宅や民間賃貸住宅の供給が増加しており、特に横浜市や川崎市では独自の住宅支援制度も設けられています。これにより、母子世帯の住宅確保が促進される一方、住宅の質の確保や地域コミュニティとの融合などの課題も生じています。

一方、徳島県（43位、3,896世帯）では、母子世帯向けの公営住宅や民間賃貸住宅の供給が不足する傾向があります。これにより、母子世帯の住宅確保が困難になる一方、持ち家率が高く、親世代の家に戻るケースが多いため、住宅問題が顕在化しにくいという特徴もあります。

教育環境への影響

母子世帯数の格差は、子どもの教育環境にも大きな影響を与えます。母子世帯数が多い地域では、母子世帯の子どもへの教育支援や学習支援の制度が充実する傾向があります。一方、母子世帯数が少ない地域では、これらの支援制度が不足する傾向があります。

例えば、福岡県（5位、35,804世帯）では、母子世帯の子どもへの教育支援や学習支援の制度が充実しており、特に福岡市では独自の支援制度も設けられています。これにより、母子世帯の子どもの教育機会が確保される一方、支援の質の確保や子どもの心理的負担などの課題も生じています。

一方、福井県（45位、3,392世帯）では、母子世帯の子どもへの教育支援や学習支援の制度が不足する傾向があります。これにより、母子世帯の子どもの教育機会が制限される一方、学力水準が全国的に高く、地域全体で子どもの教育を支える文化があるため、教育格差が顕在化しにくいという特徴もあります。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2020年度の都道府県別母子世帯数データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます：

1. 平均値と中央値の比較：平均値は約13,762世帯、中央値は約8,827世帯と大きな差があり、東京都（53,043世帯）や大阪府（48,627世帯）などの極端に高い値が平均値を引き上げていることがわかります。これは、データが強い正の歪みを持っていることを示しています。

2. 分布の歪み：データは全体として強い正の歪み（右に裾を引いた形状）を示しており、東京都（53,043世帯）や大阪府（48,627世帯）などの上側の外れ値が存在しています。

3. 外れ値の特定：東京都（53,043世帯）は明らかな上側の外れ値と考えられます。また、大阪府（48,627世帯）、神奈川県（38,079世帯）も上側の外れ値と考えられます。一方、鳥取県（3,304世帯）や島根県（3,330世帯）は下側の外れ値と考えられます。

4. 四分位範囲による分布の特徴：第1四分位数（Q1）は約5,519世帯、第3四分位数（Q3）は約14,377世帯で、四分位範囲（IQR）は約8,858世帯です。これは、中央の50%の都道府県の母子世帯数が5,519世帯から14,377世帯の間に収まっていることを示しています。

5. 標準偏差によるばらつき：標準偏差は約12,377世帯で、多くの都道府県が平均値から±12,377世帯の範囲内に分布していることを示しています。変動係数（標準偏差÷平均値）は約89.9%となり、相対的なばらつきは非常に大きいと言えます。最高値と最低値の差は49,739世帯（53,043世帯−3,304世帯）に達し、東京都と鳥取県の間には大きな格差があることを示しています。

まとめ

2020年度の都道府県別母子世帯数ランキングでは、東京都が53,043世帯で1位、鳥取県が3,304世帯で47位となりました。上位には東京都、大阪府、神奈川県などの大都市圏の都府県が多く、下位には鳥取県、島根県、福井県などの地方県が多く見られました。

母子世帯数の地域差は、人口規模の差、都市化の程度の差、家族観の差など様々な要素を反映しており、この差は子育て支援や経済的自立、住宅確保、教育環境など様々な面に影響を与えています。

統計分析からは、東京都が突出して高い母子世帯数を示す一方、鳥取県や島根県が特に低い母子世帯数を示していることがわかります。また、多くの都道府県は5,519世帯から14,377世帯の範囲に集中しており、中程度の母子世帯数を示しています。

少子高齢化が進む日本社会において、母子世帯の支援は重要な課題となっています。特に、母子世帯の経済的自立や子どもの教育機会の確保、住宅の確保などの課題に対応するためには、地域の特性を踏まえた支援策の展開が求められています。また、母子世帯が地域社会の中で孤立することなく、安心して子育てができる環境づくりも重要な課題です。