都道府県別基準財政需要額ランキング(2021年度)
概要
基準財政需要額とは、地方交付税制度において各都道府県が標準的な行政サービスを提供するために必要とされる財政需要を、国が客観的な指標を用いて算定した額です。人口、面積、道路延長、学校数など様々な測定単位に基づいて計算され、地方交付税の配分や地方財政の健全性評価に重要な役割を果たしています。
2021年度のデータを見ると、全国平均は57,651億円となっており、東京都の210,910億円(偏差値96.7)から鳥取県の19,721億円(偏差値42.0)まで、約10.7倍の大きな格差が存在しています。人口規模と行政区域の広さが主要な決定要因となっており、大都市圏と地方部の間に顕著な差が見られます。
この指標は地方自治体の財政運営の基礎となるものであり、地域間の行政サービス水準の均等化を図る地方交付税制度の根幹をなしています。
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上位5県の詳細分析
上位5県はいずれも人口規模が大きく、経済活動が活発な都府県となっています。
東京都が210,910億円(偏差値96.7)で圧倒的な1位を占めています。約1,400万人の人口を抱える首都として、教育、福祉、都市基盤整備など多岐にわたる行政需要が極めて大きく、他の都道府県を大きく引き離しています。特に都市機能の集積による複雑な行政需要が反映されています。
大阪府は118,613億円(偏差値70.3)で2位となっています。関西圏の中核として約880万人の人口を有し、商業・工業都市としての特性から多様な行政サービス需要が発生しています。東京都の約56%の水準ですが、人口密度の高さを反映した結果となっています。
北海道は114,830億円(偏差値69.2)で3位に位置しています。人口は約520万人と大阪府より少ないものの、全国の22%を占める広大な面積により、道路整備、除雪対策、僻地における行政サービス提供などの地理的要因による財政需要が大きく影響しています。
愛知県は98,713億円(偏差値64.6)で4位です。約755万人の人口を抱える中部圏の中核県として、製造業の集積地という産業特性も行政需要に反映されています。名古屋市を中心とした都市圏の行政需要が主要な要因となっています。
神奈川県は96,444億円(偏差値64.0)で5位となっています。約920万人と全国2位の人口規模を持ちながら、東京都に隣接する立地特性により、ベッドタウン的な性格が強く、人口規模に比して基準財政需要額はやや抑制されています。
下位5県の詳細分析
下位5県は人口規模が小さく、比較的コンパクトな県域を持つ県が中心となっています。
山梨県は23,234億円(偏差値43.0)で43位です。約81万人の人口と4,465k㎡の面積を持ち、中部山岳地帯の地理的特性を有しながらも、首都圏に近い立地により行政需要は比較的安定しています。
徳島県は23,137億円(偏差値43.0)で44位となっています。約73万人の人口で四国最小の人口規模であり、4,147k㎡の県域における行政需要が反映されています。過疎化の進行による人口減少が財政需要の縮小要因となっています。
福井県は22,524億円(偏差値42.8)で45位です。約77万人の人口と4,190k㎡の面積を持つ北陸地方の県で、日本海側の気候条件による特有の行政需要はありますが、全体的な規模は小さくなっています。
香川県は22,439億円(偏差値42.8)で46位となっています。約95万人の人口を有しながら、1,877k㎡と全国最小の面積であることが大きく影響しています。人口密度は高いものの、絶対的な県域規模の小ささが財政需要額を押し下げています。
鳥取県は19,721億円(偏差値42.0)で最下位の47位です。約55万人と全国最少の人口に3,507k㎡の面積を持ち、人口密度の低さと小規模県の特性が顕著に表れています。中山間地域が多く効率的な行政サービス提供が課題となっています。
地域別の特徴分析
関東地方では、東京都、神奈川県、埼玉県(6位、91,389億円)、千葉県(7位、81,537億円)、茨城県(14位、61,108億円)と軒並み上位にランクインしています。首都圏の人口集積と経済活動の活発さが反映されており、地方交付税制度における財政需要の地域集中が顕著です。
近畿地方では、大阪府に続いて兵庫県(8位、80,836億円)、京都府(19位、50,427億円)が続いています。関西圏の都市部への人口集中により、比較的高い基準財政需要額を示しています。
北海道は単独で3位の高位置にあり、広域分散型の地理的特性による特殊な財政需要構造を示しています。面積要因による道路整備、冬季対策などの北海道特有の行政需要が大きく影響しています。
中部地方では、愛知県が4位と高位置にある一方、静岡県(13位、61,625億円)、新潟県(15位、56,693億円)が中位に位置し、地域内での格差が見られます。
中国・四国地方では、広島県(18位、51,406億円)が最上位となっていますが、全体的に中位から下位に集中しており、特に四国4県は香川県(46位)、徳島県(44位)、高知県(42位、25,901億円)、愛媛県(35位、32,175億円)と相対的に低い水準となっています。
九州・沖縄地方では、福岡県(9位、77,932億円)が地域の中核として高い水準を示していますが、他の県は中位から下位に分散しており、地域内格差が大きくなっています。
格差や課題の考察
最上位の東京都(210,910億円)と最下位の鳥取県(19,721億円)の間には約10.7倍の格差が存在しています。これは主として人口規模の差(約25倍)が主要因となっていますが、面積要因や都市機能の集積度なども影響しています。
偏差値で見ると、東京都の96.7から鳥取県の42.0まで54.7ポイントの差があり、統計的にも極めて大きな格差となっています。この格差は人口の東京一極集中という日本の構造的課題を反映したものです。
地方交付税制度は、この基準財政需要額と基準財政収入額の差額を基に交付税額を決定するため、基準財政需要額の格差は直接的に地方財政の格差につながります。小規模県では効率的な行政運営や広域連携による課題解決が重要となっています。
また、人口減少社会の進展により、特に下位県では今後さらなる基準財政需要額の縮小が予想され、行政サービスの維持・向上に向けた効率化や選択と集中が求められています。
統計データの詳細分析
平均値57,651億円に対して中央値47,735億円となっており、平均値が中央値を大きく上回っています。これは東京都をはじめとする上位県の数値が極めて大きく、分布が正の方向に大きく歪んでいることを示しています。
標準偏差は39,042億円と平均値の約68%に相当する大きな値となっており、都道府県間の格差が極めて大きいことが統計的に確認されます。この大きなばらつきは、人口規模や地理的条件の違いが財政需要に与える影響の大きさを示しています。
第1四分位点35,013億円から第3四分位点70,354億円までの四分位範囲は35,341億円となっており、中央50%の県でもこれだけの格差が存在しています。特に東京都(210,910億円)は第3四分位点の約3倍の値を示し、明確な外れ値となっています。
この分布特性は、日本の地方財政制度における構造的な課題を数値的に表現したものであり、地方交付税による財政調整機能の重要性を裏付けています。
まとめ
- 東京都が210,910億円で圧倒的な1位を占め、人口集中と都市機能の複雑さが反映されている
- 上位は関東地方の都府県が占め、首都圏への人口・経済機能の集中が顕著に表れている
- 北海道は人口規模以上に広域性による行政需要が大きく、地理的要因の影響が顕著である
- 下位県は人口50万~100万人規模の県が中心で、鳥取県が最下位となっている
- 最大格差は約10.7倍に達し、人口の地域偏在が財政需要格差の主要因となっている
- 四国地方の4県すべてが下位20位以内に位置し、地域的な課題が浮き彫りになっている
今後は人口減少社会の進展により、特に地方部での基準財政需要額のさらなる縮小が予想されます。効率的な行政運営と広域連携による課題解決、デジタル技術を活用した行政サービスの効率化などが重要な政策課題となっており、継続的な動向監視が必要です。