都道府県別基準財政収入額ランキング(2021年度)
概要
基準財政収入額とは、地方交付税制度において各都道府県が標準的な行政運営を行うために見込まれる収入額を示す指標です。主に地方税収入や地方譲与税などを基に算定され、地方交付税の配分を決定する重要な要素となっています。
2021年度のデータを見ると、東京都が194,885億円と圧倒的な数値を示し、2位の愛知県との間にも2倍以上の大きな格差が生じています。首都圏と大都市圏に基準財政収入額が集中する一方で、地方部では厳しい財政状況が浮き彫りになっており、最上位と最下位の間には約40倍の格差が存在しています。
この指標は各都道府県の税収基盤の強弱を表すものであり、地域経済の活力や財政の自立度を測る重要な尺度として機能しています。
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上位5県の詳細分析
東京都が194,885億円(偏差値102.7)で圧倒的な1位を獲得しています。首都機能の集中により、法人税収や個人住民税収が突出して高く、全国の約4分の1に相当する基準財政収入額を計上しています。金融・商業・サービス業の中心地として、税収基盤が極めて強固であることが数値に表れています。
愛知県は81,078億円(偏差値67.2)で2位となっています。自動車産業を中心とした製造業の集積により、法人関係税収が安定して高水準を維持しており、中部地方の経済拠点としての地位を財政面からも裏付けています。
大阪府は80,698億円(偏差値67.1)で3位に位置し、愛知県とはわずか380億円の僅差となっています。関西経済圏の中心として商業・サービス業が発達し、人口規模と経済活動の活発さが基準財政収入額に反映されています。
神奈川県は76,254億円(偏差値65.7)で4位を確保しています。東京都に隣接する地理的優位性を活かし、住宅地としての発展と企業立地が進んでおり、安定した税収基盤を築いています。
埼玉県は65,300億円(偏差値62.3)で5位となっています。首都圏のベッドタウンとしての機能に加え、製造業の立地も進んでおり、人口増加と経済活動の拡大が基準財政収入額の押し上げ要因となっています。
下位5県の詳細分析
佐賀県は7,270億円(偏差値44.2)で43位となっています。農業を基盤とした経済構造で、製造業の集積が限定的であることが税収基盤の弱さにつながっています。人口規模も全国下位レベルにあり、基準財政収入額の押し上げ要因が少ない状況です。
徳島県は6,537億円(偏差値43.9)で44位に位置しています。四国地方の中でも人口減少が進んでおり、主要産業の規模が限定的であることが財政収入の制約要因となっています。地理的な制約もあり、大規模な企業立地が困難な状況が続いています。
島根県は5,841億円(偏差値43.7)で45位となっています。中国山地に位置する地理的条件と人口の少なさが税収基盤の制約となっており、第1次産業の比重が高い産業構造が基準財政収入額の低さの要因となっています。
高知県は5,789億円(偏差値43.7)で46位に位置しています。四国地方の中でも特に人口減少と高齢化が進んでおり、経済規模の縮小が基準財政収入額に直接的に影響しています。地理的な条件も企業立地の制約となっています。
鳥取県は4,827億円(偏差値43.4)で最下位の47位となっています。全国最少の人口規模に加え、大規模な製造業の立地が限定的であることが、基準財政収入額の低さの主要因となっています。農林業中心の産業構造が税収基盤の制約要因となっています。
地域別の特徴分析
関東地方では、東京都を中心とした首都圏への一極集中が顕著に表れています。上位10位以内に東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県が名を連ね、経済活動の集中が基準財政収入額にも明確に反映されています。茨城県、栃木県、群馬県も相対的に上位に位置し、首都圏の経済圏拡大の恩恵を受けています。
中部地方では愛知県が突出しており、製造業を中心とした産業集積の効果が表れています。静岡県も上位に位置する一方、内陸部の県では相対的に低い数値となっており、沿岸部と内陸部での格差が見られます。
近畿地方では大阪府を筆頭に、兵庫県、京都府が上位グループを形成しています。関西経済圏の中核として、商業・サービス業の集積が基準財政収入額を押し上げています。
九州・沖縄地方では福岡県が地域の中心的地位を占める一方、他の県では全国平均を下回る県が多く、地域内格差が大きくなっています。特に離島を抱える県では地理的制約が財政収入に影響しています。
中国・四国地方では全般的に基準財政収入額が低水準にあり、人口減少と産業空洞化の影響が財政面にも表れています。広島県が地域内では相対的に高い水準を保っていますが、全国的には中位レベルにとどまっています。
北海道・東北地方では北海道が地域内では最上位に位置するものの、全国的には中位レベルとなっています。東北各県は軒並み全国平均を下回っており、人口流出と産業基盤の弱さが課題となっています。
格差や課題の考察
最上位の東京都(194,885億円)と最下位の鳥取県(4,827億円)の間には約40.4倍の格差が存在し、地域間の財政力格差の深刻さが浮き彫りになっています。この格差は人口規模の違いだけでなく、経済活動の集中度、産業構造の違い、企業立地の偏在などが複合的に作用した結果といえます。
首都圏への一極集中が基準財政収入額の分布にも明確に反映されており、東京都とその周辺県が上位を独占する構造となっています。この状況は、地方における税収基盤の脆弱性と、地方交付税への依存度の高さを示しています。
地方における基準財政収入額の低さは、公共サービスの提供水準や地域振興への投資余力に直接的な影響を与える可能性があり、人口減少と経済活動の縮小という負のスパイラルを加速させるリスクを含んでいます。
統計データの基本情報と分析
統計分析の結果、平均値と中央値の間に大きな乖離が見られ、データ分布が東京都を頂点とした極端な右偏りの構造を示しています。東京都の数値が突出しているため、全体の平均値が中央値を大幅に上回る結果となっています。
標準偏差の大きさは都道府県間の格差の激しさを統計的に裏付けており、基準財政収入額における地域間格差が全国的な課題であることを数値で示しています。四分位範囲の分析からも、上位25%の都道府県と下位25%の都道府県の間に大きな開きがあることが確認できます。
東京都は明らかな外れ値として位置しており、この1都の存在が全体の分布特性に大きな影響を与えています。東京都を除いた場合の分析も有用であり、より実態に即した地域比較が可能になると考えられます。
まとめ
- 東京都が圧倒的な1位で、首都機能集中の効果が財政収入にも明確に表れている
- 上位は首都圏と大都市圏が占め、製造業や商業・サービス業の集積が高い基準財政収入額につながっている
- 下位県は人口規模の小ささと産業基盤の制約が共通の課題となっている
- 地域ブロック間の格差が大きく、特に中国・四国・九州地方で低水準の県が集中している
- 最上位と最下位の40倍を超える格差は、地方財政制度における構造的課題を示している
今後は人口減少社会の進展により、地方部の基準財政収入額のさらなる減少が懸念されます。地域経済の活性化と税収基盤の強化に向けた取り組みが急務であり、継続的なモニタリングを通じて地域間格差の推移を注視していく必要があります。