2021年、サービス業(3次活動)に従事する女性の1日あたりの平均労働時間は、愛媛県で308分と最も長く、島根県と福井県では259分と最も短い結果となり、その差は49分に及びました。この時間は、単に労働の長さを示すだけでなく、各地域の産業構造、女性の就業形態、そしてワークライフバランスの実態を映し出す指標です。本記事では、このデータから日本の女性の働き方の地域差とその背景を読み解きます。
概要
3次活動とは、商業、金融、医療、福祉、教育など、形のないサービスを提供する産業全般を指します。現代の日本経済において、女性の就業者の多くがこの分野で活躍しています。この平均時間という指標は、地域の経済活動の活発さや、女性がどのような雇用形態(正規・非正規)で働いているかを間接的に示しています。時間が長い地域は、観光業が盛んであったり、専門職に従事する女性が多かったりする傾向があり、逆に短い地域は、製造業が中心であったり、パートタイムで働く女性が多いといった特徴が見られます。
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上位5県の詳細分析(労働時間が長い)
1位:愛媛県
愛媛県は308分(偏差値74.9)と、全国で最も長い労働時間を記録しました。県庁所在地の松山市に商業・サービス機能が集中しており、そこでフルタイムで働く女性が多いことが一因と考えられます。また、道後温泉などの観光地を抱え、宿泊・飲食サービス業での労働時間が長くなる傾向もあります。
2位:北海道
北海道は301分(偏差値68.2)で2位。広大な土地に観光資源が点在し、観光シーズンには宿泊業や飲食サービス業が繁忙期を迎えます。札幌市という大都市を抱え、金融やITなどの専門サービス業に従事する女性も多く、全体の平均時間を押し上げています。
3位:神奈川県、福岡県
神奈川県と福岡県は296分(偏差値63.3)で同率3位。両県ともに大都市を抱え、高度な専門サービス業が集積しています。神奈川は東京との、福岡はアジアとの結びつきが強く、金融、IT、国際ビジネスなどの分野で活躍する女性が多いことが、労働時間の長さに繋がっています。
5位:和歌山県
和歌山県は295分(偏差値62.4)で5位。高野山や熊野古道、白浜といった全国的に有名な観光地を抱え、観光関連産業に従事する女性の労働時間が長いことが影響していると考えられます。大阪へのアクセスも良く、サービス業が比較的盛んな地域です。
下位5県の詳細分析(労働時間が短い)
46位:島根県、福井県
島根県と福井県は259分(偏差値27.6)で、最も労働時間が短い結果となりました。両県に共通するのは、製造業が比較的盛んであり、女性がパートタイムで働く割合が高いことです。特に福井県は、繊維や眼鏡といった地場産業で働く女性が多く、家庭との両立を重視した短時間勤務が一般的である可能性があります。
45位:長野県
長野県は263分(偏差値31.5)で45位。精密機械などの製造業が盛んな一方で、農業や観光業も重要な産業です。しかし、観光業は季節性が高く、年間を通じた安定したフルタイム雇用に繋がりにくいことが、平均時間を押し下げる一因と考えられます。
44位:青森県
青森県は267分(偏差値35.3)で44位。農業や漁業といった第一次産業の比重が高く、サービス業の規模が比較的小さいことが背景にあります。また、冬季の積雪など、気候的な要因がサービス業の活動を制約する側面もあります。
43位:滋賀県
滋賀県は269分(偏差値37.3)で43位。大手製造業の工場が多く立地し、第二次産業が盛んな地域です。また、京都や大阪への通勤者も多く、県内のサービス業で働く女性の労働時間が比較的短くなる傾向があると考えられます。
社会的・経済的影響
女性の3次活動における労働時間の地域差は、女性の経済的自立度や、地域の産業構造の多様性を反映しています。労働時間が長い地域は、女性が管理職や専門職として活躍している可能性が高い一方、長時間労働が常態化し、ワークライフバランスにしわ寄せがきている危険性もはらんでいます。
逆に、労働時間が短い地域は、女性が家庭や育児と仕事を両立しやすい環境であると好意的に解釈できる一方で、非正規雇用が多く、女性が経済的に不安定な立場に置かれやすいという課題も浮かび上がります。また、サービス産業の発展が遅れていることの表れでもあり、地域経済の活力不足に繋がる可能性も指摘できます。この指標は、単に時間の長短だけでなく、その背景にある雇用の「質」を読み解くことが重要です。
対策と今後の展望
すべての女性が、希望する働き方を選択できる社会を築くことが最終的な目標です。労働時間が長い地域では、長時間労働の是正や、男性の育児参加を促すことで、女性の負担を軽減し、持続可能な働き方を実現する必要があります。同一労働同一賃金の徹底も重要です。
労働時間が短い地域では、女性がより長く、そしてより専門的な分野で働けるような機会を創出することが課題です。リスキリング(学び直し)支援の充実や、女性の起業支援、そして保育サービスの拡充などを通じて、女性がキャリアを中断することなく働き続けられる環境を整えることが求められます。地域の産業構造そのものを、より付加価値の高いサービス産業へと転換していく視点も不可欠です。
指標 | 値分 |
---|---|
平均値 | 282.2 |
中央値 | 282 |
最大値 | 308(愛媛県) |
最小値 | 259(福井県) |
標準偏差 | 10.4 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2021年の女性の3次活動平均時間は、地域ごとの産業構造と女性の働き方の実態を鮮明に映し出しました。愛媛や北海道のように、観光業などが盛んで労働時間が長くなる地域がある一方で、福井や島根のように、製造業が中心でパートタイム労働が多いと推測される地域もありました。このデータは、女性の活躍を推進するためには、画一的な政策ではなく、各地域の産業や文化に根差した、きめ細やかなアプローチが必要であることを示唆しています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (分) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 愛媛県 | 308 | 74.9 | -0.7% |
2 | 北海道 | 301 | 68.2 | -4.4% |
3 | 神奈川県 | 296 | 63.3 | -0.3% |
4 | 福岡県 | 296 | 63.3 | +3.1% |
5 | 和歌山県 | 295 | 62.4 | -6.3% |
6 | 東京都 | 294 | 61.4 | -1.7% |
7 | 埼玉県 | 293 | 60.4 | -3.0% |
8 | 千葉県 | 293 | 60.4 | -0.7% |
9 | 岐阜県 | 292 | 59.5 | -2.0% |
10 | 山口県 | 292 | 59.5 | -8.5% |
11 | 静岡県 | 290 | 57.5 | -1.0% |
12 | 大阪府 | 290 | 57.5 | -4.6% |
13 | 香川県 | 289 | 56.6 | -4.0% |
14 | 愛知県 | 288 | 55.6 | -6.2% |
15 | 群馬県 | 287 | 54.6 | -1.7% |
16 | 奈良県 | 287 | 54.6 | -1.7% |
17 | 鳥取県 | 287 | 54.6 | -2.0% |
18 | 大分県 | 287 | 54.6 | -5.6% |
19 | 石川県 | 286 | 53.7 | -1.7% |
20 | 兵庫県 | 283 | 50.8 | -6.0% |
21 | 宮城県 | 282 | 49.8 | -2.1% |
22 | 福島県 | 282 | 49.8 | -1.7% |
23 | 新潟県 | 282 | 49.8 | -2.8% |
24 | 京都府 | 282 | 49.8 | -0.3% |
25 | 高知県 | 282 | 49.8 | -5.4% |
26 | 熊本県 | 281 | 48.8 | -2.8% |
27 | 栃木県 | 280 | 47.9 | -5.4% |
28 | 富山県 | 280 | 47.9 | +0.4% |
29 | 山梨県 | 280 | 47.9 | -3.1% |
30 | 岡山県 | 279 | 46.9 | -4.1% |
31 | 鹿児島県 | 279 | 46.9 | -8.8% |
32 | 茨城県 | 278 | 46.0 | -5.4% |
33 | 三重県 | 278 | 46.0 | -5.8% |
34 | 広島県 | 278 | 46.0 | -5.1% |
35 | 秋田県 | 277 | 45.0 | -1.1% |
36 | 徳島県 | 277 | 45.0 | -6.7% |
37 | 宮崎県 | 277 | 45.0 | -5.5% |
38 | 山形県 | 275 | 43.1 | +1.5% |
39 | 長崎県 | 272 | 40.2 | -5.6% |
40 | 佐賀県 | 271 | 39.2 | -2.2% |
41 | 岩手県 | 270 | 38.2 | +1.9% |
42 | 沖縄県 | 270 | 38.2 | -0.7% |
43 | 滋賀県 | 269 | 37.3 | -5.6% |
44 | 青森県 | 267 | 35.3 | +0.4% |
45 | 長野県 | 263 | 31.5 | -7.1% |
46 | 福井県 | 259 | 27.6 | -3.4% |
47 | 島根県 | 259 | 27.6 | -6.2% |