2021年、仕事についていない女性が学習や趣味、ボランティアといった「3次活動」に費やす時間は、福島県で平均479分(約8時間)と最も長く、奈良県では424分(約7時間)と最も短い結果となりました。この「55分」の差は、単なる時間の長短ではなく、地域の文化的な豊かさ、コミュニティの結束力、そして女性が社会とどう関わっているかを示す重要な指標です。この記事では、無業女性の時間の使い方から、地域の特性と生活の質を読み解きます。
概要
3次活動とは、仕事や家事といった義務的な活動以外の、自己投資や社会貢献、娯楽など、個人の裁量で使える時間を指します。無業の女性がこの時間をどう使っているかは、その地域の生涯学習の機会、文化施設の充実度、そして住民同士の交流の活発さを反映します。時間が長い地域は、女性が社会的に孤立せず、生きがいを持って活動できる環境が整っていることを示唆します。2021年のデータでは、東日本や日本海側の県で時間が長く、大都市圏のベッドタウンで短い傾向が見られました。
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上位5県の詳細分析(活動時間が長い)
1位:福島県
福島県は479分(偏差値71.4)と、全国で最も長い活動時間を記録しました。東日本大震災からの復興過程で、地域コミュニティの再生や、住民同士の支え合いを目的とした活動が活発化したことが大きな要因と考えられます。NPOやボランティア団体による多様な活動が、女性の社会参加の受け皿となっています。
2位:北海道
北海道は477分(偏差値69.7)で2位。広大で豊かな自然を活かしたガーデニングやスポーツ、アート活動が盛んです。また、冬が長く室内で過ごす時間が多いため、地域の公民館やカルチャーセンターでの学習活動や趣味のサークル活動が活発に行われています。
3位:富山県
富山県は476分(偏差値68.9)で3位。「生涯学習県」を標榜し、県民カレッジなど、住民が学び続けられる機会が非常に充実しています。伝統工芸や地域の歴史・文化に根差した活動も多く、女性の知的好奇心を満たす環境が整っています。
4位:鳥取県
鳥取県は473分(偏差値66.5)で4位。人口規模が小さい分、住民同士の顔が見える関係が築きやすく、地域のイベントやボランティア活動への参加率が高いことが特徴です。行政と住民の距離が近く、多様な社会参加の機会が提供されています。
5位:山形県
山形県は471分(偏差値64.8)で5位。四季の移ろいがはっきりしており、季節ごとの自然を活かした活動や、地域の伝統文化を継承する活動が盛んです。地域コミュニティの結束が強く、女性が主体となった活動が数多く存在します。
下位5県の詳細分析(活動時間が短い)
47位:奈良県
奈良県は424分(偏差値26.5)と、全国で最も活動時間が短い結果でした。大阪のベッドタウンとしての性格が強く、地域内での活動よりも大阪方面へ買い物や娯楽を求める人が多いことが一因と考えられます。地域コミュニティとの接点が希薄になりがちな、都市近郊の課題を象徴しています。
46位:滋賀県
滋賀県は427分(偏差値29.0)で46位。奈良県と同様、京阪神のベッドタウンであり、県外への流動人口が多いことが影響しています。県内に大規模な製造業の工場が多く、夫の勤務形態などが妻の生活時間にも影響を与えている可能性があります。
45位:福井県
福井県は431分(偏差値32.2)で45位。共働き率が全国トップクラスであり、「無業者」の定義に当てはまる女性が比較的少ない、あるいは高齢の専業主婦が多いといった人口構成が影響している可能性があります。仕事と家庭の両立で、自身の3次活動に割く時間が限られている状況がうかがえます。
43位:埼玉県、鹿児島県
埼玉県と鹿児島県は435分(偏差値35.5)で同率43位。埼玉県は典型的な首都圏のベッドタウンであり、地域活動への参加が低調になる傾向があります。鹿児島県は、離島や中山間地域を多く抱え、社会活動に参加するための物理的なアクセスに課題があることが一因と考えられます。
社会的・経済的影響
無業女性の3次活動時間は、その地域の「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」の豊かさを示す指標とも言えます。活動時間が長く、社会参加が活発な地域では、住民同士の信頼関係や互助の精神が育まれ、防犯や防災、子育て支援といった面で地域全体の力が高まります。これは、行政サービスだけではカバーしきれない、きめ細やかなセーフティネットの構築に繋がります。
逆に、活動時間が短い地域は、住民が社会的に孤立しやすい環境にあることを示唆しています。特に高齢女性の一人暮らしが増加する中で、社会との接点が失われることは、心身の健康悪化や、孤独死のリスクを高める要因となります。女性が生き生きと社会参加できる環境は、個人の生活の質を高めるだけでなく、地域社会全体の持続可能性にとっても不可欠です。
対策と今後の展望
女性の社会参加を促進するためには、多様な「居場所」と「出番」を提供することが重要です。公民館や図書館といった既存の施設を、単なる場所の提供だけでなく、住民が主体的に活動を企画・運営できるような「地域活動の拠点」として再定義していく必要があります。
また、大都市のベッドタウンでは、地域への帰属意識を高めるための工夫が求められます。地元の歴史や文化を学ぶ機会の提供や、新旧住民が交流できるイベントの開催などを通じて、「寝に帰るだけの街」から「愛着を持って関わる街」へと意識を変えていくことが重要です。子育て世代の女性が、子どもを連れて気軽に参加できるようなプログラムの充実は、特に効果的でしょう。すべての女性が、そのライフステージに応じて社会と繋がり続けられる環境づくりが、今後の課題です。
指標 | 値分 |
---|---|
平均値 | 452.8 |
中央値 | 453 |
最大値 | 479(福島県) |
最小値 | 424(奈良県) |
標準偏差 | 12.3 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2021年の無業女性の3次活動時間は、地域のコミュニティのあり方や、住民の生活の質を映し出す興味深いデータでした。福島や東北地方のように、震災からの復興などを通じて地域の結束が強まった地域で活動時間が長い一方、奈良や滋賀のような大都市近郊のベッドタウンで短いという傾向は、現代社会が抱える課題を象徴しています。女性が生きがいを持って地域社会で活躍できる環境をいかに作るか。それは、地域の未来の豊かさを左右する重要な鍵と言えるでしょう。
順位↓ | 都道府県 | 値 (分) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 福島県 | 479 | 71.4 | -0.8% |
2 | 北海道 | 477 | 69.7 | +0.4% |
3 | 富山県 | 476 | 68.9 | +0.4% |
4 | 鳥取県 | 473 | 66.5 | -1.1% |
5 | 山形県 | 471 | 64.8 | +1.1% |
6 | 新潟県 | 465 | 60.0 | -2.3% |
7 | 徳島県 | 465 | 60.0 | +0.2% |
8 | 熊本県 | 464 | 59.1 | -0.8% |
9 | 宮城県 | 462 | 57.5 | +3.1% |
10 | 大阪府 | 462 | 57.5 | +1.3% |
11 | 広島県 | 462 | 57.5 | +4.5% |
12 | 島根県 | 460 | 55.9 | +2.5% |
13 | 香川県 | 460 | 55.9 | +3.4% |
14 | 長崎県 | 460 | 55.9 | -5.7% |
15 | 秋田県 | 458 | 54.2 | +1.6% |
16 | 岐阜県 | 458 | 54.2 | +3.4% |
17 | 愛媛県 | 457 | 53.4 | -5.4% |
18 | 石川県 | 456 | 52.6 | -0.4% |
19 | 三重県 | 456 | 52.6 | +1.1% |
20 | 青森県 | 454 | 51.0 | -2.2% |
21 | 東京都 | 454 | 51.0 | +3.4% |
22 | 沖縄県 | 454 | 51.0 | +0.7% |
23 | 群馬県 | 453 | 50.2 | +3.7% |
24 | 佐賀県 | 453 | 50.2 | -3.2% |
25 | 大分県 | 453 | 50.2 | -1.5% |
26 | 岩手県 | 452 | 49.4 | - |
27 | 静岡県 | 452 | 49.4 | -1.9% |
28 | 岡山県 | 450 | 47.7 | -1.8% |
29 | 宮崎県 | 449 | 46.9 | -4.5% |
30 | 京都府 | 448 | 46.1 | -0.4% |
31 | 高知県 | 448 | 46.1 | -3.2% |
32 | 福岡県 | 448 | 46.1 | -1.5% |
33 | 栃木県 | 447 | 45.3 | -2.2% |
34 | 千葉県 | 447 | 45.3 | +0.5% |
35 | 和歌山県 | 447 | 45.3 | -5.5% |
36 | 茨城県 | 446 | 44.5 | -1.8% |
37 | 神奈川県 | 446 | 44.5 | +0.2% |
38 | 山口県 | 446 | 44.5 | -2.6% |
39 | 長野県 | 444 | 42.8 | +0.9% |
40 | 山梨県 | 442 | 41.2 | - |
41 | 兵庫県 | 438 | 38.0 | -4.2% |
42 | 愛知県 | 437 | 37.1 | -4.4% |
43 | 埼玉県 | 435 | 35.5 | -1.8% |
44 | 鹿児島県 | 435 | 35.5 | -3.8% |
45 | 福井県 | 431 | 32.2 | -4.2% |
46 | 滋賀県 | 427 | 29.0 | -4.3% |
47 | 奈良県 | 424 | 26.5 | -5.4% |