2021年、仕事についていない男性が学習や趣味、ボランティアといった「3次活動」に費やす時間は、北海道で平均617分(約10時間17分)と最も長く、長野県では547分(約9時間7分)と最も短い結果となりました。この約70分の差は、特に定年退職後の男性の生活の質(QOL)や、地域の社会参加の機会のあり方を映し出す重要なデータです。本記事では、無業男性の時間の使い方から、超高齢社会における男性の生きがいと地域の役割を考察します。
概要
3次活動とは、仕事や家事などを除く、個人の裁量で使える自由な時間活動を指します。無業の男性、特にリタイア後の高齢者にとって、この時間をいかに有意義に過ごすかは、健康寿命の延伸や社会的孤立の防止に直結する重要な課題です。この指標は、地域の生涯学習施設や文化・スポーツ施設の充実度、さらにはシニア世代が参加しやすい地域コミュニティの活力を示しています。時間が長い地域は、男性が定年後も社会との繋がりを保ち、生き生きと暮らせる環境が整っていることを示唆します。
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上位5県の詳細分析(活動時間が長い)
1位:北海道
北海道は617分(偏差値74.4)と、全国で最も長い活動時間を記録しました。広大な自然を活かした釣りやゴルフ、登山といった趣味に没頭する人が多いことが一因です。また、冬は家で過ごす時間が長くなるため、読書や模型作り、アマチュア無線といったインドアでの趣味活動も盛んであると推測されます。
2位:愛媛県
愛媛県は614分(偏差値72.6)で2位。温暖な気候の中、地域の祭りやイベントへの参加、ボランティア活動などが活発です。地域コミュニティの結束が強く、リタイア後も地元の活動に積極的に関わる男性が多いことが、この結果に繋がっていると考えられます。
3位:神奈川県
神奈川県は602分(偏差値65.3)で3位。首都圏にありながら、海や山といった自然にも恵まれています。多彩な文化施設や生涯学習の機会が豊富で、都市的な趣味と自然の中での活動を両立できる環境が、活動時間を押し上げています。
4位:富山県
富山県は597分(偏差値62.3)で4位。持ち家率が高く、庭いじりや日曜大工といった家を中心とした活動に時間を費やす人が多い可能性があります。また、地域の伝統工芸や文化活動に触れる機会も多く、知的な探求に時間を使う層も厚いと考えられます。
5位:岐阜県
岐阜県は595分(偏差値61.1)で5位。豊かな自然環境を活かした渓流釣りや山菜採りなど、里山での活動が盛んです。また、歴史的な街並みも多く、地域の歴史研究や文化財保護のボランティアなどに参加する人も少なくありません。
下位5県の詳細分析(活動時間が短い)
47位:長野県
長野県は547分(偏差値31.9)と、全国で最も活動時間が短い結果でした。農業県であり、無業者であっても農作業を手伝うなど、完全に仕事から離れているわけではない男性が多いことが一因と考えられます。「休みなく働く」という勤勉な県民性が、3次活動の時間を短くしているのかもしれません。
46位:島根県
島根県は549分(偏差値33.1)で46位。人口減少と高齢化が著しく、地域活動の担い手不足が深刻です。活動したくても、参加できるイベントやサークル自体が少ないという、社会的なインフラの問題が背景にある可能性があります。
45位:宮城県
宮城県は551分(偏差値34.3)で45位。東日本大震災からの復興過程で、生活の再建に時間を要した人が多かったことや、今なお仮設住宅などで不自由な生活を送る人がいることが影響している可能性があります。
44位:高知県
高知県は553分(偏差値35.5)で44位。飲酒にかける時間が全国トップクラスであり、それが他の3次活動の時間を圧迫しているという、ユニークな可能性が考えられます。人との交流を重視する文化が、特定の活動に時間を集中させているのかもしれません。
42位:鹿児島県
鹿児島県は554分(偏差値36.1)で42位。離島や中山間地域が多く、文化施設や社会活動の場へのアクセスが容易でないことが、活動時間を制約している一因と考えられます。
社会的・経済的影響
無業男性の3次活動時間は、個人の生きがいだけでなく、地域社会の活力にも深く関わっています。活動時間が長い地域では、シニア世代が持つ知識や経験が、ボランティアや地域活動を通じて社会に還元されています。これは、地域の文化継承や、次世代の育成にも繋がり、世代間の交流を促進します。
逆に、活動時間が短い地域では、リタイア後の男性が社会的に孤立し、引きこもりがちになるリスクが高まります。これは、本人の心身の健康を損なうだけでなく、介護費の増大など、社会保障コストの増加にも繋がります。男性が定年後も生き生きと暮らせる「サードプレイス(家庭でも職場でもない第3の居場所)」をいかに提供できるかが、地域社会の持続可能性を左右すると言えるでしょう。
対策と今後の展望
無業男性、特にリタイア後の男性の社会参加を促すためには、彼らの興味や関心に合わせた多様な選択肢を用意することが重要です。従来の囲碁や将棋といった趣味だけでなく、ITスキルを活かせるプログラミング教室や、地域の課題解決に取り組むNPO活動、孫世代と交流できるイベントなど、新たな「出番」を創出していく必要があります。
また、現役時代から、仕事以外の世界に目を向けることを奨励する企業文化の醸成も不可欠です。趣味や地域活動への参加を促す福利厚生や、定年後のセカンドキャリアを見据えた研修などを通じて、男性が円滑に地域社会に軟着陸できるよう支援することが求められます。男性自身も、「会社の肩書」がなくなった後の人生をどう豊かに生きるか、主体的に考える意識改革が必要です。
指標 | 値分 |
---|---|
平均値 | 576.8 |
中央値 | 578 |
最大値 | 617(北海道) |
最小値 | 547(長野県) |
標準偏差 | 16.4 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2021年の無業男性の3次活動時間は、リタイア後の男性の生き方の地域性を浮き彫りにしました。北海道のように豊かな自然の中で趣味に生きるライフスタイルがある一方で、長野のように勤勉さからなかなか仕事から離れられない文化も垣間見えました。このデータは、超高齢社会を迎えた日本において、男性が定年後もいかに社会との繋がりを保ち、生きがいを持って暮らしていけるかという、大きな課題を私たちに突きつけています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (分) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 北海道 | 617 | 74.4 | +2.1% |
2 | 愛媛県 | 614 | 72.6 | +5.3% |
3 | 神奈川県 | 602 | 65.3 | +0.5% |
4 | 富山県 | 597 | 62.3 | +3.3% |
5 | 岐阜県 | 595 | 61.1 | -0.5% |
6 | 福岡県 | 594 | 60.4 | +1.9% |
7 | 石川県 | 593 | 59.8 | -0.5% |
8 | 福島県 | 591 | 58.6 | +3.0% |
9 | 茨城県 | 589 | 57.4 | -0.8% |
10 | 長崎県 | 589 | 57.4 | -3.8% |
11 | 岡山県 | 588 | 56.8 | +1.0% |
12 | 広島県 | 588 | 56.8 | +0.7% |
13 | 東京都 | 587 | 56.2 | +2.8% |
14 | 鳥取県 | 587 | 56.2 | -2.3% |
15 | 山口県 | 587 | 56.2 | +1.2% |
16 | 愛知県 | 586 | 55.6 | -0.7% |
17 | 和歌山県 | 586 | 55.6 | -2.7% |
18 | 徳島県 | 586 | 55.6 | -0.3% |
19 | 沖縄県 | 584 | 54.4 | -1.7% |
20 | 千葉県 | 582 | 53.1 | -1.0% |
21 | 青森県 | 580 | 51.9 | -2.9% |
22 | 群馬県 | 579 | 51.3 | +0.9% |
23 | 京都府 | 578 | 50.7 | +0.5% |
24 | 大阪府 | 578 | 50.7 | -3.7% |
25 | 静岡県 | 577 | 50.1 | -3.4% |
26 | 兵庫県 | 577 | 50.1 | -2.7% |
27 | 秋田県 | 576 | 49.5 | -3.2% |
28 | 大分県 | 575 | 48.9 | -1.5% |
29 | 三重県 | 574 | 48.3 | -5.1% |
30 | 岩手県 | 573 | 47.7 | +1.4% |
31 | 奈良県 | 571 | 46.5 | -0.5% |
32 | 栃木県 | 570 | 45.8 | -2.6% |
33 | 埼玉県 | 570 | 45.8 | -0.7% |
34 | 新潟県 | 565 | 42.8 | -2.4% |
35 | 宮崎県 | 565 | 42.8 | -3.9% |
36 | 滋賀県 | 564 | 42.2 | -0.2% |
37 | 山形県 | 560 | 39.8 | -0.2% |
38 | 佐賀県 | 560 | 39.8 | -2.3% |
39 | 福井県 | 557 | 37.9 | -2.5% |
40 | 熊本県 | 557 | 37.9 | -5.6% |
41 | 山梨県 | 555 | 36.7 | -3.5% |
42 | 香川県 | 554 | 36.1 | -1.1% |
43 | 鹿児島県 | 554 | 36.1 | -3.0% |
44 | 高知県 | 553 | 35.5 | -6.6% |
45 | 宮城県 | 551 | 34.3 | -8.0% |
46 | 島根県 | 549 | 33.1 | -3.2% |
47 | 長野県 | 547 | 31.9 | -2.3% |