2022年、都道府県の総面積のうち、固定資産税の課税対象となる土地の割合(評価総地積割合)は、千葉県が68.6%で最も高く、山梨県が29.4%で最も低いという結果になりました。この指標は、その土地がどれだけ「経済活動の対象」となっているかを示すバロメーターであり、平野の広さや都市化の度合い、そして山林の多さといった、各地域の地理的・経済的な個性を色濃く反映しています。
概要
評価総地積割合は、都道府県の土地利用の集約度を示す指標です。この割合が高い県は、平野部が多く、農地や宅地として利用されている土地が多いことを意味します。これは、固定資産税の課税基盤が広いことを示唆しますが、同時に、自然のままの土地が少ないという側面も持ち合わせています。逆に、割合が低い県は、山岳地帯や森林が多く、国土の保全や水源の涵養といった公益的な役割を担っている一方で、税収基盤が脆弱であるという課題を抱えています。このデータは、開発と環境保全のバランスを考える上で重要な示唆を与えてくれます。
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上位5県の詳細分析(割合が高い)
1位:千葉県
千葉県は68.6%と、全国で最も評価総地積割合が高い県です。広大な関東平野の一部をなし、農地や宅地の割合が高いことが最大の要因です。東京のベッドタウンとして開発が進んだエリアと、豊かな農業地帯が共存しており、土地の多くが経済活動に利用されています。
2位:茨城県
茨城県は68.2%で2位。千葉県と同様に関東平野に位置し、平坦な土地が広がっています。農業が非常に盛んであり、広大な畑地が課税対象となっているほか、工業団地の開発も進んでいます。
3位:佐賀県
佐賀県は64.5%で3位。九州最大の平野である佐賀平野が県の面積の多くを占め、そのほとんどが優良な農地として利用されています。土地利用の集約度が非常に高い地域です。
4位:香川県
香川県は62.5%で4位。日本で最も面積の小さい県ですが、讃岐平野を中心に土地の高度利用が進んでいます。ため池が多いことでも知られ、水を有効活用しながら農業が行われてきました。
5位:埼玉県
埼玉県は59.6%で5位。首都圏の一角をなし、宅地化が著しく進んでいます。荒川流域の低地を中心に、農地も多く残されており、土地の利用密度が高いのが特徴です。
下位5県の詳細分析(割合が低い)
47位:山梨県
山梨県は29.4%と、全国で最も評価総地積割合が低い県です。富士山や南アルプス、八ヶ岳など、日本を代表する山々に囲まれており、県の面積の約78%を森林が占めています。これらの多くが国立公園や保安林に指定されており、課税対象外となっています。
46位:富山県
富山県は32.0%で46位。立山連峰をはじめとする北アルプスの険しい山々が県土の多くを占めています。急峻な地形が多いため、開発可能な土地が限られています。
45位:宮崎県
宮崎県は32.7%で45位。九州山地が県の中央部を縦断し、広大な森林が広がっています。林業が盛んですが、これらの山林の多くは評価総地積には含まれません。
44位:京都府
京都府は33.3%で44位。京都市内は盆地で都市化が進んでいますが、北部の丹後地方や東部の山間部など、県全体で見ると山林の割合が高いことが、この順位に繋がっています。
43位:長野県
長野県は34.2%で43位。「日本の屋根」と称される通り、3,000m級の山々が連なる山岳県です。県の面積に占める森林の割合は約79%に達し、国土保全上重要な役割を担っています。
社会的・経済的影響
評価総地積割合は、地方自治体の財政力と密接に関わっています。割合が高い地域は、固定資産税の課税対象となる土地が広いため、安定した税収を見込みやすいという利点があります。これは、道路や学校、福祉施設といった住民サービスの充実に繋がります。
しかし、その一方で、割合が低い山岳県は、豊かな自然環境や水源を守るという、国民全体にとって重要な公益的機能を果たしています。この「見えない価値」は、固定資産税という形では評価されにくいため、財政的には不利な立場に置かれがちです。この構造的な不均衡をどう是正していくかは、日本の地方財政における長年の課題です。
対策と今後の展望
森林環境税・森林環境譲与税の導入は、評価総地積割合が低い山間部の自治体の財政を支援し、環境保全の価値を経済的に評価する重要な一歩です。今後は、こうした仕組みをさらに発展させ、国土保全に貢献する地域が正当に評価されるような制度設計が求められます。
また、人口減少社会においては、土地の「所有」から「利用」へと価値観の転換が必要です。評価総地積割合が高い地域でも、空き家や耕作放棄地は増加しています。これらの土地を、地域の資源としていかに有効活用していくか。例えば、再生可能エネルギー施設や、新たな観光資源として再生する取り組みなどが考えられます。土地の多面的な価値を見出し、持続可能な形で活用していく知恵が、すべての地域で問われています。
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まとめ
2022年度の評価総地積割合は、平野が多く都市化や農業利用が進む県で高く、山林がちな県で低いという、日本の地理的特徴を明確に示しました。この指標は、単に土地利用の現状を示すだけでなく、地方財政の構造的な課題や、開発と環境保全のバランスという、日本が抱える根源的なテーマを映し出しています。各地域が自らの土地の特性を強みとして活かし、持続可能な社会を築いていくための、基礎的なデータと言えるでしょう。
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