2022年、固定資産税の課税対象となる土地の総面積(評価総地積)は、北海道が約272億平方メートルと他を圧倒して1位、大阪府が約8.9億平方メートルで最も小さいという結果になりました。この約30.7倍という差は、単なる土地の広さだけでなく、各都道府県の財政基盤や土地利用のあり方を考える上で重要な示唆を与えています。本記事では、この「評価総地積」という指標から、日本の国土の多様性と地域が抱える課題を読み解きます。
概要
評価総地積とは、宅地、田、畑、山林など、固定資産税が課されるすべての土地の面積を合計したものです。これは、地方自治体にとって最も重要な税収源の一つである固定資産税の「課税ベース」の大きさを示す指標と言えます。面積が広いだけでなく、その土地がどのように利用されているか(都市的利用か、農林業的利用か)が、この数値に大きく影響します。ランキングを見ると、広大な農地や山林を持つ地方の県が上位を占め、都市化が進んだ都府県が下位にくるという、日本の国土利用の縮図が明確に表れています。
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上位5県の詳細分析(面積が広い)
1位:北海道
北海道は272億2749万平方メートルと、2位の岩手県に約3.5倍の差をつける圧倒的な広さです。広大な農地、牧草地、山林がこの数値の大部分を占めており、日本の食料自給率を支える重要な役割を担っています。この広大な土地が、北海道の財政と産業の基盤となっています。
2位:岩手県
岩手県は77億6596万平方メートルで2位。県の面積の大部分を山地が占め、豊富な森林資源を背景に林業が盛んです。また、北上川流域には広大な農地が広がり、農業も重要な産業です。
3位:福島県
福島県は59億6636万平方メートルで3位。浜通り、中通り、会津という異なる特徴を持つ3つの地域からなり、多様な土地利用がなされています。農業が盛んなほか、阿武隈高地や奥羽山脈など広大な山林を抱えています。
4位:新潟県
新潟県は49億2896万平方メートルで4位。日本有数の米どころである越後平野をはじめ、広大な水田地帯が評価総地積を押し上げています。農業利用されている土地の面積が非常に大きいのが特徴です。
5位:鹿児島県
鹿児島県は49億2076万平方メートルで5位。広大な畑作地帯や畜産用地に加え、多くの離島を有していることが、総地積の大きさに繋がっています。多様な地理的条件が、多様な土地利用を生んでいます。
下位5県の詳細分析(面積が狭い)
47位:大阪府
大阪府は8億8582万平方メートルと、全国で最も評価総地積が小さい結果となりました。面積自体が狭いことに加え、そのほとんどが宅地や商業地として高密度に利用されており、農地や山林が極めて少ないことが要因です。
46位:東京都
東京都は10億2209万平方メートルで46位。大阪府と同様、高度に都市化が進んでおり、課税対象となる土地の大部分が宅地で占められています。土地の単価は日本一ですが、面積としては非常にコンパクトです。
45位:沖縄県
沖縄県は10億2903万平方メートルで45位。多くの島々から構成される島嶼県であり、物理的な土地面積が限られていることが、この順位に直結しています。
44位:香川県
香川県は11億7377万平方メートルで44位。もともと日本で最も面積の小さい県であり、評価総地積もそれに比例して小さくなっています。限られた土地を効率的に利用する土地利用が進んでいます。
43位:神奈川県
神奈川県は12億4037万平方メートルで43位。東京に隣接する大都市圏であり、宅地化が著しく進んでいます。山林も一部残されていますが、都市的土地利用の割合が非常に高いのが特徴です。
社会的・経済的影響
評価総地積は、地方自治体の財政力に直結する重要な指標です。固定資産税は市町村の主要な自主財源であり、その税収の大きさは、住民が受ける行政サービスの質に影響します。しかし、評価総地積が広いからといって、必ずしも税収が豊かであるとは限りません。土地の評価額(単価)が大きく関わるためです。
例えば、評価総地積が小さい東京都や大阪府は、土地の単価が極めて高いため、固定資産税収は全国トップクラスです。逆に、広大な山林や原野を抱える北海道や岩手県は、評価総地積は大きいものの、土地単価が低いため、面積の割には税収が伸び悩むという構造的な課題を抱えています。この「面積」と「価値」の乖離が、地方財政の地域間格差を生む大きな要因の一つとなっています。
対策と今後の展望
人口減少と高齢化が進む中、日本の土地利用は大きな転換期を迎えています。評価総地積が広い地方では、管理が行き届かない「所有者不明土地」の増加が深刻な問題となっています。今後は、土地の所有権のあり方を見直すとともに、広大な土地を再生可能エネルギーの発電用地や、新たな産業用地として活用していく視点が重要になります。
一方、評価総地積が狭い都市部では、限られた土地のさらなる有効活用が求められます。容積率の緩和などを通じた土地の立体的な利用や、老朽化したインフラの再整備(再開発)が不可欠です。また、リモートワークの普及を背景に、都市部から地方への人の流れを創出し、国土全体のバランスの取れた土地利用を目指す動きも加速するでしょう。評価総地積という指標は、そうした未来の国土計画を考える上での基礎データとなります。
指標 | 値m² |
---|---|
平均値 | 3,467,482,068.7 |
中央値 | 2,933,197,383 |
最大値 | 27,227,493,671(北海道) |
最小値 | 885,818,772(大阪府) |
標準偏差 | 3,791,719,211.3 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2022年度の評価総地積ランキングは、日本の各都道府県が持つ土地という資源の大きさとその特性を明確に示しました。北海道の圧倒的な広さから、大阪府のコンパクトさまで、その規模の違いは各地域の財政や産業のあり方を規定しています。しかし、重要なのは面積の大小そのものではなく、その土地をいかに有効に、そして持続可能な形で活用していくかです。人口減少という大きな時代の変化の中で、日本の国土の価値を未来に向けてどう高めていくか、私たちの知恵が問われています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (m²) | 偏差値 | 前回比 |
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1 | 北海道 | 27,227,493,671 | 112.7 | -0.1% |
2 | 岩手県 | 7,765,956,656 | 61.3 | -0.0% |
3 | 福島県 | 5,966,356,845 | 56.6 | +0.1% |
4 | 新潟県 | 4,928,959,580 | 53.9 | -0.0% |
5 | 鹿児島県 | 4,920,756,337 | 53.8 | +0.0% |
6 | 長野県 | 4,644,559,620 | 53.1 | -0.1% |
7 | 岐阜県 | 4,487,521,097 | 52.7 | +0.0% |
8 | 秋田県 | 4,321,090,066 | 52.3 | -0.0% |
9 | 広島県 | 4,185,599,491 | 51.9 | - |
10 | 茨城県 | 4,158,908,269 | 51.8 | -0.1% |
11 | 岡山県 | 4,107,831,728 | 51.7 | -0.1% |
12 | 静岡県 | 4,076,876,364 | 51.6 | -0.0% |
13 | 兵庫県 | 3,954,371,575 | 51.3 | +0.1% |
14 | 熊本県 | 3,944,938,610 | 51.3 | -0.0% |
15 | 青森県 | 3,941,241,249 | 51.2 | - |
16 | 宮城県 | 3,724,078,428 | 50.7 | -0.1% |
17 | 千葉県 | 3,538,985,578 | 50.2 | +0.4% |
18 | 山形県 | 3,522,427,890 | 50.1 | +0.1% |
19 | 山口県 | 3,462,067,958 | 50.0 | +0.1% |
20 | 島根県 | 3,349,372,028 | 49.7 | +0.1% |
21 | 高知県 | 3,279,065,640 | 49.5 | +0.1% |
22 | 愛媛県 | 3,250,404,520 | 49.4 | +0.0% |
23 | 栃木県 | 3,141,812,124 | 49.1 | -0.1% |
24 | 大分県 | 2,933,197,383 | 48.6 | -0.2% |
25 | 福岡県 | 2,767,949,018 | 48.2 | +0.1% |
26 | 三重県 | 2,722,143,726 | 48.0 | -0.0% |
27 | 愛知県 | 2,629,902,747 | 47.8 | -0.1% |
28 | 宮崎県 | 2,525,892,172 | 47.5 | -0.1% |
29 | 群馬県 | 2,428,106,603 | 47.3 | -0.1% |
30 | 和歌山県 | 2,406,121,004 | 47.2 | +0.9% |
31 | 埼玉県 | 2,263,525,571 | 46.8 | -0.0% |
32 | 長崎県 | 2,051,596,199 | 46.3 | -0.0% |
33 | 徳島県 | 1,784,018,904 | 45.6 | +0.3% |
34 | 石川県 | 1,599,944,936 | 45.1 | -0.0% |
35 | 佐賀県 | 1,575,102,135 | 45.0 | -0.1% |
36 | 滋賀県 | 1,558,642,857 | 45.0 | -0.1% |
37 | 京都府 | 1,534,242,905 | 44.9 | - |
38 | 福井県 | 1,516,760,869 | 44.9 | -0.1% |
39 | 鳥取県 | 1,375,136,974 | 44.5 | +0.3% |
40 | 奈良県 | 1,374,476,743 | 44.5 | - |
41 | 富山県 | 1,359,713,692 | 44.4 | - |
42 | 山梨県 | 1,313,429,108 | 44.3 | -0.1% |
43 | 神奈川県 | 1,240,374,533 | 44.1 | -0.0% |
44 | 香川県 | 1,173,766,503 | 44.0 | -0.1% |
45 | 沖縄県 | 1,029,026,772 | 43.6 | -0.0% |
46 | 東京都 | 1,022,091,779 | 43.6 | -0.1% |
47 | 大阪府 | 885,818,772 | 43.2 | +0.1% |