2020年、日本の完全失業率は、沖縄県で5.5%と最も高く、島根県では2.7%と最も低い結果となりました。この約2倍の差は、単に人口規模の違いだけでなく、各地域の産業構造や、新型コロナウイルス感染症が雇用に与えた影響の度合いを色濃く反映しています。本記事では、このデータから日本の雇用情勢の地域差とその背景を読み解きます。
概要
完全失業率とは、労働力人口(就業者と完全失業者の合計)に占める完全失業者の割合を指します。この指標は、地域の雇用状況や経済の健全性を示す重要な指標であり、特に2020年度はコロナ禍の影響により、多くの地域で失業率が上昇した時期でもあります。ランキングを見ると、観光業やサービス業の比重が高い地域で高く、製造業や公務員などの安定した雇用が多い地域で低いという明確な傾向が見られます。これは、コロナ禍の影響が産業構造によって異なったことを示唆しています。
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上位5県の詳細分析(完全失業率が高い)
1位:沖縄県
沖縄県は5.5%と、全国で最も高い完全失業率でした。観光業が主要産業であるため、コロナ禍による観光客の激減が雇用に壊滅的な影響を与えました。また、若年層の就業機会が限られていることや、非正規雇用の比率が高いことも、高い失業率の要因となっています。
2位:青森県、福岡県
青森県と福岡県は4.6%で同率2位。青森県は第一次産業の比重が高く、季節的な雇用変動が大きいことに加え、若年層の就業機会が限られています。福岡県は九州最大の都市圏を抱え、サービス業や小売業の比率が高く、コロナ禍の影響を受けやすかったと考えられます。
4位:大阪府
大阪府は4.5%で4位。東京都と同様に、商業や観光といったサービス産業の比重が高く、コロナ禍の影響を強く受けました。特に、飲食店の時短営業やイベントの中止が、多くの失業者を生み出しました。
5位:宮城県
宮城県は4.3%で5位。東北地方最大の都市である仙台市を抱え、サービス業の比率が高いことが、コロナ禍の影響を受けやすかった要因です。東日本大震災からの復興需要が一段落し、建設業などでの雇用が減少したことも影響しています。
下位5県の詳細分析(完全失業率が低い)
47位:島根県
島根県は2.7%と、全国で最も低い完全失業率でした。公務員や医療・福祉関係の雇用の比率が高く、これらの分野では雇用の安定性が高いことが特徴です。また、人口減少により労働力人口自体が少ないため、労働力需給が逼迫している可能性もあります。
46位:福井県
福井県は2.9%で46位。繊維産業や眼鏡産業といった地場産業が発達しており、雇用の安定性が高い県です。女性の就業率が高いことも特徴で、多様な働き方が失業率を低く抑える要因となっています。
44位:富山県、三重県
富山県と三重県は3.1%で同率44位。両県ともに製造業が盛んであり、特に富山県は医薬品産業、三重県は自動車関連産業が発達しています。これらの産業は、コロナ禍の影響を比較的受けにくかったと考えられます。
41位:長野県、岐阜県、愛知県
長野県、岐阜県、愛知県は3.3%で同率41位。長野県と岐阜県は製造業の比率が高く、愛知県は自動車産業を中心とした製造業が盛んです。これらの地域は、コロナ禍の影響を比較的受けにくかったと考えられます。
社会的・経済的影響
完全失業率の地域差は、地域経済の活力と住民の生活の質に大きな影響を与えます。失業率が高い地域では、消費活動が低迷し、税収の減少、そして社会保障費の増大といった問題に直面します。特に、長期失業者が増加すると、個人のスキル低下や社会からの孤立が進み、再就職がさらに困難になるという悪循環に陥る危険性があります。
一方で、失業率が低い地域は、安定した雇用が確保されているため、消費活動も活発であり、地域経済の持続的な成長が期待できます。しかし、労働力不足が深刻化する可能性もあり、特に若年層の県外流出が続けば、地域の産業を支える担い手がいなくなり、地域経済の持続可能性が脅かされます。
対策と今後の展望
コロナ禍からの経済回復が進む中、完全失業者への再就職支援は喫緊の課題です。特に、観光業やサービス業から他産業への転職を希望する人に対しては、リスキリング(学び直し)支援や、職業訓練の機会を充実させる必要があります。また、デジタル化やグリーン化といった新たな成長分野での雇用創出を加速させることも重要です。
地方においては、テレワークの普及を追い風に、都市部からの人材誘致を進めることが期待されます。地方の豊かな自然環境や、生活コストの安さを魅力に、都市部の企業に勤務しながら地方で暮らすという新しい働き方を支援することで、地方の労働力不足を解消し、地域経済を活性化させることができます。すべての人が、希望する働き方を選択できる社会を目指すことが、今後の大きな課題です。
指標 | 値% |
---|---|
平均値 | 3.8 |
中央値 | 3.8 |
最大値 | 5.5(沖縄県) |
最小値 | 2.7(島根県) |
標準偏差 | 0.5 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2020年度の完全失業率ランキングは、コロナ禍が日本の雇用情勢に与えた影響と、地域ごとの産業構造や人口規模が失業率にどう影響したかを明確に示しました。沖縄県や青森県のように観光業や第一次産業の比重が高い地域で失業率が高かった一方、島根県や福井県のように製造業や公務員の比率が高い地域で低かったという傾向は、今後の雇用対策を考える上で重要な示唆を与えます。このデータは、単に失業率を減らすだけでなく、すべての人が安心して働き続けられる社会を築くことの重要性を、改めて私たちに教えてくれます。
順位↓ | 都道府県 | 値 (%) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 沖縄県 | 5.5 | 85.1 | -12.7% |
2 | 青森県 | 4.6 | 66.4 | -13.2% |
3 | 福岡県 | 4.6 | 66.4 | -13.2% |
4 | 大阪府 | 4.5 | 64.4 | -15.1% |
5 | 宮城県 | 4.3 | 60.2 | -12.2% |
6 | 北海道 | 4.2 | 58.1 | -8.7% |
7 | 徳島県 | 4.2 | 58.1 | -16.0% |
8 | 大分県 | 4.2 | 58.1 | -6.7% |
9 | 秋田県 | 4.1 | 56.1 | -4.7% |
10 | 福島県 | 4.1 | 56.1 | -6.8% |
11 | 栃木県 | 4.1 | 56.1 | -4.7% |
12 | 京都府 | 4.1 | 56.1 | -6.8% |
13 | 奈良県 | 4.1 | 56.1 | -16.3% |
14 | 高知県 | 4.1 | 56.1 | -16.3% |
15 | 埼玉県 | 4.0 | 54.0 | -7.0% |
16 | 兵庫県 | 4.0 | 54.0 | -13.0% |
17 | 宮崎県 | 4.0 | 54.0 | -13.0% |
18 | 鹿児島県 | 4.0 | 54.0 | -14.9% |
19 | 茨城県 | 3.9 | 51.9 | -13.3% |
20 | 山梨県 | 3.9 | 51.9 | -11.4% |
21 | 和歌山県 | 3.9 | 51.9 | -13.3% |
22 | 熊本県 | 3.9 | 51.9 | -13.3% |
23 | 岩手県 | 3.8 | 49.9 | -5.0% |
24 | 群馬県 | 3.8 | 49.9 | -11.6% |
25 | 千葉県 | 3.8 | 49.9 | -7.3% |
26 | 静岡県 | 3.8 | 49.9 | -5.0% |
27 | 長崎県 | 3.8 | 49.9 | -13.6% |
28 | 神奈川県 | 3.7 | 47.8 | -5.1% |
29 | 愛媛県 | 3.7 | 47.8 | -15.9% |
30 | 東京都 | 3.6 | 45.7 | -7.7% |
31 | 新潟県 | 3.6 | 45.7 | -2.7% |
32 | 岡山県 | 3.6 | 45.7 | -12.2% |
33 | 佐賀県 | 3.6 | 45.7 | -12.2% |
34 | 鳥取県 | 3.5 | 43.7 | -10.3% |
35 | 山口県 | 3.5 | 43.7 | -12.5% |
36 | 香川県 | 3.5 | 43.7 | -12.5% |
37 | 山形県 | 3.4 | 41.6 | -5.6% |
38 | 石川県 | 3.4 | 41.6 | - |
39 | 滋賀県 | 3.4 | 41.6 | -2.9% |
40 | 広島県 | 3.4 | 41.6 | -8.1% |
41 | 長野県 | 3.3 | 39.5 | -2.9% |
42 | 岐阜県 | 3.3 | 39.5 | -2.9% |
43 | 愛知県 | 3.3 | 39.5 | -2.9% |
44 | 富山県 | 3.1 | 35.4 | - |
45 | 三重県 | 3.1 | 35.4 | -8.8% |
46 | 福井県 | 2.9 | 31.2 | -12.1% |
47 | 島根県 | 2.7 | 27.1 | -6.9% |