2021年、10歳以上の住民が年間でボランティア活動に参加した割合は、島根県で25.6%と最も高く、青森県では14.0%と最も低い結果となりました。この約11.6ポイントの差は、単なる活動の多寡ではなく、各地域の社会的な結束力、市民参加の機会、そして地域が抱える課題への意識を色濃く反映しています。本記事では、このデータから日本のボランティア活動の現状と、それが地域に与える影響を読み解きます。
概要
ボランティア活動の年間行動者率は、住民の社会参加の度合いを示す重要な指標です。この数値が高い地域は、地域コミュニティの結束が強く、住民が社会課題の解決に積極的に関わっていることを意味します。2021年のデータでは、島根県、佐賀県、岩手県といった地方の県が上位を占める一方、首都圏や関西圏といった大都市部が下位に位置するという明確な傾向が見られます。これは、都市部における地域コミュニティの希薄化や、個人のライフスタイルの多様化が、ボランティア活動への参加に影響していることを示唆しています。
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上位5県の詳細分析(参加率が高い)
1位:島根県
島根県は25.6%と、全国で最もボランティア活動が活発な県です。人口減少が進む中で、地域コミュニティの結束が強く、互助精神が根付いています。自治体による市民活動支援制度も充実しており、高齢者の社会参加を促進する取り組みも多数行われています。
2位:佐賀県
佐賀県は24.8%で2位。NPO法人数が人口比で多く、県民協働の仕組みが整備されています。教育分野でのボランティア活動も盛んで、地域課題解決型の活動が多いのが特徴です。
3位:岩手県
岩手県は24.4%で3位。東日本大震災後の復興活動が市民参加を促進しました。災害復興を通じた市民意識の向上や、地域防災活動への参加率が高いことが特徴です。世代を超えた協働活動も活発に行われています。
4位:滋賀県
滋賀県は24.2%で4位。琵琶湖の環境保全活動が市民参加の基盤となっています。市民団体と行政の連携が強く、大学生のボランティア参加率も高いのが特徴です。
5位:鳥取県
鳥取県は24.1%で5位。人口規模が小さく、住民同士の結束が強いことが要因です。地域イベントへの住民参加率が高く、少子高齢化対策での協働も活発です。県民活動支援センターの機能も充実しています。
下位5県の詳細分析(参加率が低い)
47位:青森県
青森県は14.0%と、全国で最もボランティア活動の年間行動者率が低い県です。人口減少と高齢化の進行が市民活動にも影響しています。若年層の県外流出により活動の担い手が不足しており、経済的困窮により余裕のある活動参加が困難な状況です。
46位:大阪府
大阪府は14.5%で46位。都市部の特徴として個人的な活動志向が強い傾向があります。商業都市として経済活動が中心であり、地域コミュニティよりも職場での関係性を重視する傾向が見られます。ボランティア活動の情報提供や参加機会が限定的であることも要因です。
45位:千葉県
千葉県は14.9%で45位。東京のベッドタウン機能が強く、通勤時間の長さが地域活動参加の障害となっています。新興住宅地では住民同士のつながりが弱く、地域課題への関心が相対的に低い傾向が見られます。
44位:東京都
東京都は15.5%で44位。都市部特有の個人主義的傾向が見られます。仕事中心のライフスタイルで時間的余裕が不足し、地域との関わりが希薄になりがちです。多様な選択肢があることで特定活動への集中が困難であることも要因です。
43位:埼玉県
埼玉県は15.6%で43位。首都圏のベッドタウンとして通勤者が多いことが影響しています。東京への通勤者が多く地域参加時間が限定的であり、転入者が多く地域コミュニティへの帰属意識が低い傾向が見られます。
社会的・経済的影響
ボランティア活動の年間行動者率の地域差は、地域社会の持続可能性に直結します。活動が活発な地域では、地域課題の早期発見・解決、災害時の相互扶助体制の構築、高齢者の社会参加促進などの効果が期待できます。これは、行政サービスだけではカバーしきれない、きめ細やかなセーフティネットの構築に繋がります。
一方で、活動が低調な地域では、社会の分断化や地域課題の深刻化のリスクがあります。住民同士の繋がりが希薄になり、災害時などの緊急事態への対応力が低下する可能性も指摘されています。ボランティア活動は、単なる善意の行為ではなく、地域社会の「社会関係資本」を育み、地域の活力を高める重要な要素なのです。
対策と今後の展望
ボランティア活動を促進するためには、各地域の特性に応じた多角的なアプローチが必要です。地方では、地域コミュニティの結束力をさらに高めるためのイベント開催や、高齢者が無理なく参加できる活動メニューの提供が有効です。都市部では、働き方改革と連動した「プロボノ活動」(専門性を活かしたボランティア)の推進や、企業による従業員のボランティア活動支援などが期待されます。
また、デジタル技術を活用した新しい参加形態の創出も重要です。オンラインでのボランティア活動や、SNSを活用した情報共有は、時間や場所の制約を克服し、より多くの人々が活動に参加できる機会を提供します。災害ボランティアの経験を活かし、平時からの地域防災活動への参加を促すことも、今後の課題です。
指標 | 値% |
---|---|
平均値 | 19.5 |
中央値 | 19.3 |
最大値 | 25.6(島根県) |
最小値 | 14(青森県) |
標準偏差 | 2.8 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2021年度のボランティア活動年間行動者率ランキングは、日本の地域社会における社会参加の現状を明確に示しました。島根県や佐賀県のように地域コミュニティの結束が強い地方で活動が活発な一方、東京や大阪のような大都市では、都市部特有の課題から活動が低調な傾向が見られます。このデータは、単にボランティアの数を増やすだけでなく、地域社会の持続可能性を高め、すべての住民が社会課題の解決に主体的に関われるような環境を築くことの重要性を、改めて私たちに教えてくれます。
順位↓ | 都道府県 | 値 (%) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 島根県 | 25.6 | 71.3 | -22.7% |
2 | 佐賀県 | 24.8 | 68.5 | -23.9% |
3 | 岩手県 | 24.4 | 67.1 | -19.2% |
4 | 滋賀県 | 24.2 | 66.4 | -28.6% |
5 | 鳥取県 | 24.1 | 66.0 | -25.2% |
6 | 山形県 | 23.6 | 64.3 | -26.5% |
7 | 岡山県 | 23.2 | 62.9 | -24.7% |
8 | 鹿児島県 | 22.3 | 59.7 | -31.6% |
9 | 熊本県 | 22.1 | 59.0 | -32.4% |
10 | 長野県 | 22.0 | 58.6 | -31.9% |
11 | 福井県 | 21.7 | 57.6 | -32.6% |
12 | 岐阜県 | 21.7 | 57.6 | -35.0% |
13 | 山梨県 | 21.1 | 55.5 | -29.0% |
14 | 長崎県 | 21.0 | 55.1 | -24.2% |
15 | 秋田県 | 20.9 | 54.8 | -23.2% |
16 | 宮城県 | 20.7 | 54.1 | -22.5% |
17 | 石川県 | 20.7 | 54.1 | -34.5% |
18 | 大分県 | 20.3 | 52.7 | -31.9% |
19 | 山口県 | 20.1 | 52.0 | -27.7% |
20 | 宮崎県 | 20.1 | 52.0 | -30.9% |
21 | 福島県 | 19.7 | 50.5 | -29.9% |
22 | 愛媛県 | 19.6 | 50.2 | -28.7% |
23 | 富山県 | 19.5 | 49.8 | -39.8% |
24 | 新潟県 | 19.3 | 49.1 | -21.2% |
25 | 三重県 | 19.3 | 49.1 | -33.5% |
26 | 群馬県 | 19.2 | 48.8 | -32.2% |
27 | 福岡県 | 19.1 | 48.4 | -32.0% |
28 | 静岡県 | 18.9 | 47.7 | -35.7% |
29 | 高知県 | 18.9 | 47.7 | -16.4% |
30 | 広島県 | 18.6 | 46.7 | -27.3% |
31 | 奈良県 | 18.5 | 46.3 | -31.0% |
32 | 和歌山県 | 18.2 | 45.3 | -24.8% |
33 | 香川県 | 18.1 | 44.9 | -35.8% |
34 | 兵庫県 | 17.7 | 43.5 | -31.9% |
35 | 徳島県 | 17.4 | 42.4 | -33.6% |
36 | 沖縄県 | 17.4 | 42.4 | -30.7% |
37 | 茨城県 | 17.1 | 41.4 | -34.7% |
38 | 神奈川県 | 17.0 | 41.0 | -33.3% |
39 | 愛知県 | 16.6 | 39.6 | -32.5% |
40 | 京都府 | 16.6 | 39.6 | -32.5% |
41 | 栃木県 | 16.5 | 39.3 | -37.0% |
42 | 北海道 | 16.3 | 38.6 | -27.9% |
43 | 埼玉県 | 15.6 | 36.1 | -35.5% |
44 | 東京都 | 15.5 | 35.8 | -28.2% |
45 | 千葉県 | 14.9 | 33.6 | -40.9% |
46 | 大阪府 | 14.5 | 32.2 | -29.6% |
47 | 青森県 | 14.0 | 30.5 | -37.5% |