サマリー
島根県が25.6%(偏差値71.3)で全国1位、青森県が14.0%(偏差値30.5)で最下位となり、11.6ポイントの大きな地域格差が判明しました。上位5県は地方圏が占める一方、大都市圏は軒並み下位に集中。ボランティア活動の年間行動者率は地域社会の結束力や市民参加度を測る重要な指標です。
概要
ボランティア活動の年間行動者率は、10歳以上の人口に占める年間でボランティア活動を行った人の割合を示します。この指標は社会参加の促進、地域コミュニティの結束、社会課題解決への参画の3つの観点で重要な意味を持ちます。
2021年度の全国平均は**19.2%**で、上位県は地方の県が占める傾向にあります。一方で大都市圏は軒並み下位となっており、都市部と地方部での明確な格差が見られます。
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上位5県の詳細分析
島根県(1位)
島根県は25.6%(偏差値71.3)で全国トップ。地域コミュニティの結束が強く、互助精神が根付いています。
- 人口減少対策としての地域活動が活発
- 自治体による市民活動支援制度が充実
- 高齢者の社会参加を促進する取り組みが多数
佐賀県(2位)
佐賀県は24.8%(偏差値68.5)で2位を獲得。NPO法人数が人口比で多いことが特徴です。
- 県民協働の仕組みが整備されている
- 教育分野でのボランティア活動が盛ん
- 地域課題解決型の活動が多い
岩手県(3位)
岩手県は24.4%(偏差値67.1)で3位。東日本大震災後の復興活動が市民参加を促進しました。
- 災害復興を通じた市民意識の向上
- 地域防災活動への参加率が高い
- 世代を超えた協働活動が活発
滋賀県(4位)
滋賀県は24.2%(偏差値66.4)で4位。琵琶湖の環境保全活動が市民参加の基盤となっています。
- 環境保全活動への住民参加が多い
- 市民団体と行政の連携が強い
- 大学生のボランティア参加率が高い
鳥取県(5位)
鳥取県は24.1%(偏差値66.0)で5位。人口規模が小さく、住民同士の結束が強いことが要因です。
- 地域イベントへの住民参加率が高い
- 少子高齢化対策での協働が活発
- 県民活動支援センターの機能が充実
下位5県の詳細分析
埼玉県(43位)
埼玉県は15.6%(偏差値36.1)で43位。首都圏のベッドタウンとして通勤者が多いことが影響しています。
- 東京への通勤者が多く地域参加時間が限定的
- 転入者が多く地域コミュニティへの帰属意識が低い
- 自治会加入率の低下が市民活動にも影響
東京都(44位)
東京都は15.5%(偏差値35.8)で44位。都市部特有の個人主義的傾向が見られます。
- 仕事中心のライフスタイルで時間的余裕が不足
- 地域との関わりが希薄になりがち
- 多様な選択肢があることで特定活動への集中が困難
千葉県(45位)
千葉県は14.9%(偏差値33.6)で45位。東京のベッドタウン機能が強く、地域参加が限定的です。
- 通勤時間の長さが地域活動参加の障害
- 新興住宅地では住民同士のつながりが弱い
- 地域課題への関心が相対的に低い
大阪府(46位)
大阪府は14.5%(偏差値32.2)で46位。都市部の特徴として個人的な活動志向が強い傾向があります。
- 商業都市として経済活動が中心
- 地域コミュニティよりも職場での関係性を重視
- ボランティア活動の情報提供や参加機会が限定的
青森県(47位)
青森県は14.0%(偏差値30.5)で最下位。人口減少と高齢化の進行が市民活動にも影響しています。
- 若年層の県外流出により活動の担い手が不足
- 経済的困窮により余裕のある活動参加が困難
- 冬季の活動機会が制限されることも要因
地域別の特徴分析
中国・四国地方
島根県(1位)、鳥取県(5位)が上位にランクイン。人口規模が小さく、住民同士の結束が強いことが特徴です。地域課題への共通意識が高く、互助精神が根付いています。山陰地方では特に地域コミュニティの維持・発展のための取り組みが活発で、ボランティア活動がその基盤となっています。
九州地方
佐賀県(2位)を筆頭に、比較的上位県が多い地域です。県民協働の取り組みが各県で進んでおり、市民活動への支援体制が整っています。熊本地震や豪雨災害等の経験により、災害時の相互扶助意識が向上していることも要因の一つです。
東北地方
岩手県(3位)が上位に位置する一方、青森県(47位)が最下位と格差が大きい地域です。東日本大震災の復興過程で市民参加が促進された県と、人口減少・高齢化の影響が深刻な県で明暗が分かれています。
関東地方
首都圏を中心に軒並み下位に集中している地域です。埼玉県(43位)、東京都(44位)、千葉県(45位)が下位5県に含まれ、都市部特有の課題が浮き彫りになっています。通勤時間の長さや地域コミュニティの希薄化が主な要因として挙げられます。
社会的・経済的影響
最上位の島根県(25.6%)と最下位の青森県(14.0%)の間には11.6ポイントの格差があり、これは社会参加度の大きな地域差を示しています。ボランティア活動の活発さは地域社会の持続可能性に直結する重要な指標です。
地域間格差の主な要因として以下が挙げられます:
- 都市部と地方部のライフスタイルの違い
- 地域コミュニティの結束力の格差
- 自治体の市民活動支援体制の差
- 経済的余裕と時間的余裕の地域差
高い参加率を示す地域では、地域課題の早期発見・解決、災害時の相互扶助体制、高齢者の社会参加促進などの効果が期待できます。一方、参加率の低い地域では社会の分断化や地域課題の深刻化のリスクがあります。
対策と今後の展望
上位県の成功事例として、島根県の「しまね県民活動支援センター」による包括的な市民活動支援があります。情報提供から資金援助まで一元的にサポートする体制が効果を上げています。
都市部では働き方改革と連動した「プロボノ活動」の推進が有効です。専門性を活かしたボランティア活動により、短時間でも効果的な社会参加が可能になります。
今後の課題として、デジタル技術を活用した参加機会の拡大、若年層の参加促進、地域特性に応じた活動メニューの開発が重要です。特にオンラインでの参加機会創出により、時間や場所の制約を克服することが期待されます。
統計的には平均値19.2%に対し中央値が19.0%とほぼ同水準で、比較的正規分布に近い形を示しています。ただし、最上位の島根県と最下位の青森県の格差が大きく、地域特性による影響が顕著です。
標準偏差3.4ポイントは適度なばらつきを示しており、極端な外れ値は少ないものの、明確な地域パターンが存在することを示しています。四分位範囲(16.6%~21.8%)に約半数の都道府県が含まれ、この範囲を大きく上回る上位県と下回る下位県で二極化の傾向が見られます。
まとめ
2021年度のボランティア活動年間行動者率分析により、以下の主要な発見が得られました:
- 地方圏と都市圏で明確な格差が存在(最大11.6ポイント差)
- 島根県を筆頭に中国・四国・九州地方が上位を占める
- 首都圏は軒並み下位に集中し都市部特有の課題が浮上
- 地域コミュニティの結束力が参加率に大きく影響
- 自治体の支援体制整備が成功要因の一つ
- 災害経験が市民意識向上につながる事例も確認
今後は各地域の特性を活かした参加促進策の展開と、デジタル技術を活用した新しい参加形態の創出が重要です。継続的なデータ収集により、施策効果の検証と改善を図ることで、より多くの市民が社会参加できる環境整備を進めていく必要があります。地域社会の持続可能性向上のため、官民連携による包括的な取り組みが求められています。