2021年、有業者の女性が仕事に費やす平均時間は、青森県で327分と最も長く、奈良県と京都府では257分と最も短い結果となりました。この70分もの差は、単なる労働時間の違いだけでなく、各地域の産業構造、女性の就業形態、そしてワークライフバランスの実態を色濃く反映しています。本記事では、このデータから日本の女性の働き方の地域差とその背景を読み解きます。
概要
仕事の平均時間(有業者・女)は、有業者の女性が平日1日あたりに仕事に費やす時間の平均値を分単位で表したものです。この指標は、女性の労働環境の実態を把握し、女性活躍推進政策の基礎データとして重要です。2021年のデータでは、第一次産業の比重が高い地域で長く、サービス業が発達した都市部で短い傾向が見られます。これは、地域ごとの産業構造と、それに伴う雇用形態や労働条件の違いを反映しています。
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上位5県の詳細分析(仕事の時間が長い)
1位:青森県
青森県は327分と、全国で最も長い女性の労働時間を記録しています。農業や漁業などの第一次産業が盛んで、季節労働の特性上、繁忙期の労働時間が長くなる傾向があります。また、正社員比率が高く、パートタイム労働者の割合が他地域と比較して低いことも要因の一つです。
2位:岩手県
岩手県は324分で2位。県内の製造業や農業での女性就業者が多く、特に食品加工業や繊維工業での女性労働者の労働時間が長い傾向にあります。震災復興に伴う建設業や関連産業での労働需要増加も影響しています。
3位:島根県
島根県は322分で3位。農業や漁業などの第一次産業に加え、県内の製造業での女性就業者が多いことが特徴です。特に食品製造業や繊維工業での長時間労働が全体の平均を押し上げています。
4位:佐賀県
佐賀県は310分で4位。農業従事者の割合が高く、特に米作や野菜栽培での女性労働者の労働時間が長い傾向にあります。また、製造業では有田焼などの伝統工芸品製造での労働時間も影響しています。
5位:福井県
福井県は308分で5位。繊維工業の発達により、女性の製造業就業者が多く、労働時間が長くなる傾向があります。また、共働き世帯の割合が全国的に高く、正社員として働く女性の割合が高いことも要因です。
下位5県の詳細分析(仕事の時間が短い)
46位:京都府、奈良県
京都府と奈良県は257分で同率46位。両府県ともにサービス業や観光業での女性就業者が多く、これらの産業では比較的短時間労働が一般的です。また、大学や研究機関が多く、高学歴女性の柔軟な働き方が浸透していることも要因です。
45位:滋賀県
滋賀県は259分で45位。関西圏のベッドタウンとしての機能が強く、製造業での女性就業者の割合が比較的高いものの、労働時間の短縮化が進んでいます。ワークライフバランスの改善取り組みが効果を上げています。
44位:埼玉県
埼玉県は264分で44位。東京への通勤圏としての特性上、サービス業や小売業でのパートタイム労働が多く、全体の労働時間を短縮させています。女性の就業形態の多様化が進んでいることも要因です。
43位:神奈川県
神奈川県は266分で43位。首都圏のベッドタウンとしての性格が強く、パートタイム労働者の割合が高いことが主な要因です。また、子育て支援制度の充実により、時短勤務を選択する女性が多いことも影響しています。
社会的・経済的影響
女性の労働時間の地域差は、女性の経済的自立度や、地域の産業構造の多様性を反映しています。労働時間が長い地域は、女性が管理職や専門職として活躍している可能性が高い一方、長時間労働が常態化し、ワークライフバランスにしわ寄せがきている危険性もはらんでいます。これは、女性の健康状態や出生率にも影響を与える可能性があります。
逆に、労働時間が短い地域は、女性が家庭や育児と仕事を両立しやすい環境であると評価できるかもしれませんが、非正規雇用が多く、女性が経済的に不安定な立場に置かれやすいという課題も浮かび上がります。また、サービス産業の発展が遅れていることの表れでもあり、地域経済の活力不足に繋がる可能性も指摘できます。この指標は、単に時間の長短だけでなく、その背景にある雇用の「質」を読み解くことが重要です。
対策と今後の展望
すべての女性が、希望する働き方を選択できる社会を築くことが最終的な目標です。労働時間が長い地域では、長時間労働の是正や、男性の育児参加を促すことで、女性の負担を軽減し、持続可能な働き方を実現する必要があります。同一労働同一賃金の徹底も重要です。
労働時間が短い地域では、女性がより長く、そしてより専門的な分野で働けるような機会を創出することが課題です。リスキリング(学び直し)支援の充実や、女性の起業支援、そして保育サービスの拡充などを通じて、女性がキャリアを中断することなく働き続けられる環境を整えることが求められます。地域の産業構造そのものを、より付加価値の高いサービス産業へと転換していく視点も不可欠です。
指標 | 値分 |
---|---|
平均値 | 289 |
中央値 | 290 |
最大値 | 327(青森県) |
最小値 | 257(京都府) |
標準偏差 | 16.5 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2021年の女性の仕事の平均時間は、地域ごとの産業構造と女性の働き方の実態を鮮明に映し出しました。青森や岩手のように、第一次産業や製造業の比重が高く労働時間が長くなる地域がある一方で、京都や奈良のように、サービス業が中心で短時間労働が多いと推測される地域もありました。このデータは、女性の活躍を推進するためには、画一的な政策ではなく、各地域の産業や文化に根差した、きめ細やかなアプローチが必要であることを示唆しています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (分) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 青森県 | 327 | 73.1 | -2.4% |
2 | 岩手県 | 324 | 71.3 | -3.6% |
3 | 島根県 | 322 | 70.0 | +5.6% |
4 | 佐賀県 | 310 | 62.8 | -2.2% |
5 | 福井県 | 308 | 61.6 | +1.3% |
6 | 富山県 | 307 | 60.9 | -2.5% |
7 | 宮崎県 | 307 | 60.9 | -1.0% |
8 | 福島県 | 304 | 59.1 | -7.6% |
9 | 鳥取県 | 302 | 57.9 | -0.3% |
10 | 徳島県 | 302 | 57.9 | +3.1% |
11 | 長崎県 | 302 | 57.9 | -1.6% |
12 | 山形県 | 300 | 56.7 | -8.8% |
13 | 高知県 | 298 | 55.5 | -2.0% |
14 | 鹿児島県 | 298 | 55.5 | +0.3% |
15 | 熊本県 | 297 | 54.9 | -7.5% |
16 | 石川県 | 296 | 54.3 | +0.7% |
17 | 栃木県 | 295 | 53.7 | +5.4% |
18 | 大分県 | 294 | 53.1 | -2.6% |
19 | 秋田県 | 293 | 52.5 | -7.0% |
20 | 東京都 | 292 | 51.8 | +5.8% |
21 | 山梨県 | 292 | 51.8 | -0.7% |
22 | 宮城県 | 291 | 51.2 | -3.0% |
23 | 茨城県 | 290 | 50.6 | +3.9% |
24 | 長野県 | 290 | 50.6 | -6.8% |
25 | 岐阜県 | 289 | 50.0 | -1.0% |
26 | 北海道 | 288 | 49.4 | -0.3% |
27 | 新潟県 | 288 | 49.4 | -7.4% |
28 | 沖縄県 | 288 | 49.4 | -8.0% |
29 | 広島県 | 287 | 48.8 | +2.1% |
30 | 岡山県 | 283 | 46.4 | -1.7% |
31 | 山口県 | 282 | 45.8 | +1.8% |
32 | 香川県 | 282 | 45.8 | -3.8% |
33 | 愛媛県 | 280 | 44.6 | -2.4% |
34 | 福岡県 | 279 | 44.0 | -6.1% |
35 | 大阪府 | 278 | 43.4 | -1.4% |
36 | 群馬県 | 276 | 42.1 | -6.8% |
37 | 和歌山県 | 276 | 42.1 | -2.1% |
38 | 三重県 | 275 | 41.5 | -2.5% |
39 | 愛知県 | 274 | 40.9 | -1.4% |
40 | 兵庫県 | 273 | 40.3 | -1.4% |
41 | 静岡県 | 272 | 39.7 | -4.9% |
42 | 千葉県 | 267 | 36.7 | -1.8% |
43 | 神奈川県 | 266 | 36.1 | -2.6% |
44 | 埼玉県 | 264 | 34.9 | - |
45 | 滋賀県 | 259 | 31.8 | -12.8% |
46 | 京都府 | 257 | 30.6 | -10.4% |
47 | 奈良県 | 257 | 30.6 | -9.2% |