都道府県別争議行為参加人員ランキング(2022年度)

概要

争議行為参加人員は、ストライキやサボタージュなどの争議行為に参加した労働者の数を示す指標で、労使関係の状況を反映しています。本記事では、2022年度の都道府県別争議行為参加人員のランキングを紹介し、地域間の差異や特徴について分析します。この指標は労働組合の活動状況や労使間の課題の存在を示す一つの目安となり、地域ごとの労使関係の特性を理解する手がかりとなります。

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上位県と下位県の比較

上位県と特徴分析

争議行為参加人員がある都道府県の特徴

東京都560人(偏差値117.2)で全国1位となっています。首都として多くの企業や事業所が集中していることに加え、大規模な労働組合の存在や労働運動の活発さが、争議行為参加人員の多さに影響していると考えられます。また、様々な業種の企業が集積しており、労使間の課題も多様化していることが背景にあるでしょう。

福岡県67人(偏差値56.4)で2位につけています。九州地方の経済の中心地として多様な産業が集積しており、一部の事業所での労働争議が発生したことが影響しています。特に製造業や運輸業などでの労使間の課題が表面化した可能性があります。

宮城県31人(偏差値52.0)で3位となっています。東北地方の中心都市である仙台市を抱え、様々な産業が集積していることが影響していると考えられます。特定の企業や業種での労使間の課題が争議行為につながった可能性があります。

愛知県16人(偏差値50.1)で4位です。自動車産業を中心とした製造業が盛んな愛知県では、一部の事業所での労働争議が発生したことが数値に表れています。大企業の集積地であり、労働組合の活動も比較的活発であることが影響していると考えられます。

茨城県13人(偏差値49.7)で5位となっています。製造業を中心とした産業構造を持つ茨城県では、一部の事業所での労働争議が発生したことが数値に表れています。特に大規模工場や研究施設などでの労使間の課題が影響している可能性があります。

千葉県7人(偏差値49.0)で6位です。京葉工業地帯を抱える千葉県では、製造業を中心に一部の事業所で労働争議が発生したことが数値に表れています。また、首都圏の一角として多様な産業が存在することも影響しているでしょう。

神奈川県静岡県はともに5人(偏差値48.8)で7位タイとなっています。両県とも製造業が盛んであり、一部の事業所での労働争議が発生したことが数値に表れています。特に自動車産業や電機産業などが集積している地域での労使関係の課題が影響している可能性があります。

群馬県2人(偏差値48.4)で9位となっています。製造業を中心とした産業構造を持つ群馬県でも、小規模ながら労働争議が発生したことが数値に表れています。

高知県1人(偏差値48.3)で10位です。規模は小さいものの、特定の事業所での労働争議が発生したことが数値に表れています。

争議行為参加人員がゼロの都道府県

2022年度のデータでは、上記10県以外の37都道府県で争議行為参加人員が0人となっています。これらの地域はすべて11位タイ(偏差値48.1)となっています。

争議行為参加人員が0人の都道府県は、北海道、青森県、岩手県、秋田県、山形県、福島県、埼玉県、栃木県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県です。

これらの地域では、記録に残るような規模の争議行為が発生しなかったことを示しています。争議行為参加人員が0人の要因としては、労使関係が比較的安定していたか、あるいは労働組合の組織率や活動が低調であった可能性が考えられます。また、労使間の課題が存在していても、争議行為以外の方法で解決されたケースも含まれているでしょう。

地域別の特徴分析

都市部の状況

争議行為参加人員は東京都が突出して多く(560人)、他の大都市圏(福岡県、宮城県、愛知県など)でも一定の数値が記録されています。これらの地域は企業数や労働者数が多いため、労働争議が発生する可能性も相対的に高くなります。また、労働組合の組織率や活動の活発さも影響していると考えられます。

特筆すべきは、大阪府で争議行為参加人員が0人となっていることです。関西の経済中心地である大阪府でも2022年度は記録に残るような規模の争議行為が発生しなかったことを示しています。これは労使関係の安定性を示す可能性もありますが、労働組合の活動状況や労使紛争の解決方法の変化なども影響している可能性があります。

地方圏の状況

地方圏では、ほとんどの都道府県で争議行為参加人員が0人となっています。これは、地方では大規模な労働争議が少ないことを示しています。地方の労働市場は都市部と比べて規模が小さく、また労使関係が比較的安定している可能性があります。さらに、労働組合の組織率が低い地域も多く、組織的な争議行為が発生しにくい環境にあると考えられます。

地域ブロック別の特徴

関東地方は東京都(560人)を中心に、茨城県(13人)、千葉県(7人)、神奈川県(5人)、群馬県(2人)と、複数の県で争議行為参加人員が記録されています。一方、東北地方では宮城県(31人)以外はすべて0人、北陸地方ではすべての県で0人、四国地方では高知県(1人)以外はすべて0人となっています。

九州・沖縄地方では福岡県(67人)のみで争議行為参加人員が記録されており、他の県ではすべて0人となっています。中部地方では愛知県(16人)と静岡県(5人)で記録があり、近畿地方ではすべての府県で0人となっています。

これらの地域差は、産業構造や労働市場の特性、労働組合の活動状況などの違いを反映していると考えられます。

格差や課題の考察

東京一極集中の影響

争議行為参加人員においても東京一極集中の傾向が顕著に表れています。東京都の争議行為参加人員(560人)は2位の福岡県(67人)の約8倍、3位の宮城県(31人)の約18倍となっています。この集中は、企業や労働者、労働組合の東京への集中を反映していると考えられます。

また、東京都では多様な業種が存在し、労働条件や労使関係も多様であるため、労働争議が発生する確率も相対的に高くなっている可能性があります。さらに、全国規模の労働組合の本部が東京に集中していることも影響しているでしょう。

労働組合の組織率と活動状況

労働組合の組織率や活動状況は、争議行為参加人員に大きく影響します。組織率が高く、活動が活発な地域では、労働者の権利意識も高く、必要に応じて争議行為という手段を用いることがあります。一方、組織率が低い地域では、労働者の集団的な行動が起こりにくく、争議行為参加人員も少なくなる傾向があります。

日本全体の労働組合組織率は約16%(2022年)と低下傾向にあり、この低い組織率が全体的な争議行為参加人員の少なさに影響している可能性があります。特に中小企業や非正規雇用労働者の組織率は低く、これらの層での労働問題が争議行為という形で表面化しにくい状況にあります。

労働争議の性質の変化

近年、労働争議の性質は変化しており、従来型の大規模なストライキなどの争議行為よりも、個別労働紛争や集団的労使紛争が増加しています。また、労働条件の改善や権利保護のための手段も多様化しており、必ずしも争議行為という形を取らないケースも増えています。

例えば、労働委員会への不当労働行為救済申立や労働審判の利用、あるいは労使協議制度を通じた問題解決などが行われることも多く、これらは統計上の争議行為参加人員には表れません。このような変化も、多くの都道府県で争議行為参加人員がゼロとなっている背景の一つと考えられます。

統計データの基本情報と分析

統計データの分析

平均値と中央値の比較

全国の争議行為参加人員の平均値は約15人ですが、中央値は0人となっています。これは東京都の値(560人)が極めて高く、平均値を大きく引き上げているためです。このような分布は、データが非常に偏っていることを示しています。

分布の歪みと外れ値

東京都の争議行為参加人員(560人)は明らかな外れ値となっています。この値を除くと、他の都道府県の争議行為参加人員は最大でも67人(福岡県)にとどまります。このような極端な分布の歪みは、争議行為参加人員が一部の地域に集中していることを示しています。

四分位範囲による分布の特徴

第1四分位数、中央値、第3四分位数はいずれも0人となっており、全体の78.7%の都道府県(37/47県)で争議行為参加人員が0人となっています。これは、記録に残るような規模の労働争議が多くの地域で発生していないことを示しています。

標準偏差によるばらつきの程度

標準偏差は約81人と非常に大きく、これは東京都の値が他と比べて極端に大きいことを反映しています。このような大きな標準偏差は、データの分布が非常に不均一であることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約540%と極めて高く、データのばらつきの大きさを表しています。

まとめ

2022年度の都道府県別争議行為参加人員ランキングでは、東京都が560人で突出して多く、福岡県(67人)、宮城県(31人)が続いています。一方で、37都道府県では争議行為参加人員が0人となっており、記録に残るような規模の労働争議が発生していないことがわかります。

争議行為参加人員の地域差は、企業や労働者の集中度、労働組合の組織率や活動の活発さ、労使関係の特性など、様々な要因によって影響を受けています。また、近年の労働争議の性質の変化も、この指標に影響を与えている可能性があります。

日本全体としては、争議行為参加人員は少なく、特に地方圏ではほとんど記録されていません。これは労使関係の安定性を示す一面もありますが、労働組合の組織率低下や労働者の権利意識の変化、労働問題解決手段の多様化なども影響していると考えられます。

争議行為参加人員は労使関係の一側面を示す指標ですが、これだけで地域の労働環境や労使関係の良し悪しを判断することはできません。より包括的な理解のためには、労働組合の組織率、個別労働紛争の件数、労働条件の実態など、他の指標と合わせて分析することが重要です。

出典