「いちごの名産地ほど、たくさん食べているはず」——直感的にはそう思えます。ですがデータを開くと、その直感は半分しか当たっていません。
総務省の家計調査(2024年)でいちご消費量(二人以上世帯・1世帯あたり年間、都道府県庁所在地・政令市)を見ると、1位は栃木の3,636gです。これは「とちおとめ」を生んだ日本一の産地なので順当でしょう。ところが、同じく全国有数の生産県である福岡は34位(1,574g)、長崎は27位(1,860g)、さらに熊本は39位、宮崎は41位と、九州のいちご王国がそろって下位に沈んでいます。最下位は沖縄の1,139gで、1位との差は3.19倍にのぼります。
この記事では、いちごの「作る県」と「食べる県」がどこまで一致し、どこからズレるのかを、47都道府県のデータで読み解いていきます。
NOTE
本データは家計調査の「二人以上世帯」を対象とし、調査地点は各都道府県庁所在地および政令指定都市です。県全域の平均ではなく、県庁所在地等の世帯の購入量である点に注意してください(自家消費・贈答は反映されにくい)。
いちご消費量 上位5県と下位5県
上位5県を見ると、1位の栃木(とちおとめ)に続いて、2位の茨城(2,897g)、3位の埼玉(2,833g)、4位の東京(2,588g)、5位の静岡(2,583g)が並びます。栃木と静岡を除けば、産地というより東日本・関東圏の人口集中地域が顔を出しています。九州の有名産地が上位に見当たらないことが、このランキングの最初の違和感です。なお6位以降には大阪(2,513g)・新潟(2,381g)・香川(2,331g)と続き、群馬(9位・2,299g)・千葉(10位・2,298g)まで関東とその周辺が厚く食べています。
いちごの消費量ランキングをもっと見る下位グループはなぜ薄いのか
上のチャート右側に並ぶ下位5県は、徳島1,327g(43位)・滋賀1,319g(44位)・鳥取1,285g(45位)・北海道1,242g(46位)、そして最下位の沖縄1,139g(47位)です。最下位は沖縄の1,139g、次いで北海道(1,242g)、鳥取(1,285g)が続きます。これらの下位グループには、いちごの旬(冬〜春)に別の地元産フルーツやスイーツへ需要が向かいやすい地域が含まれています。果物カテゴリ全体を食べないのではなく、いちご以外の選択肢が豊富な地域ほど、いちごへの支出が相対的に小さくなるという置き換えの構図が読み取れます。とくに北海道や沖縄のように地元産・特産フルーツの存在感が強い地域では、いちごが食卓の主役になりにくいと考えられます。
TIP
「いちごをあまり食べない県」は、果物を食べない県とイコールではありません。果物カテゴリ内での"競合"を意識すると、下位の顔ぶれが読み解けます。地元の旬の果物が豊富な県ほど、いちごの相対的な存在感は下がります。
発見1:九州の有名産地がそろって下位
生産で名高い県(いずれも生産上位)の消費順位を並べると、一致とズレの両方がはっきり見えてきます。
- 栃木:消費1位(3,636g)
- 茨城:消費2位(2,897g)
- 静岡:消費5位(2,583g)
- 長崎:消費27位(1,860g)
- 福岡:消費34位(1,574g)
- 佐賀:消費36位(1,523g)
- 熊本:消費39位(1,409g)
- 宮崎:消費41位(1,385g)
栃木(1位)・茨城(2位)のように「作る県=食べる県」が一致する関東勢に対して、ブランドいちご「あまおう」で知られる福岡は34位(1,574g)、生産上位の**長崎は27位(1,860g)・熊本は39位(1,409g)・宮崎は41位(1,385g)**と、九州のいちご王国がそろって消費の下位に並んでいます。「産地だからよく食べる」だけでは、この逆転は説明できません。
WARNING
ここで使っているのは「県庁所在地等の世帯の購入量(家計調査)」です。福岡・長崎・熊本のような生産県では、出荷の多くが県外(首都圏など)へ向かい、地元では直売・自家消費・もらい物が購入額に表れにくい可能性があります。「地元で食べていない」と断定はできません。
[仮説] 産地でありながら購入量が伸びない県は、生産が「域外出荷型(首都圏向け)」に寄っているためかもしれません。検証するには各県の出荷量に占める県内向け比率と家計調査の購入量を突き合わせる必要があり、本データだけでは確定できません。
発見2:1位と最下位の差は3.19倍
このランキングのもう一つの読みどころは、1位(栃木3,636g)と最下位(沖縄1,139g)の差が3.19倍である点です。栃木のいちご消費は最下位沖縄の3.19倍にのぼり、関東を中心とした「いちごをよく買う地域」と、そうでない地域の差がくっきり出ています。
東日本・関東圏で消費が厚く、九州の産地で薄いという分布は、「産地=消費地」ではなく「大消費地=消費地」という構図を示しています。いちごは全国共通の春の定番でありながら、どれだけ厚く食卓に乗るかには明確な地域差があるといえます。
まとめ
- いちご消費量1位は栃木の3,636g(家計調査・2024年)で、生産・消費ともに日本一の王道でした
- 最下位は沖縄の1,139gで、1位との差は3.19倍でした
- 有名産地の福岡は34位(1,574g)・長崎は27位(1,860g)・熊本は39位・宮崎は41位と、九州のいちご王国がそろって下位に並びました
- 上位は栃木以外でも、茨城・埼玉・東京など関東圏の大消費地が占めました
- 「産地=消費地」ではなく「大消費地=消費地」という構図が見えてきます
データ出典
総務省統計局「家計調査」(2024年、二人以上世帯・都道府県庁所在地および政令指定都市)をもとに、e-Stat 経由で整備したデータを使用しています。値は1世帯あたりの年間いちご購入数量(g)です。