上水道は98%完備、下水道は徳島22%──同じ水インフラで77ポイントの格差が生じた理由

財政
下水道
上水道
インフラ
人口減少

上水道の給水人口比率は全国平均で98%超とほぼ全国民に届いています。しかし下水道は**東京都99.7%に対し徳島県22.3%**──整備水準に77ポイントの差があります。

なぜ同じ「水インフラ」で、これほど整備状況が違うのでしょうか。

NOTE

下水道普及率は、下水道を利用できる区域の人口が総人口に占める割合です。下水道が未整備の地域では、合併処理浄化槽や汲み取り式が使われています。上水道が「送る」インフラであるのに対し、下水道は「集める・処理する」インフラで、管路の敷設コストが地形に大きく左右されます。

上水道と下水道の整備格差──なぜ差がついたのか

上水道給水人口比率・下水道普及率の推移(全国) 出典:e-Stat 社会・人口統計体系(居住)

上水道は高度経済成長期に集中整備され、2023年には98.3%を達成しました。一方、下水道は2016年の78.3%から2021年の80.6%へと緩やかな上昇に留まり、約2割の人口が下水道未整備区域に住んでいます。

上水道と下水道の整備速度が違う理由には、コスト構造の違いがあります。上水道は高所から低所へ水を「送る」ため、重力を活用できます。しかし下水道は汚水を「集めて処理場に運ぶ」ため、管路を密に張り巡らせる必要があり、集落が分散した中山間地域では敷設コストが跳ね上がります。

下水道普及率ランキング──四国4県が揃って全国下位

下水道普及率 都道府県ランキング 出典:e-Stat 社会・人口統計体系(居住)

最下位の徳島県は22.3%。住民の8割近くが下水道を利用できません。28.7%の和歌山県が続きます。

注目すべきは四国4県が揃って全国下位に集中している点です。

都道府県下水道普及率全国順位
徳島県22.3%最下位
高知県42.0%下位
香川県46.3%下位
愛媛県56.4%下位

四国は中山間地域が多く集落が分散しているため、管路敷設コストが高い。加えて合併処理浄化槽の普及が先行した経緯があり、下水道整備のインセンティブが働きにくい構造があります。「合併処理浄化槽がある」→「下水道接続のメリットが薄い」→「整備が後回しになる」という経路依存が続いています。

47都道府県の下水道普及率ランキングをもっと見る

全国マップ──都市圏と地方で明確なコントラスト

下水道普及率 都道府県マップ 出典:e-Stat 社会・人口統計体系(居住)

三大都市圏と日本海側の北陸・北海道が整備済み、四国・九州南部・東北の一部が低普及というコントラストが鮮明です。人口密度が高い地域ほど管路の敷設効率が良く整備が先行しています。

水インフラの「二重の危機」

水道・下水道が直面する問題は普及率の格差だけではありません。整備が進んだ地域では今度は「維持管理コスト」が重くのしかかっています。

危機1: 老朽管更新に130年かかる

高度経済成長期に一斉に敷設された水道管は、耐用年数(40年)を超えるものが急増しています。厚生労働省によると、全国の水道管の約2割がすでに法定耐用年数を超過。現在のペースではすべての管路を更新するのに130年以上かかる計算です。

WARNING

更新が間に合わない間に管路が劣化を続け、漏水や断水リスクが上昇します。2023年以降、各地で老朽管由来の漏水事故が相次いでいますが、修繕費用の確保が追いつかない自治体が増えています。

危機2: 人口減少による「管路の不経済」

人口が減っても管路は縮められません。利用者が減れば1人当たりの維持コストは上昇し、料金値上げ→さらなる人口流出→さらなるコスト上昇という負のスパイラルに陥るリスクがあります。

水道料金の値上げは既に各地で始まっています。山梨県では2023年に平均約30%の値上げが実施され、他の地方自治体でも今後5〜10年での大幅値上げが予定されています。

NOTE

下水道普及率が低い県は「今後新規整備を進めるか合併処理浄化槽で代替するか」の選択を迫られますが、いずれにしても人口減少下での費用負担が課題です。新規整備は将来の維持コストを増やし、未整備のままでは公衆衛生リスクが残ります。

広域連携が問われる

個別の自治体が単独で水インフラを維持することが難しくなる中、広域連携の議論が進んでいます。

複数の市町村が水道事業を統合・広域化することで、管理コストの削減と更新計画の集約が可能になります。国土交通省・厚生労働省は広域化を推進していますが、自治体間の調整は複雑で、進捗は限定的です。民間への事業委託や運営権売却(コンセッション)も選択肢に挙がっていますが、公共インフラとしての位置づけとの兼ね合いで慎重な議論が続いています。

まとめ:整備と維持、2つのフェーズの課題

水道・下水道の格差は2つのフェーズで捉える必要があります。

普及フェーズの格差: 上水道はほぼ完了、下水道は徳島22%〜東京99%の77ポイント差が残る。四国4県の低水準は地形・経路依存による構造的問題。

維持フェーズの課題: 整備済みの地域では老朽管更新(130年超の計画)と人口減少による料金上昇スパイラルが顕在化。財政力が弱い地方ほどこの課題は深刻。

水インフラは「整備すれば終わり」ではなく、整備後の維持管理こそが本当の勝負です。

データ出典

本記事の対象データ: 関連カテゴリ