はじめに
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の新契約保険金支払件数は、各都道府県における交通事故の発生状況や保険請求の実態を示す重要な指標です。この統計は、地域の交通安全対策や自動車利用状況を把握する上で貴重なデータとなります。
2022年度のデータを見ると、都市部を中心とした人口密集地域で件数が多く、地方部では相対的に少ない傾向が見られます。この背景には、人口規模、交通量、都市化の進展度などが影響していると考えられます。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
1位 大阪府:54,698件(偏差値75.7)
大阪府が全国1位となり、54,698件(偏差値75.7)を記録しました。関西圏の中心都市として高い人口密度と交通量を抱える大阪府では、自動車事故の発生件数も必然的に多くなる傾向があります。都市部特有の交通渋滞や複雑な道路構造が、事故リスクを高める要因となっています。
2位 愛知県:54,523件(偏差値75.6)
愛知県は54,523件(偏差値75.6)で2位にランクインしました。自動車産業の中心地として車の普及率が高く、工業地帯への通勤や物流トラックの往来が多いことが、保険金支払件数の多さに影響していると考えられます。
3位 東京都:51,900件(偏差値73.8)
東京都は51,900件(偏差値73.8)で3位となりました。首都圏の中心として膨大な交通量を抱えながらも、公共交通機関の発達により自動車依存度が他の大都市圏と比べて相対的に低いことが、この順位に影響している可能性があります。
4位 埼玉県:44,844件(偏差値69.0)
埼玉県は44,844件(偏差値69.0)で4位にランクインしました。東京都のベッドタウンとしての性格が強く、通勤での自動車利用が多いことが、保険金支払件数の多さにつながっていると考えられます。
5位 福岡県:44,365件(偏差値68.7)
福岡県は44,365件(偏差値68.7)で5位となりました。九州地方の中心都市として、広域からの人や物の流れが集中し、自動車交通量が多いことが影響していると推測されます。
下位5県の詳細分析
47位 島根県:2,423件(偏差値40.2)
島根県が最下位となり、2,423件(偏差値40.2)という結果でした。人口規模の小ささと山間部が多い地理的特性により、交通量そのものが限られていることが、保険金支払件数の少なさの主要因と考えられます。
46位 鳥取県:3,117件(偏差値40.7)
鳥取県は3,117件(偏差値40.7)で46位となりました。全国最少の人口を有する県として、自動車の絶対数が少ないことが、保険請求件数の少なさにつながっています。
45位 高知県:3,176件(偏差値40.7)
高知県は3,176件(偏差値40.7)で45位にランクインしました。四国地方の中でも特に人口減少が進んでいる地域として、交通量の減少が保険金支払件数に反映されています。
44位 秋田県:3,275件(偏差値40.8)
秋田県は3,275件(偏差値40.8)で44位となりました。東北地方の中でも人口減少が著しく、高齢化の進展により自動車利用者数そのものが減少していることが影響していると考えられます。
43位 岩手県:4,581件(偏差値41.7)
岩手県は4,581件(偏差値41.7)で43位にランクインしました。広大な県土を有しながらも人口密度が低く、特に沿岸部では東日本大震災の影響による人口流出も、交通量減少の一因となっている可能性があります。
地域別の特徴分析
首都圏の状況
首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)では、すべての都県が上位にランクインしています。特に埼玉県の4位、千葉県の7位は、東京都への通勤圏としての自動車利用の多さを反映しています。
関西圏の傾向
関西圏では大阪府が1位、兵庫県が8位、京都府が15位となっており、都市部ほど件数が多い傾向が明確に現れています。大阪府の突出した数値は、関西経済圏の中心としての交通集中を示しています。
中部地方の特色
愛知県の2位は特筆すべき結果で、自動車産業の集積地としての特性が明確に現れています。静岡県の10位も、東西交通の要衝としての地理的特性を反映していると考えられます。
地方部の共通点
下位県の多くは人口規模が小さく、山間部や離島を多く抱える地域が目立ちます。これらの地域では、交通量そのものが限られていることが、保険金支払件数の少なさにつながっています。
格差と課題の考察
最上位の大阪府(54,698件)と最下位の島根県(2,423件)の間には約22.6倍の格差が存在します。この格差は単純な人口比以上に大きく、都市部と地方部における交通環境の違いを如実に示しています。
都市部では交通量の多さに伴う事故リスクの高さが課題となる一方で、地方部では高齢化に伴う交通安全対策の重要性が増しています。また、地方部では公共交通機関の減少により、高齢者の自動車依存度が高まっている地域もあり、異なる観点からの交通安全対策が求められています。
統計データの基本情報
統計的分析
2022年度のデータを統計的に分析すると、全国平均は約16,827件となっています。標準偏差が大きく、都市部と地方部の格差が顕著に現れています。
分布の特徴として、上位10県が全体の約55%を占めており、人口集中地域での件数の多さが際立っています。一方で、下位20県の合計でも全体の約15%程度に留まっており、地域間格差の大きさを物語っています。
偏差値の分布を見ると、75以上の高値を示すのは大阪府、愛知県、東京都の3都府県のみで、これらの地域が全国的に見ても特異な数値を示していることがわかります。
四分位範囲による分析では、第1四分位(下位25%)が約6,800件、第3四分位(上位25%)が約18,800件となっており、中央値(約10,200件)よりも平均値が高いことから、上位県の数値が全体を押し上げる右裾の長い分布となっています。
まとめ
2022年度の都道府県別自動車損害賠償責任保険新契約保険金支払件数ランキングは、日本の地域構造と交通事情を反映した結果となりました。大阪府、愛知県、東京都の3大都市圏が上位を独占し、地方部との大きな格差が明確に現れています。
この統計は単なる事故件数ではなく、各地域の経済活動の活発さ、人口集中度、交通インフラの整備状況など、多面的な地域特性を映し出す鏡として機能しています。今後の交通安全対策や地域開発政策を考える上で、重要な基礎データとして活用されることが期待されます。