棒グラフは「1 指標を 47 県で比べる」のが得意でした(Part 3)。ヒートマップは「2 軸 × 時間」を 1 枚に圧縮するのが得意でした(Part 4)。コロプレスは「空間分布」を、散布図は「2 変数の関係」を得意としていました(Part 5・6)。
ではこんな問いに、どのチャートで答えるべきでしょう。
「東京都って結局どんな県なの? 全国と比べて、何が強くて何が弱い?」
棒グラフを 6 枚並べるのは情報の物量で殴る感じで、読み手はすぐ疲れます。テーブルは数字が並ぶだけで「形」が見えません。ここで効くのが レーダーチャート です。1 つの県の特性を 1 枚の多角形で表現し、形の歪み方で「県のキャラクター」を瞬時に伝えられます。
ただしレーダーには 1 つだけ重い宿題があります。軸ごとに単位が違う指標を、同じスケールに揃える「正規化」 です。人口(人)、所得(円)、教育費(円/世帯)、医療費(円/人)、犯罪率(件/千人)、観光客数(人)——単位も桁数もバラバラ。これを 0〜1 にスケールしないと多角形が「ほぼ 1 軸だけ突き出した針」になります。
NOTE
レーダーチャートの「正規化」は単なるスケール変換ではありません。軸ごとの「良し悪しの向き」を揃える作業でもあります。医療費・犯罪率のような「低いほど良い」指標を反転しないまま重ねると、外側に張り出した多角形が「実は悪い県」を表してしまい、図の意味が逆転します。
本記事では、Claude Code に 6 指標 × 47 都道府県のデータを並列取得 → min-max 正規化 → D3 でレーダー描画 までを依頼します。Part 9 のゴールは、東京都と京都府の 2 県を 1 枚のレーダーで重ね描きして「東京と京都ってこんなに性格が違うんだ」と言える状態。所要時間 90 分。コードは Claude Code が書きます。
使う指標と「県の多角的プロフィール」設計
レーダーチャートで一番悩むのが軸の選定です。軸が多すぎる(10 以上)と見づらく、少なすぎる(3 軸以下)と三角形ばかりで個性が出ません。経験則として 5〜8 軸が読める上限 です。
今回は「県の暮らしと経済」を多角的に捉える 6 軸で設計します。
- 人口規模(人口推計・人)— 中立(規模指標)
- 県民所得(県民経済計算・千円/人)— 高い方が良い
- 教育費(家計調査・円/世帯)— 高い方が良い
- 医療費(国民医療費・千円/人)— 低い方が良い(要反転)
- 犯罪率(犯罪統計・件/千人)— 低い方が良い(要反転)
- 観光客数(観光入込客統計・千人/年)— 高い方が良い
ここに 重要なポイント が 2 つあります。
第一に、指標方向の正負を統一する こと。レーダーは「外側に張り出すほど良い」と直感的に読まれるチャートなので、医療費や犯罪率のような「低い方が良い」指標はそのままだと混乱します。正規化のときに 1 から引いて反転 させて、すべての軸を「外側が良い」に揃えます。
第二に、桁数のレンジを揃える こと。人口(百万単位)と犯罪率(10 件単位)を生値のまま重ねたら、人口軸だけが満点に張り付いて他軸が潰れます。これを解決するのが min-max 正規化です。具体的には次の式。
x_normalized = (x - x_min) / (x_max - x_min)
47 都道府県の中での最小値を 0、最大値を 1 にする線形変換です。Claude Code に頼むときも「全 47 県の中での min-max 正規化で 0〜1 にスケール、医療費と犯罪率は 1 から引いて反転」と一文書けば、ロジックを書いてくれます。
Step 1: 6 つの statsDataId を取得 → Claude Code に並列リクエスト
まず 6 指標分の e-Stat 統計表 ID を集めます。連載 Part 2 で作った /search-estat スキルを使うと、Claude Code に対話的に頼めます。
claude
あなた: e-Stat で次の 6 指標について最新年の都道府県別データが取れる
statsDataId を一覧で出して。
1. 人口(人口推計)
2. 1人当たり県民所得(県民経済計算)
3. 1世帯当たり教育費(家計調査)
4. 1人当たり国民医療費
5. 刑法犯認知件数(犯罪統計)
6. 観光入込客数(観光庁観光入込客統計)
Claude: /search-estat スキルで照会します...
| # | 指標 | statsDataId | 最新年 | 補足 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 人口 | 0003448237 | 2024 | 人口推計 |
| 2 | 県民所得 | 0003448900 | 2022 | 名目 |
| 3 | 教育費(家計) | 0002070010 | 2024 | 二人以上世帯 |
| 4 | 国民医療費 | 0003411652 | 2022 | 都道府県別 |
| 5 | 刑法犯認知件数 | 0003445120 | 2024 | 警察庁集計 |
| 6 | 観光入込客数 | 0003200200 | 2023 | 観光庁 |
(※ statsDataId は架空例。実際は最新版を確認してください)
ID が揃ったら、6 リクエストを並列で投げます。Part 1 でも触れた 同時並列 5 本ルール(e-Stat は 10 超で 503 が増える)を守るため、p-limit で concurrency=5 にします。
npm install p-limit
Claude Code に書かせるスクリプトはこんな雰囲気です。
// fetch-six-indicators.mjs
import pLimit from "p-limit";
import fs from "node:fs/promises";
const APP_ID = process.env.ESTAT_APP_ID;
const TARGETS = [
{ key: "population", id: "0003448237", year: "2024" },
{ key: "income", id: "0003448900", year: "2022" },
{ key: "education", id: "0002070010", year: "2024" },
{ key: "medical", id: "0003411652", year: "2022" },
{ key: "crime", id: "0003445120", year: "2024" },
{ key: "tourism", id: "0003200200", year: "2023" },
];
const limit = pLimit(5);
async function fetchOne({ key, id, year }) {
const url = new URL(
"https://api.e-stat.go.jp/rest/3.0/app/json/getStatsData"
);
url.searchParams.set("appId", APP_ID);
url.searchParams.set("statsDataId", id);
url.searchParams.set("limit", "5000");
const res = await fetch(url).then((r) => r.json());
const values = res.GET_STATS_DATA.STATISTICAL_DATA.DATA_INF.VALUE;
const arr = Array.isArray(values) ? values : [values];
// 47 都道府県 × 指定年だけに絞る
const filtered = arr.filter(
(v) => /^\d{2}000$/.test(v["@area"]) && v["@time"].startsWith(year)
);
return [
key,
Object.fromEntries(
filtered.map((v) => [v["@area"], Number(v["$"])])
),
];
}
const results = await Promise.all(
TARGETS.map((t) => limit(() => fetchOne(t)))
);
const merged = Object.fromEntries(results);
await fs.writeFile("six-indicators-raw.json", JSON.stringify(merged, null, 2));
console.log("✓ wrote six-indicators-raw.json");
実行するとこんな JSON が生まれます。
{
"population": {
"01000": 5111000,
"13000": 14086000,
"26000": 2502000,
"47000": 1457000
},
"income": {
"01000": 2830,
"13000": 5780,
"26000": 3210,
"47000": 2390
},
"education": {
"01000": 9800,
"13000": 24500,
"26000": 18700,
"47000": 7200
}
}
Tips: Claude Code に「6 つの JSON を 1 ファイルに merge して、トップレベル key は指標名にして」と頼めば、上の構造を勝手に組み立ててくれます。生 JSON のネスト深くて辛い API ほど、Claude Code に整形を任せる効果が大きいです。
ここまでで「指標 × 都道府県 → 生値」の dict が手元に揃いました。次が本記事の本丸、正規化です。
Step 2: 全県のデータで min-max 正規化(0-1 にスケール)
WARNING
min-max 正規化は 外れ値 1 県で全体が潰れます。47 県中 1 県だけ桁違いに大きい指標(例: 観光客数で沖縄が突出する年)があると、その県だけ 1.0・残りが 0.0〜0.3 に張り付き、レーダーが「ほぼ正多角形 0.1」になって個性が消えます。分布が偏る軸は percentile / log 変換を検討してください(後述)。
正規化の式は冒頭で書いた通りシンプルです。ただし「全 47 県の min/max」を使う ことが重要。1 県だけのデータで正規化してしまうと、その県のなかでの最小最大に張り付いてしまい、全国比較になりません。
Claude Code に頼むときのプロンプトはこう。
あなた: six-indicators-raw.json を読み込んで、各指標について
全 47 都道府県の min-max 正規化を実行して。
ただし以下 2 指標は「低い方が良い」ので 1 から引いて反転して:
- medical (国民医療費)
- crime (刑法犯認知件数)
出力は six-indicators-normalized.json に書き出して、
各県 6 指標の 0〜1 値が並んだ構造にして。
返ってくるスクリプトはおおむねこんな感じになります。
// normalize.mjs
import fs from "node:fs/promises";
const raw = JSON.parse(await fs.readFile("six-indicators-raw.json", "utf8"));
const INVERT = new Set(["medical", "crime"]); // 低い方が良い
const normalized = {};
for (const [indicator, values] of Object.entries(raw)) {
const nums = Object.values(values);
const min = Math.min(...nums);
const max = Math.max(...nums);
const range = max - min || 1; // ゼロ割防止
for (const [area, v] of Object.entries(values)) {
let n = (v - min) / range; // 0..1
if (INVERT.has(indicator)) n = 1 - n; // 反転
if (!normalized[area]) normalized[area] = {};
normalized[area][indicator] = Number(n.toFixed(3));
}
}
await fs.writeFile(
"six-indicators-normalized.json",
JSON.stringify(normalized, null, 2)
);
console.log("✓ wrote six-indicators-normalized.json");
出来上がる JSON は東京と京都を抜粋するとこんな感じ。
{
"13000": {
"population": 1.000,
"income": 1.000,
"education": 0.920,
"medical": 0.780,
"crime": 0.230,
"tourism": 0.860
},
"26000": {
"population": 0.110,
"income": 0.420,
"education": 0.610,
"medical": 0.520,
"crime": 0.510,
"tourism": 1.000
}
}
軸ごとに東京と京都を「生値 → 正規化値」で並べると、上の JSON 抜粋の数字(いずれも本連載の説明用サンプル値)はこう読めます。
- 人口 — 東京 1.00 / 京都 0.11(規模の差が最も大きい軸)
- 県民所得 — 東京 1.00 / 京都 0.42
- 教育費 — 東京 0.92 / 京都 0.61(どちらも高め)
- 医療費(反転後) — 東京 0.78 / 京都 0.52
- 犯罪率(反転後=治安) — 東京 0.23 / 京都 0.51(東京が内側にえぐれる)
- 観光客数 — 東京 0.86 / 京都 1.00(京都が満点)
ここで気づくこと。東京は「経済規模・所得・教育費」で外に張り出すが、犯罪率(反転後 0.23)が内側に深くえぐれている。逆に 京都は「観光」が満点、医療と犯罪が中位、所得規模は控えめ という形。数字だけだとピンと来ない違いが、レーダー化するとシルエットの違いとして一目でわかります。
Tips: 正規化のときに「外れ値が 1 県だけある」場合は要注意。たとえば沖縄の観光客数は閉鎖島嶼の関係で他県と桁が違う年があり、その年は沖縄だけ 1.0、他はほぼ 0 に潰れます。対策は後述の「つまずきポイント」セクションへ。
Step 3: D3 でレーダーチャート(polygon + axes + grid)
D3 でレーダーを描くコアは 極座標変換 です。各軸を中心から等角度で放射状に配置し、その軸上の正規化値を半径として点を打ち、点同士を polygon で結ぶ。書き下すと 60 行ちょいで収まります。
// radar.mjs (D3 v7 想定)
import * as d3 from "d3";
import { JSDOM } from "jsdom";
import fs from "node:fs/promises";
const data = JSON.parse(
await fs.readFile("six-indicators-normalized.json", "utf8")
);
const AXES = [
{ key: "population", label: "人口規模" },
{ key: "income", label: "県民所得" },
{ key: "education", label: "教育費" },
{ key: "medical", label: "医療費(低い方が良)" },
{ key: "crime", label: "治安(犯罪率の逆)" },
{ key: "tourism", label: "観光客数" },
];
const W = 600;
const H = 600;
const R = 220; // 半径
const CX = W / 2;
const CY = H / 2;
const N = AXES.length;
const dom = new JSDOM("<!DOCTYPE html><body></body>");
const body = d3.select(dom.window.document.body);
const svg = body
.append("svg")
.attr("xmlns", "http://www.w3.org/2000/svg")
.attr("width", W)
.attr("height", H);
// グリッド円(0.2, 0.4, 0.6, 0.8, 1.0)
for (const level of [0.2, 0.4, 0.6, 0.8, 1.0]) {
svg
.append("circle")
.attr("cx", CX)
.attr("cy", CY)
.attr("r", R * level)
.attr("fill", "none")
.attr("stroke", "#e5e7eb");
}
// 軸線とラベル
AXES.forEach((axis, i) => {
const angle = (Math.PI * 2 * i) / N - Math.PI / 2;
const x = CX + Math.cos(angle) * R;
const y = CY + Math.sin(angle) * R;
svg
.append("line")
.attr("x1", CX)
.attr("y1", CY)
.attr("x2", x)
.attr("y2", y)
.attr("stroke", "#9ca3af");
svg
.append("text")
.attr("x", CX + Math.cos(angle) * (R + 24))
.attr("y", CY + Math.sin(angle) * (R + 24))
.attr("text-anchor", "middle")
.attr("dominant-baseline", "middle")
.attr("font-size", 13)
.text(axis.label);
});
// polygon(東京: 13000)
function drawPoly(areaCode, color, alpha) {
const values = data[areaCode];
const points = AXES.map((axis, i) => {
const angle = (Math.PI * 2 * i) / N - Math.PI / 2;
const r = R * (values[axis.key] ?? 0);
return `${CX + Math.cos(angle) * r},${CY + Math.sin(angle) * r}`;
}).join(" ");
svg
.append("polygon")
.attr("points", points)
.attr("fill", color)
.attr("fill-opacity", alpha)
.attr("stroke", color)
.attr("stroke-width", 2);
}
drawPoly("13000", "#2563eb", 0.35); // 東京 blue
await fs.writeFile("radar-tokyo.svg", body.html());
console.log("✓ wrote radar-tokyo.svg");
実行すると radar-tokyo.svg がカレントに生まれます。ブラウザで開けば 6 軸レーダーが描画されているはず。
node radar.mjs
open radar-tokyo.svg
Claude Code に「radar.mjs をそのまま動くように修正して、JSDOM が無ければ install コマンドも提示して」と頼めば、依存関係の入れ漏れもケアしてくれます。
Step 4: 2 県比較(東京 vs 京都など、polygon overlay)
レーダーは 1 県だけだと「絶対値感」が伝わりにくいので、2 県を重ねる と一気に物語が立ち上がります。コードは drawPoly を 2 回呼ぶだけ。
drawPoly("13000", "#2563eb", 0.30); // 東京 青
drawPoly("26000", "#dc2626", 0.30); // 京都 赤
// レジェンド
svg
.append("rect")
.attr("x", 20)
.attr("y", 20)
.attr("width", 14)
.attr("height", 14)
.attr("fill", "#2563eb");
svg
.append("text")
.attr("x", 40)
.attr("y", 32)
.attr("font-size", 13)
.text("東京都");
svg
.append("rect")
.attr("x", 20)
.attr("y", 42)
.attr("width", 14)
.attr("height", 14)
.attr("fill", "#dc2626");
svg
.append("text")
.attr("x", 40)
.attr("y", 54)
.attr("font-size", 13)
.text("京都府");
これで 1 枚の SVG に東京と京都の多角形がオーバーレイされます。重なる部分は色が混ざって紫っぽくなり、ずれている部分は青と赤が独立して見えます。人間の脳は「形の差分」を数値の差分よりずっと速く検知する ので、レーダーの overlay は強力なコミュニケーション手段です。
Tips: 比較する 2 県は「規模が違う組」(東京 vs 鳥取)より「性格が違う組」(東京 vs 京都、大阪 vs 沖縄)の方が話が広がります。規模違いだけだと「大きい方が全部勝ち」の自明な形になりがち。
3 県以上の overlay も技術的には可能ですが、5 県を超えると線が混雑して読めなくなります。3 県までが実用上限 と覚えてください。
Step 5: 軸ラベルと数値ツールチップ
TIP
レーダーは「形」で性格を伝える図なので、絶対値の答え合わせは別経路で用意するのがコツ。正規化値だけ載せて満足せず、軸ラベルへの生値併記やランキングページへの導線(本記事末尾の各リンク)をセットにすると、「形で掴む → 数字で確かめる」の二段構えになり読者の納得度が上がります。
正規化値(0〜1)だけだと「で、東京の所得って結局いくらなの?」が分かりません。読み手のために 生値も併記 する設計を入れます。3 つの方法があります。
方法 A: 軸ラベルに最大値を併記
県民所得
(0〜5,780千円)
軸ラベルの 2 行目に「全国の min〜max」を入れる方法。シンプルで実装も楽ですが、ラベルが長くなるので 6 軸が限界。
方法 B: 頂点に数値ラベル
各 polygon の頂点(県のスコアが乗る位置)に小さく生値テキストを置きます。1 県だけなら読めますが、2 県以上 overlay すると数字が被るのでおすすめしません。
方法 C: ホバー時ツールチップ(Web 描画時のみ)
ブラウザで描く場合は SVG の各軸末端に透明な rect を重ね、mouseenter で生値を出すのが王道です。Claude Code に頼むコードはこんな構成。
// ブラウザ用 (D3 ライブ描画)
axis.append("rect")
.attr("x", x - 30).attr("y", y - 12)
.attr("width", 60).attr("height", 24)
.attr("fill", "transparent")
.on("mouseenter", (e) => showTooltip(e, axis, rawValue, normValue))
.on("mouseleave", hideTooltip);
stats47 では Web ページに埋め込むときは方法 C、ブログ記事に png/svg 静止画で貼るときは方法 A という使い分けをしています。
- Web ページ埋め込み → 方法 C(ホバー)。インタラクションが効く
- ブログ記事の png → 方法 A(軸ラベル併記)。静止画なのでホバー不可
- 印刷 PDF → 方法 A + 末尾に補足の数値リスト。紙では併記で補完
つまずきポイント(指標方向の正負、外れ値正規化、軸数の限界)
1. 指標方向の正負を統一しないと読めない
冒頭で書いた通り、レーダーは「外側 = 良い」と直感で読まれます。「医療費が高い」を内側に潰す処理 を入れないと、医療費の高い大都市が「医療軸が満点 → 良い都市」と誤読されます。
具体策は normalize 時に INVERT セットを使う、もしくは取得段階で (- 生値) の符号反転で扱うかの 2 通り。Claude Code に頼むときに 「方向の意味付け」までを必ず伝える こと。「数値を 0〜1 に正規化して」だけだと、Claude Code は方向を解釈しません。
2. 外れ値 1 県で全体が潰れる問題
47 県中 1 県だけが極端な値だと、min-max 正規化はその県が 1.0、残りが 0.0〜0.3 あたりに張り付き、レーダーが「ほぼ正多角形 0.1」になる事故が起きます。対策は 3 つ。
- percentile 正規化 — 5%-95% パーセンタイルを 0〜1 に。一般的におすすめ
- log 変換 — log(x) してから min-max。桁数の差が大きい指標(人口、観光客数)向き
- ranking 正規化 — 47 県の順位を 47→0 にスケール。値の分布が偏っているとき
Claude Code への頼み方の例。
あなた: tourism (観光客数) は沖縄が外れ値で他県が潰れるので、
log10 してから min-max 正規化に変更して。
他の指標は通常 min-max のまま。
3. 軸数の限界は「6〜8」
3 軸ではただの三角形でキャラクターが出ません。10 軸を超えると軸ラベルが詰まって読めません。6〜8 軸が経験則上のスイートスポット。本記事の 6 軸は読みやすさ重視で設計しています。
もし「もっと多軸で見たい」場合は 2 枚に分割 するのが王道。経済系 6 軸+暮らし系 6 軸を別レーダーで隣に並べる、など。1 枚に詰め込むより読み手に優しい。
4. 軸の順番で印象が変わる
レーダーは 隣り合う 2 軸の和が広い領域 として強調されます。たとえば「教育費」と「観光客数」を隣同士に置くと、両方高い県は「右側ベルジョナルが膨らむ形」として強調される。
意味的に関連の薄い 2 軸を隣に置くと、形の意味が読み取りにくくなります。本記事では「規模系(人口・所得)→ 暮らし系(教育・医療)→ 治安・観光」の流れで並べていて、これは意図設計です。
5. 軸ごとの「重み」を勝手に揃えるな
レーダーは見た目上 6 軸が等価値に見えますが、本来は どの軸がより重要か は読者の関心次第。記事や用途によって「治安だけ重み 2 倍」のような重み付けが必要なときは、レーダーをやめて重み付き総合スコア(棒グラフ)に切り替えた方が誠実です。
レーダーは「軸間に優劣をつけない」という前提が崩れたら使うべきではない、ということだけ覚えておけば OK。
次回予告(Part 10: ボックスプロット)
Part 9 では「1 県の多面性を 1 枚にまとめる」レーダーを扱いました。Part 10 では視点を裏返して、「1 指標の分布を 47 県でまとめて見る」ボックスプロットに進みます。
ボックスプロットは平均・中央値・四分位範囲・外れ値を 1 つの図に詰め込めるチャートで、「全国平均だけ見て満足してませんか?」 という問いに刺さります。たとえば「教育費の全国平均は 18,000 円」と聞いても、東京だけ 25,000 で他県が 8,000〜15,000 なら平均はミスリード。ボックスプロットなら 分布の歪み が一目でわかります。
Claude Code には「47 県の値から quartile(Q1/Q2/Q3)と IQR を計算して、外れ値の判定式 1.5×IQR で外れ県をハイライト」までを頼みます。複数指標を縦に並べた「multi-boxplot」も Part 10 で扱う予定です。連載の全体像や基礎セットアップはClaude Code で 47 都道府県分析を自動化するガイドで補完できます。他の指標を探したいときはICT・データ活用カテゴリの一覧も参考にしてください。
データ出典
本記事のレーダー軸に対応する都道府県統計は、いずれも e-Stat(政府統計の総合窓口)API 経由で取得した公的統計を整備したものです。
- 人口規模 … 総務省「人口推計」(総人口ランキング)
- 県民所得 … 内閣府「県民経済計算」(1人当たり県民所得ランキング)
- 教育費 … 総務省「家計調査」
- 医療費 … 厚生労働省「国民医療費」
- 犯罪率 … 警察庁「犯罪統計」(重要犯罪認知件数ランキング)
- 観光 … 観光庁「観光入込客統計」ほか(観光資源数ランキング)
本文中の正規化値・生値は、正規化の手順を説明するための連載用サンプル値です。実データで再現する場合は各 statsDataId の最新年を確認してください。
次回 Part 10 でお会いしましょう。レーダーで県の「形」を見たあとは、ボックスプロットで指標の「分布」を見にいきます。claude を立ち上げて、続きを一緒に作っていきましょう。