「同じ日本に住んでいても、県によってごみを出す量がこれほど違うのか」——2023年度の都道府県別ごみ総排出量データを見ると、そんな驚きが待っています。
1位の東京都は約404万t、最下位の鳥取県は約19万tで、その差は実に21倍以上にのぼります。注目すべきは上位10県の顔ぶれで、ほぼ全てが東京圏・大阪圏・名古屋圏という三大都市圏の主要県で占められています。しかし単純に「人口が多い=ごみが多い」というだけでは説明がつかない面もあります。北海道が7位(1,704,071 t)と上位に食い込んでいたり、四国・山陰の県が軒並み下位に集まっていたりと、地域ごとに異なる構造が見えてきます。
この記事では、47都道府県のごみ総排出量を順位・地域構造の二つの視点から読み解き、「なぜその県がその順位なのか」を探ります。
東京・大阪・神奈川がトップ3——上位5県で全国の3割強を占める
2023年度のごみ総排出量ランキング上位5県は、東京都(4,046,316 t・1位)、大阪府(2,821,113 t・2位)、神奈川県(2,596,102 t・3位)、愛知県(2,282,051 t・4位)、埼玉県(2,133,356 t・5位)です。
この5県のごみ排出量を合計すると約1,388万tになります。全国47都道府県を合算した総排出量と比べると、上位5県だけで全体のおよそ3割強を担っている計算になります。人口が集中する三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)の主要県がそのままトップ5を形成しており、人口規模がごみ総排出量の最大の規定因であることが一目でわかります。
1位の東京都は2位の大阪府に比べて約122万t多く、その差は鳥取県の排出量の約6倍分にあたります。東京の突出ぶりは、国内最大の都市機能(事業所数・飲食店・商業施設の集積)によるものです。家庭系ごみだけでなく、事業系ごみが大量に発生しやすい構造が背景にあります。東京都では都内に立地する企業・飲食店・百貨店・コンビニなどから出る事業系ごみの総量が膨大であり、他県と比べてその割合が特に高くなっています。
6位以下も千葉県(1,937,594 t・6位)、北海道(1,704,071 t・7位)、兵庫県(1,687,105 t・8位)、福岡県(1,680,535 t・9位)と続きます。地方中枢都市を抱える道府県が上位に名を連ねているのがわかります。特に北海道は人口こそ埼玉・千葉より少ないものの7位に入っており、道内の広大な面積に分散する生活ごみの集積規模が影響していると考えられます。
NOTE
ここで集計しているのはごみ総排出量(家庭系ごみ+事業系ごみの合計)です。家庭が出す「家庭ごみ」だけでなく、企業・飲食店・工場などが排出する「事業系ごみ」も含まれます。人口密集地や商業集積地では事業系ごみの割合が高くなるため、総量ランキングは人口規模だけでなく産業・商業の集積度にも左右されます。東京が突出して高い主要因のひとつがこの事業系ごみの多さです。
最下位は鳥取の19万t——下位5県に四国・山陰が集中する理由
最下位の鳥取県は190,681 t(47位)、46位は島根県214,869 t、45位が高知県226,813 t、44位が徳島県236,674 t、43位が福井県238,981 tです。
下位5県に共通するのは、人口の少なさです。鳥取県・島根県・高知県はいずれも人口が全国最少クラスの県であり、絶対的な生活人口が少なければごみ排出量も自然と少なくなります。また、農業・林業が産業の主体である中山間地域では、事業系ごみを大量発生させるような商業施設や大規模工場が相対的に少ないことも、排出量を低く押さえる要因のひとつです。
注目すべきは島根県(46位・214,869 t)と高知県(45位・226,813 t)の差がわずか約12,000 tという点です。下位グループは排出量が拮抗しており、小さな変動で順位が入れ替わりやすい状況にあります。一方、上位グループは各県の絶対量が大きいため、毎年の順位はほぼ固定的で、大きな産業変動がなければ順位が変わりにくい構造になっています。
また、四国4県(香川・徳島・高知・愛媛)はいずれも中位以下に位置しています。四国は島嶼地域に近い地理的特性もあり、大規模な製造業や商業集積が生まれにくく、県全体のごみ排出規模が小さくなりやすい傾向があります。ただし香川県は40位(286,254 t)と四国では最も多く、高松市を中心とした商業集積の影響が出ています。
WARNING
排出量の少ない下位グループの県が「環境に優しい」とは一概に言えません。人口が少ないから総排出量が少ないのであり、1人あたりの排出量で比べると、下位グループの一部の県が上位に転じるケースがあります。特に観光客の多い地域では、常住人口よりも多くの人が日常的に滞在しており、1人あたり指標の算出には注意が必要です。「総量」と「1人あたり量」を混同しないようにすることが、ごみ排出の実態を正確に把握するうえで重要です。
なぜ三大都市圏が上位を独占するのか——産業集積と人口の二重効果
上位10県を見ると、静岡県(10位・1,066,536 t)が唯一の例外として三大都市圏以外から入っている以外は、関東・関西・東海の主要県で占められています。なぜここまで三大都市圏に集中するのでしょうか。
最大の要因は**人口と産業の集積が互いを強化する「二重効果」**です。大都市圏には人が集まるため家庭ごみが増えますが、それと同時に人が集まるから飲食店・小売店・事務所が立地し、事業系ごみも増加します。この二重の増加効果が、単純な人口比以上にごみ排出量を押し上げます。
特に東京都は面積当たりの事業所密度が全国最高水準であり、狭い地域に巨大な商業・業務機能が集積しています。コンビニだけでも都内に8,000店以上が営業しており、飲食廃棄物・包装材・消耗品などの事業系ごみが日々大量に発生します。大阪府や神奈川県も同様の構造を持っており、人口あたりの商業施設数が全国平均を大幅に上回っています。
一方、下位の山陰・四国・北陸の県は、人口が少ないだけでなく商業集積も薄いため、事業系ごみの絶対量が小さくなります。農林水産業が中心の産業構造では、排出ごみの種類も家庭系が主体となり、都市型の事業系ごみが出にくい構造になっています。
TIP
ごみ総排出量の多寡は消費活動の規模と深く連動しています。家計消費支出の多い県はそれだけ購入した商品の包装材や食品廃棄が増えるため、ごみも増える傾向があります。また、人口密度が高いほど廃棄物が一か所に集まりやすく、処理効率が上がる半面、絶対量は大きくなります。都道府県別の環境・安全分野の統計では、廃棄物処理費用や大気環境など関連指標をあわせて確認できます。
地域ブロック別に見るごみ排出量の分布
47都道府県を地域ブロックで整理すると、傾向の違いがよりはっきり見えてきます。
**関東(東京圏)**は上位6位以内に4県(東京1位・神奈川3位・埼玉4位・千葉6位)が入り、圧倒的な集中を示しています。首都圏への人口・産業集中がごみ排出量に直接反映された結果です。
**関西(大阪圏)**は大阪府が2位、兵庫県が8位と上位に位置しています。京都府は15位(699,278 t)で、観光都市ゆえに観光客由来のごみも一定量含まれると考えられます。
**東海(名古屋圏)**は愛知県が4位(2,282,051 t)と製造業の集積による事業系ごみの多さが順位に表れています。静岡県も10位(1,066,536 t)と上位に食い込んでおり、東海地区の製造業集積が反映されています。
北海道・東北では北海道が7位と上位に位置しています。道内の広大な面積に分散する生活ごみの集積と、農業・食品加工業に関連するごみの多さが背景として考えられます。東北では宮城県が13位(758,541 t)と東北最多を記録しています。
四国・山陰は排出量が少ない県が集中しています。高知(45位)・徳島(44位)・島根(46位)・鳥取(47位)は、いずれも人口が少なく経済規模も小さいため、地域全体のごみ排出量が抑えられています。
九州・沖縄は中規模の排出量が多く、福岡県(9位・1,680,535 t)が突出して多く、次いで熊本(23位・534,253 t)・鹿児島(24位・506,533 t)・沖縄(25位・467,835 t)と続きます。沖縄県は人口に対してごみ排出量がやや多い傾向があり、観光客数の多さ(国内外から年間1,000万人規模が訪れる)が要因のひとつと考えられます。
各県の詳細な居住環境や産業構造を知りたい場合は都道府県プロフィール(東京都)も合わせてご参照ください。また人口密度のランキングと比較すると、ごみ排出量との連動関係がより明確に見えてきます。小学校の児童数は居住人口の指標として、ごみ排出量との相関が高い指標のひとつです。
まとめ
- 1位は東京都(4,046,316 t)。事業所・商業施設の集積による事業系ごみと、国内最大の人口による家庭系ごみの二重効果で全国最大の排出量を記録しています
- 最下位は鳥取県(190,681 t)。東京との差は21倍以上で、人口規模と産業集積の格差がそのままごみ総排出量に反映されています
- 上位10県のほぼ全てが三大都市圏(関東・関西・東海)の主要県で占められており、人口集中と産業集積の二重効果が働いています
- 下位は四国・山陰・北陸の小人口県が集中しており、農林業中心の産業構造と商業集積の薄さが排出量を低く抑えています
- 「総量」だけで環境への取り組みを評価するのは難しく、1人あたり排出量・廃棄物処理費用・リサイクル率などの指標と組み合わせた多面的な分析が必要です
データ出典
本記事のデータは**社会・人口統計体系(総務省統計局)**の「ごみ総排出量」(2023年度)をもとに整備しています。出典元は e-Stat(政府統計の総合窓口)を経由して提供されており、廃棄物処理に関する都道府県別統計として環境省の調査結果が反映されています。