県民所得とGDPで順位が逆転する県──福井3位・大阪22位の理由

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1人あたり県民所得1位は東京都の521万円。これは多くの人が予想する通りでしょう。では2位はどこか。大阪でも神奈川でもなく、**愛知県(343万円)**です。

この記事では「1人あたり県民所得」と「県内総生産(GDP)」の2つの指標で都道府県をランキングし、両者の違いから見えてくる地域経済の実像を読み解きます。

NOTE

県民所得=雇用者報酬+財産所得+企業所得。個人の年収ではなく、県全体の経済活動で生み出された所得の総額を人口で割った値です。内閣府「県民経済計算」(平成27年基準)による。 なお、本記事の県民所得は2020年度、県内総生産(GDP)は2021年度のデータを使用しています。2021年度はCOVID-19からの回復途上にあり、産業構造によって回復速度が異なるため、順位差の一部は年度の違いに起因する可能性があります。

出典:e-Stat 社会・人口統計体系

1人あたり県民所得ランキング

2020年度のデータで47都道府県を比較します。

1人当たり県民所得ランキング

1位は東京都(521万円)、2位は愛知県(343万円)。2位の愛知県から8位の滋賀県まで、差はわずか約33万円。いずれもトヨタ関連や化学・機械など製造業が集積する「ものづくり県」です。神奈川は13位、大阪は22位と、大都市だからといって上位に入るとは限りません。

意外なのは9位の徳島県。人口約72万人の小県ですが、LEDや化学製品を手がける日亜化学工業など、付加価値の高い製造業が所得を押し上げています。

47位は沖縄県の217万円。1位の東京都とは約2.4倍の格差があります。ただし、東京都を除いた46道府県で見ると、最大の愛知県(343万円)と最小の沖縄県(217万円)の格差は約1.6倍に縮まります。2.4倍という数字は東京の突出した数値に引き上げられている面があり、地域間格差を捉える際は東京の特殊性を踏まえる必要があります。下位には九州南部・四国南部の県が集中しており、第1次産業やサービス業中心の産業構造が背景にあります。

奈良県(39位)はベッドタウンとして大阪に通勤する住民が多い県です。県民所得は住民ベースで計算されるため通勤先に関わらず奈良県に帰属しますが、県内総生産(GDP)は生産が行われた場所で計上されるため、通勤先の大阪に計上されます。奈良県のGDP順位(37位)が所得順位(39位)より高いのは、県内の公共サービスや建設業などの生産活動が一定規模あるためです。

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県内総生産(GDP)ランキング

次に、人口で割らない県全体の経済規模=県内総生産を見てみましょう。2021年度のデータです。

県内総生産ランキング

東京都の約114兆円は2位大阪府の約2.8倍。日本のGDPの約2割を東京1都が生み出している計算です。上位はほぼ人口の多い大都市圏が並びます。県内総生産の最下位は鳥取県の約1.9兆円。東京都の約60分の1です。

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県民所得とGDPで順位が逆転する県

2つのランキングを比較すると、順位が大きく変わる県があります。これが「1人あたりの所得水準」と「経済の規模」の違いです。

所得順位 > GDP順位(人口が少ないが1人あたり所得は高い)

都道府県所得順位GDP順位
福井県341+38
徳島県943+34
富山県528+23
栃木県415+11

福井県は所得3位なのにGDPでは41位。人口約76万人と少ないため経済の総量は小さいですが、1人あたりに換算すると全国トップクラスの県民所得を記録しています。

GDP順位 > 所得順位(経済規模は大きいが1人あたりは平均的)

都道府県所得順位GDP順位
大阪府222-20
北海道318-23
福岡県359-26
神奈川県134-9

大阪府は日本第2の経済圏でありながら、1人あたり所得では22位。人口が多いぶん「割り算」すると中位に沈みます。北海道・福岡も同様で、経済規模が大きい=1人あたり所得が高いとは限らないことがわかります。

県民所得と相関が強い指標

1人あたり県民所得と相関が強い統計データを見ると、所得の高さを生み出す構造が浮かび上がります。

相関指標相関係数(r)意味
住民税(1人あたり)0.92所得が高い→税収も多い(当然の結果)
固定資産税(1人あたり)0.89所得が高い地域は不動産価値も高い
300人以上事業所の従業者割合0.86大企業が多い県ほど所得が高い
10〜29人事業所の従業者割合-0.88小規模事業所が多い県ほど所得が低い
男性所定内給与額0.83個人の賃金とも連動

特に注目すべきは大企業比率との相関です。300人以上の事業所で働く人の割合が高い県ほど所得が高く(r=0.86)、逆に10〜29人の小規模事業所の割合が高い県ほど所得が低い(r=-0.88)。県民所得の地域差は、企業規模の差でもあるといえます。

NOTE

上記の相関係数は、e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別データ(n=47)からピアソンの積率相関係数を算出したものです。なお、東京都は多くの指標で突出した外れ値となるため、東京都を除外すると相関係数が変動する場合があります。

地域パターン

データを地域ブロックで整理すると、明確なパターンが見えます。

  • 東海・北陸(愛知・静岡・富山・福井・滋賀): 製造業の集積で1人あたり所得が高い。GDPは愛知・静岡を除くと中位
  • 首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉): GDPは上位だが、1人あたり所得は東京以外は10〜17位と中位
  • 関西圏(大阪・兵庫・京都): GDPは上位だが、1人あたり所得は20位前後。人口の多さで「薄まる」構造
  • 九州南部・四国南部(宮崎・鹿児島・高知・沖縄): 所得・GDPともに下位。第1次産業比率が高く大企業が少ない

東京を除けば、**「所得の高さ=製造業の強さ」**という図式がかなり明確です。

まとめ

この記事でわかったこと
  • 1人あたり県民所得1位は東京都(521万円)、2位は愛知県(343万円)。上位は製造業が盛んな「ものづくり県」が占める
  • 県内総生産(GDP)は人口の多い大都市圏が上位。1位東京(約114兆円)、2位大阪(約41兆円)
  • 福井県は所得3位・GDP41位と最も順位差が大きく、「小さくても1人あたり所得が高い県」の代表例
  • 県民所得と最も相関が強いのは大企業比率(r=0.86)。大企業が集まる県ほど所得が高い
  • 47位の沖縄県(217万円)と東京都の格差は約2.4倍。ただし東京を除くと約1.6倍に縮まり、格差の大部分は東京の突出に起因する

NOTE

県民所得は個人の手取り年収ではありません。企業所得や財産所得も含む指標のため、「県民所得が高い=住民の給与が高い」とは限らない点に注意が必要です。

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