茨城と聞いて食卓を思い浮かべるなら、まず出てくるのは「メロン」と「納豆」ではないでしょうか。実際に家計調査のデータを見ると、茨城県はメロンの消費支出額で全国1位という結果が出ています。年間3,757円、2位の秋田県2,054円を大きく引き離す圧勝です。
ところが、もう一方の代名詞である納豆は全国5位にとどまります。「水戸納豆」として全国区の知名度を持つ茨城が、なぜ支出額では1位を取れないのか。さらに、産地としてのイメージがあまりない「さつまいも」では全国最下位という結果も出ています。この記事では、家計調査(品目別)の実データから、メロン・納豆・さつまいもの3品目を通して茨城の食卓の内訳を掘り下げます。
NOTE
このデータは総務省統計局「家計調査(品目別)」の都道府県庁所在市・二人以上世帯を対象にした年間消費支出額です。全国を代表するとは限りませんが、都市部の家計における実際の購入傾向を示す公式統計として広く使われています。
メロン — 全国1位3,757円、産地の底力
茨城県のメロン消費支出額は3,757円で全国1位です。2位の秋田県(全国2位・2,054円)、3位の熊本県(全国3位・1,977円)と比べても、茨城は他県の約1.8倍という圧倒的な水準にあります。
茨城県は「アンデスメロン」や「イバラキング」など複数のブランドメロンを生産する全国有数の産地です。鉾田市を中心とする県南地域の砂質土壌がメロン栽培に適しており、生産量そのものが全国トップクラスであることが、地元消費の多さにも直結していると考えられます。地元で採れたものを地元で食べる「地産地消」が支出額に色濃く表れた結果と言えるでしょう。
納豆 — 全国5位6,627円、なぜ本場が1位ではないのか
「水戸納豆」で全国的に知られる茨城県ですが、納豆消費支出額は6,627円で全国5位にとどまります。1位は福島県(全国1位・7,830円)、2位は秋田県(全国2位・7,199円)、3位は青森県(全国3位・6,984円)と、実は東北勢が上位を占めています。
[仮説] 茨城が本場でありながら1位を逃す理由の1つは、「ブランド力と日常消費量は必ずしも一致しない」という構造にあると考えられます。水戸納豆は贈答用・土産用としての側面が強く、全国区の知名度を築いた一方、日常的に食卓に上る頻度では東北地方(特に会津地方や秋田・青森)の食習慣の方が根強いという見方です。検証には家庭内消費量の詳細な購入頻度データが必要で、支出額だけでは断定できません。
さつまいも — 全国最下位881円、産地に恵まれない理由
家計調査の全502品目の中で、茨城が唯一「最下位」に沈むのがさつまいもです。1位の徳島県(全国1位・2,466円)は鳴門金時で知られる名産地ですが、茨城の881円はその3分の1にも届きません。
茨城県は農業産出額で全国トップクラスの県ですが、その内訳はメロン・ピーマン・れんこん・栗など多品目に分散しています。さつまいもの都道府県別収穫量では茨城も上位に入る年がありますが、徳島の食卓のように県全体のブランドとして「鳴門金時」のような突出した産地イメージを持つわけではなく、消費者の購入行動としては他の野菜・果物に選択が分散していると考えられます。産地であることと、支出額で1位になることは、必ずしも一致しないという茨城の食卓のもう1つの側面がここに表れています。
WARNING
家計調査の支出額は「金額ベース」の統計であり、消費量(重量・個数)とは異なります。単価が高い品目は消費量が少なくても支出額が上位に出やすく、逆に単価が安い品目は消費量が多くても支出額では目立ちにくい点に注意が必要です。また、れんこんやピーマンなど茨城の主要な農産物の一部は、家計調査の個別集計品目に含まれていないため、この記事の3品目だけで茨城の農業の全体像を語ることはできません。
茨城の食卓を貫くもの
メロン・納豆・さつまいもの3品目を通して見えてくるのは、「圧倒的な産地優位(メロン)」と「知名度先行型の準位(納豆)」と「分散する農業構造(さつまいも)」という、決して一枚岩ではない茨城の食の姿です。福島の食卓が桃・日本酒・納豆の3品目すべてで全国1位を独占するのとは対照的に、茨城は「産地であること」と「消費支出額で1位を取ること」が必ずしも重ならない県だと言えます。これは、農業産出額全国トップクラスの多品目生産県ならではの特徴かもしれません。
TIP
茨城のように「1位」「中位」「最下位」が同じ食卓の中に混在するケースは、単一品目の全国1位だけを見ていては気づけません。経済カテゴリ一覧から他の食品ランキングもあわせて見ると、その県の農業構造がどのくらい分散しているか、逆にどれだけ特定品目に集中しているかが見えてきます。
まとめ
- メロン消費支出額は3,757円で全国1位、2位秋田県(2,054円)を大きく引き離す
- 納豆消費支出額は6,627円で全国5位、1位は福島県(7,830円)
- さつまいも消費支出額は881円で全国最下位、1位徳島県(2,466円)の3分の1以下
- 茨城は農業産出額トップクラスながら、支出額の順位は品目によって大きく異なる
- 「産地であること」と「消費支出額1位」は必ずしも一致しないことを示す好例
データ出典
総務省統計局「家計調査(品目別)」2024年、都道府県庁所在市・二人以上世帯の年間消費支出額。e-Stat(政府統計の総合窓口)経由で取得。