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石川の食卓|和菓子とれんこんはなぜ日本一?

金沢の茶屋街を歩くと、和菓子屋の看板がやけに目につきます。実はこれ、雰囲気だけの話ではありません。総務省「家計調査」2024年のデータを見ると、石川県(金沢市)の和生菓子消費支出額は年間16,378円で全国1位。同じ加賀野菜の代表格である「れんこん」の消費支出額も1,487円で全国1位です。

さらに、すし(外食)の消費支出額は20,248円で全国4位。1位の富山県(23,185円)にはわずかに届きませんが、隣県同士で北陸の食卓が上位を占めている点が目を引きます。この記事では、この3品目のデータから、石川県民の食卓に流れる一本の軸を探ります。なぜ石川は「甘いもの」と「根菜」と「魚」のいずれでも上位に来るのか。答えは、加賀百万石が育てた「手間を惜しまない食文化」にありそうです。

NOTE

本記事のデータは総務省「家計調査(品目別)」2024年、都道府県庁所在市(石川県は金沢市)の二人以上世帯の年間消費支出額です。世帯単位の支出額であり、消費量そのものではありません。

和生菓子 — 全国1位16,378円、2位山形県との差はわずか

和生菓子消費支出額 上位5・下位5 和生菓子消費支出額ランキングをもっと見る

石川県の和生菓子消費支出額は16,378円で全国1位です。2位の山形県(全国2位・13,865円)との差は2,513円、比率にして1.18倍。3位の奈良県(全国3位・13,535円)まで含めても、上位3県はいずれも1万3千円台後半から1万6千円台に集中しており、石川の1位は突出しているというより「僅差の首位」という性格が強いデータです。

金沢には江戸時代から続く茶の湯文化があり、加賀藩の茶道奨励策の影響で和菓子文化が発達しました。俳句にも詠まれる「金花糖」や、五色生菓子などの儀礼菓子が今も冠婚葬祭で使われています。日常的にお茶とともに和菓子を口にする習慣が、支出額の高さに表れていると考えられます。最下位は沖縄県(5,981円)で、石川の値はその2.7倍にあたります。

れんこん — 全国1位1,487円、加賀野菜の代表格

れんこん消費支出額 上位5・下位5 れんこん消費支出額ランキングをもっと見る

れんこんの消費支出額も石川県が1,487円で全国1位です。2位の新潟県(全国2位・1,454円)との差は33円とごくわずかで、事実上の僅差首位。3位の岐阜県(全国3位・1,317円)、4位の長野県(全国4位・1,310円)と続き、上位は北陸から中部にかけての県が並びます。

石川のれんこんは「加賀れんこん」として知られるブランド野菜です。金沢市小坂・打木地区周辺の粘土質の土壌が、もっちりと粘り気の強いれんこんを育てます。かつては年に一度しか収穫しない栽培法が主流で、いまも「じゅんさい鉢」に盛る郷土料理「はす蒸し」など、れんこんを使った料理が金沢の家庭料理に根付いています。最下位は沖縄県(327円)で、石川はその4.5倍の支出です。

すし(外食) — 全国4位20,248円、北陸勢が上位を占める

すし外食消費支出額 上位5・下位5 すし(外食)消費支出額ランキングをもっと見る

すし(外食)の消費支出額は石川県が20,248円で全国4位です。1位は富山県(全国1位・23,185円)、2位は高知県(全国2位・21,365円)、3位は静岡県(全国3位・20,575円)で、石川はこれらに次ぐ位置につけています。1位の富山県との差は2,937円、比率で1.15倍です。

金沢は日本海に面し、金沢港や近隣の漁港から新鮮な魚介が集まる土地です。のどぐろ・ガスエビ(甘えび)・香箱ガニなど、地元で「地物」と呼ばれる高級食材が回転寿司から高級店まで幅広い層に浸透しており、「金沢はどの価格帯でも寿司が旨い」という評判の土台になっています。隣県の富山も同じ日本海の恵みを受ける立地で、北陸勢がすし外食の上位を占めるのは地理的な必然といえるでしょう。最下位は沖縄県(9,270円)で、石川の値はその2.2倍です。

WARNING

本データは支出額であり、消費量や購入頻度そのものではありません。単価の高い食材ほど支出額が押し上げられるため、「支出額が高い=食べる量が多い」とは限らない点に注意が必要です。また、加賀野菜のうち「金時草」「打木赤皮甘栗かぼちゃ」など家計調査で個別集計されていない品目は本記事に含まれていません。

石川の食卓を貫くもの

和生菓子とれんこんが全国1位、すし外食が4位。この3品目に共通するのは、いずれも「手間のかかる素材を丁寧に扱う」という一本の軸です。和生菓子は茶の湯文化に支えられた儀礼と嗜好、れんこんは粘土質の土壌が育てる希少なブランド野菜、すしは日本海の地物を活かす職人技。加賀百万石が育んだ食への美意識が、現代の家計調査データにもそのまま表れています。

隣県の富山県は、ぶり・いか・昆布・餅がいずれも全国1位という「日本海の恵みそのもの」を前面に出す食文化でした。同じ北陸でも、富山が「新鮮な魚介の量」で勝負するのに対し、石川は「素材への手間」で勝負する。隣り合う県でも支出構造の性格が異なる点が興味深いところです。同じく福井県は羊羹とふりかけが全国1位で、北陸3県それぞれに異なる強みがあることが見えてきます。

TIP

和生菓子とれんこんの1位・2位差がいずれも僅差(和生菓子は2位山形県との差1.18倍、れんこんは2位新潟県との差1.03倍)である点は見逃せません。これは「石川だけが突出して食べている」のではなく、「茶の湯文化圏・北陸の粘土質土壌地帯」という広い地域で似た食文化が根付いていることを示唆します。石川の食卓データを読むときは、隣接県との差の大きさにも注目すると、その品目が石川固有の文化なのか、地域全体の傾向なのかが見えてきます。

石川県の地域プロフィールは石川県の地域プロフィールで確認できます。他の家計調査データは経済カテゴリ一覧からたどれます。

まとめ

  • 和生菓子消費支出額は16,378円で全国1位。2位山形県(13,865円)とは僅差
  • れんこん消費支出額は1,487円で全国1位。加賀れんこんのブランド力を反映
  • すし(外食)消費支出額は20,248円で全国4位。1位富山県(23,185円)に次ぐ北陸勢の一角
  • 3品目に共通するのは「手間のかかる素材を丁寧に扱う」加賀百万石由来の食文化
  • 隣県の富山・福井とはそれぞれ異なる強みを持ち、北陸3県の食文化の多様性が見える

データ出典

総務省統計局「家計調査(品目別)」2024年、都道府県庁所在市(石川県は金沢市)二人以上世帯のデータをe-Stat(政府統計の総合窓口)経由で取得しています。