概要
国内銀行預金残高(人口1人当たり)は、各都道府県内の国内銀行における預金残高を当該地域の人口で除した指標です。この統計は個人の預金だけでなく、企業や団体の預金も含む地域の総金融資産を示しており、地域の経済力や資金集約度を測る重要な指標となっています。
2023年度のデータでは、最上位の東京都が2,599.4万円と突出して高く、最下位の鹿児島県375.9万円との間に約6.9倍の格差が生じています。特に注目すべきは、東京都の偏差値が114.1と極めて高い値を示していることで、これは首都圏への資金集中の実態を如実に表しています。
この指標は地域の金融機能の集積度や企業活動の活発さを反映するため、地方創生や地域経済の活性化を考える上で重要な参考データとなります。
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上位5県の詳細分析
1位:東京都
東京都は2,599.4万円(偏差値114.1)と圧倒的な1位を記録しています。これは2位の大阪府の約2.8倍という突出した数値です。東京都には大企業の本社や金融機関の本店が集中しており、企業の資金需要や資金調達が活発に行われています。また、個人資産についても高所得者層が多く居住していることが、この高い数値に寄与しています。メガバンクをはじめとする金融機関の中枢機能が集積していることも、資金集約に大きく影響しています。
2位:大阪府
大阪府は928.9万円(偏差値61.2)で2位となっています。関西経済圏の中心として、多くの企業や金融機関が拠点を置いており、西日本の金融ハブとしての役割を果たしています。商業・金融業が発達した歴史的背景もあり、地域内での資金循環が活発です。ただし、東京都との格差は非常に大きく、首都圏への一極集中の実態が浮き彫りになっています。
3位:徳島県
徳島県は761.2万円(偏差値55.9)で3位と、人口規模に比して高い数値を示しています。これは地方における特徴的な現象で、相対的に少ない人口に対して一定の預金残高があることを示しています。地域の中核企業の存在や、高齢化に伴う預金の集約などが要因として考えられます。
4位:愛媛県
愛媛県は688.2万円(偏差値53.6)で4位となっています。四国地方の経済拠点の一つとして、造船業や化学工業などの基幹産業を有していることが、この高い数値に寄与していると考えられます。また、地方銀行を中心とした金融機関の地域密着型サービスが、資金の地域内循環を促進している可能性があります。
5位:香川県
香川県は685.1万円(偏差値53.5)で5位です。四国の玄関口として交通の要衝に位置し、讃岐うどんで有名ですが、実際には製造業や金融業も発達しています。コンパクトな県域に人口が集中していることも、人口1人当たりの数値を押し上げる要因となっています。
下位5県の詳細分析
47位:鹿児島県
鹿児島県は375.9万円(偏差値43.7)で最下位となっています。農業や畜産業が主要産業であり、第一次産業の比重が高いことが特徴です。また、人口減少と高齢化が進んでおり、経済活動の縮小が預金残高にも影響している可能性があります。ただし、焼酎産業や観光業など地域特色を活かした産業の振興により、今後の改善が期待されます。
46位:北海道
北海道は399.9万円(偏差値44.5)で46位です。広大な面積を有する一方で、人口密度が低く、経済活動が札幌圏に集中している特徴があります。農業や水産業、観光業が主要産業ですが、これらの季節性や天候依存性が経済の安定性に影響を与えている可能性があります。
45位:宮崎県
宮崎県は401.2万円(偏差値44.5)で45位となっています。農業県としての色彩が強く、特に畜産業や農産物の生産が盛んです。しかし、第一次産業中心の経済構造により、付加価値の高い産業の集積が限定的であることが、この順位に影響していると考えられます。
44位:佐賀県
佐賀県は410.2万円(偏差値44.8)で44位です。九州地方の中でも比較的小規模な県であり、福岡県という大都市圏に隣接していることから、経済活動の一部が県外に流出している可能性があります。ただし、近年は製造業の誘致や IT産業の振興に取り組んでいます。
43位:青森県
青森県は415.2万円(偏差値45.0)で43位となっています。本州最北端に位置し、りんご生産で有名ですが、人口減少と高齢化が全国平均を上回るペースで進んでいます。冬季の経済活動の制約や、県外への人口流出が経済規模の縮小に影響している可能性があります。
地域別の特徴分析
関東地方
東京都の突出した数値が全体を牽引していますが、他の関東各県も比較的上位に位置しています。首都圏への経済集中が顕著に表れており、金融機能の集積が地域全体の数値を押し上げています。
近畿地方
大阪府が2位と高順位を維持していますが、東京都との格差は大きく、関西経済圏の相対的な地位低下が数値にも反映されています。しかし、西日本の金融センターとしての機能は依然として重要な役割を果たしています。
四国地方
徳島県、愛媛県、香川県が上位に位置するという特徴的な傾向を示しています。これは四国地方の人口規模が相対的に小さい一方で、一定の経済基盤を維持していることを示唆しています。地域密着型の金融機関の役割も大きいと考えられます。
九州・沖縄地方
下位に位置する県が多く、特に南九州の県が最下位グループを形成しています。農業県としての特徴が強い一方で、付加価値の高い産業の集積が限定的であることが影響していると考えられます。
北海道・東北地方
全体的に下位に位置する傾向があり、人口減少と地域経済の縮小が数値に反映されています。一次産業中心の経済構造からの転換が課題となっています。
中部地方
製造業が発達した地域を中心に中位から上位に位置する県が多く、産業構造の多様性が数値の安定性に寄与していると考えられます。
格差や課題の考察
最上位の東京都(2,599.4万円)と最下位の鹿児島県(375.9万円)の間には2,223.5万円、約6.9倍の格差が存在しています。この格差は単なる地域差を超えて、日本の経済構造の根本的な課題を示しています。
東京一極集中により、資金が首都圏に集中し、地方からの資金流出が加速している可能性があります。これは地方経済の活力低下や、地域格差の拡大につながる構造的な問題です。また、人口1人当たりの数値であることを考慮すると、企業の本社機能や金融機関の中枢機能の所在地による影響が極めて大きいことが分かります。
地方創生の観点からは、地域における資金循環の仕組みづくりや、地方銀行の経営基盤強化、地域密着型金融の推進などが重要な政策課題となります。また、企業の地方移転促進や、地方における新たな産業創出も、この格差是正に向けた重要な取り組みです。
統計データの詳細分析
平均値は530.8万円である一方、中央値は489.7万円となっており、平均値が中央値を上回っています。これは東京都という極端な外れ値が全体の分布を右に歪ませていることを示しています。
標準偏差は358.6万円と大きく、都道府県間のばらつきが非常に大きいことが統計的にも確認されます。東京都の偏差値114.1は統計的に極めて特異な値であり、この1都だけで全体の分布特性を大きく変えています。
四分位範囲を見ると、第1四分位(434.8万円)から第3四分位(580.0万円)までの範囲に多くの都道府県が分布していますが、この範囲を大きく超える東京都と大阪府の存在が、全体の格差構造を特徴づけています。
最大値と最小値の比率は約6.9倍となっており、これは他の多くの経済指標と比較しても非常に大きな格差です。この数値は、日本における地域間の経済格差と資金集中の実態を端的に表しています。
まとめ
- 東京都が2,599.4万円(偏差値114.1)で圧倒的な1位、首都圏への資金集中が顕著
- 四国地方の徳島県、愛媛県、香川県が上位に位置する特徴的な分布
- 最上位と最下位の格差は約6.9倍と極めて大きく、地域間格差が深刻
- 九州南部や東北地方で下位県が集中し、一次産業中心の経済構造が影響
- 企業の本社機能や金融機関の立地が数値に大きな影響を与えている
今後は地方創生の推進と地域経済の活性化により、この格差の縮小が重要な政策課題となります。地域における資金循環の促進や、地方への企業誘致、新たな産業創出などの取り組みを継続的にモニタリングしていく必要があります。