都道府県別刑法犯認知件数(人口千人当たり)ランキング(2022年度)

はじめに

刑法犯認知件数(人口千人当たり)は、警察が認知した刑法犯罪の発生件数を人口千人当たりで示した重要な治安指標です。人口規模の違いを調整することで、各都道府県の治安状況を公平に比較できます。2022年度の都道府県別データを分析することで、各地域の治安状況や犯罪発生率の地域差を把握できます。本記事では、47都道府県の人口千人当たりの刑法犯認知件数を詳細に分析し、その特徴や背景要因について考察します。

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上位県と下位県の比較

上位5県の詳細分析

人口千人当たりの刑法犯認知件数が高い上位5県は、いずれも都市部や人口密集地域に位置しています。

大阪府7.84件(偏差値83.3)で全国1位となっており、他県と大きく差をつけています。人口密度が高い都市部であることに加え、商業活動が活発で昼間人口も多いことが、人口当たりの犯罪発生率の高さに影響していると考えられます。

兵庫県6.11件(偏差値68.0)で2位です。神戸市や姫路市などの都市部を抱え、大阪府に隣接する立地も犯罪発生率に影響している可能性があります。

埼玉県5.72件(偏差値64.5)で3位となっています。首都圏のベッドタウンとして人口が多く、東京都への通勤・通学による人口移動も活発で、これが人口当たりの犯罪発生率に影響していると考えられます。

茨城県5.63件(偏差値63.7)で4位です。首都圏近郊県として都市化が進んでいることや、交通の要衝としての地理的条件が関係している可能性があります。

福岡県5.62件(偏差値63.6)で5位となっています。九州最大の都市圏を形成し、経済活動が活発な地域として、人口当たりの犯罪発生率も相対的に高くなっています。

下位5県の詳細分析

人口千人当たりの刑法犯認知件数が低い下位5県は、いずれも地方部や人口密度の低い地域に位置しています。

秋田県2.01件(偏差値31.7)で全国最少となっています。人口減少が進んでいる地域であり、地域コミュニティの結束も強いことが、人口当たりの犯罪発生率の低さに貢献していると考えられます。

岩手県2.25件(偏差値33.8)で下から2番目です。農業が主要産業の一つであり、比較的安定した地域社会を形成していることが、低い犯罪発生率に影響している可能性があります。

大分県2.52件(偏差値36.2)で下から3番目となっています。温泉観光地として知られる地域が多く、地域経済が安定していることも、人口当たりの犯罪発生率の低さの要因の一つと考えられます。

長崎県2.53件(偏差値36.3)で下から4番目です。離島部も多く含む地理的特性や、地域コミュニティの結束が治安の維持に寄与している可能性があります。

山形県2.77件(偏差値38.4)で下から5番目となっています。農業中心の産業構造と安定した地域社会が、人口当たりの犯罪発生率の抑制に繋がっていると考えられます。

地域別の特徴分析

関東地方では、埼玉県、茨城県、東京都、千葉県、群馬県が上位に位置しており、首都圏の都市化進展と人口集中が人口当たりの犯罪発生率に影響していることが明確です。一方で、栃木県は12位と相対的に低く、同じ関東でも地域差があることが分かります。

関西地方では、大阪府が突出して高い値を示し、兵庫県も2位と上位に位置しています。都市部の人口密度と経済活動の活発さが人口当たりの犯罪発生率に反映された結果となっています。

東北地方は全般的に低い値を示しており、特に秋田県、岩手県、山形県が下位に位置しています。人口減少地域であることや、農村部が多いことが影響していると考えられます。

九州地方では、福岡県が5位と高い位置にある一方で、その他の県は中位から下位に分散しており、地域内での格差が見られます。

中部地方では、愛知県が7位と上位に位置する一方で、長野県や新潟県は下位グループに属しており、都市部と農村部の違いが顕著に現れています。

犯罪発生の格差と課題

全国平均は約4.0件程度と推定され、最高値の大阪府(7.84件)と最低値の秋田県(2.01件)の間には約3.9倍の格差があります。この大きな格差は、都市化の程度、人口密度、経済活動の規模、地域コミュニティの結束度などの複合的要因によるものと考えられます。

偏差値で見ると、大阪府の83.3は突出して高く、全国平均から大きく乖離しています。一方で、秋田県の31.7をはじめとする下位県は30台の偏差値を示しており、全国的な治安格差の存在が明確になっています。

都市部での犯罪対策強化や、地方部の良好な治安維持のための取り組み継続が重要な課題となっています。

統計データの基本情報と分析

統計分析の観点から見ると、データの分布は正規分布からやや右に歪んでいる傾向があります。平均値が中央値を上回っていることから、大阪府のような極端に高い値を持つ都道府県が全体の平均を押し上げていることが分かります。

標準偏差は比較的大きく、都道府県間でのばらつきが顕著であることを示しています。四分位範囲を見ると、下位25%の都道府県と上位25%の都道府県の間には相当な差があり、地域格差の存在が統計的にも確認できます。

外れ値として大阪府が特に目立っており、この県を除いた場合の分析と含めた場合の分析では結果が大きく変わる可能性があります。このことは、都市部特有の課題として大阪府の状況を個別に検討する必要性を示唆しています。

まとめ

2022年度の都道府県別刑法犯認知件数(人口千人当たり)分析により、日本国内の治安状況に大きな地域差があることが明らかになりました。大阪府を筆頭とする都市部では人口当たりの犯罪発生率が高く、秋田県をはじめとする地方部では相対的に治安が良好な状況が続いています。

人口千人当たりの指標で比較することにより、人口規模の違いに左右されない真の治安格差が浮き彫りになりました。この格差は単純な都市部・地方部の違いだけでなく、人口密度、経済活動、地域コミュニティの特性、交通インフラなどの複合的要因によるものと考えられます。各地域の特性に応じた治安対策の推進と、良好な治安を維持している地域の取り組みの共有が、全国的な治安向上に向けて重要な課題となっています。

出典