都道府県別就業者数(第1次産業)ランキング(2020年度)
概要
第1次産業就業者数とは、農業、林業、漁業などの第1次産業に従事している人の数を指します。この記事では、2020年度の都道府県別第1次産業就業者数のランキングを紹介します。
第1次産業就業者数は、地域の産業構造や経済基盤を反映する重要な指標であり、特に農業や漁業が盛んな地域では就業者数が多くなる傾向があります。北海道や九州地方の県で第1次産業就業者数が多く、東京都や大阪府などの大都市圏で少なくなっています。
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上位県と下位県の比較
第1次産業就業者数が多い上位5県
2020年度の第1次産業就業者数ランキングでは、北海道が156,298人(偏差値95.9)で全国1位となりました。北海道は日本最大の農業生産地であり、広大な農地を活かした畑作や酪農が盛んです。また、周囲を海に囲まれた地理的特性から漁業も発達しており、第1次産業が地域経済の重要な基盤となっています。
2位は長野県で86,411人(偏差値67.9)、3位は熊本県で71,768人(偏差値62.0)、4位は千葉県で69,472人(偏差値61.1)、5位は茨城県で69,281人(偏差値61.0)となっています。上位県には農業が盛んな地域や、漁業が発達している地域が多く含まれており、第1次産業が地域経済において重要な役割を果たしていることがわかります。
第1次産業就業者数が少ない下位5県
最も第1次産業就業者数が少なかったのは福井県で12,640人(偏差値38.3)でした。福井県は製造業を中心とした産業構造となっており、特に繊維産業や眼鏡産業が発達しています。地形的に平野部が限られていることも、第1次産業の発展に制約を与えていると考えられます。
46位は奈良県で13,589人(偏差値38.7)、45位は石川県で14,815人(偏差値39.2)、44位は富山県で15,431人(偏差値39.5)、43位は滋賀県で15,971人(偏差値39.7)となっています。下位県には北陸地方の県や、都市化が進んだ地域が多く含まれており、第1次産業よりも第2次産業や第3次産業が中心となっている地域が多いことがわかります。
地域別の特徴分析
北海道・東北地方の農林水産業
北海道・東北地方では、北海道(1位、156,298人)の第1次産業就業者数が突出して多く、青森県(7位、67,001人)、岩手県(10位、57,926人)も上位に位置しています。その他の県は、宮城県(18位、44,050人)、秋田県(23位、40,122人)、山形県(17位、46,647人)、福島県(13位、53,665人)と、全国的に見ると上位から中位に位置しています。
北海道・東北地方全体として第1次産業就業者数が多い理由としては、広大な農地や豊かな森林資源、長い海岸線を持つ地理的特性が挙げられます。特に北海道では、大規模な畑作や酪農が行われており、農業の生産性が高いことが特徴です。また、東北地方では稲作を中心とした農業が盛んであり、特に山形県や秋田県は米どころとして知られています。
特に青森県で第1次産業就業者数が多い理由としては、りんごやにんにくなどの特産品を生産する農業が盛んであることや、三方を海に囲まれた地理的特性から漁業も発達していることが挙げられます。また、広大な森林面積を持ち、林業も地域の重要な産業となっています。
一方、宮城県で東北地方の中では比較的第1次産業就業者数が少ない理由としては、仙台市を中心とした都市化が進んでいることや、第2次産業や第3次産業の発達により、産業構造が多様化していることが挙げられます。また、東日本大震災の影響により、沿岸部の漁業が打撃を受けたことも要因として考えられます。
関東地方の都市化と農業の共存
関東地方では、茨城県(5位、69,281人)と千葉県(4位、69,472人)の第1次産業就業者数が特に多く、東京都(37位、21,996人)と神奈川県(28位、31,897人)の第1次産業就業者数が比較的少なくなっています。その他の県は、栃木県(16位、48,245人)、群馬県(20位、42,484人)、埼玉県(14位、50,424人)と、全国的に見ると上位から中位に位置しています。
関東地方全体として第1次産業就業者数にばらつきがある理由としては、都市化の程度や地理的特性の違いが挙げられます。特に東京都や神奈川県などの大都市圏では、都市化が進み、農地や漁場が限られていることから、第1次産業の就業者数が少なくなっています。
特に茨城県と千葉県で第1次産業就業者数が多い理由としては、首都圏に近接しながらも広大な農地を有していることや、野菜や果物などの都市近郊型農業が発達していることが挙げられます。また、千葉県では房総半島の地理的特性を活かした漁業も盛んであり、第1次産業の多様性が高いことが特徴です。
一方、東京都で第1次産業就業者数が少ない理由としては、高度に都市化が進み、農地や漁場が限られていることが挙げられます。また、地価が高く、農業経営が難しいことも要因として考えられます。ただし、東京都内でも多摩地域や島しょ部では農業や漁業が行われており、都市農業や特産品の生産などの取り組みも見られます。
中部・北陸地方の多様な第1次産業
中部・北陸地方では、長野県(2位、86,411人)と愛知県(6位、69,002人)の第1次産業就業者数が特に多く、福井県(47位、12,640人)と石川県(45位、14,815人)、富山県(44位、15,431人)の第1次産業就業者数が特に少なくなっています。その他の県は、新潟県(11位、55,719人)、山梨県(33位、26,392人)、岐阜県(31位、27,445人)、静岡県(8位、63,034人)と、全国的に見るとばらつきがあります。
中部・北陸地方全体として第1次産業就業者数にばらつきがある理由としては、地理的特性や産業構造の違いが挙げられます。特に長野県と新潟県では、広大な農地を活かした農業が盛んであり、特に新潟県は日本有数の米どころとして知られています。また、長野県では高原野菜や果物の生産が盛んであり、多様な農業が展開されています。
特に長野県で第1次産業就業者数が多い理由としては、標高差を活かした多様な農業が展開されていることが挙げられます。高原地帯ではレタスなどの高原野菜の栽培が盛んであり、また、リンゴやブドウなどの果樹栽培も行われています。さらに、広大な森林面積を持ち、林業も地域の重要な産業となっています。
一方、福井県や石川県、富山県で第1次産業就業者数が少ない理由としては、製造業を中心とした第2次産業が発達していることや、平野部が限られていることから大規模な農業が展開しにくいことが挙げられます。ただし、富山県では稲作や漁業、石川県では能登半島を中心とした農業や漁業など、地域の特性を活かした第1次産業も見られます。
近畿地方の都市化と第1次産業の縮小
近畿地方では、兵庫県(19位、43,535人)と和歌山県(26位、34,773人)の第1次産業就業者数が比較的多く、福井県(47位、12,640人)、奈良県(46位、13,589人)、大阪府(42位、17,807人)、滋賀県(43位、15,971人)の第1次産業就業者数が特に少なくなっています。京都府(39位、21,319人)も低い位置にあります。
近畿地方全体として第1次産業就業者数が少ない理由としては、大阪府を中心とした都市化の進展や、製造業やサービス業などの第2次・第3次産業の発達が挙げられます。特に大阪府や京都府などの都市部では、農地や漁場が限られており、第1次産業の就業者数が少なくなる傾向があります。
特に兵庫県で近畿地方の中では第1次産業就業者数が多い理由としては、県土が広く、淡路島や但馬地方など農業が盛んな地域を有していることや、瀬戸内海や日本海に面した地理的特性から漁業も発達していることが挙げられます。また、都市近郊型農業も発達しており、多様な第1次産業が展開されています。
一方、大阪府で第1次産業就業者数が少ない理由としては、高度に都市化が進み、農地や漁場が限られていることが挙げられます。また、製造業やサービス業などの第2次・第3次産業が発達しており、産業構造が第1次産業から離れていることも要因として考えられます。ただし、大阪府内でも南部や北部では農業が行われており、都市農業や特産品の生産などの取り組みも見られます。
中国・四国地方の地域特性と第1次産業
中国・四国地方では、愛媛県(21位、40,866人)と岡山県(24位、35,699人)、広島県(25位、35,582人)の第1次産業就業者数が比較的多く、鳥取県(41位、20,713人)と香川県(40位、20,792人)の第1次産業就業者数が比較的少なくなっています。その他の県は、島根県(38位、21,440人)、山口県(34位、25,265人)、徳島県(35位、24,448人)、高知県(29位、31,512人)と、全国的に見ると中位から下位に位置しています。
中国・四国地方全体として第1次産業就業者数が中程度である理由としては、地理的特性や産業構造の多様性が挙げられます。特に、瀬戸内海沿岸では温暖な気候を活かした柑橘類の栽培や漁業が盛んであり、山間部では林業や特産品の生産が行われています。
特に愛媛県で第1次産業就業者数が多い理由としては、温暖な気候を活かしたみかんなどの柑橘類の栽培が盛んであることや、リアス式海岸の地形を活かした養殖業が発達していることが挙げられます。また、内陸部では稲作や野菜栽培も行われており、多様な農業が展開されています。
一方、鳥取県で第1次産業就業者数が比較的少ない理由としては、県土が狭く、人口も少ないことが挙げられます。ただし、鳥取県では砂丘地を活かした特産品の生産や、日本海に面した地理的特性を活かした漁業など、地域の特性を活かした第1次産業も見られます。特に、鳥取砂丘らっきょうや二十世紀梨などの特産品は全国的にも知られています。
九州・沖縄地方の農業と漁業の発展
九州・沖縄地方では、熊本県(3位、71,768人)と鹿児島県(9位、61,464人)の第1次産業就業者数が特に多く、沖縄県(36位、23,267人)の第1次産業就業者数が比較的少なくなっています。その他の県は、福岡県(12位、54,589人)、佐賀県(30位、29,617人)、長崎県(22位、40,802人)、大分県(27位、31,917人)、宮崎県(15位、49,175人)と、全国的に見ると上位から中位に位置しています。
九州・沖縄地方全体として第1次産業就業者数が多い理由としては、温暖な気候や肥沃な土壌を活かした農業が盛んであることや、四方を海に囲まれた地理的特性から漁業も発達していることが挙げられます。特に、九州地方は日本の食料供給基地としての役割を担っており、多様な農畜産物の生産が行われています。
特に熊本県で第1次産業就業者数が多い理由としては、阿蘇山麓の広大な農地を活かした農業が盛んであることや、施設園芸や畜産業が発達していることが挙げられます。特に、トマトやスイカなどの野菜や、牛や豚などの畜産物の生産が盛んであり、多様な農業が展開されています。
一方、沖縄県で九州・沖縄地方の中では第1次産業就業者数が比較的少ない理由としては、観光業を中心とした第3次産業が発達していることや、島しょ県という地理的特性から大規模な農業が展開しにくいことが挙げられます。ただし、沖縄県では亜熱帯気候を活かしたサトウキビやパイナップルなどの特産品の生産や、周囲を海に囲まれた地理的特性を活かした漁業も行われており、地域の特性を活かした第1次産業が展開されています。
格差や課題の考察
地域経済への影響
第1次産業就業者数の地域間格差は、地域経済にも影響を与えます。第1次産業就業者数が多い地域では、農林水産業が地域経済の重要な基盤となっており、関連産業の発達や雇用の創出にも貢献しています。一方、第1次産業就業者数が少ない地域では、第2次産業や第3次産業が中心となっており、産業構造の多様性が課題となる場合があります。
例えば、北海道(1位、156,298人)では、第1次産業が地域経済の重要な基盤となっており、農産物の加工や流通などの関連産業も発達しています。また、農業や漁業を活かした観光業も盛んであり、第1次産業と第3次産業の連携による地域経済の活性化が図られています。
一方、福井県(47位、12,640人)では、第1次産業の比率が低く、繊維産業や眼鏡産業などの製造業が中心となっています。このような産業構造は、地域特性を活かした発展という点では合理的ですが、食料自給率の低下や地域間格差の拡大などの課題を抱えています。また、災害時などの非常時における食料供給の脆弱性も指摘されています。
高齢化と担い手不足の課題
第1次産業就業者数の地域間格差は、高齢化と担い手不足という共通の課題も抱えています。特に、第1次産業就業者数が多い地域でも、就業者の高齢化が進んでおり、若い世代の担い手不足が深刻な問題となっています。
例えば、茨城県(5位、69,281人)では、第1次産業就業者数は多いものの、就業者の高齢化が進んでおり、後継者不足が課題となっています。特に、小規模な家族経営の農家では、後継者がいないケースも多く、農地の荒廃や耕作放棄地の増加などの問題が生じています。
一方、愛知県(6位、69,002人)では、製造業を中心とした第2次産業が発達しており、若い世代が第1次産業以外の産業に就業する傾向があります。このような産業構造の変化は、第1次産業の担い手不足をさらに加速させる要因となっています。
地域活性化と第1次産業の可能性
第1次産業就業者数の地域間格差は、地域活性化の観点からも重要な意味を持ちます。第1次産業は、食料の生産だけでなく、国土の保全や環境の維持、伝統文化の継承など、多面的な機能を有しており、地域社会の持続可能性に大きく貢献しています。
例えば、長野県(2位、86,411人)では、高原野菜や果物の生産が盛んであり、これらの特産品を活かした観光業や食品加工業なども発達しています。また、農業体験や農家民宿などのグリーンツーリズムも盛んであり、第1次産業を核とした地域活性化の取り組みが行われています。
一方、大阪府(42位、17,807人)では、都市農業の振興や地産地消の推進など、限られた農地を活かした取り組みが行われています。特に、都市部における農業は、新鮮な農産物の供給だけでなく、環境教育や地域コミュニティの形成など、多面的な機能を有しており、都市の持続可能性を高める役割を担っています。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2020年度の都道府県別第1次産業就業者数データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約42,000人、中央値は約35,000人と平均値が中央値を上回っており、データが右に歪んでいることを示しています。これは、北海道(156,298人)や長野県(86,411人)などの一部の県で第1次産業就業者数が特に多いことを反映しています。
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分布の歪み:データは全体として正の歪みを示しており、右に長い裾を持つ分布となっています。特に、北海道(156,298人)は他の都道府県と比べて突出して高い値を示しており、外れ値と考えられます。
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外れ値の特定:北海道(156,298人)は上側の外れ値と考えられ、平均値を大きく上回っています。これは、北海道の広大な農地や豊かな水産資源を反映していると考えられます。一方、福井県(12,640人)や奈良県(13,589人)などは下側の外れ値と考えられ、平均値を大きく下回っています。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約22,000人、第3四分位数(Q3)は約55,000人で、四分位範囲(IQR)は約33,000人です。これは、中央の50%の都道府県の第1次産業就業者数が22,000人から55,000人の間に収まっていることを示しており、多くの県が比較的近い就業者数であることがわかります。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約28,000人で、変動係数(標準偏差÷平均値)は約67%となり、相対的なばらつきが大きいことを示しています。特に、最高値(北海道、156,298人)と最低値(福井県、12,640人)の差は143,658人と非常に大きく、地域間の格差が顕著であることを示しています。
まとめ
2020年度の都道府県別第1次産業就業者数ランキングでは、北海道が156,298人で1位、福井県が12,640人で47位となりました。上位には北海道、長野県、熊本県などの農業が盛んな地域や、漁業が発達している地域が多く、下位には福井県、奈良県、石川県などの製造業が中心の地域や都市化が進んだ地域が多く見られました。
第1次産業就業者数の地域差は、地理的特性、産業構造、都市化の程度など様々な要素を反映しており、この差は地域経済、食料自給率、国土保全など様々な面に影響を与えています。特に、第1次産業就業者数が多い地域では、農林水産業が地域経済の重要な基盤となっており、関連産業の発達や雇用の創出にも貢献しています。
統計分析からは、都道府県間の第1次産業就業者数の格差が顕著であることがわかります。特に、北海道や長野県などの上位県と、福井県や奈良県などの下位県との間には大きな差があります。これは、地理的特性や産業構造の違いを反映していると考えられます。
第1次産業は、食料の生産だけでなく、国土の保全や環境の維持、伝統文化の継承など、多面的な機能を有しており、地域社会の持続可能性に大きく貢献しています。しかし、就業者の高齢化や担い手不足など、多くの課題も抱えています。これらの課題に対応するためには、第1次産業の生産性向上や付加価値の創出、若い世代の参入促進など、総合的な取り組みが求められています。