はじめに
消防機関の出動回数は、各地域の安全・防災体制や緊急事態の発生状況を示す重要な指標です。2021年度のデータを基に、都道府県別の人口10万人当たり消防機関出動回数を分析し、地域による違いや特徴を明らかにします。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細
1位:島根県
島根県が4,401.5回(偏差値69.4)で全国1位となっています。中国地方の中でも特に高い出動回数を記録しており、人口密度の低い地域特有の広域救急搬送の必要性や、高齢化率の高さが背景にあると考えられます。
2位:岩手県
岩手県が4,347.5回(偏差値68.8)で2位です。東北地方の広い県土を持つ岩手県では、救急搬送距離の長さや冬季の雪害対応などが出動回数の増加要因となっている可能性があります。
3位:青森県
青森県が4,276.5回(偏差値68.0)で3位に位置しています。同じく東北地方で、厳しい冬季気候や高齢化の進展が消防機関の出動回数増加に影響していると推測されます。
4位:石川県
石川県が4,090.0回(偏差値65.8)で4位となっています。北陸地方で唯一上位にランクインしており、豪雪地帯としての特性が出動回数に影響している可能性があります。
5位:山梨県
山梨県が3,977.9回(偏差値64.5)で5位です。山間部が多く、救急搬送や山岳救助などの特殊な出動が多いことが要因として考えられます。
下位5県の詳細
47位:沖縄県
沖縄県が1,070.2回(偏差値30.3)で全国最下位となっています。温暖な気候で自然災害が比較的少なく、また若年人口の割合が高いことが出動回数の少なさにつながっていると考えられます。
46位:徳島県
徳島県が1,330.2回(偏差値33.3)で46位です。四国地方の中でも出動回数が少なく、比較的安定した地域特性を示しています。
45位:宮崎県
宮崎県が1,366.7回(偏差値33.8)で45位となっています。九州地方の中では出動回数が少なく、温暖な気候や地域特性が影響している可能性があります。
44位:神奈川県
神奈川県が1,586.4回(偏差値36.4)で44位です。人口密度が高い都市部でありながら、効率的な消防体制や医療機関の充実により出動回数が抑制されている可能性があります。
43位:香川県
香川県が1,855.0回(偏差値39.5)で43位となっています。四国地方の中では比較的出動回数が少なく、コンパクトな県土による効率的な対応が影響している可能性があります。
地域別の特徴分析
東北地方の特徴
東北地方では岩手県(2位)、青森県(3位)、福島県(11位)、秋田県(12位)、宮城県(13位)が上位から中位に位置しています。広い県土、厳しい冬季気候、高齢化の進展などが共通の要因として考えられます。
中国・四国地方の格差
中国地方では島根県が1位と突出している一方、四国地方では徳島県(46位)、香川県(43位)が下位に位置するなど、地域内での格差が見られます。
都市部の特徴
東京都(20位)、大阪府(9位)、愛知県(29位)、神奈川県(44位)など大都市圏では、人口密度や医療体制の違いにより出動回数に大きなばらつきが見られます。
格差と課題の考察
消防機関出動回数には最大で約4.1倍の格差があり、地域による差が極めて大きいことが分かります。上位県では広域対応や高齢化対応、気象災害対応などの課題がある一方、下位県では効率的な消防体制の構築や予防対策の充実が図られている可能性があります。
この格差は、各地域の地理的条件、人口構成、気候条件、社会基盤の整備状況などの複合的な要因によるものと考えられ、単純に多い・少ないで評価するのではなく、地域特性に応じた適切な消防体制の構築が重要です。
統計データの基本情報と分析
2021年度の都道府県別消防機関出動回数(人口10万人当たり)の統計分析では、平均値が2,747.6回、中央値が2,604.8回となっており、平均値が中央値を上回っていることから、上位県に引っ張られた右に歪んだ分布を示しています。
標準偏差は大きく、都道府県間でのばらつきが相当に大きいことが分かります。最大値(4,401.5回)と最小値(1,070.2回)の差は3,331.3回にも及び、約4.1倍の地域格差の大きさを物語っています。
第1四分位数と第3四分位数による四分位範囲の分析からも、中央50%の都道府県間でも相当な格差があることが確認できます。
特に島根県(4,401.5回)は他県と大きく離れた外れ値として位置しており、同県特有の地理的・社会的条件が出動回数に大きな影響を与えていることが統計的にも確認できます。
まとめ
2021年度の消防機関出動回数ランキングでは、島根県が圧倒的な1位を記録し、東北地方の県が上位を占める傾向が見られました。一方、沖縄県、徳島県、宮崎県などが下位となり、地域による大きな格差が確認されました。
この格差は地理的条件、気候条件、人口構成、社会基盤の整備状況など複合的な要因によるものであり、各地域の特性に応じた適切な消防・救急体制の構築と、効果的な予防対策の推進が重要な課題となっています。