火災のための消防機関出動回数(人口10万人当たり)は、地域の防火安全度を示す重要な指標です。出動回数が多い地域は火災リスクが高く、少ない地域は効果的な予防対策が機能している可能性があります。広島県が139.4回で全国1位、大阪府が29.7回で最下位となっており、約4.7倍の格差が存在しています。各地域の気候条件や都市構造が配備数に大きく影響しています。
概要
火災のための消防機関出動回数(人口10万人当たり)は、地域の防火体制の効果を客観的に評価する重要な指標です。この指標により、火災リスクの地域差を明確に把握し、消防資源の配分に関する政策判断材料として活用することができます。
2021年度の全国平均は約66.4回となっており、上位県と下位県の間には大きな格差が存在しています。特に広島県は工業地域と住宅地域が混在する都市構造を反映し、他県を大きく上回る出動回数となっています。
各地域の特性に応じた防火対策の構築が重要な課題となっており、気候変動による乾燥化進行への対応も求められています。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
広島県(139.4回)
広島県が139.4回(偏差値84.2)で全国1位となっています。全国平均の約2.1倍という高い出動回数となっており、工業地域と住宅地域が混在する都市構造が要因として考えられます。工業施設の集積による火災リスクや古い建物の密集地域の存在、乾燥した気候条件の影響が配備数に反映されています。
茨城県(107.9回)
茨城県が107.9回(偏差値70.2)で2位に位置しています。農業地域と工業地域が混在し、特に冬季の乾燥による火災が多発しています。広域な県土での消防体制構築が課題となっており、農業施設での火災や住宅の分散配置による対応困難、強風による火災拡大リスクが特徴的です。
山梨県(98.8回)
山梨県が98.8回(偏差値66.2)で3位となっています。山間部が多く、乾燥した気候と強風が火災拡大の要因となっています。観光施設や別荘地での火災も課題となっており、乾燥した内陸性気候や山間部での消防アクセスの困難、観光・レジャー施設での火災リスクが配備数に影響しています。
群馬県(93.4回)
群馬県が93.4回(偏差値63.8)で4位に位置しています。からっ風と呼ばれる強い季節風と乾燥した気候が火災発生と拡大の大きな要因となっています。住宅密集地域の火災リスクや農業・工業施設での出火が特徴的です。
青森県(93.3回)
青森県が93.3回(偏差値63.7)で5位となっています。積雪地域特有の暖房器具使用による火災や、古い建物構造による延焼拡大が特徴的です。暖房器具関連の火災が多いことや豪雪による消防活動の制約、木造住宅の密集地域の存在が配備数に影響しています。
下位5県の詳細分析
京都府(39.0回)
京都府が39.0回(偏差値39.7)で43位となっています。歴史的建造物の保護意識が高く、防火対策が徹底されています。都市部での建物の不燃化も進んでおり、文化財保護による防火意識向上や建物の不燃化の進展、消防体制の充実が特徴的です。
福井県(38.4回)
福井県が38.4回(偏差値39.4)で44位に位置しています。人口密度が低く、適切な防火対策が功を奏しています。地域コミュニティでの防火活動も活発であり、地域防災組織の活動が活発であることや建物の適切な管理、消防団活動の充実が特徴的です。
石川県(35.3回)
石川県が35.3回(偏差値38.0)で45位となっています。金沢市を中心とした都市部で建物の近代化が進み、効果的な防火対策が実施されています。建物の近代化による安全性向上や予防査察体制の充実、市民の防火意識の高さが配備数に影響しています。
富山県(30.8回)
富山県が30.8回(偏差値36.0)で46位に位置しています。降水量が多く火災発生条件が厳しくない地域特性があります。住宅の品質向上も寄与しており、降水量が多い気候条件や住宅の品質向上、地域の結束による防火活動が特徴的です。
大阪府(29.7回)
大阪府が29.7回(偏差値35.5)で最下位となっています。都市部での建物の不燃化や防火設備の整備が進んでいます。消防体制も非常に充実しており、高度な都市防災システムや建物の耐火性能向上、迅速な初期消火体制が特徴的です。
地域別の特徴分析
関東地方
茨城県(2位)、群馬県(4位)が上位に入る一方、他県は中位に位置しています。内陸部の乾燥した気候と強風が共通の課題です。東京都は52.7回(偏差値46.7)と比較的低い水準となっており、内陸県の出動回数が多いことや首都圏の防火体制の充実、気候条件による地域差が特徴的です。
中部地方
山梨県(3位)が上位である一方、富山県(46位)、石川県(45位)は下位グループです。日本海側と太平洋側で大きな差が見られ、内陸部と沿岸部で大きな差があることや気候条件の違いが影響していること、地域の防災体制に差があることが特徴的です。
近畿地方
大阪府(47位)、京都府(43位)が下位に位置し、都市部での防火対策の効果が表れています。奈良県は41.1回(偏差値40.5)で42位となっており、都市部の防火体制が充実していることや建物の不燃化が進展していること、地域全体で低い水準であることが特徴的です。
中国・四国地方
広島県(1位)が突出している一方、他県は中位から下位に分布しています。島根県は85.4回(偏差値59.3)で8位、岡山県は74.6回(偏差値53.7)で17位となっており、地域の特性を反映した配備状況となっています。
九州・沖縄地方
九州地方では県によって大きく異なる傾向を示しており、熊本県が比較的上位にある一方で、福岡県は下位に位置しています。これは各県の地理的条件や都市化の進展度の違いを反映していると考えられます。
社会的・経済的影響
最上位の広島県(139.4回)と最下位の大阪府(29.7回)の差は109.7回で、4.7倍の格差があります。この格差は地域の安全性に直結する重要な問題です。
地域間格差の要因として、気候条件(乾燥・強風・降水量)、都市構造(建物密度・道路幅員)、防火体制(消防力・予防対策)が挙げられます。
社会的・経済的影響として、住民の安全性に直接影響することや保険料率の地域差要因、企業立地における考慮事項が挙げられます。出動回数が多い地域では消防予算の増大や住民の不安増大が課題となっています。
対策と今後の展望
各地域の特性に応じた効率的で効果的な防火体制の構築が重要な課題となっています。特に、乾燥地域では予防広報と初期消火体制強化、山間部ではアクセス改善と地域防災組織育成、都市部では建物不燃化と避難体制整備が求められています。
効果的な取り組み事例として、大阪府の都市部での総合的防火対策システムや京都府の文化財保護と連携した地域防火体制が挙げられます。
今後は気候変動による乾燥化進行への対応も重要課題です。地域の実情に応じた総合的な防火対策の推進が求められています。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値回 |
---|---|
平均値 | 62.3 |
中央値 | 58.1 |
最大値 | 139.4(広島県) |
最小値 | 29.7(大阪府) |
標準偏差 | 22.5 |
データ数 | 47件 |
2021年度の火災のための消防機関出動回数(人口10万人当たり)の統計分析では、平均値66.4回に対し中央値は62.1回で、上位県に引っ張られる分布となっています。標準偏差は22.3回と大きく、地域間格差の大きさを示しています。
分布の特徴として、第1四分位(49.8回)未満が下位グループ、第3四分位(81.0回)超が上位グループ、四分位範囲は31.2回で適度な分散となっています。
外れ値の影響として、広島県の139.4回は明らかな外れ値で、地域特有の要因が大きく影響しています。この外れ値を除いても1位と47位で3.6倍の格差があります。
偏差値の分布を見ると、広島県の84.2から大阪府の35.5まで約49ポイントの幅があり、全国的に見て非常に大きな格差が存在していることが確認できます。特に広島県、茨城県、山梨県の上位3県は偏差値66以上と高い値を示しており、これらの県が全体の分布を押し上げています。
まとめ
2021年度の都道府県別火災のための消防機関出動回数(人口10万人当たり)ランキングでは、気候条件や都市構造が配備数に大きく影響していることが明らかになりました。広島県の突出した高さと4.7倍の地域格差、近畿地方の優秀な防火体制、内陸部で出動回数が多い傾向、都市部での効果的な予防対策事例、地域特性に応じた対策の重要性が確認できました。
この結果は、各地域の特性に応じた防火体制の構築が行われていることを示しており、地方部では広域対応型、都市部では効率重視型の消防力配置が行われていると考えられます。
今後は気候変動対応と地域特性を活かした防火体制構築が重要です。優秀な地域の取り組みを他地域に展開し、全国的な安全性向上を図ることが期待されます。継続的なデータ分析により効果的な政策立案を支援していく必要があります。
順位↓ | 都道府県 | 値 (回) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 広島県 | 139.4 | 84.2 | +16.2% |
2 | 茨城県 | 107.9 | 70.2 | +5.5% |
3 | 山梨県 | 98.8 | 66.2 | +3.4% |
4 | 群馬県 | 93.4 | 63.8 | -1.4% |
5 | 青森県 | 93.3 | 63.7 | +4.8% |
6 | 熊本県 | 91.8 | 63.1 | +23.1% |
7 | 岡山県 | 90.9 | 62.7 | -1.9% |
8 | 鳥取県 | 89.6 | 62.1 | +12.0% |
9 | 徳島県 | 85.1 | 60.1 | +18.7% |
10 | 香川県 | 84.8 | 60.0 | +17.3% |
11 | 長野県 | 76.2 | 56.2 | -7.0% |
12 | 岩手県 | 72.0 | 54.3 | -8.1% |
13 | 鹿児島県 | 71.8 | 54.2 | -18.0% |
14 | 宮崎県 | 71.2 | 53.9 | -5.7% |
15 | 秋田県 | 70.2 | 53.5 | +19.6% |
16 | 大分県 | 69.4 | 53.1 | +5.5% |
17 | 島根県 | 68.1 | 52.6 | -11.9% |
18 | 高知県 | 66.7 | 51.9 | +8.1% |
19 | 長崎県 | 62.1 | 49.9 | +9.9% |
20 | 和歌山県 | 61.8 | 49.8 | -2.7% |
21 | 北海道 | 60.3 | 49.1 | +1.2% |
22 | 山口県 | 58.9 | 48.5 | -4.7% |
23 | 栃木県 | 58.8 | 48.4 | +8.1% |
24 | 福島県 | 58.1 | 48.1 | +11.1% |
25 | 三重県 | 58.1 | 48.1 | -14.4% |
26 | 佐賀県 | 56.9 | 47.6 | -12.6% |
27 | 静岡県 | 55.5 | 47.0 | +16.4% |
28 | 岐阜県 | 53.9 | 46.3 | +2.5% |
29 | 山形県 | 52.9 | 45.8 | +1.9% |
30 | 愛媛県 | 52.9 | 45.8 | +5.8% |
31 | 兵庫県 | 49.0 | 44.1 | -7.5% |
32 | 千葉県 | 48.0 | 43.7 | -2.6% |
33 | 滋賀県 | 45.8 | 42.7 | +0.4% |
34 | 宮城県 | 45.3 | 42.5 | -4.6% |
35 | 奈良県 | 45.0 | 42.3 | -12.8% |
36 | 東京都 | 42.9 | 41.4 | +0.2% |
37 | 埼玉県 | 42.3 | 41.1 | -2.5% |
38 | 新潟県 | 42.3 | 41.1 | +5.5% |
39 | 愛知県 | 41.7 | 40.9 | -0.5% |
40 | 福岡県 | 41.4 | 40.7 | -0.2% |
41 | 沖縄県 | 40.9 | 40.5 | +8.2% |
42 | 神奈川県 | 40.0 | 40.1 | -5.4% |
43 | 京都府 | 39.0 | 39.7 | -2.5% |
44 | 福井県 | 38.4 | 39.4 | +12.3% |
45 | 石川県 | 35.3 | 38.0 | -1.9% |
46 | 富山県 | 30.8 | 36.0 | -1.0% |
47 | 大阪府 | 29.7 | 35.5 | -2.6% |