2022年度の火災保険住宅物件・一般物件保険金受取件数(一般世帯千世帯当たり)で、宮崎県が62.06件(偏差値89.0)で全国1位を記録。一方、沖縄県は7.51件(偏差値36.5)で最下位となった。上位5位には鹿児島県(41.67件)、熊本県(34.77件)、北海道(34.29件)、佐賀県(34.02件)が続いた。九州地方の件数が突出し、都市部では相対的に少ない傾向が明確に表れている。
概要
火災保険住宅物件・一般物件保険金受取件数は、住宅の安全性と地域リスクを示す重要指標である。千世帯当たりの受取件数により、地域の災害リスク分布が明確に把握可能となる。この指標が重要な理由は、住宅安全政策の基礎資料として活用され、保険料設定の客観的根拠を提供することである。また、地域防災計画策定に不可欠なデータとしても重要な役割を果たしている。
2022年度は全国平均20.45件で、九州地方の高い数値が全体を押し上げている。地域間で約8.3倍の格差が生じており、気象災害の影響や建物構造の違いが浮き彫りになっている。台風常襲地域や火山活動地域、豪雪地帯など、各地域の気象条件や自然災害リスクが大きく影響していることが分かる。
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上位5県の詳細分析
宮崎県(62.06件)
宮崎県は62.06件(偏差値89.0)で圧倒的な全国1位。台風常襲地域として強風・豪雨被害が頻発している。木造住宅比率が高く、築年数の古い建物が多いことが影響している。台風シーズンの風水害集中や沿岸部での塩害影響、木造住宅の脆弱性が主な要因である。南九州特有の気象条件により、住宅への被害が頻繁に発生している。
鹿児島県(41.67件)
鹿児島県は41.67件(偏差値69.4)で2位。火山灰による建物劣化と台風被害が重複している。離島部では修繕コストが高額化している。桜島火山灰の継続的影響や台風による強風被害、塩害と火山灰の複合影響が特徴的な災害リスクとなっている。火山活動と台風被害の両方にさらされる地理的特性が大きな影響を与えている。
熊本県(34.77件)
熊本県は34.77件(偏差値62.7)で3位。2016年熊本地震の影響が継続している。地震による建物の潜在的損傷が顕在化しており、地震による構造的損傷や豪雨災害の頻発、復旧建物の品質格差が継続する課題となっている。地震災害の長期的影響が住宅の安全性に大きな影響を与えている。
北海道(34.29件)
北海道は34.29件(偏差値62.3)で4位。積雪・凍結による特殊な損害が多発している。広域性により修繕対応が困難な状況である。雪害・凍害による損傷や暖房設備関連事故、人口減少地域での対応遅延が寒冷地特有のリスクとなっている。広大な面積と厳しい気象条件が影響している。
佐賀県(34.02件)
佐賀県は34.02件(偏差値62.0)で5位。有明海沿岸部の高潮被害と内陸部の豪雨被害が併存している。農業用建物の被害も影響している。平野部での浸水リスクや強風による農業施設被害、高齢化による維持管理困難が地域特性として挙げられる。九州地方の気象災害リスクが顕在化している。
下位5県の詳細分析
沖縄県(7.51件)
沖縄県は7.51件(偏差値36.5)で最下位。鉄筋コンクリート造住宅が主流で構造的に堅牢である。台風対策が建築基準に反映されている。RC造住宅の高い耐久性や台風対策の建築基準、比較的新しい住宅ストックが低い受取件数の要因となっている。台風多発地域だが、徹底された建築基準により被害を最小限に抑えている。
奈良県(10.62件)
奈良県は10.62件(偏差値39.5)で46位。内陸性気候で極端気象が少ない。住宅密集地での延焼リスクは存在するものの実際の被害は限定的である。台風被害の軽減や豪雪地帯ではない立地、火山活動の影響がないことが安定した住環境を形成している。
神奈川県(11.23件)
神奈川県は11.23件(偏差値40.1)で45位。都市部での建築基準厳格化と防災意識の高さが寄与している。マンション比率が高く個別被害が分散している。首都圏の住宅事情や気象条件の違いが反映されており、都市防災機能の充実も影響している。
東京都(11.58件)
東京都は11.58件(偏差値40.4)で43位。高層建築物の割合が高く、個別住宅の被害が相対的に少ない。都市防災機能の充実も影響している。首都圏の住宅事情や気象条件の違いが反映されており、建築基準の厳格化が奏功している。
大阪府(11.58件)
大阪府は11.58件(偏差値40.4)で43位。東京都と同率で、高層建築物の割合が高く、個別住宅の被害が相対的に少ない。都市防災機能の充実も影響している。都市部特有の低水準を維持しており、建築基準と防災体制の充実効果が表れている。
地域別の特徴分析
関東地方
首都圏を中心に全国平均を下回る県が多数。東京都(11.58件)、神奈川県(11.23件)など都市部では建築基準の厳格化が奏功している。一方で栃木県(16.45件)など内陸部では豪雨災害の影響が顕在化している。首都圏の住宅事情や気象条件の違いが反映されている。
関西地方
奈良県(10.62件)が最も少なく、内陸性気候の安定性を反映している。大阪府(11.58件)も都市部特有の低水準を維持している。ただし和歌山県(14.2件)では紀伊半島の地形的影響で豪雨被害が発生している。内陸部の奈良県は特に安定した気象条件を享受している。
中部地方
富山県(31.55件)と石川県(27.83件)が上位にランクインしている。日本海側の厳しい気象条件が影響しており、豪雪や冬季雷による被害が特徴的である。一方、静岡県(16.73件)は比較的安定している。日本海側気候の厳しさが住宅に大きな影響を与えている。
九州・沖縄地方
九州7県すべてが全国平均を上回る高い数値を記録している。宮崎県(62.06件)を筆頭に、台風・豪雨災害の影響が顕著である。火山活動による建物劣化も重要な要因となっている。木造住宅比率の高さが被害を拡大しており、特に南九州では桜島の火山活動による継続的被害や台風の直撃による風水害、豪雨による土砂災害リスクが顕在化している。一方、沖縄県は7.51件で最下位となっており、台風対策が徹底された建築構造が影響している。
中国・四国地方
比較的安定した数値を示すものの、愛媛県(12.22件)では瀬戸内海沿岸部での高潮被害が影響している。島根県(14.38件)では日本海側特有の豪雪被害も一因となっている。岡山県(14.58件)、香川県(12.26件)が下位に集中しており、瀬戸内海気候の穏やかさが反映されている。
東北・北海道地方
北海道(34.29件)が上位に位置し、寒冷地特有のリスクを反映している。東北地方では宮城県(14.08件)が比較的高く、東日本大震災の継続的影響も考慮される。広大な面積と厳しい気象条件が影響しており、マイナス30度を下回る極寒や暖房設備への依存度の高さ、建物の凍害リスクが寒冷地特有の課題となっている。
社会的・経済的影響
最上位の宮崎県(62.06件)と最下位の沖縄県(7.51件)では約8.3倍の格差が存在している。この大きな地域間格差は、住宅の安全性格差を如実に示している。地域間格差の主要因として気象条件の地域差(台風頻度、降水量、積雪量の違い)、建物構造の違い(木造比率、築年数、耐震基準適合率)、地形・立地条件(沿岸部、山間部、平野部の災害リスク差)が挙げられる。
経済的影響として、高受取地域では住宅維持費の増大や保険料負担の重い地域格差、建設・修繕業界への経済効果が見られる。社会的影響では、住宅の安全性格差が住民の生活安定度に直結しており、住宅取得コストの地域格差拡大や高齢者世帯の維持管理負担増加、地域経済への長期的影響が社会的な課題となっている。
対策と今後の展望
高受取件数地域での取り組みが重要課題となっている。宮崎県では県独自の住宅耐風基準を策定し、新築・改築時の適用を推進している。鹿児島県では火山灰対策技術の研究開発に注力している。建築基準の地域特性対応(気候条件を考慮した基準策定)、予防保全の推進(定期点検・早期修繕の制度化)、地域防災体制強化(早期警戒システムの整備)が効果的な対策として挙げられる。
成功事例として沖縄県の台風対策建築基準が参考となる。RC造住宅普及と建築技術向上により、台風多発地域でも低い被害水準を実現している。今後の課題として気候変動による災害激甚化への対応が急務である。全国的な建築基準見直しと地域特性に応じた防災対策の体系化が必要となっている。
指標 | 値件 |
---|---|
平均値 | 21.5 |
中央値 | 18 |
最大値 | 62.06(宮崎県) |
最小値 | 7.51(沖縄県) |
標準偏差 | 10.4 |
データ数 | 47件 |
統計データの基本情報と分析
統計分析では、平均値20.45件に対し中央値が19.47件とやや下回り、上位県による押し上げ効果を確認している。標準偏差11.85は比較的大きく、地域間格差の存在を数値的に裏付けている。
宮崎県の62.06件は明らかな外れ値として、全体分布に大きな影響を与えている。第1四分位12.84件、第3四分位26.32件の範囲に約半数の都道府県が集中している。分布特性として、九州地方の高い数値群と都市部の低い数値群に二極化している。この傾向は気象条件と建築環境の地域差を反映した構造的特徴であり、平均値と中央値の比較、分布の歪みの有無、外れ値の特定と影響、四分位範囲による分布の特徴、標準偏差によるばらつきの程度を考慮した分析が重要である。
まとめ
2022年度火災保険受取件数分析から、九州地方の突出した高い数値(気象災害の地域集中を反映)、都市部の相対的安全性(建築基準と防災体制の充実効果)、約8倍の地域間格差(住宅安全性の地域差が顕著)、気象条件の決定的影響(台風、豪雨、積雪が主要因)、建物構造の重要性(RC造普及地域での被害軽減効果)、継続的災害影響(地震、火山活動の長期的影響)が主要な発見として得られた。
今後は気候変動対応と地域特性を考慮した住宅政策が不可欠である。継続的なデータ分析により、効果的な防災対策の検証と改善を進めることが重要となっている。各地域の成功事例を全国展開し、住宅の安全性向上を図る取り組みが求められている。
順位↓ | 都道府県 | 値 (件) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 宮崎県 | 62.06 | 89.0 | +251.4% |
2 | 鹿児島県 | 41.67 | 69.4 | +155.6% |
3 | 熊本県 | 34.77 | 62.7 | +53.5% |
4 | 北海道 | 34.29 | 62.3 | +22.7% |
5 | 佐賀県 | 34.02 | 62.0 | +22.5% |
6 | 山形県 | 33.52 | 61.5 | +20.8% |
7 | 福井県 | 32.97 | 61.0 | -19.9% |
8 | 秋田県 | 32.64 | 60.7 | -3.4% |
9 | 富山県 | 31.55 | 59.6 | +2.3% |
10 | 青森県 | 31.45 | 59.5 | +48.0% |
11 | 大分県 | 30.60 | 58.7 | +142.1% |
12 | 長崎県 | 29.46 | 57.6 | +66.8% |
13 | 鳥取県 | 28.19 | 56.4 | +16.5% |
14 | 福岡県 | 28.09 | 56.3 | +33.1% |
15 | 石川県 | 27.83 | 56.1 | +18.4% |
16 | 群馬県 | 27.48 | 55.7 | +68.0% |
17 | 滋賀県 | 24.06 | 52.4 | +16.0% |
18 | 岐阜県 | 22.00 | 50.4 | +7.3% |
19 | 山口県 | 21.77 | 50.2 | +80.1% |
20 | 新潟県 | 18.60 | 47.2 | -15.3% |
21 | 徳島県 | 18.53 | 47.1 | +69.5% |
22 | 埼玉県 | 18.35 | 46.9 | +45.9% |
23 | 山梨県 | 18.20 | 46.8 | -0.6% |
24 | 三重県 | 17.97 | 46.6 | +25.3% |
25 | 千葉県 | 17.13 | 45.8 | -2.5% |
26 | 静岡県 | 16.73 | 45.4 | +26.8% |
27 | 栃木県 | 16.45 | 45.1 | -6.4% |
28 | 岩手県 | 15.83 | 44.5 | -30.8% |
29 | 高知県 | 15.29 | 44.0 | +98.1% |
30 | 愛知県 | 15.23 | 43.9 | +3.9% |
31 | 岡山県 | 14.58 | 43.3 | +26.8% |
32 | 長野県 | 14.56 | 43.3 | +24.3% |
33 | 茨城県 | 14.43 | 43.2 | -16.9% |
34 | 島根県 | 14.38 | 43.1 | -13.2% |
35 | 和歌山県 | 14.20 | 42.9 | +8.5% |
36 | 宮城県 | 14.08 | 42.8 | -7.7% |
37 | 福島県 | 13.95 | 42.7 | +13.1% |
38 | 兵庫県 | 13.08 | 41.9 | +3.8% |
39 | 広島県 | 12.78 | 41.6 | +3.1% |
40 | 京都府 | 12.72 | 41.5 | -3.3% |
41 | 香川県 | 12.26 | 41.1 | -1.1% |
42 | 愛媛県 | 12.22 | 41.0 | +47.0% |
43 | 東京都 | 11.58 | 40.4 | -11.5% |
44 | 大阪府 | 11.58 | 40.4 | -17.3% |
45 | 神奈川県 | 11.23 | 40.1 | -16.6% |
46 | 奈良県 | 10.62 | 39.5 | +0.1% |
47 | 沖縄県 | 7.51 | 36.5 | -6.7% |