都道府県別農家世帯の家計費ランキング(2003年度)

概要

農家世帯の家計費は、農家の生活水準や経済状況を示す重要な指標です。本記事では、2003年度の都道府県別農家世帯の家計費のランキングを紹介し、地域間の差異や特徴について分析します。この指標は農家の生活実態や地域経済との関連性を理解する上で重要な手がかりとなります。

地図データを読み込み中...

上位県と下位県の比較

上位5県と下位5県の詳細説明

上位5県の特徴

滋賀県56万円(偏差値71.5)で全国1位となっています。琵琶湖周辺の平野部で稲作を中心とした農業が盛んであり、また京阪神への通勤圏内にあることから兼業農家の割合が高いことが特徴です。農外収入が家計を支えている場合が多く、都市近郊型の生活様式が家計費に反映されています。

福井県53万円(偏差値67.4)で2位につけています。繊維産業などの地場産業が発達しており、兼業農家の割合が高いのが特徴です。農業と他産業を組み合わせた安定した収入基盤が、比較的高い家計費につながっていると考えられます。

大阪府52万円(偏差値66.0)で3位となっています。都市近郊農業が主体で、高収益作物の栽培や直売など、都市の消費者に直結した農業経営が行われています。大都市圏の高い物価水準や都市的な生活様式が家計費に反映されていると考えられます。

新潟県51万円(偏差値64.6)で4位です。日本有数の米どころであり、稲作を中心とした農業が発達しています。また、積雪地域特有の生活コストや、都市部への交通アクセスなども家計費に影響していると考えられます。

富山県50万円(偏差値61.9)で5位です。製造業が発達しており、兼業農家の割合が高いのが特徴です。安定した農外収入が家計を支えていると考えられます。また、積雪地域特有の住居費や光熱費なども家計費を押し上げる要因となっているかもしれません。

下位5県の特徴

沖縄県24万円(偏差値22.5)で全国最下位の47位となっています。亜熱帯気候を活かした特色ある農業が行われていますが、小規模経営が多く、農業収入が限られていることが家計費の低さに影響していると考えられます。また、離島という地理的条件や地域経済の特性も要因となっています。

鹿児島県28万円(偏差値28.0)で46位となっています。農業が主要産業の一つですが、小規模経営が多く、農業収入が限られている場合が多いと考えられます。また、地方の物価水準の低さも家計費の低さに影響しています。

山口県32万円(偏差値34.7)で45位となっています。中山間地域が多く、小規模な農業経営が中心です。農業収入が限られていることに加え、地方の物価水準の低さも家計費に反映されています。

大分県33万円(偏差値36.0)で44位です。中山間地域が多く、小規模な農業経営が中心です。農業収入が限られていることに加え、地方の物価水準の低さも家計費に反映されています。

宮崎県34万円(偏差値37.5)で43位となっています。農業が盛んな地域ですが、小規模経営が多く、農業収入が限られていることが家計費の低さに影響していると考えられます。また、地方の物価水準の低さも要因の一つです。

地域別の特徴分析

地域ブロック別の傾向

北陸地方は全体的に農家世帯の家計費が高い傾向にあります。福井県(2位)、新潟県(4位)、富山県(5位)、石川県(6位)と上位を多く占めています。これは兼業農家の割合が高く、製造業などでの安定した農外収入が家計を支えているケースが多いと考えられます。

近畿地方も滋賀県(1位)、大阪府(3位)など比較的家計費が高い県が見られます。これらの地域は都市近郊型農業が発達しており、また大都市への通勤圏内にあることから兼業農家の割合も高いと考えられます。

一方、九州・沖縄地方は全体的に家計費が低い傾向にあります。沖縄県(47位)、鹿児島県(46位)、大分県(44位)、宮崎県(43位)、熊本県(42位)と下位に集中しています。これらの地域は農業が主要産業の一つですが、小規模経営が多く、また地方の物価水準の低さも家計費に反映されていると考えられます。

都市部と地方の比較

大都市を抱える都道府県や大都市近郊では、一般的に農家世帯の家計費が高い傾向が見られます。滋賀県(1位)、大阪府(3位)、東京都(11位)などが上位に位置しています。これらの地域では都市的な生活様式や高い物価水準が家計費に影響していると考えられます。

特に注目すべきは、首都圏の都県が想定よりも下位にあることです。東京都(11位)、神奈川県(27位)、埼玉県(26位)、千葉県(25位)は中位から上位中位に位置しており、必ずしも最上位を占めているわけではありません。これは、これらの地域の農家の特性や農業経営の形態などが影響していると考えられます。

一方、地方圏では農家世帯の家計費が低い傾向にあります。特に九州・沖縄地方や中国地方の一部では家計費が低くなっています。これらの地域では地方の物価水準の低さや、農業中心の生活様式が家計費に反映されていると考えられます。

農業形態による影響

都市近郊型農業が発達している地域(滋賀県、大阪府など)では、高収益作物の生産や直売所での販売など、比較的安定した農業収入を得ている農家も多いと考えられます。また、兼業農家の割合も高く、農外収入が家計を支えているケースも多いでしょう。これらの要因が家計費の高さに影響していると考えられます。

一方、中山間地域や離島が多い地域(九州・沖縄地方の一部など)では、小規模経営が多く、農業収入が限られていることが家計費の低さに影響していると考えられます。また、これらの地域では専業農家の割合が比較的高い場合もあり、農業収入への依存度が高いことも要因の一つかもしれません。

格差や課題の考察

地域間格差の実態

農家世帯の家計費には大きな地域間格差が存在します。最も家計費が高い滋賀県(56万円)と最も低い沖縄県(24万円)では2.3倍の差があります。この格差の背景には、都市部と地方の物価水準の違いや、兼業農家と専業農家の割合の違い、農業形態の違いなどが影響していると考えられます。

兼業化と農外収入の影響

多くの都道府県で農家の兼業化が進んでおり、農外収入が家計を支える重要な要素となっています。特に都市部や工業地帯に近い地域では、安定した農外収入を得ている農家が多く、これが家計費の高さに反映されていると考えられます。一方、農業中心の地域では農業収入への依存度が高く、農業経営の安定性が家計に直接影響する傾向があります。

農業経営の課題と生活水準

農家世帯の家計費は、農業経営の課題や生活水準を反映しています。家計費が低い地域では、農業収入の不安定さや小規模経営の限界などの課題が存在する可能性があります。一方、家計費が高い地域でも、高い生活コストや農業継続の難しさなど、別の課題に直面している可能性があります。農家の持続可能な生活を支えるためには、地域の特性に応じた農業政策や支援が必要です。

統計データの基本情報と分析

統計データの分析

平均値と中央値の比較

全国の農家世帯の家計費の平均値は約42万円ですが、中央値は約43万円となっています。平均値と中央値がほぼ同じであることから、分布がほぼ対称的であることがわかります。ただし、最下位の沖縄県(24万円)や鹿児島県(28万円)など、一部の県で特に低い値が見られます。

分布の歪みと外れ値

滋賀県(56万円)、福井県(53万円)など上位の県と、沖縄県(24万円)、鹿児島県(28万円)など下位の県では大きな差があります。特に沖縄県の値は他と比べて著しく低く、外れ値と見なせる可能性があります。このような分布の特徴は、都市部と地方の経済格差を反映していると考えられます。

四分位範囲による分布の特徴

第1四分位数(下位25%の境界)は約36万円、第3四分位数(上位25%の境界)は約48万円であり、四分位範囲は約12万円となります。この範囲に全体の半数の都道府県が含まれており、中程度の分散があることを示しています。

標準偏差によるばらつきの程度

標準偏差は約7.5万円と比較的大きく、データにばらつきがあることを示しています。これは都市部と地方の格差や、地域ごとの経済状況の違いを反映していると考えられます。

まとめ

2003年度の都道府県別農家世帯の家計費ランキングでは、滋賀県が最も高く、福井県、大阪府が続いています。農家世帯の家計費には地域間で大きな格差があり、これは都市部と地方の物価水準の違いや、兼業農家と専業農家の割合の違い、農業形態の違いなど様々な要因によって影響を受けています。

上位に位置する県は、大都市圏を抱える都道府県(滋賀県、大阪府)や製造業が発達した北陸地方(福井県、新潟県、富山県)が多く、都市的な生活様式や兼業農家の割合の高さが家計費に反映されています。一方、下位に位置する県は、九州・沖縄地方(沖縄県、鹿児島県、大分県、宮崎県)や中国地方(山口県)が多く、地方の物価水準の低さや農業中心の生活様式が家計費に影響していると考えられます。

農家世帯の家計費は、農家の生活水準や経済状況を示す重要な指標ですが、これだけで農家の豊かさや農業の成功を判断することはできません。地域の特性や農業形態、生活様式などを総合的に考慮し、持続可能な農業と農村の発展を目指すことが重要です。

出典