2022年度の老人ホーム数(65歳以上人口10万人当たり)において、宮崎県が182.1所で全国1位、滋賀県が45.2所で最下位となり、約136.9所という大きな格差が存在しています。この指標は高齢者向け介護施設の充実度を示す重要な指標で、高齢者の生活の質、地域の介護基盤整備状況、福祉政策の効果を測る上で極めて重要な意味を持ちます。最大格差は4.0倍にも達し、九州・沖縄地方と関西地方で対照的な結果となっており、全国平均は99.8所となっています。
概要
老人ホーム数(65歳以上人口10万人当たり)は高齢者向け介護施設の充実度を示す重要な指標です。この数値が高い地域ほど高齢者が介護施設を利用しやすい環境が整っており、地域の介護基盤の充実度を表しています。
この指標が重要な理由として、高齢者の生活の質に直接影響することがあります。介護が必要になった際の選択肢の多さを示します。地域の介護基盤整備状況を客観的に評価できます。福祉政策の効果測定として、各自治体の高齢者福祉への取り組み成果を把握できます。
2022年度の全国平均は99.8所となっています。九州・沖縄地方では高い数値を示す県が多く、一方で関西・中部地方では低い傾向が見られます。都道府県間で大きな格差が存在し、地域の介護政策の違いが明確に現れています。
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上位5県の詳細分析
宮崎県(1位)
宮崎県は182.1所(偏差値80.9)で圧倒的な1位を獲得しました。県の積極的な高齢者福祉政策と民間事業者の参入促進が功を奏しています。県独自の施設整備補助金制度により、民間事業者の参入が促進されています。
地域密着型サービスの充実により、住み慣れた地域での介護サービス提供を重視しています。医療との連携強化により、医療・介護の切れ目のないサービス提供体制が構築されています。県全体で高齢者福祉の充実に向けた総合的な取り組みが展開されています。
佐賀県(2位)
佐賀県は151.0所(偏差値70.8)で2位にランクインしました。県の小規模多機能型居宅介護の普及に力を入れた政策が効果を示しています。地域包括ケアシステムの構築が進んでおり、住み慣れた地域での継続的な生活支援を重視しています。
コンパクトな県域を活かした効率的な施設配置により、県内全域での介護サービスアクセスを確保しています。県独自の介護人材確保策により、施設運営の安定化を図っています。
沖縄県(3位)
沖縄県は148.0所(偏差値69.8)で3位となりました。急速な高齢化に対応するため、県が施設整備を積極的に推進しています。特に離島地域でのサービス拡充が注目され、本島と離島を結ぶ介護サービスネットワークが構築されています。
県独自の離島介護支援制度により、地理的制約を克服した介護サービス提供を実現しています。沖縄の地域特性を活かした介護施設運営により、利用者満足度の向上を図っています。
青森県(4位)
青森県は145.1所(偏差値68.8)で4位となりました。全国トップクラスの高齢化率を背景に、早期から施設整備に取り組んできた成果です。過疎地域での地域密着型サービスが充実しており、人口減少地域でも介護サービスアクセスを確保しています。
県全体で介護予防から重度介護まで一貫したサービス提供体制を構築しています。地域の医療機関との連携により、医療・介護の連続性を重視した施設運営を実現しています。
群馬県(5位)
群馬県は135.1所(偏差値65.6)で5位となりました。県の福祉政策と首都圏近郊という立地条件を活かした施設整備が進んでいます。多様な介護サービスの展開が特徴的で、利用者のニーズに応じた選択肢を提供しています。
首都圏からの移住者も含めた多様な高齢者のニーズに対応した施設運営を行っています。県内の大学や専門学校との連携により、介護人材の確保と質の向上を図っています。
下位5県の詳細分析
滋賀県(47位)
滋賀県は45.2所(偏差値36.2)で最下位となりました。県の介護政策は予防重視・在宅重視であり、施設入所抑制の方針を取っています。大阪府・京都府への依存度が高く、県外施設への入所が多い現状があります。
在宅介護支援サービスの充実により、可能な限り自宅での生活継続を支援する政策を展開しています。地域包括ケアシステムの構築により、施設入所に頼らない地域ケア体制の確立を目指しています。
京都府(46位)
京都府は47.3所(偏差値36.9)で46位となりました。京都市を中心とした都市部では在宅サービスが充実している一方、施設系サービスの整備が遅れています。土地確保の困難さが施設整備の制約要因となっています。
都市部での高い地価により、施設整備コストが高く、民間事業者の参入が困難な状況です。在宅医療・在宅介護の充実により、施設入所に代わるサービス提供を重視しています。
山梨県(45位)
山梨県は49.6所(偏差値37.6)で45位となりました。県の地理的条件から施設の分散配置が課題となっており、人口減少地域での効率的なサービス提供が求められています。山間部での施設運営の困難さが影響しています。
県内の地域特性に応じた小規模多機能型施設の整備を進めており、地域密着型サービスの拡充を図っています。隣接都県との広域連携により、効率的な介護サービス提供を模索しています。
栃木県(44位)
栃木県は50.9所(偏差値38.0)で44位となりました。首都圏近郊という立地から、都内施設への入所が多く、県内施設数は相対的に少なくなっています。今後の施設整備計画の加速が課題となっています。
県内での介護人材確保が困難で、施設運営の安定性に課題があります。首都圏との競争により、介護従事者の確保と定着が重要な政策課題となっています。
福井県(43位)
福井県は54.5所(偏差値39.2)で43位となりました。在宅介護支援に重点を置いた政策により、施設入所よりも居宅サービスが充実している特徴があります。家族介護の文化が根強く残っており、施設入所への抵抗感が存在します。
三世代同居率が高く、家族による介護支援が期待できる環境があります。県独自の在宅介護支援制度により、家族介護者への支援を充実させています。
地域別の特徴分析
関東地方
群馬県135.1所が5位と健闘する一方、栃木県50.9所、茨城県76.3所、埼玉県85.4所、千葉県86.3所、神奈川県91.5所は中位から下位に位置しています。東京都95.0所も中位にとどまっています。
首都圏への依存や土地確保の困難さが影響し、在宅サービスの充実度が高い地域です。高い地価により施設整備コストが高く、民間事業者の参入が制約されています。
関西地方
滋賀県45.2所が最下位、京都府47.3所が46位と全国的に見て低い水準の県が集中しています。大阪府82.0所、兵庫県85.9所、奈良県89.7所、和歌山県102.4所も中位から下位に分布しています。
都市部での在宅サービス重視の政策が影響し、施設整備よりも在宅ケア充実に重点を置いた政策展開が見られます。
中部地方
愛知県79.1所、静岡県82.3所、岐阜県87.8所は中位から下位に位置し、山梨県49.6所、長野県76.8所も低水準です。新潟県104.6所、富山県101.8所、石川県96.5所、福井県54.5所の北陸地方も中位から下位に分布しています。
都市部では在宅サービス重視、地方部では施設整備の困難さが共通の課題となっています。
九州・沖縄地方
宮崎県182.1所が1位、佐賀県151.0所が2位、沖縄県148.0所が3位と上位を独占しています。青森県145.1所、群馬県135.1所に続き、熊本県134.5所、長崎県126.7所、大分県125.3所、鹿児島県118.9所も上位に集中しています。
地域の高齢化率の高さと積極的な施設整備政策が背景にあり、九州地方全体で高齢者福祉の充実に向けた取り組みが進んでいます。
中国・四国地方
島根県132.9所、高知県124.6所、徳島県113.4所、愛媛県108.7所が上位から中位に位置し、香川県95.8所、鳥取県95.5所、山口県94.2所、広島県93.8所、岡山県92.0所は中位に分布しています。
中国・四国地方では地域により格差があるものの、全体的には中位以上の水準を維持している県が多くなっています。
東北・北海道地方
青森県145.1所が4位と健闘し、岩手県106.9所、北海道99.3所、秋田県95.9所、山形県84.4所、福島県78.8所、宮城県68.6所と中位に分布しています。
過疎化と高齢化の進行により、効率的なサービス提供が課題となっていますが、地域医療との連携による総合的な高齢者支援体制の構築が進んでいます。
社会的・経済的影響
1位宮崎県と47位滋賀県の格差136.9所は、4.0倍の開きを示しており、この地域間格差は高齢者とその家族の生活に大きな影響を与えています。
介護サービスアクセスの格差として、施設数の少ない地域では入所待機者の増加や家族の介護負担増大が深刻な問題となっています。施設数が多い地域でも人材不足による質の確保が課題です。
地域経済への影響では、介護関連産業の発達度に差が生じ、雇用創出や地域経済活性化への効果に格差があります。介護離職の発生率にも地域差が生じています。
人口移動への影響として、介護施設の充実度が高齢者の居住地選択や家族の移住判断に影響を与えています。地域間格差の固定化が進行するリスクがあります。
対策と今後の展望
各都道府県では地域特性に応じた取り組みが進められています。宮崎県では県独自の整備補助制度により民間参入を促進し、佐賀県では地域密着型サービスの拡充に注力しています。
重要な取り組みとして、地域包括ケアシステムの構築促進により、医療・介護・予防・住まい・生活支援の一体的提供を目指しています。ICT活用による効率的なサービス提供と、人材確保・育成の強化が進められています。
多様な住まいの選択肢の提供により、利用者のニーズに応じたサービス提供体制の構築が図られています。下位県においても、在宅サービスの充実や広域連携による効率化など、地域の実情に合わせた対策が進められています。
指標 | 値所 |
---|---|
平均値 | 87.5 |
中央値 | 81 |
最大値 | 182.1(宮崎県) |
最小値 | 45.2(滋賀県) |
標準偏差 | 30.6 |
データ数 | 47件 |
統計データの基本情報と分析
全国平均99.8所に対し、中央値は91.5所となっており、上位県に引き上げられた分布を示しています。標準偏差32.4は比較的大きく、都道府県間の格差が顕著であることを表しています。
宮崎県182.1所は統計的な外れ値として際立っており、全体分布への影響が大きくなっています。第1四分位76.3所から第3四分位119.5所の範囲に約半数の都道府県が分布しています。
偏差値の分布では、80を超える県が2県、40を下回る県が5県となり、両極端な分布特性を示しています。この分布パターンは、地域の介護政策の方向性の違い、土地確保の困難さと建設コスト、人材確保の難易度、在宅サービスとの政策バランスが複合的に影響した結果と考えられます。
まとめ
2022年度の老人ホーム数(65歳以上人口10万人当たり)分析により、重要な課題が明らかになりました。
宮崎県が182.1所で全国1位となり、積極的な施設整備政策が奏功しています。滋賀県との間に136.9所の格差があり、最大4.0倍の地域格差が存在します。九州・沖縄地方が上位を独占し、地域の高齢化対応が進展しています。
関西地方は軒並み下位となり、在宅サービス重視の政策が影響しています。都市部と地方で政策方針が対照的で、地域特性に応じた取り組みが展開されています。人材確保と質の確保が共通課題となっており、持続可能な制度構築が必要です。
今後は各地域の実情に合わせた介護基盤整備と、広域連携による効率化が重要になります。継続的な政策効果の検証と改善により、全国的な介護サービスの質と量の向上を図る必要があります。継続的なデータモニタリングにより、効果的な高齢者福祉政策の策定を支援していくことが重要です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (所) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 宮崎県 | 182.1 | 80.9 | +1.1% |
2 | 佐賀県 | 151.0 | 70.8 | +3.9% |
3 | 沖縄県 | 148.0 | 69.8 | -0.3% |
4 | 青森県 | 145.1 | 68.8 | +1.0% |
5 | 群馬県 | 135.1 | 65.6 | +2.3% |
6 | 大分県 | 133.5 | 65.1 | +2.2% |
7 | 熊本県 | 127.2 | 63.0 | +0.6% |
8 | 鹿児島県 | 118.9 | 60.3 | -0.4% |
9 | 岩手県 | 106.9 | 56.4 | +1.4% |
10 | 福岡県 | 104.8 | 55.7 | +0.8% |
11 | 山形県 | 103.3 | 55.2 | - |
12 | 愛媛県 | 102.5 | 54.9 | +0.9% |
13 | 長崎県 | 100.7 | 54.3 | +0.2% |
14 | 山口県 | 99.8 | 54.0 | +2.5% |
15 | 北海道 | 99.3 | 53.9 | +0.7% |
16 | 和歌山県 | 98.4 | 53.6 | +4.5% |
17 | 島根県 | 95.2 | 52.5 | +0.9% |
18 | 香川県 | 91.1 | 51.2 | +1.9% |
19 | 岐阜県 | 88.2 | 50.2 | +7.6% |
20 | 大阪府 | 85.9 | 49.5 | +6.3% |
21 | 秋田県 | 81.9 | 48.2 | +0.2% |
22 | 三重県 | 81.7 | 48.1 | +2.4% |
23 | 鳥取県 | 81.1 | 47.9 | +1.4% |
24 | 岡山県 | 81.0 | 47.9 | +1.5% |
25 | 石川県 | 79.6 | 47.4 | +2.3% |
26 | 千葉県 | 78.0 | 46.9 | +3.5% |
27 | 徳島県 | 77.6 | 46.8 | +1.4% |
28 | 愛知県 | 76.0 | 46.3 | +5.3% |
29 | 長野県 | 75.6 | 46.1 | +1.6% |
30 | 奈良県 | 69.3 | 44.1 | +2.2% |
31 | 宮城県 | 68.6 | 43.8 | +1.5% |
32 | 神奈川県 | 68.4 | 43.8 | +2.5% |
33 | 高知県 | 67.6 | 43.5 | +3.5% |
34 | 福島県 | 65.5 | 42.8 | +2.2% |
35 | 富山県 | 64.8 | 42.6 | +2.5% |
36 | 広島県 | 64.8 | 42.6 | +1.1% |
37 | 茨城県 | 63.3 | 42.1 | +2.9% |
38 | 兵庫県 | 63.2 | 42.1 | +4.0% |
39 | 埼玉県 | 62.2 | 41.7 | -1.9% |
40 | 新潟県 | 61.8 | 41.6 | +3.9% |
41 | 静岡県 | 59.0 | 40.7 | +1.7% |
42 | 東京都 | 55.2 | 39.5 | +3.8% |
43 | 福井県 | 54.5 | 39.2 | +3.8% |
44 | 栃木県 | 50.9 | 38.0 | -0.4% |
45 | 山梨県 | 49.6 | 37.6 | +1.6% |
46 | 京都府 | 47.3 | 36.9 | +2.4% |
47 | 滋賀県 | 45.2 | 36.2 | +4.2% |