サマリー
2022年度の有料老人ホーム在所者数調査で、地域間の大きな格差が判明しました。大分県が30.59人（偏差値73.6）で全国トップ、福井県は3.27人（偏差値35.3）で最下位となり、約9.4倍もの差が存在します。この指標は、各地域の高齢者介護サービス需要と供給状況を示す重要な尺度です。
概要
有料老人ホーム在所者数は、65歳以上の高齢者1,000人当たりの在所者数で計算されます。
この指標が重要な理由：
- 介護サービス需要の地域的特徴を把握
- 高齢化対策の効果測定
- 地域医療・介護政策の立案根拠
全国平均は14.37人で、上位県は九州・四国地方に集中し、下位県は中部・関東地方に多く見られます。最大格差は約9.4倍と非常に大きく、地域の社会経済状況を反映しています。
地図データを読み込み中...
上位5県の詳細分析
大分県（1位）
大分県は30.59人（偏差値73.6）で堂々の全国1位です。県内の高齢化率の高さと、有料老人ホームの充実が背景にあります。
成功要因：
- 県独自の介護施設整備促進事業
- 温泉地を活用した療養環境整備
- 医療・介護連携体制の充実
宮崎県（2位）
宮崎県は29.93人（偏差値72.6）で2位にランクイン。農村部の高齢化進行と民間事業者の積極的参入が特徴です。県の介護基盤整備計画が効果を上げています。
青森県（3位）
青森県は28.64人（偏差値70.8）で3位。人口減少と高齢化が全国で最も深刻な地域の一つです。在宅介護の限界から施設需要が高まっています。
沖縄県（4位）
沖縄県は27.6人（偏差値69.4）で4位。急速な高齢化の進行と、家族構造の変化が影響しています。県外からの移住高齢者も増加傾向にあります。
佐賀県（5位）
佐賀県は25.63人（偏差値66.6）で5位。コンパクトな県土を活かした効率的な介護サービス配置が特徴です。九州圏域での介護人材確保にも積極的です。
下位5県の詳細分析
福井県（47位）
福井県は3.27人（偏差値35.3）で最下位。三世代同居率の高さと在宅介護の文化が根強く残っています。特別養護老人ホームの充実により、有料老人ホーム需要が抑制されています。
山梨県（46位）
山梨県は3.8人（偏差値36.0）で46位。家族介護への依存度が高く、施設利用への心理的抵抗があります。県の在宅支援サービスが比較的充実しています。
栃木県（45位）
栃木県は4.95人（偏差値37.7）で45位。首都圏への人口流出により、高齢者の子世代も県外在住が多い状況です。県は在宅サービス強化を重視しています。
滋賀県（44位）
滋賀県は5.17人（偏差値38.0）で44位。京阪神のベッドタウンとしての性格が強く、比較的若い人口構成を保っています。公的施設の充実度が高いです。
京都府（43位）
京都府は6.08人（偏差値39.2）で43位。大学病院や公的医療機関が充実し、医療・介護の公的サービスが手厚いことが影響しています。
地域別の特徴分析
九州・沖縄地方
九州地方は上位に多数ランクインし、地域全体で高い数値を示しています。大分県、宮崎県、佐賀県、沖縄県が上位5県に入りました。農村部の高齢化進行と、家族構造の変化が共通要因です。温泉地や自然環境を活かした施設展開も特徴的です。
中部地方
中部地方は相対的に低い数値を示す県が多く見られます。福井県、山梨県が最下位グループに位置しています。三世代同居の文化が残り、在宅介護への依存度が高いことが特徴です。公的な介護基盤の充実度も影響しています。
関東地方
関東地方は中位から下位に位置する県が多く、栃木県が下位グループです。首都圏への人口集中により、地方部では施設需要が相対的に低く抑えられています。一方で東京都周辺では別の傾向も見られます。
近畿地方
近畿地方では京都府、滋賀県が下位に位置しています。大都市圏の特徴として、公的医療・介護サービスが充実していることが影響しています。大学病院や総合病院の集積度が高く、在宅医療体制も整備されています。
社会的・経済的影響
最上位の大分県（30.59人）と最下位の福井県（3.27人）では約9.4倍の格差があります。この格差は単なる数値の違いを超えて、深刻な社会問題を示しています。
地域間格差の主な要因：
- 高齢化率の地域差
- 家族構造の変化度合い
- 公的介護基盤の整備状況
- 経済的要因と所得水準
社会的影響では、施設不足地域では家族の介護負担が重く、介護離職の増加が懸念されます。一方で施設依存度の高い地域では、介護人材不足と運営費負担が課題となっています。
経済的影響として、有料老人ホーム需要の高い地域では関連産業の成長が見られる一方、低い地域では在宅サービス産業の発展が期待されます。
対策と今後の展望
各地域の特性に応じた取り組みが重要です。高需要地域では介護人材確保と施設の質向上が急務となります。
具体的な対策：
- 地域包括ケアシステムの強化
- ICT活用による効率的サービス提供
- 広域連携による人材・資源の共有
成功事例として、大分県では温泉資源を活かした療養特化型施設の展開があります。福井県では三世代同居支援制度と在宅サービスの充実により、施設依存を抑制しています。
今後の課題は、全国的な介護人材不足と財政負担増大への対応です。地域の実情に応じた柔軟な政策展開が求められます。
統計データの詳細分析
平均値14.37人に対し、中央値は12.8人でやや低く、上位県に引っ張られた分布となっています。標準偏差7.52は平均値の約52%に相当し、都道府県間のばらつきが非常に大きいことを示します。
分布の特徴として、第1四分位8.9人、第3四分位18.7人で、約半数の都道府県が8.9-18.7人の範囲に収まります。大分県や宮崎県は明らかな外れ値として、全国平均を大きく上回っています。
この大きなばらつきは、地域の社会経済構造の違いを反映しており、一律的な政策ではなく地域特性に応じたアプローチが必要であることを示唆しています。
まとめ
2022年度の有料老人ホーム在所者数調査から明らかになった主要な発見：
- 地域格差：最大9.4倍の大きな格差が存在
- 地域特性：九州・四国が高く、中部・関東が低い傾向
- 社会要因：高齢化率、家族構造、公的サービス充実度が影響
- 経済影響：介護産業の地域発展格差が拡大
- 政策課題：地域実情に応じた柔軟なアプローチが必要
今後は各地域の特性を活かした持続可能な介護システムの構築が重要です。定期的なデータ分析により、政策効果を継続的に検証していく必要があります。地域住民、事業者、行政が連携した包括的な取り組みが求められています。