2011年度の都道府県別身体障害者更生援護施設従事者数(人口10万人当たり)のランキングを分析します。このデータは、身体に障害のある人々の自立と社会参加を支える専門職が、各地域にどれだけ配置されているかを示す指標であり、福祉サービスの「質」を測る上で非常に重要です。
概要
身体障害者更生援護施設の従事者数は、単に施設の数だけでなく、そこで提供される支援の手厚さを反映します。従事者が多いほど、一人ひとりの利用者に対して、よりきめ細やかな個別支援が可能になります。この数値は、自治体の福祉への投資額、専門職の養成・確保への取り組み、そして地域の障害者支援に対する考え方などを映し出しています。2011年当時、従事者の配置には施設数以上に大きな地域差が見られました。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
2011年度のランキングで従事者数が多かったのは、施設数と同様に、西日本の県が中心でした。これらの地域では、施設を整備するだけでなく、そこで働く人材の確保にも力を入れていたことがうかがえます。
高知県
高知県は、人口10万人当たりの従事者数が48.0人(偏差値98.3)と、2位以下を大きく引き離して全国1位でした。施設数だけでなく、そこで働く専門職の数も非常に手厚く配置されており、質の高いサービス提供への強い意志が感じられます。
鹿児島県
鹿児島県は29.5人(偏差値76.5)で2位にランクインしました。広大な県土と多くの離島を抱える中で、各施設に十分な数の職員を配置し、質の高いサービスを維持しようとする努力が見られます。
山梨県
山梨県は18.2人(偏差値63.3)で3位です。人口規模は小さいながらも、一人ひとりの障害者に寄り添った手厚い支援体制を築いていることが推測されます。
長崎県
長崎県は15.6人(偏差値60.2)で4位でした。離島での福祉人材の確保・定着に、県として積極的に取り組んできた成果が現れているのかもしれません。
石川県
石川県は15.5人(偏差値60.1)で5位に入りました。安定した雇用環境と、専門職としてのキャリアパスを整備することで、福祉人材の確保に成功していると考えられます。
下位5県の詳細分析
従事者数が少なかったのは、施設数と同様に関東地方の県が目立ちます。施設そのものが少ないことに加え、一人当たりの職員が多くの利用者を担当せざるを得ない、厳しい労働環境が推測されます。
神奈川県
神奈川県は0.3人(偏差値42.2)で45位です。大都市を抱え、サービスの需要が高い一方で、専門職の人材確保が追いついていない状況がうかがえます。
滋賀県
滋賀県は0.6人(偏差値42.6)で44位でした。京阪神からのアクセスが良い一方で、福祉分野の人材が都市部へ流出している可能性も考えられます。
群馬県
群馬県は0.7人(偏差値42.7)で43位です。福祉分野への投資や、専門職の育成・確保が、他の分野に比べて手薄であった可能性があります。
山形県・茨城県
山形県と茨城県は、ともに0.0人(偏差値41.9)で最下位の46位タイとなりました。2011年時点で、県内に従事者が一人もいなかったという事実は、これらの地域で障害を持つ人々が、専門的な支援を受けることが極めて困難であったことを示しています。
地域別の特徴分析
社会的・経済的影響
身体障害者更生援護施設の従事者数の地域差は、福祉サービスの「質」の格差に直結します。従事者が十分に配置されている地域では、利用者は個別性の高い、手厚い支援を受けることができます。これにより、効果的なリハビリテーションや職業訓練が可能となり、社会復帰の可能性が高まります。一方、従事者が不足している地域では、職員一人当たりの負担が大きくなり、サービスの質が低下する恐れがあります。結果として、利用者は十分な支援を受けられず、自立への道が遠のいてしまうかもしれません。これは、個人の尊厳を損なうだけでなく、社会全体の損失にもつながる、深刻な問題です。
対策と今後の展望
福祉サービスの質の地域差をなくすためには、専門職である「人」への投資が不可欠です。介護福祉士や理学療法士、作業療法士といった専門職の養成課程を充実させるとともに、魅力的な労働条件を提示し、人材を確保・定着させることが重要です。特に、従事者数が少ない地域に対しては、国が財政的な支援を手厚くし、給与水準の引き上げや、キャリアアップのための研修機会の提供などを後押しする必要があります。また、ICT技術を活用して、遠隔地にいる専門家が現場の職員をサポートするような、新しい働き方を導入することも有効です。施設の数という「量」の確保と、そこで働く従事者の「質」と「量」の確保。その両輪を力強く回していくことが、これからの障害者福祉には求められています。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値人 |
---|---|
平均値 | 6.9 |
中央値 | 3.7 |
最大値 | 48(高知県) |
最小値 | 0(山形県) |
標準偏差 | 8.5 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2011年度の身体障害者更生援護施設従事者数ランキングは、障害者支援の最前線を担う人材の配置に、驚くほど大きな地域差があったことを明らかにしました。高知県のように、手厚い人員体制で質の高いサービスを提供していた地域がある一方で、関東地方の一部では、支援の担い手が一人もいないという、信じがたい状況が存在していました。このデータは、福祉サービスが、施設というハコモノだけでなく、そこで働く「人」によって支えられているという、当然の事実を改めて突きつけます。すべての障害者が、専門的な支援を受けながら、その人らしい人生を歩んでいける社会の実現に向けて、人材への投資こそが最も重要であると、このランキングは教えてくれます。
順位↓ | 都道府県 | 値 (人) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 高知県 | 48.0 | 98.3 | +3.7% |
2 | 鹿児島県 | 29.5 | 76.5 | -11.4% |
3 | 山梨県 | 18.2 | 63.3 | +2.8% |
4 | 長崎県 | 15.6 | 60.2 | -42.6% |
5 | 石川県 | 15.5 | 60.1 | -25.5% |
6 | 沖縄県 | 15.2 | 59.7 | -43.3% |
7 | 青森県 | 14.2 | 58.6 | -37.4% |
8 | 福井県 | 13.7 | 58.0 | +33.0% |
9 | 鳥取県 | 12.3 | 56.3 | -54.4% |
10 | 北海道 | 10.8 | 54.6 | -31.2% |
11 | 富山県 | 10.3 | 54.0 | -40.5% |
12 | 愛媛県 | 9.6 | 53.2 | -47.0% |
13 | 宮崎県 | 8.7 | 52.1 | -33.6% |
14 | 徳島県 | 8.5 | 51.9 | -16.7% |
15 | 島根県 | 7.6 | 50.8 | -14.6% |
16 | 京都府 | 7.5 | 50.7 | -21.9% |
17 | 岐阜県 | 7.0 | 50.1 | -32.7% |
18 | 奈良県 | 6.2 | 49.2 | -4.6% |
19 | 福岡県 | 5.4 | 48.2 | -49.1% |
20 | 佐賀県 | 5.4 | 48.2 | -54.6% |
21 | 広島県 | 4.8 | 47.5 | -29.4% |
22 | 大分県 | 4.8 | 47.5 | -68.2% |
23 | 和歌山県 | 4.1 | 46.7 | -10.9% |
24 | 愛知県 | 3.7 | 46.2 | -28.9% |
25 | 岩手県 | 3.3 | 45.8 | -78.3% |
26 | 新潟県 | 3.3 | 45.8 | -75.6% |
27 | 宮城県 | 3.1 | 45.5 | -65.2% |
28 | 熊本県 | 3.1 | 45.5 | -69.0% |
29 | 静岡県 | 2.9 | 45.3 | -46.3% |
30 | 福島県 | 2.5 | 44.8 | -59.0% |
31 | 香川県 | 2.5 | 44.8 | -68.0% |
32 | 東京都 | 2.2 | 44.5 | -50.0% |
33 | 岡山県 | 2.1 | 44.3 | -85.3% |
34 | 長野県 | 1.9 | 44.1 | -57.8% |
35 | 栃木県 | 1.8 | 44.0 | -30.8% |
36 | 山口県 | 1.5 | 43.6 | -50.0% |
37 | 大阪府 | 1.4 | 43.5 | -60.0% |
38 | 秋田県 | 1.1 | 43.2 | -92.9% |
39 | 埼玉県 | 1.1 | 43.2 | -54.2% |
40 | 兵庫県 | 1.1 | 43.2 | -35.3% |
41 | 三重県 | 0.9 | 42.9 | -83.0% |
42 | 千葉県 | 0.8 | 42.8 | -81.8% |
43 | 群馬県 | 0.7 | 42.7 | -90.5% |
44 | 滋賀県 | 0.6 | 42.6 | -86.7% |
45 | 神奈川県 | 0.3 | 42.2 | -75.0% |
46 | 山形県 | 0.0 | 41.9 | -100.0% |
47 | 茨城県 | 0.0 | 41.9 | - |