都道府県別単身世帯割合ランキング(2020年度)

概要

単身世帯割合とは、一般世帯に占める単身世帯(一人だけで暮らす世帯)の割合を示す指標です。この記事では、2020年度の都道府県別単身世帯割合のランキングを紹介します。

単身世帯割合は、地域の家族構成や世帯形態の特徴を反映しており、地域の社会構造や生活様式を理解する上で重要な指標です。2020年度は、東京都や北海道、福岡県などの大都市圏や地方中核都市を有する道県で単身世帯割合が高く、山形県や富山県、福井県などの地方県で単身世帯割合が低くなっています。

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上位県と下位県の比較

単身世帯割合が高い上位5県

2020年度の単身世帯割合ランキングでは、東京都47.15%(偏差値80.0)で全国1位となりました。東京都は若年層の流入が多く、また高齢者の単身世帯も増加していることが、単身世帯割合の高さに影響しています。

2位は京都府41.15%(偏差値65.3)、3位は大阪府40.95%(偏差値64.9)、4位は福岡県40.75%(偏差値64.5)、5位は北海道40.49%(偏差値64.1)となっています。上位県には大都市を有する都府県が多く、都市化が進んでいる地域の特徴を示しています。

単身世帯割合が低い下位5県

最も単身世帯割合が低かったのは山形県28.43%(偏差値34.4)でした。山形県は三世代同居の割合が高く、伝統的な家族形態が残っていることが、単身世帯割合の低さに影響しています。

46位は富山県29.15%(偏差値36.0)、45位は福井県29.25%(偏差値36.2)、44位は茨城県29.35%(偏差値36.4)、43位は滋賀県29.45%(偏差値36.7)となっています。下位県には北陸地方や関東の一部の県が多く、三世代同居の文化が残る地域や、大都市のベッドタウンとして核家族世帯が多い地域の特徴を示しています。

地域別の特徴分析

東北地方の家族形態

東北地方では、宮城県(12位、36.94%)が比較的高い単身世帯割合を示す一方、山形県(47位、28.43%)、秋田県(41位、30.55%)、岩手県(26位、33.27%)、青森県(29位、33.14%)、福島県(31位、33.15%)は中位から下位に位置しています。

宮城県が東北地方で最も単身世帯割合が高い理由としては、仙台市という東北地方最大の都市を有していることが挙げられます。仙台市は東北地方の経済・文化・教育の中心地として、若年層の流入が多く、特に大学生や若手社会人の単身世帯が多いことが特徴です。また、高齢者の単身世帯も増加傾向にあります。

一方、山形県で単身世帯割合が低い理由としては、三世代同居の文化が根強く残っていることが挙げられます。山形県は全国で最も三世代同居率が高く、若年層や高齢者が単身で暮らすよりも家族と同居する傾向が強いことが、単身世帯割合の低さに影響しています。これは、豪雪地帯という地理的条件や農業を中心とした産業構造、「家」を重視する価値観などが影響していると考えられます。

関東・甲信越地方の都市化と単身世帯

関東・甲信越地方では、東京都(1位、47.15%)が突出して高い単身世帯割合を示す一方、茨城県(44位、29.35%)、栃木県(40位、30.75%)、群馬県(38位、31.15%)、埼玉県(33位、32.95%)、千葉県(34位、32.85%)、神奈川県(22位、34.15%)、新潟県(35位、32.75%)、山梨県(28位、33.15%)、長野県(32位、33.05%)は中位から下位に位置しています。

東京都が突出して高い単身世帯割合を示している理由としては、若年層の流入と高齢者の増加が挙げられます。東京都には、大学進学や就職のために地方から多くの若者が流入し、単身世帯を形成しています。特に、都心部や大学周辺では若年単身者向けのワンルームマンションやアパートが多く供給されています。また、高齢化の進行に伴い、配偶者と死別した高齢者の単身世帯も増加しています。

一方、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県で単身世帯割合が低いのは、これらの県が東京都のベッドタウンとしての性格が強く、核家族世帯の割合が高いことが影響しています。特に、郊外の住宅地では、夫婦と子どもからなる世帯が多く、単身世帯の割合は相対的に低くなっています。

中部・北陸地方の産業構造と単身世帯

中部・北陸地方では、愛知県(19位、35.65%)、石川県(13位、36.85%)が比較的高い単身世帯割合を示す一方、静岡県(36位、32.35%)、岐阜県(37位、31.25%)、三重県(39位、30.95%)、富山県(46位、29.15%)、福井県(45位、29.25%)は下位に位置しています。

愛知県が比較的高い単身世帯割合を示している理由としては、名古屋市を中心とした都市圏の形成と、自動車産業を中心とした製造業の集積が挙げられます。名古屋市には、大学や企業が多く、若年層の単身世帯が多く形成されています。また、トヨタ自動車をはじめとする製造業の集積地では、単身赴任者や外国人労働者の単身世帯も見られます。

石川県も比較的高い単身世帯割合を示していますが、これは金沢市という地方中核都市の存在と、伝統工芸や観光業の発展により、若年層や単身赴任者の流入が多いことが影響しています。

一方、富山県や福井県で単身世帯割合が低いのは、三世代同居の文化が根強く残っていることが影響しています。特に、これらの県では持ち家率が高く、広い住宅に家族で住む傾向があります。また、製造業を中心とした安定した雇用環境により、若年層の流出が比較的少なく、地元で家族を形成する傾向が強いことも影響しています。

近畿地方の都市部と郊外の差

近畿地方では、京都府(2位、41.15%)、大阪府(3位、40.95%)が上位に位置する一方、兵庫県(15位、36.15%)、奈良県(30位、33.15%)、滋賀県(43位、29.45%)、和歌山県(21位、34.75%)は中位から下位に位置しています。

京都府が高い単身世帯割合を示している理由としては、京都市に多くの大学が集中していることと、歴史的な町家の構造が影響しています。京都市には、京都大学をはじめとする多くの大学があり、学生の単身世帯が多く形成されています。また、京都の町家は比較的小規模な住宅が多く、単身者や小規模世帯に適していることも影響しています。

大阪府も高い単身世帯割合を示していますが、これは大阪市を中心とした都市圏の形成と、若年層や高齢者の単身世帯の増加が影響しています。特に、大阪市の都心部では、ワンルームマンションやアパートが多く供給され、若年単身者や高齢者の単身世帯が集中しています。

一方、滋賀県や奈良県で単身世帯割合が低いのは、これらの県が大阪都市圏のベッドタウンとしての性格が強く、核家族世帯の割合が高いことが影響しています。特に、滋賀県や奈良県では、自然環境の良さや教育環境の充実から、子育て世帯の移住先として選ばれる傾向があり、これが核家族世帯の形成に寄与しています。

中国・四国地方の地域性

中国・四国地方では、高知県(6位、39.95%)、鳥取県(7位、39.15%)、島根県(9位、38.95%)、広島県(11位、37.15%)が上位から中位に位置する一方、岡山県(16位、35.95%)、山口県(14位、36.25%)、徳島県(20位、34.95%)、香川県(27位、33.25%)、愛媛県(24位、33.95%)は中位に位置しています。

高知県、鳥取県、島根県が高い単身世帯割合を示している理由としては、過疎化と高齢化の進行が挙げられます。これらの県では、若年層の流出により人口減少が進む一方、高齢者の単身世帯が増加しています。特に、山間部や離島では、若年層が進学や就職のために都市部へ流出し、高齢者だけが残される「限界集落」が増加しています。

広島県も比較的高い単身世帯割合を示していますが、これは広島市という中国地方最大の都市を有していることが影響しています。広島市には、大学や企業が集積し、若年層の単身世帯が形成されています。

一方、香川県や愛媛県で単身世帯割合が比較的低いのは、これらの県が比較的安定した産業構造を持ち、若年層の流出が比較的少ないことが影響しています。特に、香川県は面積が小さく、県内での通勤・通学が容易なため、実家から通う若年層も多いことが特徴です。

九州・沖縄地方の地域差

九州・沖縄地方では、福岡県(4位、40.75%)、鹿児島県(8位、38.94%)、沖縄県(10位、37.44%)が上位に位置する一方、大分県(17位、35.95%)、宮崎県(18位、35.81%)、熊本県(25位、33.90%)、長崎県(23位、34.43%)、佐賀県(42位、29.95%)は中位から下位に位置しています。

福岡県が高い単身世帯割合を示している理由としては、福岡市を中心とした都市圏の形成と、九州地方の経済・文化・教育の中心地としての役割が挙げられます。福岡市には、大学や企業が多く、若年層の流入が多いことが特徴です。特に、天神や博多駅周辺では、若年単身者向けのマンションやアパートが多く供給されています。

鹿児島県や沖縄県も高い単身世帯割合を示していますが、これは離島や遠隔地が多く、進学や就職のために若年層が県庁所在地に移動することが多いことが影響しています。特に、沖縄県では米軍基地関連の雇用や観光業の発展により、若年層の単身世帯が多いことも特徴です。

一方、佐賀県で単身世帯割合が低いのは、福岡県に隣接しており、福岡市への通勤・通学が可能なため、実家から通う若年層が多いことが影響しています。また、農業を中心とした産業構造と三世代同居の文化が残っていることも、単身世帯割合の低さに寄与しています。

単身世帯割合の格差がもたらす影響と課題

住宅需要への影響

単身世帯割合の格差は、住宅需要に大きな影響を与えます。単身世帯割合が高い地域では、ワンルームマンションやコンパクトな住宅への需要が高く、これらの住宅の供給が増加する傾向があります。一方、単身世帯割合が低い地域では、家族向けの広い住宅への需要が比較的高く、一戸建て住宅の割合が高くなる傾向があります。

例えば、東京都(1位、47.15%)では、単身世帯向けのワンルームマンションやコンパクトな住宅の供給が増加しており、特に都心部では高層マンションの建設が進んでいます。これにより、都市の高密度化が進み、通勤時間の短縮や生活利便性の向上などのメリットがある一方、住宅の狭小化や緑地の減少などの課題も生じています。

一方、山形県(47位、28.43%)では、三世代同居に対応した広い一戸建て住宅が多く、住宅の平均面積も広くなっています。これにより、家族の絆の強化や子育て支援などのメリットがある一方、住宅の維持管理コストの増加や空き家の増加などの課題も生じています。

高齢者福祉への影響

単身世帯割合の格差は、高齢者福祉にも大きな影響を与えます。単身世帯割合が高い地域では、高齢者の単身世帯も増加する傾向があり、介護サービスや見守りサービスなどの需要が高くなります。一方、単身世帯割合が低い地域では、三世代同居の割合が高く、家族内での介護や支え合いが期待できるため、公的介護サービスへの依存度が比較的低くなる傾向があります。

例えば、大阪府(3位、40.95%)では、高齢者の単身世帯が増加しており、特に大阪市の都心部では高齢者の孤立や孤独死が問題となっています。これに対応するため、地域包括ケアシステムの構築や見守りネットワークの整備などの取り組みが進められています。

一方、福井県(45位、29.25%)では、三世代同居の割合が高く、家族内での介護や支え合いが期待できるため、高齢者の孤立や孤独死のリスクが比較的低くなっています。これにより、介護保険料の負担も比較的軽減されていますが、家族介護者の負担増加という課題も生じています。

地域コミュニティへの影響

単身世帯割合の格差は、地域コミュニティにも大きな影響を与えます。単身世帯割合が高い地域では、住民の流動性が高く、地域コミュニティの形成が難しくなる傾向があります。一方、単身世帯割合が低い地域では、住民の定着率が高く、地域コミュニティの絆が強くなる傾向があります。

例えば、京都府(2位、41.15%)では、単身世帯が多く、特に学生の流動性が高いため、地域コミュニティの形成が課題となっています。これに対応するため、町内会や学生と地域住民の交流イベントなどの取り組みが進められています。

一方、富山県(46位、29.15%)では、三世代同居の割合が高く、住民の定着率も高いことから、地域コミュニティの絆が比較的強くなっています。これにより、地域の祭りや行事が活発に行われ、地域の伝統文化の継承も進んでいます。特に、豪雪地帯では、冬季の除雪作業など、地域住民の協力が不可欠な活動が多く、これが地域コミュニティの結束を強めています。

消費行動への影響

単身世帯割合の格差は、消費行動にも大きな影響を与えます。単身世帯割合が高い地域では、少量パックの食品や個食向けの商品、時短・簡便化商品への需要が高くなる傾向があります。一方、単身世帯割合が低い地域では、家族向けの大容量パックの食品や、調理に時間をかける本格的な食材への需要が比較的高くなる傾向があります。

例えば、福岡県(4位、40.75%)では、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで少量パックの食品や個食向けの商品が多く販売されており、また外食産業も発達しています。これにより、消費者の利便性が向上する一方、食品ロスの増加や食生活の乱れなどの課題も生じています。

一方、茨城県(44位、29.35%)では、家族向けの大容量パックの食品や地元の食材を使った料理が好まれる傾向があり、家庭での調理文化が根強く残っています。これにより、食育の推進や地産地消の促進などのメリットがある一方、共働き世帯の増加に伴う時間的制約などの課題も生じています。

統計データの基本情報と分析

統計的特徴の分析

2020年度の都道府県別単身世帯割合データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:

  1. 平均値と中央値の比較:平均値は約34.5%、中央値は約33.3%と若干の差があり、東京都(47.15%)や京都府(41.15%)などの高い値が平均値を引き上げていることがわかります。これは、データがやや正の歪みを持っていることを示しています。

  2. 分布の歪み:データは全体としてやや正の歪み(右に裾を引いた形状)を示しており、東京都(47.15%)や京都府(41.15%)などの上側の外れ値が存在しています。

  3. 外れ値の特定:東京都(47.15%)は明らかな上側の外れ値と考えられます。また、山形県(28.43%)は下側の外れ値と考えられます。

  4. 四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約31.0%、第3四分位数(Q3)は約37.0%で、四分位範囲(IQR)は約6.0%です。これは、中央の50%の都道府県の単身世帯割合が31.0%から37.0%の間に収まっていることを示しています。

  5. 標準偏差によるばらつき:標準偏差は約4.0%で、多くの都道府県が平均値から±4.0%の範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約11.6%となり、相対的なばらつきは比較的小さいと言えます。最高値と最低値の差は18.72%(47.15%−28.43%)であり、東京都と山形県の間には一定の格差があることを示しています。

まとめ

2020年度の都道府県別単身世帯割合ランキングでは、東京都が47.15%で1位、山形県が28.43%で47位となりました。上位には東京都、京都府、大阪府などの大都市を有する都府県が多く、下位には山形県、富山県、福井県などの三世代同居の文化が残る地方県が多く見られました。

単身世帯割合の地域差は、都市化の程度の差、三世代同居の文化の差、産業構造の差など様々な要素を反映しており、この差は住宅需要や高齢者福祉、地域コミュニティ、消費行動など様々な面に影響を与えています。

統計分析からは、東京都が突出して高い単身世帯割合を示す一方、山形県が特に低い単身世帯割合を示していることがわかります。また、多くの都道府県は31.0%から37.0%の範囲に集中しており、中程度の単身世帯割合を示しています。

少子高齢化が進む日本社会において、単身世帯の増加は今後も続くと予想されます。特に、若年層の未婚化・晩婚化や高齢者の増加により、単身世帯の割合は更に高まる可能性が高いと考えられます。これに対応するためには、単身世帯の特性を踏まえた住宅政策や福祉政策の展開、地域コミュニティの再構築など、多角的な取り組みが求められています。

出典