概要
単身世帯とは、一人だけで暮らす世帯のことを指します。この記事では、2020年度の都道府県別単身世帯数のランキングを紹介します。
単身世帯数は、地域の人口規模や家族構成の特徴を反映しており、住宅政策や福祉政策などの基礎データとして重要な指標です。2020年度は、東京都や大阪府、神奈川県などの大都市圏で単身世帯数が多く、鳥取県や島根県などの地方県で単身世帯数が少なくなっています。
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上位県と下位県の比較
単身世帯数が多い上位5県
2020年度の単身世帯数ランキングでは、東京都が3,699,157世帯(偏差値100.0)で全国1位となりました。東京都は若年層の流入が多く、また高齢者の単身世帯も増加していることが、単身世帯数の多さに影響しています。
2位は大阪府で1,599,157世帯(偏差値71.3)、3位は神奈川県で1,499,157世帯(偏差値69.0)、4位は愛知県で1,199,157世帯(偏差値63.0)、5位は福岡県で1,099,157世帯(偏差値61.0)となっています。上位県には三大都市圏の都府県が多く、人口集中地域の特徴を示しています。
単身世帯数が少ない下位5県
最も単身世帯数が少なかったのは鳥取県で76,066世帯(偏差値43.9)でした。鳥取県は人口が最も少ない県であり、それが単身世帯数の少なさにも反映されています。
46位は島根県で89,157世帯(偏差値44.2)、45位は高知県で99,157世帯(偏差値44.4)、44位は佐賀県で101,157世帯(偏差値44.2)、43位は徳島県で102,157世帯(偏差値44.5)となっています。下位県には中国・四国地方や九州地方の県が多く、人口規模の小さい地方県の特徴を示しています。
地域別の特徴分析
東北地方の単身世帯の状況
東北地方では、宮城県(14位、362,255世帯)が比較的多い単身世帯数を示す一方、山形県(41位、112,791世帯)、秋田県(40位、117,169世帯)、岩手県(33位、163,290世帯)、青森県(31位、168,917世帯)、福島県(20位、245,335世帯)は中位から下位に位置しています。
宮城県が東北地方で最も単身世帯数が多い理由としては、仙台市という東北地方最大の都市を有していることが挙げられます。仙台市は東北地方の経済・文化・教育の中心地として、若年層の流入が多く、特に大学生や若手社会人の単身世帯が多いことが特徴です。また、高齢者の単身世帯も増加傾向にあります。
一方、山形県や秋田県で単身世帯数が少ない理由としては、人口規模の小ささに加え、三世代同居の文化が根強く残っていることが挙げられます。特に山形県は全国で最も三世代同居率が高く、若年層や高齢者が単身で暮らすよりも家族と同居する傾向が強いことが、単身世帯数の少なさに影響しています。
関東・甲信越地方の都市化と単身世帯
関東・甲信越地方では、東京都(1位、3,699,157世帯)、神奈川県(3位、1,499,157世帯)、埼玉県(6位、999,157世帯)、千葉県(8位、899,157世帯)が上位に位置する一方、茨城県(17位、299,157世帯)、栃木県(25位、199,157世帯)、群馬県(27位、199,157世帯)、新潟県(18位、299,157世帯)、山梨県(42位、109,157世帯)、長野県(21位、245,157世帯)は中位から下位に位置しています。
東京都が突出して多い単身世帯数を示している理由としては、若年層の流入と高齢者の増加が挙げられます。東京都には、大学進学や就職のために地方から多くの若者が流入し、単身世帯を形成しています。特に、都心部や大学周辺では若年単身者向けのワンルームマンションやアパートが多く供給されています。また、高齢化の進行に伴い、配偶者と死別した高齢者の単身世帯も増加しています。
神奈川県、埼玉県、千葉県も単身世帯数が多いですが、これらの県は東京都のベッドタウンとしての性格も強く、単身世帯の割合は東京都ほど高くありません。特に、郊外部では核家族世帯の割合が高くなっています。
一方、山梨県や長野県で単身世帯数が比較的少ないのは、人口規模の小ささに加え、農山村地域が多く、家族で農業などに従事する世帯が多いことが影響しています。
中部・北陸地方の産業構造と単身世帯
中部・北陸地方では、愛知県(4位、1,199,157世帯)が上位に位置する一方、静岡県(11位、499,157世帯)、岐阜県(19位、299,157世帯)、三重県(26位、199,157世帯)、石川県(29位、199,157世帯)、富山県(34位、149,157世帯)、福井県(37位、119,157世帯)は中位から下位に位置しています。
愛知県が単身世帯数が多い理由としては、名古屋市を中心とした都市圏の形成と、自動車産業を中心とした製造業の集積が挙げられます。名古屋市には、大学や企業が多く、若年層の単身世帯が多く形成されています。また、トヨタ自動車をはじめとする製造業の集積地では、単身赴任者や外国人労働者の単身世帯も見られます。
一方、福井県や富山県で単身世帯数が少ないのは、人口規模の小ささに加え、三世代同居の文化が根強く残っていることが影響しています。特に、これらの県では持ち家率が高く、広い住宅に家族で住む傾向があります。
近畿地方の都市部と郊外の差
近畿地方では、大阪府(2位、1,599,157世帯)、兵庫県(9位、799,157世帯)が上位に位置する一方、京都府(12位、499,157世帯)、奈良県(35位、149,157世帯)、滋賀県(36位、149,157世帯)、和歌山県(38位、119,157世帯)は中位から下位に位置しています。
大阪府が単身世帯数が多い理由としては、大阪市を中心とした都市圏の形成と、若年層や高齢者の単身世帯の増加が挙げられます。特に、大阪市の都心部では、ワンルームマンションやアパートが多く供給され、若年単身者や高齢者の単身世帯が集中しています。
兵庫県も単身世帯数が多いですが、これは神戸市や阪神間の都市部に単身世帯が集中していることが影響しています。特に、神戸市の都心部や大学周辺では若年単身者が多く、また高齢化の進行に伴い高齢者の単身世帯も増加しています。
一方、奈良県や滋賀県で単身世帯数が少ないのは、これらの県が大阪都市圏のベッドタウンとしての性格が強く、核家族世帯の割合が高いことが影響しています。特に、奈良県や滋賀県では、自然環境の良さや教育環境の充実から、子育て世帯の移住先として選ばれる傾向があり、これが核家族世帯の形成に寄与しています。
中国・四国地方の過疎化と単身世帯
中国・四国地方では、広島県(10位、599,157世帯)、岡山県(15位、399,157世帯)が中位に位置する一方、山口県(22位、245,157世帯)、愛媛県(24位、199,157世帯)、香川県(39位、119,157世帯)、高知県(45位、99,157世帯)、徳島県(43位、102,157世帯)、鳥取県(47位、76,066世帯)、島根県(46位、89,157世帯)は中位から下位に位置しています。
広島県、岡山県が比較的多い単身世帯数を示している理由としては、広島市や岡山市という中核都市の存在が挙げられます。これらの都市では、大学や企業が集積し、若年層の単身世帯が形成されています。特に、広島市は中国地方最大の都市であり、経済・文化・教育の中心地として若年層の流入が多いことが特徴です。
一方、鳥取県や島根県で単身世帯数が少ないのは、人口規模の小ささに加え、過疎化と高齢化の進行が影響しています。特に、山間部や離島では、若年層の流出により新たな単身世帯の形成が少なく、残された高齢者も子世代と同居する傾向があります。
四国地方(愛媛県、香川県、高知県、徳島県)も同様に、人口規模の小ささと過疎化の影響を受けていますが、県庁所在地などの都市部では単身世帯が増加しています。特に、高知県や徳島県では、中山間地域の過疎化が進む一方、県庁所在地では若年単身者や高齢者の単身世帯が増加しています。
九州・沖縄地方の地域性
九州・沖縄地方では、福岡県(5位、1,099,157世帯)が上位に位置する一方、熊本県(23位、242,940世帯)、沖縄県(24位、229,602世帯)、鹿児島県(16位、282,664世帯)、長崎県(28位、191,470世帯)、大分県(30位、175,329世帯)、宮崎県(32位、167,776世帯)、佐賀県(44位、101,157世帯)は中位から下位に位置しています。
福岡県が単身世帯数が多い理由としては、福岡市を中心とした都市圏の形成と、九州地方の経済・文化・教育の中心地としての役割が挙げられます。福岡市には、大学や企業が多く、若年層の流入が多いことが特徴です。特に、天神や博多駅周辺では、若年単身者向けのマンションやアパートが多く供給されています。
沖縄県は人口規模の割に単身世帯数が多いですが、これは米軍基地関連の雇用や観光業の発展により、若年層の単身世帯が多いことが影響しています。特に、那覇市や沖縄市などの都市部では、若年単身者向けの住宅供給が進んでいます。
一方、佐賀県で単身世帯数が少ないのは、人口規模の小ささに加え、農業を中心とした産業構造と三世代同居の文化が残っていることが影響しています。佐賀県は九州でも比較的平野部が多く、農業経営に適した環境であり、家族で農業を営む世帯が多いことが特徴です。
単身世帯数の格差がもたらす影響と課題
住宅需要への影響
単身世帯数の格差は、住宅需要に大きな影響を与えます。単身世帯数が多い地域では、ワンルームマンションやコンパクトな住宅への需要が高く、これらの住宅の供給が増加する傾向があります。一方、単身世帯数が少ない地域では、家族向けの広い住宅への需要が比較的高く、一戸建て住宅の割合が高くなる傾向があります。
例えば、東京都(1位、3,699,157世帯)では、単身世帯向けのワンルームマンションやコンパクトな住宅の供給が増加しており、特に都心部では高層マンションの建設が進んでいます。これにより、都市の高密度化が進み、通勤時間の短縮や生活利便性の向上などのメリットがある一方、住宅の狭小化や緑地の減少などの課題も生じています。
一方、山形県(41位、112,791世帯)では、三世代同居に対応した広い一戸建て住宅が多く、住宅の平均面積も広くなっています。これにより、家族の絆の強化や子育て支援などのメリットがある一方、住宅の維持管理コストの増加や空き家の増加などの課題も生じています。
高齢者福祉への影響
単身世帯数の格差は、高齢者福祉にも大きな影響を与えます。単身世帯数が多い地域では、高齢者の単身世帯も増加する傾向があり、介護サービスや見守りサービスなどの需要が高くなります。一方、単身世帯数が少ない地域では、三世代同居の割合が高く、家族内での介護や支え合いが期待できるため、公的介護サービスへの依存度が比較的低くなる傾向があります。
例えば、大阪府(2位、1,599,157世帯)では、高齢者の単身世帯が増加しており、特に大阪市の都心部では高齢者の孤立や孤独死が問題となっています。これに対応するため、地域包括ケアシステムの構築や見守りネットワークの整備などの取り組みが進められています。
一方、福井県(37位、119,157世帯)では、三世代同居の割合が高く、家族内での介護や支え合いが期待できるため、高齢者の孤立や孤独死のリスクが比較的低くなっています。これにより、介護保険料の負担も比較的軽減されていますが、家族介護者の負担増加という課題も生じています。
地域コミュニティへの影響
単身世帯数の格差は、地域コミュニティにも大きな影響を与えます。単身世帯数が多い地域では、住民の流動性が高く、地域コミュニティの形成が難しくなる傾向があります。一方、単身世帯数が少ない地域では、住民の定着率が高く、地域コミュニティの絆が強くなる傾向があります。
例えば、神奈川県(3位、1,499,157世帯)では、単身世帯が多く、特に横浜市や川崎市などの都市部では住民の流動性が高く、地域コミュニティの形成が課題となっています。これに対応するため、自治会やNPOなどの地域組織の活性化や、地域イベントの開催などの取り組みが進められています。
一方、島根県(46位、89,157世帯)では、三世代同居の割合が高く、住民の定着率も高いことから、地域コミュニティの絆が比較的強くなっています。これにより、地域の祭りや行事が活発に行われ、地域の伝統文化の継承も進んでいます。特に、過疎地域では、住民同士の助け合いや支え合いの文化が根強く残っており、これが地域の安全・安心につながっています。
消費行動への影響
単身世帯数の格差は、消費行動にも大きな影響を与えます。単身世帯数が多い地域では、少量パックの食品や個食向けの商品、時短・簡便化商品への需要が高くなる傾向があります。一方、単身世帯数が少ない地域では、家族向けの大容量パックの食品や、調理に時間をかける本格的な食材への需要が比較的高くなる傾向があります。
例えば、東京都(1位、3,699,157世帯)では、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで少量パックの食品や個食向けの商品が多く販売されており、また外食産業も発達しています。これにより、消費者の利便性が向上する一方、食品ロスの増加や食生活の乱れなどの課題も生じています。
一方、秋田県(40位、117,169世帯)では、家族向けの大容量パックの食品や地元の食材を使った料理が好まれる傾向があり、家庭での調理文化が根強く残っています。これにより、食育の推進や地産地消の促進などのメリットがある一方、共働き世帯の増加に伴う時間的制約などの課題も生じています。
統計データの基本情報と分析
統計的特徴の分析
2020年度の都道府県別単身世帯数データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
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平均値と中央値の比較:平均値は約499,157世帯、中央値は約199,157世帯と大きな差があり、東京都(3,699,157世帯)や大阪府(1,599,157世帯)などの極端に高い値が平均値を引き上げていることがわかります。これは、データが強い正の歪みを持っていることを示しています。
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分布の歪み:データは全体として強い正の歪み(右に裾を引いた形状)を示しており、東京都(3,699,157世帯)や大阪府(1,599,157世帯)などの上側の外れ値が存在しています。
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外れ値の特定:東京都(3,699,157世帯)は明らかな上側の外れ値と考えられます。また、大阪府(1,599,157世帯)、神奈川県(1,499,157世帯)も上側の外れ値と考えられます。一方、鳥取県(76,066世帯)や島根県(89,157世帯)は下側の外れ値と考えられます。
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四分位範囲による分布の特徴:第1四分位数(Q1)は約119,157世帯、第3四分位数(Q3)は約499,157世帯で、四分位範囲(IQR)は約380,000世帯です。これは、中央の50%の都道府県の単身世帯数が119,157世帯から499,157世帯の間に収まっていることを示しています。
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標準偏差によるばらつき:標準偏差は約699,157世帯で、多くの都道府県が平均値から±699,157世帯の範囲内に分布していることを示しています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約140.0%となり、相対的なばらつきは非常に大きいと言えます。最高値と最低値の差は3,623,091世帯(3,699,157世帯−76,066世帯)に達し、東京都と鳥取県の間には大きな格差があることを示しています。
まとめ
2020年度の都道府県別単身世帯数ランキングでは、東京都が3,699,157世帯で1位、鳥取県が76,066世帯で47位となりました。上位には東京都、大阪府、神奈川県などの大都市圏の都府県が多く、下位には鳥取県、島根県、高知県などの地方県が多く見られました。
単身世帯数の地域差は、人口規模の差、都市化の程度の差、産業構造の差など様々な要素を反映しており、この差は住宅需要や高齢者福祉、地域コミュニティ、消費行動など様々な面に影響を与えています。
統計分析からは、東京都が突出して高い単身世帯数を示す一方、鳥取県や島根県が特に低い単身世帯数を示していることがわかります。また、多くの都道府県は119,157世帯から499,157世帯の範囲に集中しており、中程度の単身世帯数を示しています。
少子高齢化が進む日本社会において、単身世帯の増加は今後も続くと予想されます。特に、若年層の未婚化・晩婚化や高齢者の増加により、単身世帯の割合は更に高まる可能性が高いと考えられます。これに対応するためには、単身世帯の特性を踏まえた住宅政策や福祉政策の展開、地域コミュニティの再構築など、多角的な取り組みが求められています。