2021年、サービス業(3次活動)に従事する男性の1日あたり平均労働時間は、山口県で340分(5時間40分)と最も長く、長野県で306分(5時間6分)と最も短い結果となりました。この「34分」の差は、単なる労働時間の違いだけでなく、日本の地域ごとの産業構造、働き方の文化、そして男性に期待される役割の違いを映し出しています。本記事では、このデータから男性の働き方の実態と地域性を探ります。
概要
3次活動とは、商業、運輸、金融、医療、教育といったサービスを提供する産業を指します。この分野で働く男性の平均労働時間は、その地域の経済活動の質と量を測る指標となります。時間が長い地域は、物流の拠点であったり、観光業が盛んであったりと、特定のサービス業が経済を牽引している傾向があります。一方で、時間が短い地域は、製造業の比重が高かったり、ワークライフバランスを重視する文化が根付いていたりする可能性が考えられます。この指標は、働き方改革の進捗や、地域ごとの労働環境を評価する上で重要な手がかりを与えてくれます。
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上位5県の詳細分析(労働時間が長い)
1位:山口県
山口県は340分(偏差値71.4)と、全国で最も長い労働時間を記録しました。瀬戸内工業地域の一角をなし、製造業が盛んですが、それに付随する物流や保守といったサービス業の役割が大きく、そこで働く男性の労働時間が長くなっていると考えられます。また、県内の事業所が広範囲に点在していることも、移動時間の増加に繋がっている可能性があります。
2位:静岡県
静岡県は338分(偏差値69.1)で2位。日本の大動脈である東名高速道路が県内を横断し、物流の要衝となっています。トラックドライバーや倉庫管理者など、運輸・倉庫業に従事する男性の労働時間が全体の平均を押し上げていると推測されます。また、観光地も多く、宿泊・飲食業の労働時間も長い傾向にあります。
3位:岡山県
岡山県は337分(偏差値68.0)で3位。中国・四国地方の交通の結節点であり、卸売・小売業が盛んです。顧客対応や在庫管理などで長時間労働になりやすい業態であることが、この結果に繋がっていると考えられます。
4位:北海道
北海道は335分(偏差値65.7)で4位。広大な土地をカバーするための運輸・通信業や、国内外から多くの観光客を迎える観光関連産業が、男性の労働時間を長くしている主な要因です。特に観光シーズンは、繁忙を極めることが知られています。
5位:徳島県
徳島県は333分(偏差値63.4)で5位。四国の玄関口として、運輸業が重要な役割を担っています。また、県内製造業を支える保守・点検などのサービス業も、労働時間が長くなる傾向にあると考えられます。
下位5県の詳細分析(労働時間が短い)
47位:長野県
長野県は306分(偏差値32.5)と、全国で最も労働時間が短い結果でした。県内に有力な製造業が多く、比較的労働時間が管理されやすい第二次産業に従事する男性が多いことが一因です。また、ワークライフバランスを重視する県民性も影響しているかもしれません。
46位:千葉県
千葉県は307分(偏差値33.6)で46位。東京のベッドタウンであり、県内よりも都内で働く男性が多いことが、県内サービス業の平均労働時間を押し下げている可能性があります。県内では、地域密着型の比較的短時間で終業するサービス業が多いと推測されます。
42位:山形県、栃木県、沖縄県
山形県、栃木県、沖縄県は309分(偏差値35.9)で同率42位。山形と栃木は、製造業が盛んであり、第二次産業に従事する男性が多いことが共通しています。沖縄は、観光業が中心ですが、オフシーズンの存在や、独自のゆったりとした時間感覚が労働時間に反映されている可能性も考えられます。
社会的・経済的影響
男性の労働時間の地域差は、その地域の経済活力と、人々の生活の質の両面に影響を及ぼします。労働時間が長い地域は、一見すると経済活動が活発であるように見えますが、その裏では長時間労働による健康問題や、家庭生活の犠牲といった課題を抱えている可能性があります。これは、男性の育児参加を妨げ、結果として女性に家事・育児の負担が偏るというジェンダー問題にも繋がります。
一方で、労働時間が短い地域は、ワークライフバランスが取れていると評価できるかもしれませんが、サービス業の生産性が低い、あるいは賃金水準が低いことの裏返しである可能性も否定できません。もし短時間労働が低賃金と結びついている場合、それは地域経済の停滞や、若者の県外流出を招く要因となり得ます。
対策と今後の展望
目指すべきは、単に労働時間を短縮することではなく、「生産性が高く、公正な対価が支払われ、かつ持続可能な働き方」を実現することです。労働時間が長い地域では、ITツール導入による業務効率化や、不要な会議・慣習の見直しといった、具体的な長時間労働是正策が求められます。また、男性が育児休業を取得しやすい文化の醸成も不可欠です。
労働時間が短い地域では、その時間を自己投資や地域活動、家庭生活の充実に繋げられるような社会的な仕組みが必要です。副業・兼業の促進や、リカレント教育(学び直し)の機会提供などを通じて、労働時間の短さが個人の豊かさに直結するようなモデルを構築することが期待されます。今後は、労働時間の「量」だけでなく、その「質」をいかに高めていくかという視点が、すべての地域で重要になるでしょう。
指標 | 値分 |
---|---|
平均値 | 321.3 |
中央値 | 321 |
最大値 | 340(山口県) |
最小値 | 306(長野県) |
標準偏差 | 8.7 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2021年の男性の3次活動平均時間は、サービス業における働き方の地域性を浮き彫りにしました。山口や静岡のように、物流や観光といった特定の産業が男性の長時間労働を支える地域がある一方で、長野や千葉のように、製造業中心の産業構造や大都市への通勤圏という特性が、県内での労働時間を短くしている地域もありました。このデータは、男性の働き方改革を進める上で、産業構造や都市の機能といった、地域ごとのマクロな視点を持つことの重要性を示唆しています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (分) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 山口県 | 340 | 71.4 | -0.3% |
2 | 静岡県 | 338 | 69.1 | +0.3% |
3 | 岡山県 | 337 | 68.0 | +6.7% |
4 | 北海道 | 335 | 65.7 | +2.1% |
5 | 徳島県 | 333 | 63.4 | +5.0% |
6 | 岐阜県 | 332 | 62.2 | +0.9% |
7 | 鳥取県 | 332 | 62.2 | +3.1% |
8 | 新潟県 | 330 | 60.0 | +4.8% |
9 | 高知県 | 330 | 60.0 | -3.5% |
10 | 熊本県 | 329 | 58.8 | +7.5% |
11 | 秋田県 | 328 | 57.7 | +0.3% |
12 | 三重県 | 328 | 57.7 | -3.2% |
13 | 大阪府 | 327 | 56.5 | +1.9% |
14 | 香川県 | 327 | 56.5 | -2.4% |
15 | 愛媛県 | 326 | 55.4 | -4.4% |
16 | 宮崎県 | 326 | 55.4 | -1.5% |
17 | 福井県 | 325 | 54.2 | +1.6% |
18 | 兵庫県 | 325 | 54.2 | +5.2% |
19 | 茨城県 | 323 | 51.9 | +0.3% |
20 | 群馬県 | 323 | 51.9 | +5.9% |
21 | 和歌山県 | 323 | 51.9 | -2.1% |
22 | 鹿児島県 | 323 | 51.9 | -1.5% |
23 | 富山県 | 322 | 50.8 | -1.8% |
24 | 奈良県 | 321 | 49.7 | +1.6% |
25 | 島根県 | 321 | 49.7 | -5.6% |
26 | 石川県 | 320 | 48.5 | -0.3% |
27 | 福島県 | 319 | 47.4 | +0.6% |
28 | 京都府 | 319 | 47.4 | -5.6% |
29 | 東京都 | 318 | 46.2 | -2.1% |
30 | 大分県 | 318 | 46.2 | -5.1% |
31 | 神奈川県 | 317 | 45.1 | +5.7% |
32 | 岩手県 | 316 | 43.9 | -0.6% |
33 | 広島県 | 316 | 43.9 | -2.5% |
34 | 愛知県 | 315 | 42.8 | -2.5% |
35 | 滋賀県 | 315 | 42.8 | -2.5% |
36 | 山梨県 | 314 | 41.6 | -6.8% |
37 | 宮城県 | 313 | 40.5 | -1.3% |
38 | 福岡県 | 313 | 40.5 | -0.3% |
39 | 佐賀県 | 313 | 40.5 | -4.3% |
40 | 埼玉県 | 312 | 39.4 | -1.6% |
41 | 青森県 | 311 | 38.2 | -4.9% |
42 | 山形県 | 309 | 35.9 | -6.4% |
43 | 栃木県 | 309 | 35.9 | -4.6% |
44 | 沖縄県 | 309 | 35.9 | -0.3% |
45 | 長崎県 | 308 | 34.8 | -7.8% |
46 | 千葉県 | 307 | 33.6 | - |
47 | 長野県 | 306 | 32.5 | -4.4% |