都道府県別窃盗犯検挙率ランキング(2022年度)

概要

窃盗犯検挙率は、発生した窃盗事件に対して検挙された事件の割合を示す重要な治安指標です。この数値は各都道府県警察の捜査能力や地域の治安状況を反映しており、犯罪抑制効果にも大きく影響します。

2022年度の全国データを見ると、最高値の島根県**72.9%から最低値の大阪府19.7%まで、53.2ポイントもの大きな地域格差が存在しています。全国平均は47.6%**で、地方部で高く、都市部で低い傾向が顕著に現れています。

この検挙率の格差は、人口密度、事件の複雑性、捜査体制の違いなど多様な要因が複合的に作用した結果であり、各地域の治安政策や警察力の配置を考える上で重要な指標となっています。

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上位5県の特徴

島根県72.9%(偏差値69.9)で全国1位となっています。人口規模が小さく、地域コミュニティの結束が強いことで、事件の早期発見や情報収集が効率的に行われていることが高い検挙率の要因と考えられます。

山形県71.8%(偏差値69.0)で2位にランクインしています。農村部が多く、住民同士の結びつきが強い地域特性が、犯罪の早期発見と検挙に寄与していると推測されます。

鳥取県69.0%(偏差値66.8)で3位となっており、島根県と同様に人口密度が低く、地域の監視機能が働きやすい環境が検挙率の向上に貢献していると考えられます。

秋田県67.7%(偏差値65.8)で4位、富山県66.4%(偏差値64.8)で5位となっています。これらの県は共通して人口減少地域であり、事件数自体が少なく、警察力を集中的に投入できる環境にあることが高い検挙率につながっています。

上位5県はいずれも地方部に位置し、人口密度が低く、コミュニティの結束が強い地域である点が共通しています。

下位5県の課題

大阪府19.7%(偏差値28.0)で最下位となっており、全国平均を大きく下回っています。大都市圏特有の匿名性の高さや事件の複雑化、広域性が検挙の困難さにつながっていると考えられます。

茨城県26.6%(偏差値33.4)で46位となっています。首都圏に隣接する立地特性により、犯罪の広域化や流動的な犯罪者の存在が検挙率を押し下げている可能性があります。

愛知県27.4%(偏差値34.1)で45位、千葉県30.5%(偏差値36.5)で44位、東京都30.6%(偏差値36.6)で42位となっています。これらの都市部では、人口密度の高さ、交通網の発達による犯罪者の逃走経路の多様化、事件の複雑化などが検挙率の低下要因となっています。

下位5県はいずれも人口密集地域や大都市圏に位置し、犯罪の広域化や匿名性の高さが共通の課題となっています。

地域別の特徴分析

東北地方では山形県、秋田県が上位にランクインし、地域全体で比較的高い検挙率を維持しています。農村部が多く、地域コミュニティの結束が強いことが特徴的です。

関東地方では軒並み低い数値となっており、特に首都圏1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)はいずれも全国平均を大きく下回っています。都市化の進展と人口集中が検挙率低下の主要因となっています。

中部地方では富山県が上位にランクインする一方、愛知県が下位となり、地域内でも大きな格差が見られます。産業構造や都市化の程度によって差が生じています。

中国地方では島根県、鳥取県が上位を占める一方、広島県などの都市部では相対的に低い傾向が見られます。人口密度の違いが検挙率に大きく影響しています。

九州・沖縄地方では、県によって大きく異なる傾向を示しており、都市部と地方部の格差が顕著に現れています。

格差や課題の考察

最上位の島根県72.9%と最下位の大阪府19.7%の間には53.2ポイントもの大きな格差が存在しており、これは検挙率が約3.7倍の差があることを意味しています。

この格差の背景には、人口密度、都市化の進展度、交通インフラの発達状況、地域コミュニティの結束度など、多様な構造的要因があります。都市部では犯罪の複雑化・広域化が進む一方、地方部では事件数が少なく、地域の監視機能が働きやすい環境にあります。

検挙率の低さは犯罪の抑制効果を減少させ、治安悪化の悪循環を生む可能性があります。特に都市部では、捜査体制の強化、防犯カメラの充実、地域住民との連携強化などの総合的な取り組みが求められています。

統計データの基本情報と分析

全国平均は47.6%、中央値は**46.9%**となっており、平均値がわずかに上回っていることから、分布はほぼ対称的な形状を示しています。

標準偏差は14.3ポイントで、都道府県間のばらつきは中程度です。最大値と最小値の差は53.2ポイントと大きく、地域間格差の存在を明確に示しています。

第1四分位数37.4%、第3四分位数56.8%により、中央50%のデータは約19.4ポイントの範囲に収まっています。四分位範囲が比較的広いことから、都道府県による検挙率の違いが顕著であることが分かります。

分布の特徴として、都市部を中心とした低値グループと地方部を中心とした高値グループに大きく分かれる傾向が見られ、これは日本の都市化の進展度と密接に関連していると考えられます。

まとめ

  • 窃盗犯検挙率は島根県72.9%から大阪府19.7%まで53.2ポイントの大きな地域格差が存在
  • 上位は地方部(島根、山形、鳥取、秋田、富山)が占め、下位は都市部(大阪、茨城、愛知、千葉、東京)が占める明確な地域傾向
  • 人口密度、都市化の程度、地域コミュニティの結束度が検挙率に大きく影響している
  • 都市部では犯罪の複雑化・広域化により検挙が困難化している一方、地方部では地域の監視機能が効果的に働いている
  • 全国平均47.6%に対し、約半数の都道府県が平均を下回っており、検挙率向上は全国的な課題

今後は都市部における捜査体制の強化、防犯インフラの充実、地域連携の促進などにより、地域間格差の縮小と全体的な検挙率向上が求められています。また、継続的なデータ分析により、効果的な治安対策の検討と評価を行うことが重要です。

出典