都道府県別労働者災害補償保険給付率ランキング(2022年度)

概要

労働者災害補償保険給付率は、労働者数に対する労災保険給付の割合を示す指標で、労働災害の発生状況や労災保険制度の利用状況を反映しています。本記事では、2022年度の都道府県別労働者災害補償保険給付率のランキングを紹介し、地域間の差異や特徴について分析します。この指標は高いほど労災保険の給付を受ける労働者の割合が高いことを意味し、地域ごとの労働安全衛生の状況や産業構造の違いを反映しています。

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上位県と下位県の比較

上位5県と下位5県の詳細説明

上位5県の特徴

高知県14.7%(偏差値82.2)で全国1位となっています。林業や漁業など第一次産業が盛んな高知県では、これらの業種における労働災害の発生率が高く、労災保険給付率も高くなっていると考えられます。また、中小企業が多い産業構造も影響している可能性があります。

宮崎県13.6%(偏差値77.0)で2位につけています。農林水産業や建設業など、労働災害リスクが比較的高い業種の割合が高いことが影響していると考えられます。

北海道12.7%(偏差値72.7)で3位となっています。広大な面積を持つ北海道では、第一次産業や建設業などの労働災害リスクが比較的高い業種の割合が高いことに加え、冬季の厳しい気象条件も労働災害の発生に影響している可能性があります。

長崎県11.3%(偏差値66.1)で4位です。造船業や水産業など、労働災害リスクが比較的高い業種が集積していることが影響していると考えられます。

大分県10.5%(偏差値62.3)で5位です。製造業や建設業における労働災害の発生が影響していると考えられます。特に化学工業や鉄鋼業など、重工業分野での労働災害が労災保険給付率に反映されている可能性があります。

下位5県の特徴

東京都3.1%(偏差値27.3)で47位となっています。サービス業やIT産業など、比較的労働災害リスクが低い業種の割合が高いことが影響していると考えられます。また、大企業が多く、安全管理体制が整備されていることも要因の一つと考えられます。

沖縄県4.9%(偏差値35.8)で46位です。サービス業や観光業の比率が高い産業構造が、比較的低い労災保険給付率につながっている可能性があります。また、温暖な気候条件も労働環境に好影響を与えている可能性があります。

愛知県5.3%(偏差値37.7)で45位となっています。自動車産業を中心とした製造業が盛んな地域ですが、大手企業を中心に安全管理体制の整備が進んでいることが、低い労災保険給付率につながっていると考えられます。

富山県大阪府はともに5.7%(偏差値39.6)で43位タイとなっています。富山県は製薬業など比較的安全な製造業の割合が高いこと、大阪府はサービス業の比率が高いことや大企業の安全管理体制の整備が進んでいることが、低い労災保険給付率の要因として考えられます。

地域別の特徴分析

地域ブロック別の傾向

九州・四国地方は全体的に労働者災害補償保険給付率が高い傾向にあります。高知県(1位、14.7%)、宮崎県(2位、13.6%)、長崎県(4位、11.3%)、大分県(5位、10.5%)、鹿児島県(6位、10.2%)、佐賀県(7位、10.0%)など、上位に位置する県が多く見られます。一方、関東地方は比較的低い傾向にあり、東京都(47位、3.1%)を筆頭に、都市部の都県が下位に集中しています。

都市部と地方の比較

大都市を抱える都道府県では、労働者災害補償保険給付率が低い傾向が見られます。東京都(47位、3.1%)、愛知県(45位、5.3%)、大阪府(43位、5.7%)などは下位に位置しています。これらの地域ではサービス業など比較的労働災害リスクが低い業種の割合が高いことや、大企業を中心に安全管理体制の整備が進んでいることが影響していると考えられます。

一方で、千葉県(11位、8.9%)や埼玉県(14位、8.2%)などは首都圏に位置しながらも中位から上位に位置しており、製造業や建設業の比率、都市部と郊外部の産業構造の違いなどが影響している可能性があります。

産業構造による影響

第一次産業や建設業、製造業(特に重工業)の比率が高い地域では、労働者災害補償保険給付率が高い傾向が見られます。高知県(1位、14.7%)、宮崎県(2位、13.6%)、北海道(3位、12.7%)などがその例です。一方、サービス業やIT産業が中心の地域では、労働者災害補償保険給付率が低い傾向にあります。

特に注目すべきは、愛媛県(8位、9.9%)や奈良県(9位、9.2%)、和歌山県(10位、9.0%)など、中規模の県でも労災保険給付率が高い地域が存在することです。これらの地域では、特定の産業における労働災害リスクや、中小企業の割合が影響している可能性があります。

格差や課題の考察

産業構造と労働災害

労働者災害補償保険給付率の地域差には、産業構造の違いが大きく影響しています。農林水産業、建設業、製造業(特に重工業)などは、労働災害リスクが比較的高い傾向にあります。これらの業種の割合が高い地域では、労働者災害補償保険給付率も高くなる傾向があります。

例えば、高知県(1位、14.7%)や宮崎県(2位、13.6%)などでは、林業や農業など第一次産業の比率が高く、これらの業種における労働災害が労災保険給付率に反映されていると考えられます。一方、東京都(47位、3.1%)では金融業やIT産業など、デスクワークが中心の業種が多く、労働災害リスクが低いことが、低い労災保険給付率につながっていると考えられます。

企業規模と安全管理

中小企業が多い地域では、安全管理体制の整備が十分でない事業所も存在し、労働災害の発生率が高くなる傾向があります。一方、大企業が多い地域では、安全管理に投資する余力があり、労働災害防止の取り組みが進んでいることが多いです。このような企業規模の違いも、労働者災害補償保険給付率の地域差に影響を与えています。

例えば、愛知県(45位、5.3%)では、トヨタ自動車を中心とした大企業が多く、安全管理体制の整備が進んでいることが、低い労災保険給付率につながっていると考えられます。一方、四国や九州の県では中小企業の比率が高く、安全管理体制の整備が相対的に遅れている可能性があります。

労災保険制度の認知度と利用状況

労働者災害補償保険給付率は、実際の労働災害の発生状況だけでなく、労災保険制度の認知度や利用状況も反映しています。労働者の権利意識が高く、労災保険制度が適切に利用されている地域では、給付率が実態に近い形で表れますが、制度の認知度が低い地域では、実際の労働災害発生状況に比べて給付率が低くなる可能性があります。

都市部では労働組合の活動や労働者の権利意識が比較的高い傾向にありますが、それでも東京都(47位、3.1%)や愛知県(45位、5.3%)などでは労災保険給付率が低くなっています。これは、実際の労働災害発生率の低さを反映していると考えられますが、一部では労災保険の申請を抑制する企業文化の存在も否定できません。

統計データの基本情報と分析

統計データの分析

平均値と中央値の比較

全国の労働者災害補償保険給付率の平均値は約7.5%ですが、中央値は約7.3%となっています。平均値が中央値よりもやや高いことから、分布がやや右に歪んでいることがわかります。これは、高知県(14.7%)や宮崎県(13.6%)、北海道(12.7%)など、一部の県で特に高い値が見られるためです。

分布の歪みと外れ値

高知県の労働者災害補償保険給付率(14.7%)や宮崎県(13.6%)、北海道(12.7%)は特に高く、外れ値と考えられます。また、東京都(3.1%)は特に低く、下側の外れ値と考えられます。これらの外れ値を除くと、他の都道府県はより均一な分布となります。

四分位範囲による分布の特徴

第1四分位数(下位25%の境界)は約5.9%、第3四分位数(上位25%の境界)は約8.9%であり、四分位範囲は約3.0%となります。この範囲に全体の半数の都道府県が含まれており、中程度の分散があることを示しています。

標準偏差によるばらつきの程度

標準偏差は約2.3%と比較的大きく、データのばらつきがあることを示しています。これは都道府県間の労働者災害補償保険給付率に一定の格差があることを数値で表しています。変動係数(標準偏差÷平均値)は約30%となり、相対的なばらつきも中程度であることがわかります。

まとめ

2022年度の都道府県別労働者災害補償保険給付率ランキングでは、高知県(14.7%)が最も高く、宮崎県(13.6%)、北海道(12.7%)が続いています。一方、東京都(3.1%)が最も低く、沖縄県(4.9%)、愛知県(5.3%)が続いています。

労働者災害補償保険給付率には地域間で一定の格差があり、これは産業構造、企業規模、地理的特性など様々な要因によって影響を受けています。九州・四国地方では高い傾向があり、大都市圏では低い傾向が見られますが、同じ地域ブロック内でも県によって差があり、地域ごとの特性が表れています。

労働災害を減少させ、労働者の安全を確保するためには、各地域の特性に応じた安全対策が重要です。特に労働者災害補償保険給付率が高い地域では、安全管理体制の強化や労働者への安全教育の充実、行政による指導・支援の強化などが求められます。

また、労災保険制度が適切に利用されるよう、制度の周知や利用促進も重要です。労働者が安心して働ける環境を整備することは、労働者の健康と生命を守るだけでなく、企業の生産性向上や社会的コストの削減にもつながる重要な課題です。

出典