山梨県の人口10万人あたり図書館数は6.7。神奈川県は0.9。住む場所で「本との距離」はこれほど変わる。都道府県データで図書館・博物館を中心とした「知の地域格差」を読み解く。
図書館数ランキング -- 山梨・島根・高知が上位、神奈川・愛知は下位
人口10万人あたりの図書館数を都道府県別にランキングすると、1位は山梨県(6.70)、2位は島根県(6.39)、3位は高知県(6.10)と、人口の少ない県が上位を占める。長野県(6.04)、鳥取県(5.65)も高い。
下位は神奈川県(0.92)、愛知県(1.30)、宮城県(1.56)と大都市圏が並ぶ。人口あたりでは、山梨県と神奈川県で約7倍の格差がある。
ただし、図書館の「数」だけでは利便性は測れない。人口が少ない県では小規模な分館が数に含まれることもあり、規模や蔵書量との組み合わせで見る必要がある。
47都道府県の図書館数ランキングをもっと見る1人あたり貸出冊数で見る「使われている図書館」
図書館の利用度を示す指標として、1人あたり図書館館外貸出冊数をタイルグリッドマップで可視化した。
1人あたり貸出冊数の上位は滋賀県(6.95冊)、高知県(6.53冊)、東京都(6.00冊)。高知県は図書館数も多く、量と利用度の両方で充実している。滋賀県は図書館数は中位ながら貸出冊数が多く、蔵書の質やサービスの良さが利用を促進していると考えられる。
下位は沖縄県(2.73冊)、青森県(2.74冊)、秋田県(2.75冊)。上位と下位で約2.5倍の差がある。
NOTE
図書館館外貸出冊数は2020年データのため、コロナ禍の影響で通常年より少ない可能性がある。
博物館数ランキング -- 東京・長野・北海道に集中
博物館数(類似施設を含む)を都道府県別に見ると、東京都が突出して多い。歴史・美術・科学など多様な博物館が集積している。長野県・北海道も施設数が多く、地域の歴史・自然資源を活かした博物館が充実している。
博物館は図書館と異なり、観光資源としての側面も持つ。重要文化財の指定件数が多い京都府・奈良県は博物館の質的な充実度でも高い評価を得ているが、絶対数では上位10に入らない県もある。
47都道府県の博物館数ランキングをもっと見る図書館数と趣味・娯楽行動者率の関係
文化施設が充実した県の住民は趣味や娯楽を楽しんでいるのか。人口あたり図書館数と趣味・娯楽行動者率の散布図を描いた。
結果は、明確な正の相関が見られない。趣味・娯楽行動者率の上位は東京都・神奈川県・埼玉県など都市部で、図書館数の多い山梨・島根とは重ならない。趣味・娯楽の選択肢は図書館以外にも多く、商業施設・イベント・デジタルコンテンツなどが都市部の行動者率を押し上げていると考えられる。
ただし、図書館が「趣味の入り口」として機能している面は見逃せない。数値に表れにくい読書習慣の定着や生涯学習の基盤づくりに、図書館が果たす役割は大きい。
47都道府県の趣味・娯楽行動者率ランキングをもっと見る文化施設の構成比較 -- 図書館・博物館・劇場のバランス
図書館数上位10都道府県について、博物館数・劇場数を加えた文化施設の構成を比較した。
東京都は図書館401館に加え、博物館・劇場も多く、文化インフラの総合力で突出している。北海道は図書館・博物館ともに多いが、広大な面積を考えるとアクセスの課題がある。大阪府は図書館155館で絶対数は多いものの、人口あたりでは下位圏にとどまる。
TIP
人口あたり図書館数が上位の山梨県(6.7館)や島根県は規模が小さく、分館まで含めた館数が多い。蔵書数・開館時間・電子書籍サービスの有無など「質」の指標と合わせて見ると、施設が多い県が利便性でも高いとは限らない。
劇場・音楽堂は東京・大阪・兵庫に集中しており、舞台芸術のインフラは人口集積地に依存する構造だ。
47都道府県の劇場・音楽堂数ランキングをもっと見るまとめ
文化インフラのデータから見えるポイントを整理する。
デジタル化の進展で電子書籍やオンラインコンテンツが普及する中、物理的な図書館・博物館の役割は「場としての価値」にシフトしつつある。地域の知的拠点として、また住民の居場所として、文化施設の意義は数値に表れない部分も大きい。人口あたり施設数の格差は存在するが、それが直ちに「文化格差」を意味するわけではないことも、データは示唆している。
データ出典
社会教育調査・社会生活統計指標(e-Stat)を基に作成(2021年)。図書館館外貸出冊数・帯出者数は2020年データ。重要文化財指定件数は2024年データ。