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共働き率で逆転する世帯月収

「年収が高い県」と聞くと東京を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし世帯全体の月収で見ると、順位は意外な顔ぶれに変わります。世帯主の収入が中位の県でも、共働き率が高ければ世帯全体では上位に躍り出るからです。同じ「稼げる県」でも、東京型の「一馬力で稼ぐ」県と、北陸型の「夫婦二人で稼ぐ」県は中身がまったく違うのです。

この記事では、総務省「家計調査」系列の 実収入(勤労者世帯の月収)を軸に、世帯主収入との差を散布図で重ねて、「世帯主の給料が高い県」と「世帯として手元に多く残る県」がどこでズレるのかを可視化します。先に結論をお伝えすると、山形県は世帯主収入なら35位ですが、共働き効果で実収入は9位まで跳ね上がります。

実収入ランキング(勤労者世帯・月額)

実収入ランキング 上位5・下位5

実収入が最も多いのは東京都 で月額約79.4万円です。埼玉県(76.5万円)、千葉県(75.0万円)と首都圏が上位を占めます。一方、最も少ないのは沖縄県 で約49.4万円。1位の東京との差は約30万円、1.6倍の開きがあります。

ここで注目したいのは、上位に首都圏だけでなく北陸の富山県(6位・70.1万円)や山形県(9位・68.2万円)が食い込んでいる点です。これらの県は後述するとおり世帯主の給料はそれほど高くありません。にもかかわらず実収入で上位に来るのは、配偶者の就労が世帯収入を押し上げているからです。逆に下位は沖縄・秋田・愛媛と続き、世帯主収入の低さと共働き世帯の少なさが重なって、世帯全体の月収が伸び悩む構図が見えてきます。

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都道府県マップ──月収の地域パターン

実収入 都道府県マップ

マップを見ると、月収の地域パターンが色の濃淡で浮かび上がります。首都圏が突出して濃い色で、東京・埼玉・千葉・栃木・奈良が70万円超のグループを形成しています。これは高収入の世帯主が都市部に集中していること、住居費の高さに見合う賃金水準が保たれていることが背景にあります。

一方で、北陸も健闘しているのが特徴です。富山・福井が首都圏に次ぐ濃い色で塗られていますが、これは賃金が突出して高いからではなく、世帯の働き手が多いことの反映です。九州・東北・四国は薄い色が目立ちますが、これらの地域は物価や住居費も全国平均より低いため、「月収が低い=生活が苦しい」と単純には言えません。月収の地図は、賃金の地図であると同時に「世帯の働き方の地図」でもあるのです。

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世帯主収入ランキング──実収入との顔ぶれの違い

世帯主収入ランキング 上位5・下位5

世帯主の収入(月額)だけを見ると、順位は実収入とかなり異なります。1位は埼玉県(60.5万円)、2位千葉県(58.5万円)、そして東京都(58.4万円)が続き、首都圏の「一馬力高収入ベッドタウン型」が上位を占めます。実収入ではトップだった東京が、世帯主収入では埼玉と千葉に抜かれて順位を下げている点が興味深いところです。

注目は愛知県です。実収入では13位とそれほど目立ちませんが、世帯主収入では5位(51.1万円)と上位に入ります。製造業の正規雇用が世帯主の給料を底上げしている一方、共働き率はそれほど高くないため、世帯全体ではトップ集団から一歩引いた位置にとどまります。これとは対照的に、山形・富山・福井は世帯主収入では中位(40万円台前半)にすぎませんが、後述の共働き効果で実収入では大きく上位に食い込みます。

最下位は沖縄県(34.5万円)で、実収入でも最下位と一致します。沖縄は世帯主収入も実収入もともに最も低く、共働きでも他県に届かない構造です。世帯主収入の低さがそのまま世帯収入の低さに直結している点で、共働きで逆転する北陸とは対照的なケースだと言えます。

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NOTE

「世帯主収入」は勤労者世帯の世帯主一人の勤め先収入、「実収入」は世帯主以外の家族の収入や事業・内職収入なども含めた世帯全体の収入です。両者の差が大きい県ほど、配偶者など世帯主以外の働き手が稼いでいることを意味します。

世帯主収入 vs 実収入──「共働き効果」の可視化

世帯主収入と実収入の散布図

横軸に世帯主収入、縦軸に実収入をとると、対角線(45度線)から上に離れた県ほど「世帯主以外の収入」が大きいことを意味します。点が右上に伸びるか、左から上に跳ね上がるかで、その県の「稼ぎ方」が一目でわかります。

  • 対角線から大きく上にある県: 山形・富山・福井です。世帯主収入は40万円台前半なのに実収入は67〜70万円台。世帯主の給料が中位でも、世帯としては上位に並びます。配偶者の収入が世帯を大きく押し上げているグループです。
  • 対角線に近い県: 埼玉・千葉です。世帯主収入が高く、実収入も高い。世帯主の「一馬力」で稼ぐベッドタウン型で、世帯主以外の上乗せ分は相対的に小さいタイプです。
  • 対角線の下寄り: 沖縄・秋田です。世帯主収入も実収入もともに低水準で、共働きの上乗せがあっても全体の底上げには届きません。

代表例として山形県を見てみましょう。世帯主収入だけなら41.5万円で全国35位ですが、実収入は68.2万円で全国9位。26ランクのジャンプアップです。富山県も世帯主収入26位から実収入6位へ、福井県も世帯主収入27位から実収入10位へと、いずれも大きく順位を上げています。

TIP

「年収が高い県」を探すなら世帯主収入のランキングを、「世帯として手元に多く残る県」を探すなら実収入のランキングを見ます。共働きを前提に移住・転職先を考えるなら、両者の差が大きい山形・富山・福井のような県は、世帯主の額面以上に世帯収入が伸びる可能性があります。

WARNING

散布図が示すのは「世帯主収入と実収入の相関」であって、共働き率を直接プロットしたものではありません。世帯主以外の収入には配偶者の給料だけでなく、同居家族の収入や世帯主の副業・事業収入も含まれます。「対角線から上=共働きが多い」は有力な解釈ですが、断定には世帯類型別の追加データが必要です(相関≠因果)。

まとめ

実収入・世帯主収入・両者の差(世帯主以外の収入)から、勤労者世帯の「稼ぐ力」の地域差を分析しました。

この記事でわかったこと

「月収が高い県」は必ずしも「世帯主の給料が高い県」ではありません。北陸3県のように世帯主以外の収入で世帯収入を底上げしている地域もあれば、首都圏のように世帯主の高収入で稼ぐ地域もあります。同じ実収入上位でも、東京・埼玉と山形・富山では稼ぎ方の中身がまったく違うのです。

転職や移住を考えるとき、「個人の年収」だけでなく「世帯としていくら手元に残るか」という視点が重要です。共働きのしやすさ、物価水準、通勤コストまで含めて比較すると、住む場所の評価はガラリと変わるかもしれません。経済カテゴリの他のランキングも合わせて見ると、収入と暮らしの全体像がつかめます。

NOTE

本記事の「実収入」「世帯主収入」は総務省「家計調査」系列の勤労者世帯・月額(2人以上世帯)の数値です。サンプル数が少ない県では年次変動が大きくなる場合があります。2022年の家計調査改訂により、一部の都道府県で過去の数値と接続しない点に留意が必要です。

データ出典

本記事のデータはe-Stat(政府統計の総合窓口)を基に作成しています。