焼酎の年間消費支出額で全国1位なのは宮崎県の14,008円です。ところが同じ宮崎県を清酒の消費支出額ランキングで見ると、46位の2,141円まで沈みます。清酒1位の福島県11,811円と比べると5倍以上の差です。1つの県が「片方は日本一、もう片方はほぼ最下位」という逆転構造を見せるのは、単なる好みの違い以上の理由がありそうです。
総務省の家計調査(二人以上世帯、2024年)から、焼酎と清酒それぞれの年間消費支出額を都道府県別に並べ、どこで逆転が起きているかを見ていきます。
NOTE
ここでの「消費支出額」は家計調査における二人以上の世帯が1年間に購入した金額(円)です。飲食店での消費や贈答用は含まれず、家庭での購入行動を反映した数値です。焼酎消費「量」(ml)とは別の指標なので、量のランキングとは順位が一致しない場合があります。
焼酎の消費支出額ランキング
1位の宮崎県14,008円を筆頭に、2位鹿児島県10,138円、3位熊本県8,796円、4位大分県8,199円と、上位4県がすべて南九州で占められています。九州の中でも芋焼酎の産地として知られる宮崎・鹿児島は、麦焼酎中心の大分・米焼酎中心の熊本と製法は異なりますが、いずれも焼酎が食卓の定番として根付いている地域です。焼酎の消費量(ml)で見た地域差は「焼酎は宮崎が宮城の5倍、なぜ南九州だけ突出するのか」でも詳しく扱っています。
一方で最下位は宮城県3,179円、46位長野県3,354円、45位愛媛県3,750円と、東北や内陸・四国が下位に並びます。最大の宮崎県と最小の宮城県では4.4倍の開きがあり、支出額でも「焼酎文化圏」とそうでない地域がはっきり分かれています。
5位に島根県、6位に秋田県、7位に沖縄県が入っている点も見逃せません。南九州以外にも焼酎への支出が多い地域が点在しており、九州一極集中というより「複数の焼酎産地が並存している」という見方の方が実態に近いといえます。
清酒の消費支出額ランキング
清酒では焼酎とまったく異なる顔ぶれが上位に来ます。1位福島県11,811円、2位秋田県8,918円、3位埼玉県8,673円、4位山形県8,301円、5位富山県7,635円。東北(福島・秋田・山形)と北陸(富山)が上位を占め、日本酒の名だたる酒処が並ぶ、いわば「教科書通り」の結果です。
そして最下位に沖縄県1,485円、46位宮崎県2,141円、45位鹿児島県2,507円と、焼酎ランキングの上位県がそのまま清酒ランキングの下位に沈んでいます。清酒の最大・最小倍率は8.0倍で、焼酎の4.4倍よりも地域差が大きい点も特徴です。
焼酎と清酒が入れ替わる構造
2つのランキングを重ねると、宮崎・鹿児島は「焼酎は日本一クラス、清酒はほぼ最下位」という完全な逆転関係にあることがわかります。反対に秋田県は、清酒2位(8,918円)でありながら焼酎でも6位(7,521円)に入っており、両方をよく飲む数少ない県です。
この逆転の背景には気候と原料があります。南九州はサツマイモの栽培に適した温暖な気候と、稲作よりも畑作が中心の土地条件を持ち、江戸期から芋焼酎づくりが根付いてきました。対して東北・北陸は良質な米と雪解け水に恵まれ、清酒の産地として発展した歴史があります。「どちらの酒が地元の産業として定着したか」が、そのまま消費支出額の逆転として表れている形です。
TIP
焼酎は年収階級を問わず幅広く飲まれる酒として知られ、清酒や輸入ワインのように高価格帯の伸びが乏しい一方で、支出全体は比較的安定しています。上位県の顔ぶれが「高級酒処」ではなく「地元産焼酎の産地」で占められているのは、この安定した支出構造とも整合的です。
秋田県のように焼酎・清酒どちらも上位に入る県がある一方、埼玉県(清酒3位)のように地元に酒どころの歴史がなくても消費支出額が高い県も存在します。埼玉は東京圏のベッドタウンとして人口が多く、世帯当たりの支出額の絶対水準が押し上げられている可能性があり、産地の有無だけでは説明しきれない要因も混ざっています。
WARNING
家計調査は都道府県庁所在地及び政令指定都市が調査対象の中心であり、都道府県全域の消費動向を完全に代表するものではありません。また年による変動があるため、単年(2024年)の数値であることに留意してください。
まとめ
- 焼酎消費支出額1位は宮崎県14,008円、最下位は宮城県3,179円で4.4倍差
- 清酒消費支出額1位は福島県11,811円、最下位は沖縄県1,485円で8.0倍差
- 宮崎・鹿児島は焼酎で上位、清酒で最下位級という完全な逆転構造
- 焼酎上位は南九州(宮崎・鹿児島・熊本・大分)に加え島根・秋田・沖縄が点在
- 清酒上位は東北(福島・秋田・山形)と北陸(富山)の伝統的な酒処が中心
お酒に関する他の指標は家計調査カテゴリからもたどれます。
データ出典
総務省統計局「家計調査」(二人以上の世帯、2024年)を基に、e-Stat(政府統計の総合窓口)経由で整備したデータを使用しています。