令和6年(2024年)、交通事故で亡くなった人は 2,663人。 1日あたり約7人──毎日どこかで、誰かが帰らぬ人になっています。
「自分の県って、交通事故的にどうなんだろう?」と気になったことはありませんか。
「田舎のほうが安全そう」「都会は危なそう」──なんとなくそんなイメージがある人も多いと思います。
でも、データを見るとそのイメージが意外なほどひっくり返される場合があります。
そこで今回は、e-Statの都道府県別データと令和6年度版の交通安全白書をもとに、47都道府県の交通安全を徹底ランキングしてみました。あなたの県の順位、ぜひ確かめてみてください。
都道府県別「交通事故死者数」ランキング
まず押さえておきたいのが、比較の「ものさし」です。使うのは人口10万人当たりの交通事故死者数です。
「単純に死者数の多い県を並べればよくない?」と思うかもしれませんが、そうするとどうしても人口の多い東京や大阪が上位に来てしまいます。
同じ10万人のなかで何人が亡くなったか──そこを揃えて初めて、地域ごとの「本当のリスク」が見えてきます。
上位は徳島・愛媛・山口・和歌山・宮崎──地方の県が占める結果になりました。車なしでは生活できない地域では走行距離が自然と長くなりますし、高速道路や幹線道路を長時間走る機会も増えます。その積み重ねが、命に関わる事故のリスクとして現れてくるのです。
一方、下位は大都市圏が中心ですが、3位に島根県が入っているのが意外なポイントです。東京・神奈川・大阪・埼玉といった大都市圏は、電車やバスが充実しているため車に頼る場面が少ないこと、走るとしても渋滞だらけの市街地が中心で速度が出にくいことが死者数を押し下げているとみられます。島根県は人口が少なく車社会である典型的な地方県ですが、それでも全国3位という結果は、「地方だから必ず危険」とは言い切れないことを示しています。
【コラム】対策次第で変えられる──佐賀県の10年
ランキング上位(危険)の県が、政策によって大きく改善した例も存在します。
実は佐賀県、2012〜2016年は5年連続で「人口10万人当たり死者数 全国最多」でした。この不名誉な記録を機に、官民一体の改善プロジェクトを展開。
- 意識改革: 交通ルール遵守と交通マナー向上を促す広報・教育の集中実施(「よかろうもん運転」撲滅キャンペーン等)
- ハード面の対策: 事故多発交差点のカラー舗装・右折レーンの延伸・警察官を模した看板や反射材の設置・街頭指導の強化
- 企業・団体との連携: 「事故を起こさなければ景品が当たる」など、インセンティブを組み込んだ独自の活動(「みっつの3(さん)運動」)
その結果、2017年に最多を脱却。以降、交通事故件数は10年連続で減少傾向にあります。2024年時点では全国18位(人口10万人当たり3.0人)と中間水準まで改善しており、現在もランキング上位に苦しむ県にとって希望の事例となっています。
全国タイルグリッドマップ
各都道府県を同じサイズのタイルで表示しています。赤が濃いほど死者数が多く、薄いほど少ない(安全)ことを示します。
事故の「件数」と「致死率」は別モノ
ちょっと待ってください。「事故件数が多い県=危険な県」かというと、じつはそうでもないのです。
都市部は車と人が多い分、接触事故や軽い追突は日常茶飯事です。でも死亡事故になるケースは少ない。
一方、地方では事故件数そのものは少ないのに、ひとたび事故が起きると命に関わる確率がぐっと上がります──「致死率」が高いのです。
まず、人口当たりの発生件数で都道府県を並べてみましょう。
件数上位は群馬・佐賀・静岡といった車社会の県や大都市圏が占めます。人口が密集し、車と歩行者が入り混じる市街地では、軽微な接触事故が頻発するためです。
一方、件数下位は島根・秋田・鳥取など、人口の少ない地方県が並びます。「件数が少ない=安全」に見えますが、先ほどの死者数ランキングでこれらの地方県が上位に名を連ねていたことを思い出してください──「件数が少ないのに死者が多い」という逆転現象が起きているのです。
この構造を整理するとこうなります。
| 地域タイプ | 事故件数(人口当たり) | 致死率(100件当たり死者数) | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| 大都市圏 | 多い | 低い | 低速走行・接触事故中心 |
| 地方・農村部 | 少ない | 高い | 高速走行・正面衝突が多い |
使用指標: 事故件数(人口当たり) × 致死率(100件当たり死者数)
交通安全白書(令和6年度)によると、死亡事故の類型でいちばん多いのが「正面衝突等」だといいます。地方の片側1車線の幹線道路を制限速度ギリギリで走るシーン、想像できますか。そういう場所での事故は、本当に取り返しがつきません。
なぜ地方ほど「致死率」が高いのか?──道路環境の影響
「地方ほど致死率が高い」という傾向、もう少し深掘りしてみましょう。道路インフラのデータを見ると、その理由がくっきりと浮かび上がってきます。
使用指標: 道路密度(km²当たり道路延長) × 致死率
NOTE
道路密度は2023年、道路平均交通量は2020年のデータ(各e-Stat公表最新値)。致死率は2024年。
逆説的ですが、地方の広い道路は**「見通しがよすぎること」が裏目に出ます**。信号も少ない、対向車もそんなに来ない──そうなると自然とアクセルが踏み込まれます。もし80〜100km/hで走る片側1車線の国道で正面衝突が起きたら、どうなるか。想像するだけで怖くなりますが、それが現実として起きているのです。
47都道府県のデータで見ると、道路密度と致死率の相関係数は r = −0.60。統計的にも明確な関係が確認できます。
同様の傾向は道路平均交通量でも見られ(r = −0.63)、「空いている道ほどスピードが出やすく、事故の致死性が高くなる」という構造が一貫しています。一方、主要道路舗装率との相関は r = −0.30 と弱く、致死率を主に左右しているのは「道路の密度と交通量」と考えられます。道路整備だけでは安全は守れない──インフラの「量」と同時に、ドライバーの速度管理が問われているのです。
高齢化率と交通事故死者数の深い関係
交通安全白書のデータに、思わず目が止まる数字があります。
令和6年の交通事故死者2,663人のうち、65歳以上が1,513人(56.8%)を占める
半数以上が高齢者、という事実です。さらに驚くのが、80歳以上の歩行中死者数は全年齢平均の約3.9倍(人口10万人当たり)にのぼるという点。交通事故は「若者が起こすもの」──今やそのイメージはまったく通用しません。高齢者の安全をどう守るかが、現代日本の交通安全における最大のテーマになっています。
使用指標: 65歳以上人口比率 × 交通事故死者数(人口10万人当たり)
散布図を見ると、高齢化率が高い県ほど死者数も多いという傾向がきれいに右肩上がりで現れています。地方の県が死者数上位に名を連ねる背景には、高齢化という社会課題が深く絡み合っているのです。
高齢者の交通リスクが高い主な理由
- 歩行者として──判断速度や歩行速度が落ちるため、横断中の事故に巻き込まれやすくなります
- ドライバーとして──認知機能・反射速度の低下が事故につながりやすくなります
- 受傷の深刻さ──同じ事故でも、高齢者は重症・死亡に至りやすいのです
超高齢社会へと向かう日本で、この問題がすぐに改善する見込みは薄い状況です。データが示す現実として、ぜひ頭に入れておいてください。
あなたの県は大丈夫?──自動車保険の普及率にも地域差
最後に、「もしものとき」の備えについても見ておきましょう。
任意自動車保険の普及率です。
任意保険は強制加入ではありませんが、事故で加害者になったとき、相手の治療費や車の修理代を賄う「命綱」になります。
普及率が低い地域では、被害者側が泣き寝入りを強いられるリスクも現実としてあります。
最大17ポイント以上の差というのは、かなり大きいですよね。気になるのは、死者数ランキングで「危険」とされた県が保険普及率でも低い傾向にある点です。事故リスクが高いのに備えも薄い──という二重のリスクを抱えている地域があることは、少し心配になります。
万が一に備えて──保険の見直しを
死者数ランキングで気になる順位だった県に住んでいる方は、一度だけ保険の証書を引っ張り出して補償内容を確認してみてはいかがでしょうか。「自分は大丈夫」と思っているうちが一番危ない、というのは交通事故に限った話ではありませんから。
とくに配送業や運送業で黒ナンバー車両を使っている方は、走行距離が長い分リスクも高くなります。業務用車両に特化した保険も選択肢に入れておくと安心です。
まとめ
交通事故死者数の地域差には、道路環境・高齢化・保険普及率が複合的に絡んでいます。
あなたの県は何位でしたか?「思ったより危険で驚いた」という方も、「意外と安全でひと安心」という方もいるかもしれません。
どちらにせよ、一度データで自分の地元を見つめ直してみるのは悪くない経験だと思います。
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