2022年度の都道府県別年間救急出動件数(人口千人当たり)は、大阪府が全国1位、福井県が最下位です。都市部の人口密度と高齢化が救急需要を押し上げ、地域間の医療格差が顕著に表れています。全国平均は53.8件で、地域特性による差が明確です。
概要
年間救急出動件数(人口千人当たり)は、各都道府県における救急車の出動数を人口で正規化した指標です。この指標は、地域の医療ニーズ、高齢化の進展度、都市部の人口密度、そして医療アクセスの状況を反映する重要なデータです。
この指標が重要である理由は、地域の救急医療ニーズの把握、高齢化や健康格差といった社会課題の発見、そして効果的な医療資源配分の基礎データとなるためです。全国平均は53.8件で、都市部と地方で大きな格差が存在します。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
大阪府(1位)
人口密度の高さと高齢化率の進展が主な要因であり、大阪市内では特に出動件数が多いです。都市型社会の課題が色濃く反映された結果といえます。
高知県(2位)
全国トップクラスの高齢化率が影響しており、過疎化による医療アクセスの悪化も要因の一つです。中山間地域での救急搬送距離の長さも課題となっています。
奈良県(3位)
大阪のベッドタウンとして高齢化が急速に進行しており、県内の医療機関数が限られているため、大阪府への救急搬送も多いです。住宅地での高齢者世帯増加が影響しています。
沖縄県(4位)
離島部での救急搬送の特殊事情があり、観光客の急病・事故も件数を押し上げています。独特の地理的条件が救急需要に影響を与えています。
東京都(5位)
人口密度の高さと高齢者数の多さが要因であり、24時間社会による深夜の救急要請も多いです。多様な救急事案に対応する必要がある大都市の特性を示しています。
下位5県の詳細分析
福井県(47位)
三世代同居率の高さが影響している可能性があり、比較的若い人口構成も要因の一つです。地域コミュニティの結束の強さも関係していると考えられます。
佐賀県(46位)
地域医療連携が比較的良好であり、住民同士の互助システムが機能しています。医療機関への定期通院率の高さも要因の一つです。
青森県(45位)
地域医療連携が比較的良好であり、住民同士の互助システムが機能しています。医療機関への定期通院率の高さも要因の一つです。
岩手県(44位)
地域医療体制の整備が進んでおり、住民の健康意識も高く、予防活動が活発です。東日本大震災からの復興過程での医療体制強化も影響しています。
秋田県(43位)
地域医療連携システムが機能しており、健康寿命の長さも特徴的です。予防医療への取り組みが成果を上げていると考えられます。
地域別の特徴分析
関西地方
関西地方は全体的に高い数値を示しています。大阪府(1位)、奈良県(3位)が上位に位置し、都市部の人口集中と高齢化が主要因です。京都府、兵庫県も全国平均を上回る水準となっています。
四国地方
高知県(2位)を筆頭に、四国各県が高い数値を示しています。高齢化率の高さが共通要因となっており、医療過疎地域での救急搬送距離の長さも影響しています。愛媛県、徳島県も比較的高い水準を維持しています。
北陸地方
福井県(47位)、石川県(25位)、富山県(24位)が比較的低い水準となっています。三世代同居率の高さが特徴的で、地域コミュニティの結束が強く、互助機能が働いています。
東北地方
青森県(45位)、岩手県(44位)、秋田県(43位)、山形県(42位)、福島県(41位)が下位グループに位置しています。地域医療連携システムが機能している地域が多く、健康づくり活動への住民参加率も高いです。
社会的・経済的影響
1位の大阪府と47位の福井県の格差は31.6件に達し、地域の医療費負担や救急体制整備費用に大きく影響しています。高齢化率の違い(地域により10%以上の差)、人口密度(都市部と過疎地の環境の違い)、医療アクセス(医療機関までの距離と交通手段)、生活習慣(地域の健康意識と予防医療の浸透度)が地域間格差の主要因です。救急出動件数の多い地域では、救急隊員の負担増加や医療費の増大が課題となっています。一方、件数の少ない地域では、救急体制の維持が財政上の負担となっています。
対策と今後の展望
石川県では地域医療連携システムの充実が成果を上げています。福井県では三世代同居支援策が間接的に効果を発揮しています。地域特性に応じた対策として、都市部では高齢者見守りシステムの強化、地方部では地域医療連携の推進、全国共通では予防医療の充実が重要です。救急医療体制の持続可能性を確保するため、地域特性を活かした総合的な取り組みが求められます。
統計データの基本情報と分析
救急出動件数の地域格差は顕著で、都市部と地方では大きな差があります。偏差値70超の県が2県存在する一方、偏差値35未満の県が8県あり、地域間の医療格差が顕著です。
まとめ
救急出動件数の地域差は、関西・四国地方で救急出動件数が多い一方、北陸・東北地方では救急出動件数が少ないという特徴があります。この地域差を是正するためには、地域医療連携システムの構築が重要であり、地域の医療機関が連携して効率的な救急医療を提供する体制が必要です。また、予防医療の推進により、救急事案の発生を未然に防ぐ取り組みが急務です。さらに、持続可能な救急体制の確立により、地域の特性に応じた救急医療サービスを提供する必要があります。今後は地域特性を活かした医療政策の推進と、救急医療体制の整備、持続可能な地域医療の構築が重要です。