2022年度の都道府県別精神科病院年間新入院患者数(人口10万人当たり)は、熊本県が全国1位、奈良県が最下位です。精神科医療の受け入れ体制と地域特性による医療需要の違いが明確に表れています。全国平均は232.8人で、地域間の精神医療格差が顕著です。
概要
精神科病院年間新入院患者数(人口10万人当たり)は、各都道府県の精神科病院が1年間に受け入れた新規入院患者の数を人口で正規化した指標です。この数値は、地域の精神疾患の有病率、精神科医療へのアクセスしやすさ、そして精神保健福祉サービスの充実度を測る上で非常に重要です。
この指標が高い地域は、精神科医療の提供体制が充実しているか、あるいは精神疾患を抱える住民が多い可能性を示唆します。逆に低い地域は、医療資源が不足しているか、地域での精神保健対策が機能している可能性が考えられます。2022年度のデータは、地域ごとの精神医療の現状と課題を浮き彫りにします。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
熊本県(1位)
全国平均を大幅に上回る高い数値を示しており、精神科病院の病床数が多く、受け入れ体制が充実していることが背景にあります。地域包括ケアシステムの構築やアウトリーチ支援体制の整備にも積極的です。
徳島県(2位)
四国地方の精神科医療をリードしており、精神科救急医療体制の24時間対応や、地域移行支援の積極的な推進、多職種連携による包括的支援が特徴的です。
長崎県(3位)
離島医療も含めた幅広い対応を行っており、離島部への精神科医療提供体制、テレメディシンの活用推進、地域密着型の支援体制構築に力を入れています。
鹿児島県(4位)
広域にわたる医療提供体制を整備しており、離島・過疎地域への医療アクセス確保、精神科専門医の育成支援、地域住民への啓発活動強化に取り組んでいます。
高知県(5位)
県全体での医療連携体制が充実しており、精神科医療と福祉サービスの一体的提供、早期介入・早期支援体制の構築、家族支援プログラムの充実が注目されます。
下位5県の詳細分析
奈良県(47位)
精神科医療提供体制の抜本的見直しが急務であり、近隣府県との医療連携強化や、専門医療機関の誘致・整備が求められます。
長野県(46位)
地域医療体制の見直しが課題であり、広域医療圏での連携強化、精神科医療の確保、予防対策の推進が重要です。
東京都(45位)
都市部特有の課題を抱えており、外来医療中心の治療体制、地域医療連携の推進、社会復帰支援の充実が図られています。
千葉県(44位)
人口規模に対する医療体制の課題があり、広域にわたる医療提供体制の整備、精神科救急医療体制の強化、地域格差の是正が求められます。
滋賀県(43位)
近畿地方の中でも低い水準となっており、精神科病床数の不足、専門医療機関の地域偏在、アクセス改善が必要です。
地域別の特徴分析
九州・四国地方
熊本県(1位)、徳島県(2位)、長崎県(3位)、鹿児島県(4位)、高知県(5位)と、九州・四国地方の県が上位を独占しています。これらの地域では、精神科病院の集積、地域包括ケアシステムの発達、離島・過疎地域への対応も充実しています。
近畿地方
近畿地方は全体的に低い水準となっており、特に奈良県(47位)、滋賀県(43位)が下位です。都市部への医療機関集中、地域間格差の存在、外来中心の医療体制、社会資源の活用推進が必要です。
関東地方
関東地方も全体的に低めの水準です。東京都(45位)、千葉県(44位)が下位圏です。外来医療が中心的役割、社会復帰支援体制が発達、医療連携システムが複雑、都市部特有の課題への対応が求められます。
社会的・経済的影響
1位の熊本県と47位の奈良県の格差は約5.7倍に達します。この大きな地域格差は、精神科医療の質と住民の生活に深刻な影響を与えています。医療資源の地域偏在、医療政策の違い、地域特性(人口密度、交通アクセス、社会資源)が主要因です。医療アクセスの不平等、治療機会の地域間格差拡大、家族負担の増大、医療を求めた人口移動の促進などが社会的影響として挙げられます。医療費の地域格差、適切な治療機会の差による労働力への影響、医療関連産業の地域経済への波及効果などが経済的影響として考えられます。
対策と今後の展望
地域格差是正に向けた具体的取り組みが各地で進んでいます。熊本県や徳島県の成功事例を参考とした施策展開が重要です。テレメディシンの活用による遠隔診療、医療連携体制の強化、精神科専門医育成支援が効果的な対策例です。徳島県の24時間救急医療体制モデル、高知県の多職種連携システム、長崎県の離島医療提供体制などが成功事例として挙げられます。デジタル技術活用(AI診断支援、オンライン診療の拡充)、予防医学の推進(早期発見・早期介入体制の強化)、社会復帰支援(就労支援、住居確保支援の充実)が今後の課題です。持続可能な医療体制構築には、継続的な政策評価と改善が不可欠です。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値人 |
---|---|
平均値 | 226 |
中央値 | 212.4 |
最大値 | 425.6(熊本県) |
最小値 | 74.8(奈良県) |
標準偏差 | 82.2 |
データ数 | 47件 |
精神科新入院患者数の地域格差は顕著で、精神科医療の受け入れ体制と地域特性による医療需要の違いが明確に表れています。偏差値70超の県が2県存在する一方、偏差値35未満の県が5県あり、地域間の精神医療格差が顕著です。
まとめ
精神科新入院患者数の地域差は、九州・四国地方で精神科新入院患者数が多い一方、近畿・関東地方では精神科新入院患者数が少ないという特徴があります。この地域差を是正するためには、地域精神医療連携システムの構築が重要であり、地域の精神科医療機関が連携して効率的な医療サービスを提供する体制が必要です。また、精神科専門医の育成支援により、地域の精神科医療人材を確保し、医療サービスの質を向上させる必要があります。さらに、持続可能な精神医療体制の確立により、地域の特性に応じた精神医療サービスを提供する必要があります。今後は地域特性を活かした精神医療政策の推進と、精神科医療供給体制の整備、持続可能な地域精神医療の構築が重要です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (人) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 熊本県 | 425.6 | 74.3 | +0.3% |
2 | 徳島県 | 395.2 | 70.6 | -2.2% |
3 | 長崎県 | 375.2 | 68.2 | -5.4% |
4 | 鹿児島県 | 368.2 | 67.3 | -2.4% |
5 | 高知県 | 353.8 | 65.6 | -4.8% |
6 | 佐賀県 | 321.8 | 61.7 | -2.3% |
7 | 山形県 | 319.2 | 61.3 | -7.6% |
8 | 岡山県 | 302.8 | 59.3 | -2.1% |
9 | 宮崎県 | 296.5 | 58.6 | -4.7% |
10 | 大分県 | 288.1 | 57.6 | -6.7% |
11 | 山梨県 | 285.9 | 57.3 | +0.6% |
12 | 香川県 | 280.4 | 56.6 | +7.2% |
13 | 青森県 | 279.2 | 56.5 | -1.8% |
14 | 岩手県 | 278.5 | 56.4 | -7.0% |
15 | 山口県 | 278.2 | 56.4 | -4.3% |
16 | 福岡県 | 267.7 | 55.1 | -1.0% |
17 | 北海道 | 254.3 | 53.4 | +0.1% |
18 | 島根県 | 250.0 | 52.9 | -4.9% |
19 | 広島県 | 243.9 | 52.2 | -6.5% |
20 | 秋田県 | 241.6 | 51.9 | -4.8% |
21 | 沖縄県 | 224.6 | 49.8 | -2.8% |
22 | 宮城県 | 214.8 | 48.6 | -6.2% |
23 | 愛媛県 | 214.2 | 48.6 | -3.1% |
24 | 大阪府 | 212.4 | 48.3 | -1.9% |
25 | 福井県 | 209.6 | 48.0 | -0.1% |
26 | 福島県 | 208.2 | 47.8 | +1.7% |
27 | 兵庫県 | 208.2 | 47.8 | +4.6% |
28 | 新潟県 | 207.7 | 47.8 | -1.1% |
29 | 群馬県 | 205.4 | 47.5 | +1.2% |
30 | 三重県 | 197.1 | 46.5 | +5.3% |
31 | 石川県 | 194.5 | 46.2 | -4.7% |
32 | 静岡県 | 180.9 | 44.5 | -1.8% |
33 | 和歌山県 | 175.4 | 43.8 | +3.7% |
34 | 埼玉県 | 173.7 | 43.6 | +1.3% |
35 | 鳥取県 | 170.6 | 43.3 | +9.2% |
36 | 岐阜県 | 163.1 | 42.3 | +0.1% |
37 | 京都府 | 157.3 | 41.6 | +0.3% |
38 | 愛知県 | 138.6 | 39.4 | -4.0% |
39 | 神奈川県 | 136.1 | 39.1 | -5.7% |
40 | 栃木県 | 133.7 | 38.8 | +6.4% |
41 | 富山県 | 126.5 | 37.9 | -5.6% |
42 | 茨城県 | 125.2 | 37.7 | -2.8% |
43 | 滋賀県 | 124.6 | 37.7 | +4.8% |
44 | 千葉県 | 120.1 | 37.1 | -0.5% |
45 | 東京都 | 109.5 | 35.8 | -2.5% |
46 | 長野県 | 109.0 | 35.8 | -1.9% |
47 | 奈良県 | 74.8 | 31.6 | -10.2% |