精神科病院の1日平均在院患者数(人口10万人当たり)は、精神医療の提供体制と社会復帰支援の充実度を表す重要な指標です。この統計は長期入院の実態と地域医療体制の現状を反映しており、九州・四国地域に高い県が集中し、首都圏・近畿圏は低い傾向にあります。
概要
精神科病院の1日平均在院患者数は、精神医療の提供体制と社会復帰支援の充実度を表す指標です。この統計は長期入院の実態と地域医療体制の現状を反映しています。
この指標が重要な理由は、医療政策の評価、社会復帰支援、そして人権・社会参加の観点から、精神医療の地域格差と医療資源配分の現状を把握し、課題を明確化するためです。全国平均は205.8人で、最高値と最低値の差は約6倍に達しています。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
長崎県
長崎県は443.4人(偏差値75.1)で全国1位です。離島が多い地理的特性により、精神科病院への依存度が高いです。地域医療体制の整備が進む一方で、社会復帰支援の充実が課題です。
徳島県
徳島県は407.7人(偏差値71.3)で2位です。人口減少と高齢化の進行により、従来の医療体制に依存する傾向が強いです。地域生活支援センターの整備を進めています。
大分県
大分県は395.8人(偏差値70.0)で3位です。温泉地としての療養環境を活かした精神医療が特徴的です。近年は地域生活支援への転換を積極的に推進しています。
鹿児島県
鹿児島県は390.2人(偏差値69.4)で4位です。離島医療の特殊事情と精神科医療資源の集約化が影響しています。地域格差の解消に向けた取り組みを強化中です。
熊本県
熊本県は382.7人(偏差値68.6)で5位です。熊本地震後の医療体制再構築の影響もあります。精神保健福祉センターを中心とした包括的支援体制の構築を進めています。
下位5県の詳細分析
滋賀県
滋賀県は103.7人(偏差値39.0)で43位です。京阪神圏へのアクセスが良く、地域生活支援体制が比較的充実しています。早期退院支援に積極的に取り組んでいます。
長野県
長野県は99.0人(偏差値38.5)で44位です。地域包括ケアシステムの先進県として知られ、精神保健分野でも地域密着型支援を重視しています。
神奈川県
神奈川県は98.6人(偏差値38.5)で45位です。首都圏の一角として医療資源が豊富で、多様な地域生活支援サービスが提供されています。
東京都
東京都は75.3人(偏差値36.0)で46位です。全国最多の医療機関数と多様な支援サービスにより、地域生活支援が充実しています。
奈良県
奈良県は74.3人(偏差値35.9)で最下位です。大阪府への依存度が高く、県内の精神科病床数は限定的です。地域生活支援の充実により短期治療が主流となっています。
地域別の特徴分析
九州地方
九州地方は全体的に高い数値を示しています。長崎県、大分県、鹿児島県、熊本県が上位5位に入っています。離島医療の特殊事情と従来型医療体制の継続が主な要因です。
四国地方
四国地方では、四国4県すべてが全国平均を上回っています。徳島県が2位、香川県が7位と特に高い水準です。人口規模に対する精神科病床数の多さが特徴的です。
首都圏
首都圏では、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県すべてが全国平均を下回ります。医療・福祉資源の豊富さと多様な地域生活支援サービスが要因です。
近畿地方
近畿地方では、奈良県が最下位、大阪府、京都府も下位グループに位置します。都市部の医療・福祉インフラの充実により、地域生活支援が進んでいます。
中部地方
中部地方では、長野県、静岡県、岐阜県が低い数値を示します。地域包括ケアシステムの精神保健分野への応用が進んでいる地域が多いです。
社会的・経済的影響
最上位の長崎県と最下位の奈良県の差は約6倍に達しています。この格差は精神保健医療政策の地域間格差を如実に示しています。主な要因は、医療資源配置、社会資源格差、政策的取り組みの温度差です。
長期入院の社会的コストは極めて大きく、1人当たり年間約300万円の医療費が発生し、社会参加機会の喪失による経済損失も深刻です。
医療費だけでなく、労働力の社会参加阻害による機会費用も含むため、地域経済活性化の観点からも改善が急務です。
対策と今後の展望
地域格差解消への取り組みとして、長野県の地域包括ケア応用モデルや東京都の多職種連携支援が成功事例として注目されます。
上位県での対策として、地域移行支援、社会資源整備(グループホーム・就労支援事業所の拡充)、人材育成(地域生活支援専門職の養成強化)が重要です。
下位県での対策として、予防的支援(早期介入・早期治療体制の充実)、包括的支援(医療・福祉・就労の一体的提供)、当事者参画(当事者・家族の支援体制構築への参加促進)が継続的に必要です。
国レベルでの取り組みとして、精神保健医療福祉の改革ビジョンに基づく施策展開が進んでおり、2025年までの数値目標達成に向けた取り組み加速化が期待されます。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値人 |
---|---|
平均値 | 207.2 |
中央値 | 197.1 |
最大値 | 443.4(長崎県) |
最小値 | 74.3(奈良県) |
標準偏差 | 94.3 |
データ数 | 47件 |
統計的特徴の分析
2022年度の都道府県別精神科病院の1日平均在院患者数データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
平均値と中央値の比較では、全国平均205.8人に対し、中央値は191.5人となっています。平均値が中央値を上回ることから、上位県の数値が分布全体を押し上げていることがわかります。
分布の歪みでは、データの分布は右に歪んでおり(正の歪度)、多くの県が平均値よりも低い在院患者数を持つ一方で、一部の県が突出して高い値を示しています。
外れ値の特定では、長崎県(443.4人)は明らかな上側の外れ値と考えられます。また、奈良県(74.3人)は明らかな下側の外れ値として識別され、地域特有の要因が強く影響していることが統計的にも確認されます。
四分位範囲による分布の特徴では、第1四分位数(Q1)は130.8人、第3四分位数(Q3)は268.5人であり、四分位範囲(IQR)は137.7人です。これは、中央の50%の都道府県の1日平均在院患者数が130.8人から268.5人の間に収まっていることを示しています。
標準偏差によるばらつきの程度では、標準偏差は112.5人と大きく、都道府県間の格差が極めて大きいことを示しています。これは、同一制度下での地域間格差としては看過できない水準であり、この格差是正が精神保健医療政策の重要課題となっています。
まとめ
2022年度の精神科病院入院患者数分析から、長崎県が443.4人で1位、奈良県が74.3人で最下位という結果が明らかになりました。
地域格差の深刻性(最大約6倍の格差)は、医療アクセスに大きな不平等をもたらしています。九州・四国の高数値と、首都圏・近畿圏の低数値という地域特性の影響が顕著です。
長期入院の社会的コストは極めて大きく、地域経済活性化の観点からも改善が急務です。
成功事例の横展開と、デジタル技術を活用した医療格差是正が急務です。継続的なデータ収集と分析により、効果的な政策立案を進めることが重要です。
順位↓ | 都道府県 | 値 (人) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 長崎県 | 443.4 | 75.1 | -1.2% |
2 | 徳島県 | 407.7 | 71.3 | +1.0% |
3 | 大分県 | 395.8 | 70.0 | -0.9% |
4 | 鹿児島県 | 390.2 | 69.4 | -1.0% |
5 | 熊本県 | 382.7 | 68.6 | -1.7% |
6 | 山口県 | 355.0 | 65.7 | -1.3% |
7 | 宮崎県 | 353.5 | 65.5 | -0.9% |
8 | 秋田県 | 294.9 | 59.3 | -0.6% |
9 | 佐賀県 | 275.6 | 57.3 | -2.9% |
10 | 香川県 | 267.9 | 56.4 | +1.2% |
11 | 福岡県 | 245.8 | 54.1 | -1.6% |
12 | 山形県 | 242.1 | 53.7 | -0.2% |
13 | 島根県 | 237.4 | 53.2 | -0.2% |
14 | 広島県 | 237.4 | 53.2 | -0.7% |
15 | 高知県 | 233.6 | 52.8 | +3.5% |
16 | 北海道 | 230.5 | 52.5 | +0.4% |
17 | 岩手県 | 229.6 | 52.4 | -0.9% |
18 | 石川県 | 225.6 | 52.0 | -0.9% |
19 | 富山県 | 224.5 | 51.8 | -0.0% |
20 | 青森県 | 222.4 | 51.6 | -1.9% |
21 | 福島県 | 212.5 | 50.6 | -1.2% |
22 | 愛媛県 | 210.9 | 50.4 | -0.6% |
23 | 岡山県 | 197.3 | 48.9 | -1.6% |
24 | 新潟県 | 197.1 | 48.9 | -1.0% |
25 | 山梨県 | 186.7 | 47.8 | -2.2% |
26 | 沖縄県 | 183.0 | 47.4 | -3.2% |
27 | 宮城県 | 181.8 | 47.3 | -1.2% |
28 | 福井県 | 175.2 | 46.6 | -2.6% |
29 | 三重県 | 160.2 | 45.0 | +0.8% |
30 | 兵庫県 | 152.4 | 44.2 | -1.9% |
31 | 群馬県 | 151.4 | 44.1 | -0.1% |
32 | 岐阜県 | 150.3 | 44.0 | +0.5% |
33 | 栃木県 | 142.3 | 43.1 | +1.6% |
34 | 静岡県 | 137.8 | 42.6 | -0.2% |
35 | 大阪府 | 129.8 | 41.8 | -2.3% |
36 | 和歌山県 | 128.4 | 41.6 | +1.0% |
37 | 埼玉県 | 124.5 | 41.2 | -0.9% |
38 | 茨城県 | 121.1 | 40.9 | -1.3% |
39 | 鳥取県 | 119.4 | 40.7 | +0.3% |
40 | 千葉県 | 115.9 | 40.3 | -1.1% |
41 | 京都府 | 110.1 | 39.7 | -0.8% |
42 | 愛知県 | 103.8 | 39.0 | -1.9% |
43 | 滋賀県 | 103.7 | 39.0 | -2.3% |
44 | 長野県 | 99.0 | 38.5 | +1.1% |
45 | 神奈川県 | 98.6 | 38.5 | -2.4% |
46 | 東京都 | 75.3 | 36.0 | -2.2% |
47 | 奈良県 | 74.3 | 35.9 | -2.0% |