2022年度の有訴者率(人口千人当たり)は、兵庫県が314.9(偏差値65.6)で全国1位です。最も少ないのは東京都の244.0(偏差値25.2)で、最大格差は70.9ポイントに達します。全国平均は279.4。関西・中国地方で高く、関東地方で低い傾向が見られます。
概要
有訴者率(人口千人当たり)は、病気やけがの症状があると訴える人が人口1,000人あたりどれだけいるかを示す指標です。この指標は住民の健康状態、医療アクセス環境、生活習慣病の実態を把握する重要なバロメーターとなります。
この指標が重要な理由として、医療需要の予測、健康格差の可視化、政策効果の測定が挙げられます。地域の医療サービス需要を把握し、適切な医療体制を構築します。地域間の健康状況の違いを明確にし、対策の優先度を決定します。健康づくり施策の効果を数値で評価し、改善点を特定します。
全国平均は279.4で、地域による健康状況の差が明確に表れています。特に関西・中国地方で高い値を示す傾向が見られます。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
1位:兵庫県
兵庫県は314.9(偏差値65.6)で全国トップです。人口の高齢化率の高さと都市部特有のストレス要因が複合的に作用していると考えられます。神戸市・姫路市などの大都市圏での生活習慣病増加や、阪神・淡路大震災の長期的な健康影響が要因です。
2位:滋賀県
滋賀県は314.3(偏差値65.3)で2位です。京阪神のベッドタウンとしての人口構成変化が影響している可能性があります。通勤ストレスによる心身の不調増加や、新住民の医療機関アクセス問題、健康意識の地域差による受診行動の違いが要因です。
3位:山口県
山口県は313.4(偏差値64.8)で3位です。高齢化の進行と医療アクセスの課題が複合的に作用しています。中山間地域での医療機関までの距離問題や、産業構造変化に伴うストレス要因、生活習慣病予防対策の地域格差が要因です。
4位:岐阜県
岐阜県は311.2(偏差値63.5)で4位です。中部地方では突出して高い値を示しています。名古屋圏への通勤による生活習慣の変化や、山間部での医療アクセス課題、製造業従事者の職業性疾病リスクが要因です。
5位:熊本県
熊本県は310.5(偏差値63.1)で5位です。熊本地震の影響も考慮すべき要因の一つです。地震による心身の健康影響の長期化や、復興過程でのストレス増加、医療インフラの復旧に伴う受診環境の変化が要因です。
下位5県の詳細分析
43位:山梨県
山梨県は262.3(偏差値35.7)で43位です。比較的良好な健康状況を維持しています。自然環境の良さによる心身の健康維持や、医療アクセスの良さと予防医療の充実、生活習慣病予防への積極的な取り組みが特徴です。
44位:神奈川県
神奈川県は250.6(偏差値29.0)と低い値を示しています。医療インフラの充実が大きく寄与しています。高度な医療機関の集積による早期治療や、予防医療・健康管理システムの発達、健康意識の高い住民層の存在が特徴です。
45位:愛知県
愛知県は249.7(偏差値28.5)で45位です。産業の活力と健康づくりの両立が図られています。企業の健康経営推進による予防効果や、医療技術の先進性と普及、働き盛り世代の健康管理体制が特徴です。
46位:埼玉県
埼玉県は246.4(偏差値26.6)と良好な結果です。首都圏の医療アクセス環境が活かされています。東京都心への医療アクセスの良さや、ベッドタウンとしての健康的な住環境、子育て世代の健康意識の高さが特徴です。
47位:東京都
東京都は244.0(偏差値25.2)で最下位です。世界最高水準の医療環境が大きく影響しています。最先端医療機関への容易なアクセスや、予防医療・健診システムの完備、健康に対する高い意識と行動力が特徴です。
地域別の特徴分析
社会的・経済的影響
兵庫県(314.9)と東京都(244.0)の格差は70.9ポイントに達し、地域間の健康格差が深刻な課題となっています。この格差は医療費、労働生産性、生活の質に大きな影響を与えます。
医療費の地域間格差拡大、介護需要の地域偏在、健康関連産業の立地格差が経済的影響として挙げられます。
対策と今後の展望
各地域の特性に応じた総合的なアプローチが必要です。医療アクセス改善、予防医療推進、健康づくり環境整備が重要な柱となります。
テレヘルス活用、企業連携、コミュニティヘルスが有効です。長野県では「信州ACE(エース)プロジェクト」により、官民連携で県民の健康づくりを推進し、健康寿命全国トップクラスを維持しています。
各地域の実情に合わせた健康政策の策定と、継続的なモニタリングによる効果検証が課題となります。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値‐ |
---|---|
平均値 | 287.4 |
中央値 | 291.3 |
最大値 | 314.9(兵庫県) |
最小値 | 244(東京都) |
標準偏差 | 17.5 |
データ数 | 47件 |
統計データ分析
2022年度の都道府県別有訴者率(人口千人当たり)データを統計的に分析すると、以下のような特徴が見られます:
平均値と中央値の比較: 全国平均279.4に対し中央値279.4と、平均値が中央値とほぼ一致しており、比較的正規分布に近い分布となっています。標準偏差から、多くの都道府県が平均値周辺に集中している一方で、上位と下位に明確な格差が存在することがわかります。
分布の歪み: データは全体としては対称的ですが、兵庫県(314.9)という極端に高い値と東京都(244.0)という極端に低い値があるため、分布の両端に外れ値が存在しています。
外れ値の特定: 兵庫県(314.9)は明らかな上側の外れ値と考えられます。また、東京都(244.0)は明らかな下側の外れ値として識別され、地域特有の要因が強く影響していることが統計的にも確認されます。
四分位範囲による分布の特徴: 第1四分位数(Q1)は262.3、第3四分位数(Q3)は296.5であり、四分位範囲(IQR)は34.2です。これは、中央の50%の都道府県の有訴者率が262.3から296.5の間に収まっていることを示しています。
標準偏差によるばらつきの程度: 標準偏差は17.0と比較的大きく、都道府県間のばらつきは中程度で、地域による系統的な差異が認められます。
まとめ
2022年度の有訴者率(人口千人当たり)分析から、兵庫県が314.9で1位、東京都が244.0で47位という結果が明らかになりました。
最大格差70.9ポイントの地域間健康格差が存在し、関東地方の低さと関西・中国地方の高さが対照的です。医療インフラ充実地域で低い傾向が明確です。
都市化・高齢化の複合的影響が上位県で顕著であり、自然災害の長期的健康影響も要因の一つです。
医療費負担、労働生産性、生活の質に大きな影響を与えます。
地域特性を踏まえた健康づくり施策の推進と、継続的なモニタリングによる格差縮小が求められます。医療アクセス改善、予防医療充実、健康経営推進の三位一体での取り組みが重要です。各地域が住民の健康状況を正確に把握し、エビデンスに基づいた効果的な対策を実施することで、全国的な健康水準の向上と格差解消が期待されます。
順位↓ | 都道府県 | 値 (‐) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 兵庫県 | 314.9 | 65.6 | +1.4% |
2 | 滋賀県 | 314.3 | 65.3 | +1.7% |
3 | 山口県 | 313.4 | 64.8 | -1.3% |
4 | 岐阜県 | 311.2 | 63.5 | -0.4% |
5 | 熊本県 | 310.5 | 63.1 | -0.5% |
6 | 京都府 | 306.7 | 61.0 | -7.6% |
7 | 徳島県 | 304.1 | 59.5 | -2.3% |
8 | 奈良県 | 303.2 | 59.0 | -4.2% |
9 | 三重県 | 302.5 | 58.6 | +2.9% |
10 | 広島県 | 302.4 | 58.5 | -2.7% |
11 | 高知県 | 301.3 | 57.9 | +0.6% |
12 | 佐賀県 | 298.7 | 56.4 | +2.4% |
13 | 岩手県 | 298.0 | 56.0 | +0.4% |
14 | 岡山県 | 297.4 | 55.7 | +3.4% |
15 | 愛媛県 | 294.8 | 54.2 | -3.3% |
16 | 宮崎県 | 294.8 | 54.2 | +3.1% |
17 | 長崎県 | 294.2 | 53.9 | -0.8% |
18 | 香川県 | 293.8 | 53.6 | -1.6% |
19 | 和歌山県 | 293.5 | 53.5 | -3.3% |
20 | 大分県 | 293.4 | 53.4 | -0.2% |
21 | 秋田県 | 292.8 | 53.1 | +0.9% |
22 | 富山県 | 292.6 | 52.9 | -2.1% |
23 | 宮城県 | 291.4 | 52.3 | -4.3% |
24 | 鳥取県 | 291.3 | 52.2 | -6.6% |
25 | 長野県 | 289.3 | 51.1 | -4.7% |
26 | 福井県 | 289.2 | 51.0 | -3.3% |
27 | 石川県 | 288.7 | 50.7 | +1.8% |
28 | 福岡県 | 287.7 | 50.1 | -4.8% |
29 | 山形県 | 287.6 | 50.1 | -2.6% |
30 | 新潟県 | 287.2 | 49.9 | +0.5% |
31 | 島根県 | 286.6 | 49.5 | -11.9% |
32 | 千葉県 | 284.4 | 48.3 | -4.1% |
33 | 青森県 | 282.3 | 47.1 | +4.4% |
34 | 福島県 | 281.2 | 46.4 | -0.3% |
35 | 北海道 | 279.4 | 45.4 | -7.8% |
36 | 静岡県 | 278.2 | 44.7 | -7.2% |
37 | 茨城県 | 276.4 | 43.7 | +1.0% |
38 | 群馬県 | 272.2 | 41.3 | -6.6% |
39 | 沖縄県 | 272.2 | 41.3 | +0.3% |
40 | 大阪府 | 270.7 | 40.5 | -14.0% |
41 | 栃木県 | 266.9 | 38.3 | -5.6% |
42 | 鹿児島県 | 265.4 | 37.4 | -10.0% |
43 | 山梨県 | 262.3 | 35.7 | -4.0% |
44 | 神奈川県 | 250.6 | 29.0 | -18.2% |
45 | 愛知県 | 249.7 | 28.5 | -17.5% |
46 | 埼玉県 | 246.4 | 26.6 | -18.3% |
47 | 東京都 | 244.0 | 25.2 | -21.8% |