2022年度の一般病院病床数(人口10万人当たり)では、高知県が2026.9床で全国1位、神奈川県が679.8床で最下位となり、約3倍の格差が生じています。
地方部では高齢化に対応した医療体制が充実しており、都市部では病床不足が深刻な社会課題となっています。医療アクセス格差が地域の生活品質に直結しており、一般病院病床数は地域の医療提供体制を示す重要指標です。
概要
一般病院病床数(人口10万人当たり)は、地域の医療提供能力を測る基本的な指標です。急性期医療から回復期医療まで幅広い医療ニーズに対応します。
この指標が重要な理由として、医療アクセス格差の把握により地域の医療安全性を評価できることが挙げられます。また、地域の医療政策立案に不可欠なデータとして機能し、将来の医療政策立案において重要な役割を担っています。
2022年度のデータでは全国平均1,142.2床となっており、地方部と都市部で大きな格差が見られます。高齢化進行地域で病床数が多い傾向があります。
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上位5県の詳細分析
高知県(1位)
高知県は2026.9床(偏差値84.9)で圧倒的な1位です。高齢化率34.4%と全国最高水準が背景にあります。
県立病院を中心とした充実した医療体制が整備されており、へき地医療への積極的な取り組みが進められています。医師確保対策の効果的な実施により、地域医療の充実が実現しています。また、四国地方の地理的特性を活かした医療連携体制も整備されています。
鹿児島県(2位)
鹿児島県は1573.5床(偏差値67.2)で2位です。離島医療の充実が特徴的です。
本土と離島を結ぶ医療連携体制が整備されており、救急医療の24時間対応体制が確立されています。地域完結型医療の推進により、離島を含む広域での医療提供が実現しています。また、鹿児島県の地理的特性を活かした医療体制が構築されています。
北海道(3位)
北海道は1497.0床(偏差値64.2)で3位です。広域分散の地理的特性に対応しています。
二次医療圏ごとの拠点病院整備が進められており、ドクターヘリによる救急医療体制が確立されています。冬季医療への対応強化により、寒冷地での医療提供が充実しています。また、北海道の広大な面積に対応した医療ネットワークが構築されています。
山口県(4位)
山口県は1443.0床(偏差値62.1)で4位です。産業構造の変化に対応した医療体制です。
がん診療連携拠点病院の充実により、高度な医療提供が実現しています。在宅医療推進体制の整備により、地域完結型の医療サービスが提供されています。医療・介護連携の強化により、包括的なケア体制が構築されています。
佐賀県(5位)
佐賀県は1440.1床(偏差値62.0)で5位です。コンパクトな県域での効率的医療提供です。
県立病院機構による運営効率化により、医療資源の最適配置が実現しています。ICT活用による医療連携により、情報共有が促進されています。予防医療への重点的取り組みにより、地域住民の健康維持が図られています。
下位5県の詳細分析
神奈川県(47位)
神奈川県は679.8床(偏差値32.3)で最下位です。人口集中に医療供給が追いついていません。
急速な人口増加に対する病床不足が深刻化しており、首都圏への医療依存構造が問題となっています。医師偏在による診療科不足も課題となっており、都市部特有の医療課題が顕在化しています。また、土地制約による病院建設の困難さも影響しています。
埼玉県(46位)
埼玉県は713.8床(偏差値33.7)で46位です。ベッドタウンとしての医療課題を抱えています。
通勤圏住民の医療ニーズ増加に対応できておらず、救急医療の受け入れ困難事例が発生しています。在宅医療体制の整備遅れにより、地域医療の充実が課題となっています。また、首都圏のベッドタウンとしての機能が医療供給に影響しています。
愛知県(45位)
愛知県は759.0床(偏差値35.4)で45位です。経済活動重視の医療政策が影響しています。
製造業中心の産業構造との関連により、医療インフラが相対的に不足しています。都市部集中による医療格差が生じており、働き世代の医療アクセス課題が深刻化しています。また、経済発展重視の政策により医療分野への投資が後回しになっています。
東京都(44位)
東京都は806.7床(偏差値37.3)で44位です。高次医療は充実していますが病床数は不足です。
大学病院中心の高度医療体制が整備されているものの、一般病床数は不足しています。昼夜間人口差による医療需要変動により、効率的な病床運用が課題となっています。また、土地制約による病院建設困難も影響しています。
千葉県(43位)
千葉県は808.7床(偏差値37.4)で43位です。東京近郊としての医療課題があります。
新興住宅地での医療インフラ不足が深刻化しており、高齢化進行と医療需要増加に対応できていません。医師確保の困難な状況により、地域医療の充実が課題となっています。また、東京近郊としての地理的特性が医療供給に影響しています。
地域別の特徴分析
四国地方
四国4県すべてが上位にランクインしています。高知県(1位)、愛媛県(13位)、徳島県(8位)、香川県(18位)です。人口減少と高齢化に対応した医療体制が充実しており、地域完結型医療の推進が効果的です。四国地方の地理的特性を活かした医療連携体制が構築されています。
九州地方
鹿児島県(2位)、佐賀県(5位)が上位です。離島医療とへき地医療の充実が特徴的です。医師確保対策と医療連携が進んでおり、福岡県は都市部として中位です。九州地方の広域分散に対応した医療体制が整備されています。
首都圏
神奈川県(47位)、埼玉県(46位)、千葉県(43位)、東京都(44位)がすべて下位です。人口集中に医療供給が追いつかない状況となっており、救急医療の逼迫が深刻化しています。首都圏特有の医療課題が顕在化しています。
中部地方
愛知県(45位)が下位、静岡県(41位)も低位です。経済発展重視で医療インフラが相対的に不足しており、働き世代の医療アクセス改善が課題です。中部地方の産業構造が医療供給に影響しています。
東北・北海道
北海道(3位)、岩手県(26位)が上位です。広域医療圏での拠点病院整備が進行しており、ドクターヘリなどの救急体制も充実しています。寒冷地特有の医療ニーズに対応した体制が構築されています。
社会的・経済的影響
高知県と神奈川県の格差は約3倍に達しています。この格差は医療アクセスの質的差異を生み出しています。
地域間格差の主要因として、人口動態による高齢化率の差異が挙げられます。また、地理的条件として都市部と地方部の違いも影響しています。さらに、医療政策として病床規制の影響も格差の要因となっています。
社会的影響として医療難民の発生があります。救急搬送の受け入れ困難事例が都市部で増加しており、在宅医療への移行圧力も高まっています。これらの課題は地域の持続可能な発展に影響を与える可能性があります。
経済的には医療費格差が拡大しています。交通費負担による受診抑制も問題となっており、労働生産性への影響も懸念されます。地域経済の医療依存度格差も生じています。
対策と今後の展望
機能分化・連携強化が重要な取り組みです。急性期から回復期まで役割明確化を進めており、地域医療構想の実現が急務です。医療機関間の連携強化により、効率的な医療提供が期待されています。
ICT活用による効率化も推進されています。遠隔医療の拡充で地理的制約を解消し、電子カルテ連携で医療情報共有を促進しています。デジタル技術の活用により、医療アクセスの改善が図られています。
高知県では地域包括ケアシステムが成功事例です。在宅医療と施設医療の連携強化により、多職種協働による効率的な医療提供を実現しています。このモデルは他の地域でも参考とされています。
今後の課題は医師偏在解消です。専門医制度改革による地域配置適正化が必要であり、働き方改革による医療従事者確保も重要です。継続的な医療政策の見直しにより、地域格差の解消が期待されています。
指標 | 値床 |
---|---|
平均値 | 1,132 |
中央値 | 1,090.2 |
最大値 | 2,026.9(高知県) |
最小値 | 679.8(神奈川県) |
標準偏差 | 256.2 |
データ数 | 47件 |
統計データの基本情報と分析
全国平均1,142.2床に対し、中央値は1,089.8床です。分布は右に歪んだ形状を示しており、上位県に引っ張られた分布となっています。
高知県の2,026.9床が突出した外れ値です。この値が平均を押し上げており、四国・九州地方の高い値が分布の特徴となっています。この外れ値の存在は地域医療の格差を明確に示しています。
第1四分位913.1床、第3四分位1,321.4床です。四分位範囲は408.3床で中程度のばらつきとなっており、この格差は地域特性による差異を反映しています。政策的介入の必要性が統計的にも明確です。
標準偏差329.2床は相当なばらつきを示しており、地域特性による差異が顕著です。この統計的結果は、地域医療政策の重要性を明確に示しています。
まとめ
主要な発見として、高知県が2,026.9床で圧倒的1位を獲得しており、地方部の充実ぶりが顕著に現れています。首都圏4都県がすべて下位となっており、医療供給不足が深刻化しています。四国地方は4県すべて上位となっており、地域医療のモデル地域として機能しています。約3倍の地域格差が存在し、医療アクセスの質的差異が拡大しています。ICT活用と機能分化による効率化が急務となっています。
今後の展望として、地域医療構想の実現が重要です。医師偏在解消と機能連携強化が必要であり、継続的なデータモニタリングで政策効果を検証し、地域特性を活かした医療提供体制の構築を目指すべきです。地域医療の持続可能な発展が今後の重要な課題となります。
順位↓ | 都道府県 | 値 (床) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 高知県 | 2,026.9 | 84.9 | -1.4% |
2 | 鹿児島県 | 1,573.5 | 67.2 | -0.6% |
3 | 北海道 | 1,497.0 | 64.2 | +0.1% |
4 | 山口県 | 1,443.0 | 62.1 | -0.8% |
5 | 佐賀県 | 1,440.1 | 62.0 | -0.3% |
6 | 熊本県 | 1,431.0 | 61.7 | -0.1% |
7 | 長崎県 | 1,426.4 | 61.5 | -0.4% |
8 | 徳島県 | 1,413.8 | 61.0 | -1.9% |
9 | 鳥取県 | 1,385.8 | 59.9 | +0.9% |
10 | 福岡県 | 1,315.0 | 57.1 | -0.3% |
11 | 宮崎県 | 1,304.9 | 56.7 | +0.6% |
12 | 大分県 | 1,301.7 | 56.6 | -0.3% |
13 | 愛媛県 | 1,281.6 | 55.8 | +0.6% |
14 | 和歌山県 | 1,240.8 | 54.2 | +0.5% |
15 | 富山県 | 1,238.6 | 54.2 | +0.0% |
16 | 石川県 | 1,222.9 | 53.5 | -0.0% |
17 | 岡山県 | 1,203.0 | 52.8 | +0.4% |
18 | 香川県 | 1,201.0 | 52.7 | -0.9% |
19 | 島根県 | 1,188.8 | 52.2 | +0.6% |
20 | 秋田県 | 1,178.0 | 51.8 | +0.4% |
21 | 福井県 | 1,152.9 | 50.8 | +0.9% |
22 | 奈良県 | 1,129.2 | 49.9 | +0.2% |
23 | 京都府 | 1,117.1 | 49.4 | -1.2% |
24 | 青森県 | 1,090.2 | 48.4 | -0.6% |
25 | 山梨県 | 1,080.8 | 48.0 | -0.3% |
26 | 岩手県 | 1,077.6 | 47.9 | +1.3% |
27 | 山形県 | 1,072.6 | 47.7 | +1.2% |
28 | 広島県 | 1,068.5 | 47.5 | -2.0% |
29 | 沖縄県 | 1,065.3 | 47.4 | +0.6% |
30 | 群馬県 | 1,052.0 | 46.9 | +0.7% |
31 | 福島県 | 1,044.6 | 46.6 | +0.3% |
32 | 大阪府 | 1,027.2 | 45.9 | +0.2% |
33 | 長野県 | 1,015.3 | 45.4 | -0.2% |
34 | 兵庫県 | 990.7 | 44.5 | +0.5% |
35 | 新潟県 | 982.4 | 44.2 | -0.7% |
36 | 栃木県 | 926.0 | 42.0 | +0.7% |
37 | 茨城県 | 919.9 | 41.7 | +0.5% |
38 | 三重県 | 906.3 | 41.2 | -0.1% |
39 | 滋賀県 | 862.4 | 39.5 | +0.1% |
40 | 宮城県 | 853.7 | 39.1 | +0.2% |
41 | 静岡県 | 845.8 | 38.8 | +0.4% |
42 | 岐阜県 | 843.1 | 38.7 | +1.6% |
43 | 千葉県 | 808.7 | 37.4 | +0.2% |
44 | 東京都 | 806.7 | 37.3 | -0.5% |
45 | 愛知県 | 759.0 | 35.4 | +0.2% |
46 | 埼玉県 | 713.8 | 33.7 | +0.1% |
47 | 神奈川県 | 679.8 | 32.3 | -0.1% |