2020年度の都道府県別平均余命(0歳・男)において、滋賀県が82.73年(偏差値71.3)で全国1位を獲得し、青森県が79.27年(偏差値14.7)で47位となりました。上位県と下位県の間には3.46年の格差が存在し、地域の医療体制や社会環境に大きな違いが生じています。平均余命(0歳・男)は現在の死亡状況が続くと仮定した場合の新生児の平均的な生存期間を示す重要な統計指標で、地域の医療水準と保健環境の総合評価指標として重要な意味を持っています。
概要
平均余命(0歳・男)は、現在の死亡状況が続くと仮定した場合の新生児の平均的な生存期間を示す重要な統計指標です。この数値は地域の医療水準、生活環境、健康意識の総合的な評価として位置づけられます。
この指標が重要である理由として、地域の医療水準と保健環境の総合評価指標として機能する点があります。また、社会格差の実態を客観的に把握できる指標として、地域政策の効果測定に活用されています。さらに、地方創生政策の効果測定に不可欠なデータとして、地域の持続可能性を評価する基準となっています。
全国平均は81.64年となっており、最高値の滋賀県と最低値の青森県で3.46年の格差が存在します。西日本の府県が上位を占める一方、東北地方は全体的に厳しい状況にあり、明確な地域パターンが見られます。
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上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
滋賀県(82.73年、偏差値71.3)
滋賀県は82.73年(偏差値71.3)で堂々の全国1位を獲得しています。京阪神圏への良好なアクセスと充実した医療体制が要因となっています。琵琶湖に囲まれた温暖な気候も健康長寿に寄与している地域です。関西圏の高度医療機関へのアクセスが良好で、滋賀医科大学附属病院など医療機関が充実しています。温暖で安定した気候環境が、住民の健康維持に好影響を与えている要因です。
長野県は82.68年で僅差の2位となりました。山間部の清浄な空気環境と、野菜摂取量全国トップクラスの食生活が健康長寿を支えています。県を挙げた健康づくり運動も長年にわたって継続されており、豊富な野菜摂取と健康的な食生活、清浄な自然環境、県民総参加の健康づくり運動が特徴です。長野県の特徴は、県民総参加型の健康づくり運動「長野県健康づくり県民運動」を30年以上継続していることです。この運動により、県民の健康意識が高く、野菜摂取量も全国トップクラスを維持しています。
長野県は82.68年(偏差値70.5)で僅差の2位となっています。山間部の清澄な空気と伝統的な食文化が特徴的です。全県挙げた健康長寿施策も効果的に機能している地域です。高原地帯の良好な自然環境により、野菜摂取量全国上位の食習慣が定着しています。県民総参加の健康づくり運動が、全国でも有数の長寿県としての地位を確立している要因となっています。
京都府(82.24年、偏差値63.3)
奈良県は82.40年(偏差値65.9)で3位にランクインしています。大阪・京都への通勤圏でありながら自然環境豊かな立地条件が特徴です。奈良県立医科大学を中心とした医療体制も充実している地域です。関西圏の医療資源を活用可能な立地により、奈良盆地の穏やかな気候が健康長寿に寄与しています。文化的な生活環境の充実も、住民の健康意識向上に貢献している要因です。
京都府(4位)
京都府は82.24年(偏差値63.3)で4位に位置しています。京都大学医学部附属病院をはじめとする高度医療機関が集積している地域です。伝統的な食文化と現代医療の融合が特徴的な地域となっています。京都大学等の高度医療機関により、伝統的な京料理文化が健康長寿を支えています。文化的で落ち着いた生活環境が、住民の健康維持に好影響を与えている状況です。
神奈川県(5位)
神奈川県は82.04年(偏差値60.0)で5位となっています。首都圏の医療資源と温暖な湘南地域の気候が好影響を与えている地域です。高い所得水準も健康維持に寄与している要因となっています。首都圏の充実した医療体制により、温暖な海洋性気候が住民の健康に好影響を与えています。高い経済水準と教育レベルが、予防医療への意識向上につながっている地域です。
下位5県の詳細分析
沖縄県(80.73年、偏差値38.6)
沖縄県は80.73年(偏差値38.6)で43位に位置しています。亜熱帯気候にも関わらず下位に位置している状況です。生活習慣病の多さと医療アクセスの課題が影響している地域です。肥満率と糖尿病患者数の多さが健康長寿を阻害し、離島部での医療アクセス困難が医療格差を生んでいます。アルコール関連疾患の増加も、平均余命に影響を与えている要因となっています。
岩手県は80.64年で44位となりました。東日本大震災の影響に加え、寒冷な気候と高塩分の食習慣が要因です。震災による医療体制の打撃、塩分摂取量の多い伝統的食習慣、広域県での医師偏在問題が主な課題です。岩手県は日本有数の広大な県土を有しており、特に沿岸部と内陸部の距離が大きく、医療機関へのアクセスに時間がかかります。東日本大震災の影響により医療体制が大きな打撃を受け、復旧が遅れている地域も少なくありません。
岩手県は80.64年(偏差値37.1)で44位となっています。東日本大震災の影響に加え、寒冷な気候と高塩分の食習慣が要因となっています。医療過疎も深刻な問題となっている地域です。震災による医療体制の打撃により、塩分摂取量の多い伝統的食習慣が健康に影響を与えています。広域県での医師偏在問題が、住民の医療アクセスを困難にしている状況です。
秋田県(80.48年、偏差値34.5)
福島県は80.60年(偏差値36.5)で45位に位置しています。原発事故の健康不安と避難生活のストレスが長期化している地域です。復興途上での医療体制整備が課題となっています。原発事故による健康不安により、避難生活に伴う生活習慣の悪化が健康に影響を与えています。医療従事者の県外流出が、地域医療体制の再構築を困難にしている要因です。
秋田県(46位)
秋田県は80.48年(偏差値34.5)で46位となっています。高齢化率全国1位と人口減少が医療体制を圧迫している地域です。高塩分の食文化と飲酒習慣も影響している状況です。急激な人口減少と高齢化により、医療従事者不足の深刻化が進んでいます。伝統的な高塩分食習慣が、住民の健康長寿を阻害している主要因となっています。
青森県(47位)
青森県は79.27年(偏差値14.7)で最下位となっています。寒冷気候による屋内生活と塩分過多の食習慣が影響している地域です。脳血管疾患と自殺率の高さも要因となっています。全国最高レベルの塩分摂取量により、冬季うつ病と自殺率の高さが深刻な問題となっています。野菜摂取不足と運動不足が、健康長寿を阻害している複合的な要因として作用している状況です。
地域別の特徴分析
関東地方
神奈川県(5位)を筆頭に、東京都(81.77年、13位)、千葉県(81.45年、23位)が上位に位置しています。医療資源の充実と高い経済水準が要因となっている地域です。首都圏の医療インフラは充実している一方、栃木県(81.00年、37位)、茨城県(80.89年、40位)は中位に留まっており、地域内での格差が見られます。
中部地方
長野県(2位)が際立って高く、富山県(81.74年、15位)、石川県(82.00年、6位)、福井県(81.98年、7位)も上位グループに位置しています。山間部の自然環境と伝統的な食文化が健康長寿に寄与している地域です。北陸地方では特に医療体制の充実と健康的な食生活が、高い平均余命を実現している要因となっています。
近畿地方
滋賀県(1位)、奈良県(3位)、京都府(4位)が上位に集中し、関西圏全体で高水準を維持しています。高度医療機関の集積と温暖な気候、文化的環境が好影響を与えている地域です。大阪府(80.81年、41位)は下位に位置していますが、地域全体としては医療資源の充実が平均余命向上に寄与しています。
中国・四国地方
広島県(81.95年、8位)、岡山県(81.90年、10位)が上位に位置し、中国地方では比較的高い水準を維持しています。四国地方では香川県(81.56年、22位)が中位に位置する一方、高知県(80.79年、42位)は下位となっており、地域内での格差が見られる状況です。
東北・北海道地方
東北地方では全体的に下位に集中し、青森県(47位)、秋田県(46位)、福島県(45位)、岩手県(44位)が下位4県を占めています。寒冷気候と食習慣、医療過疎が共通課題となっている地域です。北海道(80.92年、39位)も下位に位置し、広域な地域での医療提供体制の課題が顕在化しています。
九州・沖縄地方
熊本県(81.91年、9位)、大分県(81.88年、12位)が上位に位置する一方、沖縄県(43位)は下位となっており、地域内での格差が顕著です。温暖な気候の利点を活かしきれていない地域も存在し、生活習慣や医療体制の違いが平均余命に影響を与えている状況です。
社会的・経済的影響
最上位の滋賀県(82.73年)と最下位の青森県(79.27年)で3.46年の格差は、医療費や労働力への深刻な影響をもたらしています。この格差は単なる数値以上の社会的意味を持っています。
上位県では健康寿命の延伸により、労働力の確保と地域経済の活性化が実現されています。医療費の効率的な活用により、予防医療の充実が図られています。高い平均余命により、地域の活力維持と人材確保に好影響を与えている状況です。
下位県では労働力人口の早期減少により、地域経済の持続可能性に差が生じています。医療・介護費用の地域間格差拡大が、自治体財政を圧迫しています。家族構成と扶養期間の地域差により、地方からの人口流出が加速し、地域コミュニティの維持が困難になっている状況です。
格差拡大の要因として、医療機関へのアクセス格差による専門医療の偏在があります。経済格差による健康投資の差も重要な要因です。生活習慣と食文化の地域差が、健康格差を拡大させている状況となっています。
対策と今後の展望
効果的な対策には地域特性に応じたアプローチが不可欠です。成功している地域の取り組みを参考に、効果的な施策の展開が求められています。
医療体制の充実では、遠隔医療システムの導入とドクターヘリの活用で、地方の医療アクセス改善が図られています。秋田県では遠隔診療システムが成果を上げている事例があります。
生活習慣の改善では、長野県の「減塩推進運動」や滋賀県の「しが健康創生プロジェクト」など、県民総参加の健康づくりが効果的に機能しています。食文化の見直しでは、伝統食材を活かした健康レシピの普及と、野菜摂取促進キャンペーンの展開が重要です。青森県では「あおもり食命人」育成事業を開始している取り組みもあります。
今後の課題として、地域医療連携システムの構築が重要です。健康格差縮小に向けた継続的取り組みと、データに基づく効果的な政策立案が求められています。デジタル技術を活用した健康管理システムの導入も、地域格差解消の重要な手段となるでしょう。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値年 |
---|---|
平均値 | 81.4 |
中央値 | 81.4 |
最大値 | 82.73(滋賀県) |
最小値 | 79.27(青森県) |
標準偏差 | 0.6 |
データ数 | 47件 |
統計データの分析から、全国平均81.64年と中央値81.77年がほぼ一致し、データの分布は比較的対称的であることが分かります。標準偏差0.69年は地域間格差の実態を示している数値です。
第1四分位81.23年から第3四分位82.15年の範囲に約半数が集中しており、中央部分の県では比較的格差が小さい状況です。青森県は統計的に明確な外れ値として位置しており、集中的な対策が必要な状況を示しています。
偏差値分析では、最高値の滋賀県(偏差値71.3)と最低値の青森県(偏差値14.7)で56.6ポイントの差があります。この格差は統計学的に非常に大きな開きであり、地域の健康政策の効果を定量的に示しています。これらの統計的特徴は、今後の施策立案の重要な基礎データとなっています。
まとめ
2020年度の都道府県別男性平均余命分析により、重要な知見が得られました。滋賀県が82.73年で全国1位となり、関西圏が上位を独占する傾向が見られます。青森県が79.27年で最下位となり、東北地方が下位に集中する明確な地域パターンが存在します。
最大3.46年の地域格差が存在し、医療アクセスと生活習慣が主要要因となっています。西高東低の明確な地域パターンが確認され、経済格差と健康格差の相関関係も明らかになっています。
継続的なデータ分析と地域特性に応じた対策実施が不可欠です。各都道府県は成功事例を参考に、医療体制整備と生活習慣改善に取り組むべきです。健康格差縮小は持続可能な地域社会構築の基盤として、長期的な視点での取り組みが求められています。
順位↓ | 都道府県 | 値 (年) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 滋賀県 | 82.73 | 71.3 | +1.2% |
2 | 長野県 | 82.68 | 70.5 | +1.1% |
3 | 奈良県 | 82.40 | 65.9 | +1.3% |
4 | 京都府 | 82.24 | 63.3 | +1.0% |
5 | 神奈川県 | 82.04 | 60.0 | +0.9% |
6 | 石川県 | 82.00 | 59.4 | +1.2% |
7 | 福井県 | 81.98 | 59.0 | +0.9% |
8 | 広島県 | 81.95 | 58.5 | +1.1% |
9 | 熊本県 | 81.91 | 57.9 | +0.8% |
10 | 岐阜県 | 81.90 | 57.7 | +1.1% |
11 | 岡山県 | 81.90 | 57.7 | +1.1% |
12 | 大分県 | 81.88 | 57.4 | +1.0% |
13 | 東京都 | 81.77 | 55.6 | +0.9% |
14 | 愛知県 | 81.77 | 55.6 | +0.8% |
15 | 富山県 | 81.74 | 55.1 | +1.4% |
16 | 兵庫県 | 81.72 | 54.8 | +1.0% |
17 | 山梨県 | 81.71 | 54.6 | +1.1% |
18 | 宮城県 | 81.70 | 54.5 | +0.9% |
19 | 三重県 | 81.68 | 54.1 | +1.0% |
20 | 島根県 | 81.63 | 53.3 | +1.0% |
21 | 静岡県 | 81.59 | 52.7 | +0.8% |
22 | 香川県 | 81.56 | 52.2 | +0.9% |
23 | 千葉県 | 81.45 | 50.4 | +0.6% |
24 | 埼玉県 | 81.44 | 50.2 | +0.8% |
25 | 佐賀県 | 81.41 | 49.7 | +0.9% |
26 | 山形県 | 81.39 | 49.4 | +1.1% |
27 | 福岡県 | 81.38 | 49.2 | +0.9% |
28 | 鳥取県 | 81.34 | 48.6 | +1.5% |
29 | 新潟県 | 81.29 | 47.7 | +0.7% |
30 | 徳島県 | 81.27 | 47.4 | +1.2% |
31 | 宮崎県 | 81.15 | 45.5 | +1.0% |
32 | 群馬県 | 81.13 | 45.1 | +0.7% |
33 | 愛媛県 | 81.13 | 45.1 | +1.2% |
34 | 山口県 | 81.12 | 45.0 | +0.8% |
35 | 和歌山県 | 81.03 | 43.5 | +1.4% |
36 | 長崎県 | 81.01 | 43.2 | +0.8% |
37 | 栃木県 | 81.00 | 43.0 | +1.1% |
38 | 鹿児島県 | 80.95 | 42.2 | +1.2% |
39 | 北海道 | 80.92 | 41.7 | +0.8% |
40 | 茨城県 | 80.89 | 41.2 | +0.8% |
41 | 大阪府 | 80.81 | 39.9 | +0.7% |
42 | 高知県 | 80.79 | 39.6 | +0.7% |
43 | 沖縄県 | 80.73 | 38.6 | +0.6% |
44 | 岩手県 | 80.64 | 37.1 | +1.0% |
45 | 福島県 | 80.60 | 36.5 | +0.6% |
46 | 秋田県 | 80.48 | 34.5 | +1.2% |
47 | 青森県 | 79.27 | 14.7 | +0.8% |