2022年度の都道府県別医薬品販売業数(人口10万人当たり)のランキングを分析します。このデータは、薬局やドラッグストアなど、医薬品を販売する事業所の数を人口比で示したもので、地域住民の医薬品へのアクセスのしやすさを測る指標の一つです。
概要
医薬品販売業数の多さは、住民が日常的に薬や健康に関する相談をしやすい環境にあることを示唆します。この数値は、地域の人口密度、高齢化率、医療機関の分布、そして歴史的な産業構造など、様々な要因に影響を受けます。特に、古くから製薬業が盛んな地域や、高齢化が進み医療ニーズが高い地域で、販売業数が多くなる傾向が見られます。
ランキング表示
地図データを読み込み中...
上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
2022年度のランキングでは、北陸地方や関西地方の一部が上位を占めました。これらの地域には、歴史的に薬業が根付いている、あるいは地域医療体制が充実しているといった特徴があります。
富山県
富山県は、人口10万人当たりの医薬品販売業数が66.3所(偏差値78.8)で、全国1位です。「越中富山の薬売り」として知られるように、古くから製薬業と配置薬の文化が根付いており、県民の健康意識の高さも、この結果に結びついていると考えられます。
奈良県
奈良県は56.0所(偏差値66.0)で2位にランクインしました。製薬会社が多く立地しており、医薬品産業が盛んなことが、販売業数の多さにつながっていると推測されます。
和歌山県
和歌山県は55.8所(偏差値65.7)で3位でした。山間部が多く、医療機関へのアクセスが容易でない地域も多いことから、身近な薬局や薬店の役割が重要になっていると考えられます。
石川県
石川県は55.4所(偏差値65.2)で4位です。金沢市を中心に高度な医療機関が集積しており、それに伴い、専門性の高い薬局も多く存在することが、数値を押し上げている一因かもしれません。
福井県
福井県は55.0所(偏差値64.7)で5位に入りました。人口に対する医師数や薬剤師数が比較的多く、地域医療体制が充実していることが、医薬品販売業の多さにも反映されていると考えられます。
下位5県の詳細分析
下位の都道府県は、主に首都圏に集中しています。これらの地域では、人口が密集しているため、一店舗当たりのカバーする人口が多くなり、結果として人口当たりの店舗数が少なくなる傾向があります。
愛知県
愛知県は32.8所(偏差値37.1)で43位です。名古屋市という大都市を抱え、ドラッグストアチェーンなどの大型店に販売機能が集約されていることが、店舗数の相対的な少なさにつながっている可能性があります。
埼玉県
埼玉県は32.5所(偏差値36.8)で44位でした。東京都のベッドタウンであり、都内で医薬品を購入する住民も多いことが影響していると考えられます。
兵庫県
兵庫県は32.2所(偏差値36.4)で45位です。神戸市などの都市部では販売業の集約が進む一方、北部や淡路島では過疎化により店舗数が減少しているといった、地域内での二極化も背景にあるかもしれません。
千葉県
千葉県は27.4所(偏差値30.4)で46位でした。埼玉県と同様に、都心へのアクセスが良い地域では、地元での医薬品購入ニーズが相対的に低い可能性があります。
神奈川県
神奈川県は24.7所(偏差値27.1)で最下位の47位となりました。横浜市や川崎市といった大都市を抱え、人口密度が非常に高いことが、人口当たりの販売業数を押し下げる最大の要因と考えられます。
地域別の特徴分析
社会的・経済的影響
医薬品販売業数の地域差は、住民の健康維持行動に影響を与える可能性があります。薬局や薬店が身近に多く存在すれば、体調に不安を感じた際に気軽に相談でき、病気の早期発見や重症化予防につながりやすくなります。また、かかりつけ薬局を持つことで、服薬情報の一元管理や、副作用のチェックなど、より質の高い薬物治療を受けることが可能になります。一方で、販売業数が少ない地域、特に過疎地では、医薬品へのアクセスが困難になり、住民が健康上の不安を抱えやすくなる懸念があります。これは、高齢化が進む地域において、特に深刻な問題となり得ます。
対策と今後の展望
医薬品へのアクセスを確保するためには、各地域の特性に応じた対策が必要です。都市部では、オンラインでの服薬指導や、処方薬の宅配サービスを普及させることが、利便性の向上につながります。一方、過疎地域では、移動販売車の導入や、公民館などを活用した巡回相談会の開催などが有効な手段となるでしょう。また、薬剤師の地域偏在を解消し、地方でも質の高い医療サービスが提供できるよう、国や自治体による支援も重要です。今後は、テクノロジーの活用と、地域コミュニティとの連携を両輪としながら、すべての住民が安心して医薬品にアクセスできる社会を築いていくことが求められます。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値所 |
---|---|
平均値 | 43.1 |
中央値 | 42.3 |
最大値 | 66.3(富山県) |
最小値 | 24.7(神奈川県) |
標準偏差 | 8 |
データ数 | 47件 |
まとめ
2022年度の医薬品販売業数ランキングは、富山県をはじめとする北陸地方の歴史的な強さと、首都圏の人口集中という、日本の地域性が色濃く反映された結果となりました。このデータは、単に薬局の数を比較するだけでなく、その背景にある産業構造や、住民のライフスタイル、医療へのアクセス環境の違いを浮き彫りにします。私たちが健康で安心して暮らしていくために、どのような社会インフラが必要なのかを考える上で、このランキングは多くの示唆を与えてくれるでしょう。
順位↓ | 都道府県 | 値 (所) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 富山県 | 66.3 | 78.8 | -3.6% |
2 | 奈良県 | 56.0 | 66.0 | +1.3% |
3 | 和歌山県 | 55.8 | 65.7 | -0.4% |
4 | 石川県 | 55.4 | 65.2 | -0.9% |
5 | 福井県 | 55.0 | 64.7 | +1.5% |
6 | 岐阜県 | 53.8 | 63.2 | -1.3% |
7 | 山形県 | 52.3 | 61.4 | +3.0% |
8 | 岩手県 | 51.7 | 60.6 | -2.8% |
9 | 秋田県 | 51.3 | 60.1 | +1.4% |
10 | 徳島県 | 49.4 | 57.8 | -0.6% |
11 | 島根県 | 47.9 | 55.9 | -2.6% |
12 | 鳥取県 | 47.8 | 55.8 | +2.1% |
13 | 長野県 | 47.5 | 55.4 | -1.9% |
14 | 青森県 | 47.4 | 55.3 | +2.4% |
15 | 佐賀県 | 47.4 | 55.3 | -2.3% |
16 | 山口県 | 45.5 | 52.9 | -0.7% |
17 | 鹿児島県 | 45.4 | 52.8 | -0.9% |
18 | 山梨県 | 44.8 | 52.1 | +0.5% |
19 | 宮崎県 | 44.4 | 51.6 | -0.2% |
20 | 香川県 | 43.8 | 50.8 | -2.2% |
21 | 群馬県 | 42.6 | 49.3 | +0.9% |
22 | 愛媛県 | 42.6 | 49.3 | +2.2% |
23 | 熊本県 | 42.4 | 49.1 | -0.7% |
24 | 長崎県 | 42.3 | 48.9 | -3.2% |
25 | 高知県 | 42.2 | 48.8 | -5.0% |
26 | 滋賀県 | 42.1 | 48.7 | -0.5% |
27 | 新潟県 | 42.0 | 48.6 | -0.9% |
28 | 宮城県 | 41.9 | 48.5 | -3.0% |
29 | 福島県 | 41.8 | 48.3 | -0.5% |
30 | 北海道 | 41.4 | 47.8 | -0.7% |
31 | 三重県 | 40.7 | 47.0 | -1.2% |
32 | 大阪府 | 40.0 | 46.1 | +1.3% |
33 | 大分県 | 40.0 | 46.1 | -1.0% |
34 | 栃木県 | 38.5 | 44.2 | +0.5% |
35 | 広島県 | 38.1 | 43.7 | +0.5% |
36 | 岡山県 | 37.6 | 43.1 | -1.8% |
37 | 京都府 | 36.8 | 42.1 | +7.0% |
38 | 福岡県 | 36.8 | 42.1 | -0.5% |
39 | 茨城県 | 35.9 | 41.0 | -0.8% |
40 | 東京都 | 35.4 | 40.4 | +0.3% |
41 | 静岡県 | 35.4 | 40.4 | -1.1% |
42 | 沖縄県 | 32.9 | 37.3 | +1.9% |
43 | 愛知県 | 32.8 | 37.1 | +1.2% |
44 | 埼玉県 | 32.5 | 36.8 | +0.3% |
45 | 兵庫県 | 32.2 | 36.4 | -0.3% |
46 | 千葉県 | 27.4 | 30.4 | - |
47 | 神奈川県 | 24.7 | 27.1 | - |