サマリー
徳島県が335.7人(偏差値67.0)で全国1位、埼玉県が180.2人(偏差値27.9)で最下位となり、約1.9倍の格差が発生。
四国・九州地方と大学医学部を持つ県が上位に集中する一方で、首都圏のベッドタウンが下位に集中。
医療アクセスの地域格差は住民の生命と健康に直結する重要な社会課題です。
概要
医療施設に従事する医師数(人口10万人当たり)は、地域の医療提供体制の充実度を示す基本指標です。
なぜ重要なのか?
- 医療アクセスの質:住民が適切な医療を受けられるかを示す
- 地域の持続可能性:医療体制は人口定着の重要な要因
- 社会保障政策:効果的な医師配置政策の基礎データ
全国平均は268.4人で、最大格差は約1.9倍。四国・九州地方が上位を占める一方、首都圏ベッドタウンが下位に集中する特徴的な分布を示しています。
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上位5県の詳細分析
徳島県(1位)
徳島県が335.7人(偏差値67.0)で全国1位を獲得。徳島大学医学部を中心とした医師養成体制が充実しています。
- 人口規模に対する医師数の比率が極めて高い
- 大学病院を核とした高度医療体制
- 四国地方の医療拠点としての役割
高知県(2位)
高知県が335.2人(偏差値66.9)で2位。高知大学医学部の存在と県の医師確保策が成果を上げています。
- 医師養成数に対する県内定着率が高い
- へき地医療への積極的な取り組み
- 包括的な医師確保対策
京都府(3位)
京都府が334.3人(偏差値66.7)で3位。京都大学を筆頭とする複数の医学部が医師供給を支えています。
- 京都大学、京都府立医科大学の2つの医学部
- 関西圏の医療拠点機能
- 高度先進医療の集積
長崎県(4位)
長崎県が327.6人(偏差値65.0)で4位。長崎大学医学部を中心とした医師養成と離島医療への対応が特徴です。
- 離島・へき地医療への積極的取り組み
- 医師の地域定着支援制度
- 九州地方の医療拠点
東京都(5位)
東京都が324.6人(偏差値64.2)で5位。多数の医学部と高度医療機関の集積により高い水準を維持しています。
- 13の医学部による豊富な医師供給
- 全国最高水準の高度医療体制
- 研修・専門医制度の充実
下位5県の詳細分析
岩手県(43位)
岩手県が218.5人(偏差値37.5)で43位。広域性と医師の地域偏在が主な課題となっています。
- 県域が広く医師の配置効率が課題
- 医学部新設(岩手医科大学)の効果待ち
- へき地医療体制の強化が必要
新潟県(44位)
新潟県が212.8人(偏差値36.1)で44位。人口規模に対する医師数の不足が深刻です。
- 新潟大学医学部単独では供給不足
- 地域医療連携体制の強化が課題
- 医師の都市部集中傾向
千葉県(45位)
千葉県が209.0人(偏差値35.1)で45位。東京都への医師流出と人口急増が要因です。
- 東京都への医師通勤が多数
- 急激な人口増加に医師供給が追いつかず
- 地域医療格差の拡大
茨城県(46位)
茨城県が202.0人(偏差値33.4)で46位。医学部不足と東京都への人材流出が深刻な課題です。
- 県内に医学部がない(筑波大学のみ)
- 東京都への医師流出が顕著
- 地域医療体制の根本的見直しが必要
埼玉県(47位)
埼玉県が180.2人(偏差値27.9)で最下位。人口規模と医師数の大幅な乖離が問題となっています。
- 全国最大級の人口に対し医師数が絶対的に不足
- 東京都への依存度が極めて高い
- 医学部新設による改善取り組み開始
地域別の特徴分析
四国地方
四国4県すべてが平均を上回る高水準。徳島県(1位)と高知県(2位)が上位2位を独占しています。
各県に医学部があり、地域医療への意識が高い。人口規模に対する医師養成数の比率が全国最高水準です。
九州地方
長崎県(4位)、鹿児島県(7位)など多くの県が上位にランクイン。離島・へき地医療への取り組みが医師確保策を促進しています。
近畿地方
京都府(3位)、大阪府(9位)など大学医学部の集積地域が上位。関西圏全体で医療拠点機能を果たしています。
関東地方
首都圏ベッドタウンが下位に集中。埼玉県(47位)、茨城県(46位)、千葉県(45位)が最下位グループです。
人口急増に医師養成が追いつかず、東京都への依存構造が課題となっています。
社会的・経済的影響
最上位の徳島県と最下位の埼玉県の格差は約1.9倍に達し、深刻な医療格差を示しています。
地域間格差の要因
- 医学部の有無と定員数の違い
- 人口規模と医師養成数のバランス
- 大都市圏への医師集中傾向
社会的影響
- 医療アクセスの地域格差拡大
- 救急医療体制の地域差
- 住民の健康格差につながるリスク
経済的影響
- 医療不足地域からの人口流出
- 地域経済の持続可能性への影響
- 医療費の地域間格差
対策と今後の展望
医学部新設・定員増による医師供給拡大が進んでいます。埼玉県では医学部新設、各地で地域枠拡大が実施されています。
地域医療支援策として、医師の地域定着支援金制度や研修体制の充実が図られています。
成功事例
- 自治医科大学による地域医療医師養成
- 各県の医師確保奨学金制度
今後の課題は医師の診療科偏在と地域偏在の同時解決。効果的な医師配置政策の継続的な改善が必要です。
統計データ分析
平均値268.4人に対し中央値261.2人とやや平均値が高く、上位県の影響で分布が右に偏っています。
標準偏差41.2人は比較的大きく、都道府県間のばらつきが顕著。特に首都圏ベッドタウンが大きく平均を下回っています。
第1四分位233.8人、第3四分位298.1人の範囲に約半数の県が分布。徳島県や埼玉県は明らかな外れ値として特徴的です。
偏差値でみると、上位県は60以上、下位県は40以下と明確な格差が存在。医療政策の重点課題であることが数値で裏付けられています。
まとめ
主要な発見
- 四国・九州地方の医師充実度が全国最高水準
- 首都圏ベッドタウンで深刻な医師不足
- 大学医学部の存在が地域医師数を大きく左右
- 最大約1.9倍の地域格差が存在
- 人口規模と医師養成のバランスが重要課題
医学部新設や地域枠拡大などの対策効果が今後数年で現れる見込み。継続的なモニタリングと効果的な医師配置政策により、地域医療格差の解消を目指すことが重要です。
住民一人ひとりが地域医療の現状を理解し、適切な医療利用を心がけることも格差解消への貢献となります。