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豚肉消費、新潟が最多3.9万円なのに、なぜ東京の隣・茨城が最少なのか (2024年)

「日本人はみんな豚肉が好き」——そう思いがちですが、家計の豚肉消費支出を都道府県別に見ると、意外な格差と逆説が浮かび上がります。2024年のデータでは、1位の新潟県(38,809円)と最下位の茨城県(28,361円)の差は約1万円。同じ関東地方でも、東京(4位・37,055円)の隣に位置する茨城が最下位になるという逆説が起きています。

さらに驚かされるのが岡山県の大逆転です。2007年時点では下位グループ(全国下位から数えて6番目・19,931円)だった岡山県が、2024年には3位(37,294円)にまで浮上しました。この変動を読み解くと、豚肉消費の地域差が「単純な好み」ではなく、食文化・食肉産業・世帯構成といった複合的な要因によって決まっていることが見えてきます。

2024年ランキング——上位5県と下位5県

豚肉消費支出額 上位5・下位5 2024年

**上位5県(2024年)**は新潟・神奈川・岡山・東京・北海道が並びます。新潟県(1位・38,809円)は2007年からのトップ常連で、長年豚肉消費で全国をリードしています。神奈川県(2位・37,693円)と東京都(4位・37,055円)が続く一方で、岡山県(3位・37,294円)が都市部と肩を並べているのが特徴的です。

**下位5県(2024年)**には大分・和歌山・沖縄・福井・茨城が入ります。最下位の茨城県は28,361円で、1位の新潟県との差は10,448円。倍率にすると1.37倍ですが、金額の差として見ると年間1万円以上の開きがあります。

NOTE

本データは総務省「家計調査」(2024年)をもとに、都道府県庁所在市の二人以上世帯が対象です。農村部や単身世帯は含まれないため、実際の都道府県全体の消費とは異なる場合があります。例えば農業・畜産が盛んな地域では、直接的な入手経路(農家購入・自家消費)が家計調査には反映されないことがあります。

豚肉消費支出額の全47都道府県ランキングを見る

上位県の地域パターンを見ると、首都圏・中部・北日本の組み合わせが目立ちます。新潟・富山(8位・35,991円)・石川(16位・34,649円)といった北陸・日本海側の県が多いこと、そして神奈川・東京・埼玉(9位・35,734円)・千葉(15位・34,677円)と関東都市部がまとまって上位に入っていることが特徴です。

一方で下位を見ると、九州(大分・宮崎)、四国南部(高知・香川)、福井・茨城といった異なる地域が並んでいます。九州南部は「豚肉の産地」でもある鹿児島(20位・33,681円)ですら中位にとどまっており、産地だから多く消費するとは限らないことがわかります。

茨城が最下位——東京の隣なのになぜ?

豚肉消費支出で最下位の茨城県(28,361円)は、東京(37,055円)・埼玉(35,734円)・千葉(34,677円)に囲まれた関東内陸部に位置します。同じ関東でも、首都に近い3県が上位に食い込む一方で、茨城だけが大きく落ちるのはなぜでしょうか。

まず注目すべきは農業県としての食の構造です。茨城県は全国有数の農業県で、野菜・鶏肉・海産物(那珂湊の魚など)が豊富に手に入ります。家計調査の対象が水戸市であることを考えると、水戸の食生活は必ずしも「豚肉中心」ではなく、魚介類・鶏肉・野菜への支出が相対的に高くなっていると考えられます。豚肉消費が少ないというより、豚肉以外の選択肢が豊富な食環境が、相対的な順位の低さを引き起こしている可能性があります。

TIP

豚肉消費と牛肉消費量ランキングを合わせて見ると、食肉文化の地域差がより立体的に理解できます。牛肉消費が多い関西では豚肉消費が相対的に少なくなる傾向があり、肉種間のトレードオフが地域のアイデンティティと結びついていることがわかります。

また、茨城の過去推移を見ると、2007年(19位・23,552円)から2017年(26位・29,140円)まで中位を維持していたにもかかわらず、2024年には最下位まで急落しています。これは茨城の豚肉消費が絶対額として減ったわけではなく(2007年比で約2割増)、他県の消費が全体的にそれ以上に増加する中で茨城が相対的に伸び悩んだという構造的な変化として理解するのが適切です。

全国平均は2007年の22,928円から2024年の33,096円へと約4割増加しており、増加ペースが遅い県が相対的に下位に押し出される展開になっています。茨城も伸びていますが、首都圏の他県ほど急速には伸びなかった結果として、最下位に位置づけられています。

岡山の大逆転——かつての下位から現在は上位3位へ

今回最も注目すべきトピックが岡山県の大逆転です。2007年時点では全国下位グループにいた岡山県(19,931円)が、2024年には3位(37,294円)まで浮上しました。

岡山の推移を詳しく見ると、2007年〜2014年は下位〜中位を推移していましたが、2015年に9位(30,804円)と急上昇し、2016年には6位(31,753円)に達しました。その後は年によって上下しながらも(2018年は38位まで下がりましたが翌2019年には14位に戻っています)、2024年には3位という高水準に到達しています。

この長期的な上昇傾向を解釈するにあたっては、2015年以降の急上昇が単なる1年限りのサンプルの揺れではなく、2015・2016・2017・2019・2022・2023・2024年と安定して全国上位を維持し続けていることが重要です。単発のサンプル変動なら翌年に元のレベルに戻るのが通常ですが、岡山は上昇後も高水準を維持しており、実態としての消費増加が背景にあると判断できます。岡山市の都市化・人口増加や、スーパー・食料品店の充実による食肉購入機会の拡大、さらには山陽・瀬戸内地域の豊かな食材の中での豚肉料理の定着が複合した結果と考えられます。

WARNING

家計調査は各都道府県庁所在市での標本調査です。調査対象世帯の入れ替え・世帯構成の変化などにより、年ごとに数千円規模の変動が起きることがあります(岡山は2018年に一時38位まで下落)。単年度のみで判断せず、複数年の傾向を合わせて読むことをおすすめします。

豚肉消費量ランキングと合わせて見ると、消費「量」と「支出額」の両面で岡山の傾向を確認することができます。

地域パターン——北日本・関東が優位、九州・四国が下位の真因

2024年の上位・下位を地域別に整理すると、明確なパターンと、その背後にある構造的な理由が浮かび上がります。

なぜ北陸・日本海側が強いのか: 新潟(1位)・富山(8位)・石川(16位)が上位に入る理由として、北陸の長い冬と保存食文化が挙げられます。豚肉は鶏肉・魚と並んで保存・加工のしやすい食材であり、寒冷地での食卓に根付いてきました。また、北陸地方は全国的に見て世帯あたりの食料支出が高い地域でもあり、食への支出意識が豚肉消費にも反映されていると考えられます。

注目すべきは北陸内部の分断です。新潟・富山・石川が上位に入る一方で、福井(46位・28,473円)は最下位グループに入っています。福井は越前そば・越前ガニ・若狭の魚介類といった独自の食文化が強く、豚肉よりも魚介類・そば類への支出が多い食卓構造になっていると考えられます。同じ「北陸」でも、食のアイデンティティが異なれば豚肉消費の順位は大きく分かれます。

なぜ九州・四国が下位になるのか: 沖縄(45位)や大分(43位)・宮崎(36位)など九州南部が下位になる理由は複数あります。第一に、九州・沖縄は鶏肉文化が強い地域です。宮崎の鶏炭火焼き、鹿児島の鶏刺しなど、豚肉ではなく鶏肉が地域の食文化の中心に位置しており、豚肉への支出が相対的に小さくなっています。第二に、九州・沖縄は産地直送・農家購入・地域流通など市場外の入手経路も豊富で、家計調査(スーパーや市場での市場購入)に反映されにくい入手方法が消費量を支えている可能性があります。

関東では都市内での差が顕著です。神奈川(2位)・東京(4位)・埼玉(9位)・千葉(15位)が上位に入る一方、栃木(26位)・群馬(39位)・茨城(47位)と内陸・農村色が強い県が下位になる傾向があります。群馬の地域特性茨城の産業構造を見ると、農業・畜産が強い県では豚肉の「市場購入」への支出が、都市部ほど伸びないという傾向が見て取れます。

まとめ

  • 1位は新潟県(38,809円):2007年から長年トップを維持し、北陸の食文化と食への高い支出意識が背景にあります。
  • 最下位は茨城県(28,361円):農業・魚介消費が豊富で豚肉への集中度が低く、他県の急増についていけなかった結果として最下位に。東京の隣でありながら1.37倍差がつく逆説が際立ちます。
  • 岡山県が2007年の下位グループから2024年3位へ大逆転:2015年以降の安定的上昇が単なる誤差ではなく実態の変化であることを示しています。
  • 北陸・関東都市部が上位、九州・四国・福井が下位というパターンは、鶏肉文化・魚介文化・食の代替構造が豚肉消費に影響した結果です。
  • 全国平均は2007年の約2.3万円から2024年の約3.3万円へ約4割増加。増加ペースの差が県順位を大きく動かしており、同じ「豚肉好き」でも地域によって速度が違います。

豚肉消費の地域差は単純な好みの問題ではなく、食文化・代替食材の環境・世帯構成・都市化度合いが複合的に絡み合っています。経済カテゴリの指標一覧では、消費支出に関連する他の地域差も確認できます。

データ出典

総務省「家計調査」(2024年)をもとに、都道府県庁所在市の二人以上世帯における年間豚肉消費支出額を集計。e-Stat 経由で整備。調査対象は各都道府県庁所在市の世帯であり、県全体の平均を示すものではありません。