子育てしやすい県ランキング

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「子育てしやすい県」は、何で決まるのでしょうか。出生率が高ければ子育てしやすいのか。保育所が充実していれば十分なのか。実際には、子育て環境は医療・福祉・就労・住環境など複数の要素が絡み合っています。

この記事では、e-Stat(政府統計の総合窓口)のデータから7つの指標を選び、47都道府県の「子育てしやすさ」を総合スコアリングしました。単一指標では見えない、多面的な子育て環境の地域差をデータで読み解きます。

評価方法──7指標のパーセンタイル平均

NOTE

本ランキングは公的統計データに基づく独自の総合評価です。各指標のパーセンタイル(全国順位を0〜100点に変換)を算出し、7指標の平均値を総合スコアとしています。特定の指標に重みづけはしていません。

使用した7つの指標は以下のとおりです。

#指標出典年方向
1合計特殊出生率2023年高い方が良い
2保育所等利用率2020年高い方が良い
3乳児死亡率2023年低い方が良い
4医療施設従事医師数(人口10万人当たり)2022年高い方が良い
5児童福祉費(17歳以下1人当たり)2022年高い方が良い
6育児をしている人の就業率2022年高い方が良い
7都市公園面積(1人当たり)2023年高い方が良い

乳児死亡率は「低いほど良い」指標のため、パーセンタイルを反転させています(乳児死亡率が最も低い県=100点)。

総合ランキング──上位10県・下位10県

子育てしやすい都道府県ランキング 総合スコア

上位10県

順位都道府県総合スコア出生率保育利用率乳児死亡率医師数児童福祉費育児就業率公園面積
1島根県77.41.4697.7%2.4307.6人701千円92.5%16.6m²
2熊本県71.71.4796.0%1.6302.2人674千円89.5%8.7m²
3鹿児島県71.31.48100.2%2.2288.7人707千円88.3%12.4m²
4宮崎県69.01.4995.2%2.2260.8人688千円88.3%18.2m²
5長崎県68.01.4996.3%2.6327.6人663千円88.5%11.5m²
6沖縄県68.01.6095.0%1.8266.1人733千円88.0%10.5m²
7岡山県67.11.3294.8%1.0324.0人577千円86.3%15.8m²
8高知県64.31.3074.5%1.2335.2人700千円89.2%11.3m²
9石川県62.61.3487.8%1.6286.4人609千円91.6%14.3m²
10徳島県61.91.3687.7%1.5335.7人700千円88.3%8.0m²
出典:e-Stat 社会・人口統計体系

1位は島根県(総合スコア77.4)。出生率1.46(全国6位)、保育所等利用率97.7%(全国3位)、育児就業率92.5%(全国3位)と、保育と就労の両立で際立った強さを見せます。医師数も人口10万人あたり307.6人と上位で、都市公園面積も全国8位。乳児死亡率(2.4)はパーセンタイル10.9と相対的に低スコアですが、それを除く6指標で高水準を維持し、総合力で1位を獲得しています。

2位の熊本県は出生率が1.47と高く、乳児死亡率1.6は全国トップクラスの低さ。医師数も300人超と西日本の医療拠点としての強みが出ています。唯一の弱点は都市公園面積(8.7m²)ですが、他の6指標が軒並み高水準です。

3位の鹿児島県は保育所等利用率が全国唯一の100%超(100.2%)。就学前児童に対する利用児童数(認定こども園・小規模保育等を含む)の比率が100%を超えており、保育ニーズへの対応力の高さが光ります。

下位10県

順位都道府県総合スコア出生率保育利用率乳児死亡率医師数児童福祉費育児就業率公園面積
38奈良県37.61.2193.2%2.0286.8人509千円82.2%14.0m²
39大阪府35.71.1992.9%2.2288.5人660千円82.7%5.8m²
40三重県35.41.2987.0%1.3241.2人570千円83.8%10.1m²
41茨城県34.51.2293.6%1.9202.0人584千円85.5%10.1m²
42神奈川県32.91.1396.7%2.1223.0人631千円83.6%5.8m²
43静岡県32.71.2591.3%1.6230.1人510千円85.0%9.2m²
44埼玉県24.51.1492.8%1.6180.2人566千円83.0%7.2m²
45岐阜県23.01.3179.9%2.7231.5人502千円85.9%10.7m²
46千葉県21.91.1489.9%2.1209.0人587千円84.8%7.0m²
47愛知県21.71.2983.4%1.9234.7人557千円82.0%8.0m²

最下位は愛知県(総合スコア21.7)。育児就業率82.0%(全国最下位)、保育所等利用率83.4%(全国43位)、児童福祉費557千円(全国43位)と、複数の指標で下位に沈んでいます。製造業が盛んで経済的には豊かですが、製造業中心の産業構造ではシフト勤務が多く、配偶者の片働き世帯比率が相対的に高いことが育児就業率の低さの背景にある可能性があります。共働き支援制度の充実度に課題が残ります。

注目すべきは、首都圏3県(埼玉・千葉・神奈川)がすべて42〜46位に入っていること。人口密度の高さが公園面積や医師の充足度を押し下げ、住宅コストの高さが出生率にも影響しています。一方で東京都は19位と意外に健闘。児童福祉費が17歳以下1人あたり940.8千円と全国1位で、財政力の高さがスコアを押し上げています。

各指標トップ3──何に強い県か

上位3県の指標別パーセンタイル比較

個別指標のトップ3を見ると、各県の「強み」がより明確になります。

合計特殊出生率(2023年)

**沖縄県(1.60)**が17年連続のトップ。ただし2015年の1.96から低下傾向が続いています。2位は長崎県・宮崎県(1.49)。

使用指標: 合計特殊出生率

保育所等利用率(2020年)

**鹿児島県(100.2%)**が全国唯一の100%超。兵庫県(99.8%)、島根県(97.7%)と続き、保育所のキャパシティを最大限活用しています。

使用指標: 保育所等利用率

乳児死亡率(2023年・低い方が良い)

**岡山県(1.0)**が全国で突出して低く、周産期医療ネットワークの充実が背景にあります。栃木県・高知県(1.2)が続きます。

使用指標: 乳児死亡率

医師数(人口10万人当たり・2022年)

徳島県(335.7人)、**高知県(335.2人)**と四国の2県がトップ2。大学病院を中心とした医療集積が効いています。3位は京都府(334.3人)。

使用指標: 医療施設従事医師数

児童福祉費(17歳以下1人当たり・2022年)

**東京都(940.8千円)**が2位の沖縄県(733.2千円)を200千円以上引き離す圧倒的な財政投入量です。3位は青森県(731.9千円)。

使用指標: 児童福祉費

育児就業率(2022年)

鳥取県(93.4%)、山形県(93.0%)、島根県(92.5%)と山陰・東北に集中。共働きが当たり前の地域文化と、3世代同居率の高さが支えています。

使用指標: 育児をしている人の就業率

都市公園面積(1人当たり・2023年)

**北海道(27.84m²)**が2位の山形県(19.75m²)を8m²以上引き離すトップ。広大な都市公園が人口当たりの数値を押し上げています。3位は宮城県(18.74m²)。

使用指標: 都市公園面積

地域パターン──「地方が強く、都市圏が弱い」のはなぜか

子育てしやすさ総合スコア タイルグリッドマップ 出典:e-Stat 社会・人口統計体系(7指標の合成スコア)

総合ランキングの上位を地方別に整理すると、明確なパターンが浮かび上がります。

上位に集中する地方

  • 九州・沖縄: 熊本(2位)、鹿児島(3位)、宮崎(4位)、長崎(5位)、沖縄(6位)──九州6県のうち5県がトップ10入り
  • 山陰: 島根(1位)、鳥取(11位)──出生率・育児就業率が全国トップクラス
  • 四国: 高知(8位)、徳島(10位)──医師数と児童福祉費で強い

下位に集中する地方

  • 首都圏: 埼玉(44位)、千葉(46位)、神奈川(42位)──医師密度の低さと公園面積の狭さが共通の弱点
  • 中部: 愛知(47位)、岐阜(45位)、静岡(43位)──製造業が盛んで経済的に豊かだが、育児就業率と児童福祉費が低い

この「地方優位」の構造には、いくつかの要因が考えられます。

  1. 3世代同居・近居: 地方では祖父母の育児サポートが受けやすく、育児就業率を押し上げる
  2. 通勤時間の短さ: 地方の通勤時間は都市部の半分以下。仕事と育児の両立がしやすい
  3. 住居コストの低さ: 広い家に住めるため、子どもの生活空間を確保しやすい
  4. 保育所の充足: 地方では都市部ほど保育所の不足が深刻でなく、利用率が高い

ただし、地方にも課題はあります。出生率が高くても若者の流出が続けば人口は減少し、医療機関の維持が困難になるリスクがあります。

出生率と何が関連するか──相関分析

育児就業率と合計特殊出生率の散布図 出典:e-Stat 社会・人口統計体系

出生率を左右する要因は何か。合計特殊出生率と他の6指標の相関係数を計算しました。

指標相関係数(r)解釈
育児就業率+0.40育児しながら働ける環境と出生率に正の関連
医師数+0.34医療体制の充実度と出生率に正の関連
乳児死亡率+0.12ほぼ無相関(医療水準が全国的に高いため差が小さい)
保育所利用率+0.05ほぼ無相関
児童福祉費+0.03ほぼ無相関
都市公園面積+0.01ほぼ無相関

最も強い正の相関は「育児就業率」(r = +0.40)。育児をしながら働ける環境が整っている県ほど出生率が高い傾向があります。「経済的な安心感」や「仕事を辞めなくてよい環境」が出産と関連している可能性がある、という一つの解釈が考えられます。ただし、r = 0.40 は弱い〜中程度の相関であり、都市部か地方かという共通の背景要因(3世代同居率の高さ、通勤時間の短さなど)が育児就業率と出生率の両方を同時に押し上げている可能性が高い点に注意が必要です。

一方で、児童福祉費や公園面積との相関はほぼゼロです。少なくとも都道府県レベルの統計では、行政の財政投入や物理的環境と出生率の間に明確な関連は見られませんでした。

IMPORTANT

相関係数は「因果関係」を示すものではありません。育児就業率が高い県で出生率も高い傾向がある、という事実は確認できますが、「育児就業率を上げれば出生率が上がる」とは限りません。3世代同居率・通勤時間・地域文化など、背景にある共通要因を考慮する必要があります。

育児就業率 × 出生率の散布図を見る

注意点──このランキングの限界

本ランキングを読む際に、いくつかの注意点があります。

  1. 指標の選定が結果を左右する: 今回は7指標を選びましたが、「住宅費負担率」「通勤時間」「待機児童数」などを加えれば順位は変わります。特に待機児童数は2020年以降大幅に減少しており、最新データでは都道府県間の差が縮まっています。また、人口当たり・面積当たりの指標が多いため、人口密度が低い地方圏が構造的に有利になりやすい設計です。都市部の子育てにおける利点(交通利便性、教育選択肢の多さ、専門医療の多様性、民間保育サービスの充実など)を測る指標は含まれていません
  2. 市区町村レベルの格差: 県単位のデータでは県内格差が見えません。同じ県でも県庁所在地と過疎地域では子育て環境が大きく異なります
  3. データの時点差: 保育所利用率(2020年)と出生率(2023年)など、指標間で時点が異なります。特に保育所等利用率(2020年)はコロナ禍初年度のデータであり、一時的な登園自粛の影響で通常年と異なる利用パターンが含まれている可能性があります。同一時点での比較ではない点に留意してください
  4. 重みづけなし: 7指標を等ウェイトで評価していますが、子育て世帯にとっての重要度は家庭ごとに異なります

NOTE

各指標の詳細な都道府県別ランキングは、それぞれのリンク先ページでインタラクティブに確認できます。地図・時系列グラフ・散布図で、より深く分析したい方はぜひご活用ください。

まとめ

7つの子育て関連指標を総合すると、島根県・熊本県・鹿児島県がトップ3でした。

この記事でわかったこと

九州・山陰など地方圏が上位に並ぶ一方、首都圏は医師密度と公園面積の不足から下位に集中しています。

最も注目すべき発見は、**出生率と最も相関が高いのが「育児就業率」**だったこと。少なくとも都道府県レベルの統計では、児童福祉費や公園面積よりも育児就業率との関連が最も目立つ結果でした。ただし、これは地方/都市という共通の背景要因が影響している可能性もあり、単純な因果関係ではない点に留意が必要です。

子育てしやすい県を探している方は、総合スコアだけでなく、自分にとって重要な指標を重視して比較してみてください。

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